2011/06/07(火) - 10:31
「最後に賭けに出てみようと思った。一か八かのアタックだった」。ジャージのジッパーを閉める余裕も無いまま、2級山岳サン・ピエール・ド・シャルトルーズにゴールしたユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)。昨年ツール・ド・フランスで総合5位に入った28歳がプロ初勝利を掴んだ。
2001年にジュニアの世界TTチャンピオンに輝いたファンデンブロックは、身長186cm・体重69kgのスラリとしたオールラウンダー。2004年にアメリカのUSポスタル(後のディスカバリーチャンネル)でプロの道を歩み始めた。
2007年に地元ベルギーのプレディクトール・ロット(現オメガファーマ・ロット)に移籍すると、オールラウンダーとしての素質を発揮。2008年のジロ・デ・イタリアで総合7位に入り、更に昨年のツール・ド・フランスで総合5位という成績を残している。グランツールで総合上位を狙える貴重なベルギー人だ。
この日はファンデンブロックのチームメイト、プロ1年目のスヴェン・ファンダウセラール(ベルギー)が110kmに渡って逃げ続けた。ファンダウセラールとエスケープを共にしたのはレオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)とヴァンサン・ジェローム(フランス、ユーロップカー)。
レース前半にある難易度の低い3つのカテゴリー山岳では、ドゥケが山岳ポイントを連取する。しかし難易度の低さゆえ、ドゥケが獲得できたのは合計10ポイントのみ。
プロローグを制したラース・ボーム(オランダ)が所属するラボバンクは、一日中マイヨジョーヌチームとしての責務を果たした。ラボバンクが集団のペースを調整し、逃げグループとのタイム差を詰めていく。最大5分35秒まで広がったタイム差は、ラスト10km地点でゼロに戻った。
2級山岳サン・ピエール・ド・シャルトルーズは、平均勾配4.8%で登坂距離7.4km。中盤にかけて平坦区間があるため、実質的な勾配は7%近い。
BMCレーシングチームが積極的にペースを上げた集団から、HTC・ハイロードのジャージが真っ先に飛び出した。しかし初日のプロローグで精彩を欠いたトニ・マルティン(ドイツ)ではなく、エースの不調を悟ったカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)。これにファンデンブロックが反応した。
遅れてフランスチャンピオンのトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)が合流。この先頭3名はラスト4kmで一旦メイン集団に捉えられたが、諦めずにアタックしたファンデンブロックが独走に持ち込む。ジロを不本意な成績で終えたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が追撃したが届かない。後続を振り切ったファンデンブロックが勝利した。
グランツールを始め、多くのステージレースで総合成績を残すファンデンブロックだが、レース後のインタビューで意外な告白をする。「プロ選手としてこれが初勝利なんだ」。
「ドーフィネの山岳ステージでプロ初勝利を飾ることは大きな意味がある。この5週間ほど山岳トレーニングをしていなかったので、脚がスーパーな状態ではなかった。でも最後に賭けに出てみようと思ったんだ。HTCの選手(シウトソウ)がアタックしたとき、監督から無線越しに『行け!』という指示が飛んできた。だからそこで飛び出した。一か八かのアタックだった」。
ファンデンブロックはツールに向けて順調な仕上がり。1ヶ月後のツールではオメガファーマ・ロットのエースとして総合表彰台を目指す。
カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)やアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)は順当にステージ上位に絡む走りを見せた。初日のプロローグ2位のヴィノクロフがマイヨジョーヌを手にしている。
今年をキャリア最後の年と決め、最後のツールでの活躍を誓うヴィノクロフは「このマイヨジョーヌは、ツールに向けての着実な一歩だ」と喜ぶ。マイヨジョーヌに奢ることなく、ステージ優勝を狙い続ける姿勢を崩していない。
この日のサプライズは、スプリンターやTTスペシャリストとして名を馳せるエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)が、ステージ6位に入り、マイヨブラン(新人賞ジャージ)を手にしたことだろう。ボアッソンは天候の悪化によりプロローグでのチャンスを失っていた。「最後の登りで調子の良さを感じ、ステージ優勝を狙っていた。マイヨブランは昨日のバッドラックの埋め合わせになるよ」。ボアッソンはブラドレー・ウィギンズ(イギリス)をアシストすることがドーフィネの最大の目標だと語る。
その一方で、ツールに向けて不安を残したのが、2級山岳サン・ピエール・ド・シャルトルーズで総合にメイン集団から脱落したイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)だ。バッソは5月のトレーニング中の落車の影響で、ツールに向けてのコンディショニングが遅れている。この日はロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)やサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)らの姿もメイン集団の中から消えていた。
新城幸也(ユーロップカー)は、マイヨジョーヌを着るボームらと一緒に2分27秒遅れでゴールしている。翌第2ステージは、4級山岳に設定されたリヨンのクロワ・ルースにゴールするアップダウンコース。ユキヤのように、スプリント力のあるパンチャー向きのコースレイアウトだ。
選手コメントはレース公式サイトより。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2011第1ステージ結果
1位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) 3h36'42"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +06"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +07"
4位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
5位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
6位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
7位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +13"
8位 ロブ・ルーグ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
9位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) +15"
10位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)
11位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)
38位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +58"
48位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +1'31"
82位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク) +2'27"
84位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
93位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード) +2'40"
117位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +3'09"
個人総合成績
1位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) 3h43'09"
2位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +05"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +07"
4位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) +11"
5位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ) +13"
6位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +17"
7位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック) +20"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +23"
9位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +24"
10位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) +27"
90位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +2'53"
ポイント賞
アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
山岳賞
ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
新人賞
エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
チーム総合成績
ラボバンク
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
2001年にジュニアの世界TTチャンピオンに輝いたファンデンブロックは、身長186cm・体重69kgのスラリとしたオールラウンダー。2004年にアメリカのUSポスタル(後のディスカバリーチャンネル)でプロの道を歩み始めた。
2007年に地元ベルギーのプレディクトール・ロット(現オメガファーマ・ロット)に移籍すると、オールラウンダーとしての素質を発揮。2008年のジロ・デ・イタリアで総合7位に入り、更に昨年のツール・ド・フランスで総合5位という成績を残している。グランツールで総合上位を狙える貴重なベルギー人だ。
この日はファンデンブロックのチームメイト、プロ1年目のスヴェン・ファンダウセラール(ベルギー)が110kmに渡って逃げ続けた。ファンダウセラールとエスケープを共にしたのはレオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)とヴァンサン・ジェローム(フランス、ユーロップカー)。
レース前半にある難易度の低い3つのカテゴリー山岳では、ドゥケが山岳ポイントを連取する。しかし難易度の低さゆえ、ドゥケが獲得できたのは合計10ポイントのみ。
プロローグを制したラース・ボーム(オランダ)が所属するラボバンクは、一日中マイヨジョーヌチームとしての責務を果たした。ラボバンクが集団のペースを調整し、逃げグループとのタイム差を詰めていく。最大5分35秒まで広がったタイム差は、ラスト10km地点でゼロに戻った。
2級山岳サン・ピエール・ド・シャルトルーズは、平均勾配4.8%で登坂距離7.4km。中盤にかけて平坦区間があるため、実質的な勾配は7%近い。
BMCレーシングチームが積極的にペースを上げた集団から、HTC・ハイロードのジャージが真っ先に飛び出した。しかし初日のプロローグで精彩を欠いたトニ・マルティン(ドイツ)ではなく、エースの不調を悟ったカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)。これにファンデンブロックが反応した。
遅れてフランスチャンピオンのトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)が合流。この先頭3名はラスト4kmで一旦メイン集団に捉えられたが、諦めずにアタックしたファンデンブロックが独走に持ち込む。ジロを不本意な成績で終えたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が追撃したが届かない。後続を振り切ったファンデンブロックが勝利した。
グランツールを始め、多くのステージレースで総合成績を残すファンデンブロックだが、レース後のインタビューで意外な告白をする。「プロ選手としてこれが初勝利なんだ」。
「ドーフィネの山岳ステージでプロ初勝利を飾ることは大きな意味がある。この5週間ほど山岳トレーニングをしていなかったので、脚がスーパーな状態ではなかった。でも最後に賭けに出てみようと思ったんだ。HTCの選手(シウトソウ)がアタックしたとき、監督から無線越しに『行け!』という指示が飛んできた。だからそこで飛び出した。一か八かのアタックだった」。
ファンデンブロックはツールに向けて順調な仕上がり。1ヶ月後のツールではオメガファーマ・ロットのエースとして総合表彰台を目指す。
カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)やアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)は順当にステージ上位に絡む走りを見せた。初日のプロローグ2位のヴィノクロフがマイヨジョーヌを手にしている。
今年をキャリア最後の年と決め、最後のツールでの活躍を誓うヴィノクロフは「このマイヨジョーヌは、ツールに向けての着実な一歩だ」と喜ぶ。マイヨジョーヌに奢ることなく、ステージ優勝を狙い続ける姿勢を崩していない。
この日のサプライズは、スプリンターやTTスペシャリストとして名を馳せるエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)が、ステージ6位に入り、マイヨブラン(新人賞ジャージ)を手にしたことだろう。ボアッソンは天候の悪化によりプロローグでのチャンスを失っていた。「最後の登りで調子の良さを感じ、ステージ優勝を狙っていた。マイヨブランは昨日のバッドラックの埋め合わせになるよ」。ボアッソンはブラドレー・ウィギンズ(イギリス)をアシストすることがドーフィネの最大の目標だと語る。
その一方で、ツールに向けて不安を残したのが、2級山岳サン・ピエール・ド・シャルトルーズで総合にメイン集団から脱落したイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)だ。バッソは5月のトレーニング中の落車の影響で、ツールに向けてのコンディショニングが遅れている。この日はロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)やサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)らの姿もメイン集団の中から消えていた。
新城幸也(ユーロップカー)は、マイヨジョーヌを着るボームらと一緒に2分27秒遅れでゴールしている。翌第2ステージは、4級山岳に設定されたリヨンのクロワ・ルースにゴールするアップダウンコース。ユキヤのように、スプリント力のあるパンチャー向きのコースレイアウトだ。
選手コメントはレース公式サイトより。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2011第1ステージ結果
1位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) 3h36'42"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +06"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +07"
4位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
5位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
6位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
7位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +13"
8位 ロブ・ルーグ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
9位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) +15"
10位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)
11位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)
38位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +58"
48位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +1'31"
82位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク) +2'27"
84位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
93位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード) +2'40"
117位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +3'09"
個人総合成績
1位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) 3h43'09"
2位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +05"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +07"
4位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) +11"
5位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ) +13"
6位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +17"
7位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック) +20"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +23"
9位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +24"
10位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) +27"
90位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +2'53"
ポイント賞
アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
山岳賞
ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
新人賞
エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
チーム総合成績
ラボバンク
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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