2011/05/30(月) - 11:03
ミラノでの個人タイムトライアルで行われたジロ・デ・イタリア最終ステージはデーヴィット・ミラー(ガーミン・サーヴェロ)がトップタイムでステージ優勝。そしてこの日もステージ3位の快走を見せたアルベルト・コンタドール(サクソバンク・サンガード)が2008年以来3年ぶり2度目のジロ・デ・イタリア制覇を成し遂げた。
ミラノでの最終日個人タイムトライアルは、市長選による選挙シーズンの交通量増加などを理由に約1週間前に急遽コース変更を受け、32kmから26kmで行われることになった。つまり6kmの短縮だ。
スタートはミラノ郊外のRhoにある見本市会場「フィエラ・ミラノ」。ゴールはドゥオモ広場。ミラノ中心部からスタートする往復ループだった予定が、郊外スタートの片道コースになった。
3週間の激闘を経た、疲れた脚で戦う選手たち。逆転を狙う総合上位争いの選手以外にとって、距離短縮は歓迎すべきことかもしれない。
コースが厳しかった今年のジロ。第21ステージに出走できるのは159人。第3ステージのワウテル・ウェイラント(ベルギー、レオパード・トレック)の死亡事故によりレオパード・トレックのチーム全体撤退があった。また、第12ステージ以降は山岳ステージが続き、スプリンターにチャンスがあるステージがなかったことでスプリンターのほとんどすべてがレースを去ってしまったことも原因だ。
レースの見どころは総合上位がどう入れ替わるかということ。
スタート前の総合トップ10+1のタイム
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) 83h34'25"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+5'18"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+6'14"
4位 ジョン・ガドレ(アージェードゥーゼル)+7'49"
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+9'27"
6位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ)+10'23"
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)+10'38"
8位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)+10'51"
9位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)+12'56"
10位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)+12'57"
11位カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+13'30"
総合首位コンタドールがニーバリに対して持っている5分18秒差はもはや安泰。コンタドールが昨日コメントしたとおり、「慌てる必要はない。自分のカーブに気をつけて走ればいい」だけだ。
熾烈なのは2位争い。スカルポー二がニーバリに対して持っている56秒は十分な差ではない。どちらかといえばニーバリのほうがTTは得意だ。
ニーバリは距離短縮に不満を漏らす。短縮後は1kmで2秒を稼がなければ逆転はない。「もちろん距離が長いほうがチャンスは大きくなる」(ニーバリ)。
TTが不得意な4位のガドレは上に上がるチャンスはないが、5位のロドリゲスに抜かれる心配もない。5位のロドリゲスと6位のホセ・ルハノはタイムを失うことが確実なタイムトライアルになる。7位のクロイツィゲルはルハノ、ロドリゲスを抜いて5位までに上がることが目標だ。昨ステージで11位に転落したシウトソウは再びのトップ10返り咲きを狙う。
破られなかったミラーのタイム
早いスタートのアレックス・ラスムッセン(デンマーク、HTC・ハイロード)がマークした30分20秒が長く破られなかった。しかもラスムッセンはゴール前数百メートルで後輪をパンクしたまま走ってのタイム。ゴールでは首を振って悔しがる。パンクし、ほぼエアの抜けたままの後輪を滑らせながら走って数百メートルでロスしたタイムを考えに入れれば、パンクがなければステージ優勝の可能性は大きかった。
そのラスムッセンを7秒上回ったのがデービッド・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)だ。ミラーは昨日までの山岳ステージでも連日遅れてフィニッシュし、体力をセーブしてこの最終日に臨んできた。この日も朝から調整を続け、狙い通りのトップタイムだ。このタイムが結局は最後まで破られることはなかった。
総合逆転を賭けた上位陣の争い
エトナ山頂にゴールした第9ステージ以来、「このジロは2位を争うレース」だと言われてきた。そのとおり、2、3位は最後まで僅差でもつれることになった。その主役はスカルポーニとニーバリだ。
スカルポー二がニーバリに対して持つタイム差は56秒。ここまでの山岳の数日はスカルポーニにニーバリが遅れる走りを見せており、ほぼ互角の戦いが予想された。
2分の間隔を置いてコースに出たふたり。走りだしてすぐ、8.9kmの中間計測ポイントでニーバリがスカルポーニを13秒上回るという結果を出す。しかし、これはニーバリの「気張り過ぎ」だった。
その後徐々にペースを落とすニーバリ。重いギアを力任せに踏み、苦しんでいる様が見て取れるようになる。
一方のスカルポーニは一定ペースでコンスタントな走りを披露する。TTが苦手なスカルポーニだが、ここまでの数日、山岳での走りで見せたとおりニーバリよりフレッシュな脚を残していたようだ。
ニーバリはミラーに1分18秒遅れのステージ11位のタイムをマークするが、スカルポーニはそれプラス10秒の遅れにとどめてフィニッシュ。終わってみれば46秒のマージンをもって総合2位の座を守った。
4位のガドレは健闘の走りで2分51秒遅れにとどめ、持っていたタイムマージンを使い果たすこと無く総合4位をキープすることに成功。
タイムを落とすことがもっとも心配されていたホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)。2010年のブエルタ・ア・エスパーニャでも終盤第17ステージ個人TTで総合リーダーの座から5位まで転落している。
しかしこの日のロドリゲスは違った。前日セストリエーレでのアタックで証明してみせた好調ぶりを維持。苦手な平坦路で2分14秒遅れのステージ40位にとどめ、総合5位を堅持した。
もうひとりのクライマー、ルハノは2分25秒遅れの46位。しかしメンショフが2分3秒遅れの35位の凡庸なタイムに終わってしまい、総合をクロイツィゲルと入れ替えの1位落とすにとどめた。
総合11位からの大幅ジャンプアップが期待されたシウトソウは1分16秒遅れのステージ10位の成績で、総合をひとつあげてトップ10入りを果たした。
あわやステージ優勝? コンタドールの王者の走り
この日、もっとも驚きの走りを披露したのは最終走者のコンタドールだった。前日のステージを終えて最後の個人TTにではステージ優勝を狙うつもりがないとコメントしていたコンタドールだが、8.9kmの中間計測ポイントではトップタイムをマークし、ひとり異次元の快走を始めた。
しかし、カーブが多いところでは安全なラインをとり、ゴールが近づくと観客に向かって勝利のゼスチャーを示すコンタドール。ミラノ中心部に入ると、自らを祝福するビクトリーランに切り替えた。スピードを落とし、体を起こし、観客の声援に応える。最後の200mは勝利を味わうかのごとくゆっくりと走り、そしてゴールにはお決まりのピストルポーズで飛び込んだ。
それでもミラーのタイムから36秒遅れに留めるステージ3位のタイム。もしステージ優勝を狙っていれば確実にとれた走りだった。
この日、コンタドールはピンクに身を包み、ピンクのスペシャルサドルには東日本大震災の被災者へむけたコメントを手書きしていた。そのサドルは後日オークションに掛けられ、落札額が義援金として日本に送られるという。
ステージを終えるやいなやステージに上がり、マイクを取って観客に向かった。
「このピアッツァ(広場)は素晴らしい。夢のフィナーレだった。ひとりで勝ったんじゃない。チームで勝ったんだ」。
コンタドールにとってこの勝利は2008年につぐジロにおける総合優勝2勝目だ。2007、2009、2010年にはツール・ド・フランスに勝利。ブエルタ・ア・エスパーニャには2008年に優勝している。この勝利がグランツール通算6勝目に当たる。
2008年のジロはバカンス中にチームに急に呼び出され、体調を整えながらなんとか勝った印象があるが、今年は山岳で敵なし、タイムトライアルでも山岳で敵なし。平坦路TTでもトップレベル。このジロでは勝てるステージでもライバルたちにステージ優勝を譲ってきた。
このステージレース最強ライダーは、ドーピング問題のCASによる決定先伸ばしにより自身最大の目標であるツール・ド・フランス出場もほぼ確実視されている。そうなれば近年難しいと言われてきたジロ、ツールの連勝「ダブルツール」に挑むことになる。
さらに今年はブエルタ・ア・エスパーニャへの出場も表明しているコンタドール。この先どこまでグランツールの勝利記録を伸ばすことができるのだろう?
別府史之、初めてのジロ完走、2つめのグランツール完走を達成
別府史之は32分16秒のタイムで走りきり、トップから2分3秒遅れ、36位でフィニッシュしている。総合ではコンタドールに2時間25分6秒遅れの総合67位の結果を残した。ジロ・デ・イタリアは初出場で初完走。2009年ツール・ド・フランスにつぐ自身2つめのグランツール完走を成し遂げた。
別府は完走後、J SPORTSの電話コメントで6月26日に岩手県八幡平で開催される全日本選手権ロードレースに出場することを表明。久々に日本チャンピオンジャージを目指して走ることになる。
第21ステージ結果
1位 デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)30'13"
2位 アレックス・ラスムッセン(デンマーク、HTC・ハイロード) 7"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)36"
4位 リッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク・サンガード)43"
5位 ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)55"
6位 ヨス・ファンエムデン(オランダ、ラボバンク)1'02"
7位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)1'04"
8位 パトリック・グレッチュ(ドイツ、HTC・ハイロード)1'08"
9位 ティアゴ・マシャド(ポルトガルレディオシャック)1'12"
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)1'16"
36位 別府史之(レディオシャック) 2'03"
個人総合成績 マリアローザ
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) 84h05'14"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+6'10"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+6'56"
4位 ジョン・ガドレ(アージェードゥーゼル)+10'04"
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+11'05"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)+11'28"
7位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ)+12'12"
8位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)+12'18"
9位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)+13'51"
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+14'10"
ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)
山岳賞 マリアヴェルデ
ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
新人賞 マリアビアンカ
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)
チーム総合成績
アスタナ
スプリント賞
ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
アッズーリ・イタリア賞
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)
フーガ・ピナレロ賞
ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)
総合敢闘賞
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)
スーパーチーム
ランプレISD
トロフェオ・ボナコッサ
レオパード・トレック
text:Makoto.AYANO
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla,CorVos
ミラノでの最終日個人タイムトライアルは、市長選による選挙シーズンの交通量増加などを理由に約1週間前に急遽コース変更を受け、32kmから26kmで行われることになった。つまり6kmの短縮だ。
スタートはミラノ郊外のRhoにある見本市会場「フィエラ・ミラノ」。ゴールはドゥオモ広場。ミラノ中心部からスタートする往復ループだった予定が、郊外スタートの片道コースになった。
3週間の激闘を経た、疲れた脚で戦う選手たち。逆転を狙う総合上位争いの選手以外にとって、距離短縮は歓迎すべきことかもしれない。
コースが厳しかった今年のジロ。第21ステージに出走できるのは159人。第3ステージのワウテル・ウェイラント(ベルギー、レオパード・トレック)の死亡事故によりレオパード・トレックのチーム全体撤退があった。また、第12ステージ以降は山岳ステージが続き、スプリンターにチャンスがあるステージがなかったことでスプリンターのほとんどすべてがレースを去ってしまったことも原因だ。
レースの見どころは総合上位がどう入れ替わるかということ。
スタート前の総合トップ10+1のタイム
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) 83h34'25"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+5'18"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+6'14"
4位 ジョン・ガドレ(アージェードゥーゼル)+7'49"
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+9'27"
6位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ)+10'23"
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)+10'38"
8位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)+10'51"
9位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)+12'56"
10位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)+12'57"
11位カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+13'30"
総合首位コンタドールがニーバリに対して持っている5分18秒差はもはや安泰。コンタドールが昨日コメントしたとおり、「慌てる必要はない。自分のカーブに気をつけて走ればいい」だけだ。
熾烈なのは2位争い。スカルポー二がニーバリに対して持っている56秒は十分な差ではない。どちらかといえばニーバリのほうがTTは得意だ。
ニーバリは距離短縮に不満を漏らす。短縮後は1kmで2秒を稼がなければ逆転はない。「もちろん距離が長いほうがチャンスは大きくなる」(ニーバリ)。
TTが不得意な4位のガドレは上に上がるチャンスはないが、5位のロドリゲスに抜かれる心配もない。5位のロドリゲスと6位のホセ・ルハノはタイムを失うことが確実なタイムトライアルになる。7位のクロイツィゲルはルハノ、ロドリゲスを抜いて5位までに上がることが目標だ。昨ステージで11位に転落したシウトソウは再びのトップ10返り咲きを狙う。
破られなかったミラーのタイム
早いスタートのアレックス・ラスムッセン(デンマーク、HTC・ハイロード)がマークした30分20秒が長く破られなかった。しかもラスムッセンはゴール前数百メートルで後輪をパンクしたまま走ってのタイム。ゴールでは首を振って悔しがる。パンクし、ほぼエアの抜けたままの後輪を滑らせながら走って数百メートルでロスしたタイムを考えに入れれば、パンクがなければステージ優勝の可能性は大きかった。
そのラスムッセンを7秒上回ったのがデービッド・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)だ。ミラーは昨日までの山岳ステージでも連日遅れてフィニッシュし、体力をセーブしてこの最終日に臨んできた。この日も朝から調整を続け、狙い通りのトップタイムだ。このタイムが結局は最後まで破られることはなかった。
総合逆転を賭けた上位陣の争い
エトナ山頂にゴールした第9ステージ以来、「このジロは2位を争うレース」だと言われてきた。そのとおり、2、3位は最後まで僅差でもつれることになった。その主役はスカルポーニとニーバリだ。
スカルポー二がニーバリに対して持つタイム差は56秒。ここまでの山岳の数日はスカルポーニにニーバリが遅れる走りを見せており、ほぼ互角の戦いが予想された。
2分の間隔を置いてコースに出たふたり。走りだしてすぐ、8.9kmの中間計測ポイントでニーバリがスカルポーニを13秒上回るという結果を出す。しかし、これはニーバリの「気張り過ぎ」だった。
その後徐々にペースを落とすニーバリ。重いギアを力任せに踏み、苦しんでいる様が見て取れるようになる。
一方のスカルポーニは一定ペースでコンスタントな走りを披露する。TTが苦手なスカルポーニだが、ここまでの数日、山岳での走りで見せたとおりニーバリよりフレッシュな脚を残していたようだ。
ニーバリはミラーに1分18秒遅れのステージ11位のタイムをマークするが、スカルポーニはそれプラス10秒の遅れにとどめてフィニッシュ。終わってみれば46秒のマージンをもって総合2位の座を守った。
4位のガドレは健闘の走りで2分51秒遅れにとどめ、持っていたタイムマージンを使い果たすこと無く総合4位をキープすることに成功。
タイムを落とすことがもっとも心配されていたホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)。2010年のブエルタ・ア・エスパーニャでも終盤第17ステージ個人TTで総合リーダーの座から5位まで転落している。
しかしこの日のロドリゲスは違った。前日セストリエーレでのアタックで証明してみせた好調ぶりを維持。苦手な平坦路で2分14秒遅れのステージ40位にとどめ、総合5位を堅持した。
もうひとりのクライマー、ルハノは2分25秒遅れの46位。しかしメンショフが2分3秒遅れの35位の凡庸なタイムに終わってしまい、総合をクロイツィゲルと入れ替えの1位落とすにとどめた。
総合11位からの大幅ジャンプアップが期待されたシウトソウは1分16秒遅れのステージ10位の成績で、総合をひとつあげてトップ10入りを果たした。
あわやステージ優勝? コンタドールの王者の走り
この日、もっとも驚きの走りを披露したのは最終走者のコンタドールだった。前日のステージを終えて最後の個人TTにではステージ優勝を狙うつもりがないとコメントしていたコンタドールだが、8.9kmの中間計測ポイントではトップタイムをマークし、ひとり異次元の快走を始めた。
しかし、カーブが多いところでは安全なラインをとり、ゴールが近づくと観客に向かって勝利のゼスチャーを示すコンタドール。ミラノ中心部に入ると、自らを祝福するビクトリーランに切り替えた。スピードを落とし、体を起こし、観客の声援に応える。最後の200mは勝利を味わうかのごとくゆっくりと走り、そしてゴールにはお決まりのピストルポーズで飛び込んだ。
それでもミラーのタイムから36秒遅れに留めるステージ3位のタイム。もしステージ優勝を狙っていれば確実にとれた走りだった。
この日、コンタドールはピンクに身を包み、ピンクのスペシャルサドルには東日本大震災の被災者へむけたコメントを手書きしていた。そのサドルは後日オークションに掛けられ、落札額が義援金として日本に送られるという。
ステージを終えるやいなやステージに上がり、マイクを取って観客に向かった。
「このピアッツァ(広場)は素晴らしい。夢のフィナーレだった。ひとりで勝ったんじゃない。チームで勝ったんだ」。
コンタドールにとってこの勝利は2008年につぐジロにおける総合優勝2勝目だ。2007、2009、2010年にはツール・ド・フランスに勝利。ブエルタ・ア・エスパーニャには2008年に優勝している。この勝利がグランツール通算6勝目に当たる。
2008年のジロはバカンス中にチームに急に呼び出され、体調を整えながらなんとか勝った印象があるが、今年は山岳で敵なし、タイムトライアルでも山岳で敵なし。平坦路TTでもトップレベル。このジロでは勝てるステージでもライバルたちにステージ優勝を譲ってきた。
このステージレース最強ライダーは、ドーピング問題のCASによる決定先伸ばしにより自身最大の目標であるツール・ド・フランス出場もほぼ確実視されている。そうなれば近年難しいと言われてきたジロ、ツールの連勝「ダブルツール」に挑むことになる。
さらに今年はブエルタ・ア・エスパーニャへの出場も表明しているコンタドール。この先どこまでグランツールの勝利記録を伸ばすことができるのだろう?
別府史之、初めてのジロ完走、2つめのグランツール完走を達成
別府史之は32分16秒のタイムで走りきり、トップから2分3秒遅れ、36位でフィニッシュしている。総合ではコンタドールに2時間25分6秒遅れの総合67位の結果を残した。ジロ・デ・イタリアは初出場で初完走。2009年ツール・ド・フランスにつぐ自身2つめのグランツール完走を成し遂げた。
別府は完走後、J SPORTSの電話コメントで6月26日に岩手県八幡平で開催される全日本選手権ロードレースに出場することを表明。久々に日本チャンピオンジャージを目指して走ることになる。
第21ステージ結果
1位 デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)30'13"
2位 アレックス・ラスムッセン(デンマーク、HTC・ハイロード) 7"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)36"
4位 リッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク・サンガード)43"
5位 ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)55"
6位 ヨス・ファンエムデン(オランダ、ラボバンク)1'02"
7位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)1'04"
8位 パトリック・グレッチュ(ドイツ、HTC・ハイロード)1'08"
9位 ティアゴ・マシャド(ポルトガルレディオシャック)1'12"
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)1'16"
36位 別府史之(レディオシャック) 2'03"
個人総合成績 マリアローザ
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) 84h05'14"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+6'10"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+6'56"
4位 ジョン・ガドレ(アージェードゥーゼル)+10'04"
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+11'05"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)+11'28"
7位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ)+12'12"
8位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)+12'18"
9位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)+13'51"
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+14'10"
ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)
山岳賞 マリアヴェルデ
ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
新人賞 マリアビアンカ
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)
チーム総合成績
アスタナ
スプリント賞
ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
アッズーリ・イタリア賞
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)
フーガ・ピナレロ賞
ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)
総合敢闘賞
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)
スーパーチーム
ランプレISD
トロフェオ・ボナコッサ
レオパード・トレック
text:Makoto.AYANO
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