2011/03/04(金) - 16:39
キャノンデールは軽量アルミフレームの代名詞と呼ばれたキャド(CAAD)シリーズで欧州のプロロードレースで成功を収め、以降カーボン×アルミハイブリッドのシックスサーティーン、システムシックスと進化を遂げ、08年モデルでフルカーボンのスーパーシックスシリーズへとたどり着いた。そして、09年にカーボン繊維をハイモジュール化したスーパーシックスハイモッド(Hi-Mod)、2010年モデルでは車名をそのままにフレームの製造方法を見直して軽量化するなど、大がかりなマイナーチェンジが行なわれている。
今回試乗する「スーパーシックス5」は、シリーズのボトムを受け持つモデル。外観は上位機種の“ハイモッド”タイプと区別がつかないものの、使用するカーボン素材が異なっている。上位機種はカーボン素材のグレードを高めてハイモッド化しているが、このモデルは弾性率を抑えて、軽さよりも耐久性を重視した仕様となる。
フレーム製法は前後の三角を別々に作り、最終的に両者をドッキングさせたいわゆる3ピース式。しかし、チューブを差し込んで前後を接着する形式ではなく、接合部にカーボンを巻き付けて一体化させている。これは接着式よりも手間のかかる製作方法だが、チューブの余分な重なり部分を減らしつつ、剛性や強度を高めるためだ。
フレーム形状は外径を上げたダウンチューブが目立つが、おとなしいシルエットと言えるだろう。とはいえ、トレンドにのっとりヘッドチューブの下ワンをワンポイントファイブ規格に設計したテーパードタイプを採用。「ディープラディアスヘッドチューブ」と呼ばれるヘッド部は、ヘッドベアリングを受ける部分全てをカーボンで成型することで軽量化される。さらに、ヘッドチューブ後方はエアロフィンにも似た成型を施すことで体積が大きく確保され、ヘッド部のねじれ剛性が高められている。
そして、BB部分は「ビートボックス」と呼ばれる形状。キャノンデールが提唱し、最新ロードバイクのトレンドである大口径BBシェルの「BB30」をベースに、BBシェル周辺をボリュームアップして最適なペダリングを演出するための剛性が追求されている。
ヘッドチューブからチェーンステーまでのラインを強化する一方、シートステーを細身に設計したことが、スーパーシックスのもう1つのポイントだ。アルミフレームの時代に“絨毯(じゅうたん)のような乗り心地”と称されたアワーグラス型のシートステーを受け継ぎつつ、チューブを横方向に広げた角形に近い断面にして、ねじれ剛性と振動吸収性をバランスしている。
キャノンデールは前衛的なデザインのモデルを数多く発表してきたメーカーとして知られるが、スーパーシックスシリーズは冒頭にも述べた通り極めてオーソドックスなシルエットだ。フォークはストレートブレードが多い中にあって、先端に向けて僅かにアールを描くトラディショナルな形状。ワンポイントファイブ径のコラム部でねじれ剛性を確保する一方、ブレード先端は路面からの入力に対してアクティブにすることで乗り心地を高める意図が見える。
そして、シートポストは従来型のセパレートタイプ。キャノンデールのプロダクトマーケティングのマレー・ウォッシュバーンによると「インテグラルシートポストは、サドル調整のしやすさを犠牲にする割には、得られる軽量化や振動吸収性のメリットが少ない。スーパーシックスはインテグラルシートポスト無しでも十分な軽さと快適性を実現している」とオーソドックスなシートポストを採用した理由を語る。インテグラルタイプやエアロ形状のシートポストが増えている昨今にあって、31.6㎜の丸タイプを使用するスーパーシックスは、ライダーやメカニックのことを第一に考えた実戦的な仕様だ。
また余談だが、開発陣はセッティングを出しやすいホリゾンタルフレームを理想としているが、選手から「シートポストを少しでも長くフレームから出した方が格好いい」との要望により、トップチューブの傾斜を僅かにしたスローピングフレームが採用されている。
プロチームであるリクイガス・キャノンデールのチームカラーが施され、一見するとフレームの外観は上位機種との違いを見いだすことができないスーパーシックス5だが、その走りはどれほどのパフォーマンスを秘めているのだろうか? 2人のテスターが検証する。
―インプレッション
「キャノンデールの世界観を身近に体験できる優れたモデル」
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)
スーパーシックスシリーズは、今回試乗したタイプのアルテグラ仕様完成車とハイモッドともに乗った経験があります。スーパーシックス5とハイモッドの違いは、レーシングカーで例えるなら、「同じマシンにウエイトハンディを乗せた状態」といった感じでしょうか。基本性能は共通で、どちらも非常に扱いやすいバイクに仕上げられています。
際立っているのは安定感です。最近のカーボンフォークはストレート形状が多く、クロモリ時代のような曲げタイプが少ないですが、スーパーシックスのブレード形状はエンド部分に向かってアールを描くオーソドックスなベンドタイプです。路面からの入力に対して、ブレードの先端が僅かにしなるような感覚で振動をしっかり吸収するので、これがハンドリングの安定感を与えてくれます。高速のダウンヒルでの安定感は抜群。ステアリングコラムもカーボン製なので、それも振動吸収性を高めてくれる1つの要因とも言えるでしょう。
フロントに対してリヤの振動吸収性も上手にバランスされるので、ギャップを越えた時にフレームの前後でバラバラの動きをしないのも安定感の良さに繋がっています。そして、ハンドリングについても、とてもナチュラル味付けなので入門者にも扱いやすいでしょう。
加速性能は上位機種と比べるとフレーム自体も200g程重く、パーツも重量のかさむ105グレードが装備されるので、その分だけ踏み出しはちょっとだるい感覚があります。特に上りを走ると重量を感じるのは仕方のないところ。しかし、平地をはじめスピードを乗せてしまえばタレは少ないので、軽快に走ることができます。
剛性面は上位機種と比べると少し柔らかです。特に緩急をつけるような走りだと柔らかさを若干感じます。ハイモッドも誰もが乗れる剛性だと思いますが、スーパーシックス5はさらに入門者でも無理なく乗れる剛性に調整されていると言えるでしょう。
アッセンブルパーツも以前はサードパーティ製のブレーキが装備されていたので不満もありましたが、現在はシマノ105なのでブレーキングの安心感は大幅に増しました。ただ、シュワルベのタイヤはちょっとスリッピーな感覚があり、ロードノイズも大きいのがウイークポイント。交換すれば相当に快適なライディングができるでしょう。
スーパーシックス5はいろいろな部分の性能が高く、それらが上手にまとめられているのでクセが無く、“こうした乗り方をしよう”と考えず自然に乗れるため、入門者にうってつけの存在です。CAAD10に105仕様もラインナップされていますが、スーパーシックス5の方が振動吸収性は高くてロングライドなどに適しています。基本性能が高いので、足回りをはじめパーツを交換しながら長く乗ることができる1台と言えます。グラフィックもかっこいいし、独自規格のBB30も搭載しているので、“ザ・キャノンデール”というテイストを最も身近に体験できるモデルではないでしょうか。
「トータルバランスに優れる理想的なエントリーカーボン」
吉本 司(バイクジャーナリスト)
おそらくトップメーカーのハイエンドモデルで最もプライスパフォーマンスに優れているモデルが、キャノンデールのスーパーシックス・ハイモッドだ。一昨年、現行モデルを試乗する機会を得たが、おそらく2011年もその座に揺らぎはない。なにしろ30万円を切るという思い切った価格設定だから。
そしてこのスーパーシックス5は、パーツこそシマノ・105のコンポを装備するが、フレームの外観は上位機種とほとんど見分けが付かず、ハイモッドのオーナーが嫉妬したくなるぐらいだ。フレームの金型、ジオメトリーがハイモッドと同じ。フレーム素材だけが異なるといえば、当然のことながらその走りは、上位機種の血統が受け継がれている。
最も魅力的なのは、その自然な走行感覚だろう。とにかく「クセがなくて乗りやすい」というひと言に尽きる。意識をしなくても最適なバランスをとれる位置で自然と乗ることができ、ハンドリングもナチュラル。
かといって、かったるさは無く、曲がりたい方向に重心を傾ければ車体がスッと反応する。余計なことに気を遣わずに走りに集中できるのだ。
絶妙な安定感は、前後の振動吸収性の高さも大きく貢献している。特にベンド加工されたフロントフォークは、大きな段差ではブレード先端の動きでバイクが弾かれることもなく、むしろスタビリティを上げてくれるし、細かな凹凸のある路面でも同様だ。
カーボン素材になってからというもの、フロントフォークは素材の振動減衰特性に頼ることでブレードは直線的な形状となり、ブレード先端を前後に動かずベンド型のフロントフォークは少なくなった。しかし、スーパーシックスシリーズに乗ると、ベンド形状はスタビリティや乗り心地の向上においてやはり大きな意味を持つことが分かる。もちろん、この形状と最新のカーボン技術によって最適化されているのは言うまでもないが、決してベンドフォークが古いモノではないことを、このシリーズは見事に語っている。
スーパーシックス5とハイモッドの違いは、重量もさることながらペダリングフィールにある。ハイモッドの方がチューブの肉厚が薄く、それでいて脚に固さを感じるため、出足での鋭さがある。スーパーシックス5の方がチューブの肉厚感というか、少々ウエットなフィーリングがある。したがって、アップダウンの多いコースや周回コースの折り返しで低速からの加速を強いられるシーンにおいて、上位機種を乗ったことがあるライダーにはその出足のよさが恋しくなるが、スーパーシックス5の性能だけを知るなら過不足はない。
ターゲットユーザーとなる初めてのカーボンフレームユーザーであれば、カーボンフレームの軽快さは十分に味わえる。そして、BB30を含めてこの部分は満足できるしっかり感があるのに、ペダリングフィールは脚の負担となるような固さはない。したがって、ペダルにしっかりトルクをかけながら回し続けられるので速度の維持性にも長けている。これはハイモッドでも特筆すべき性能の1つと言える。
とにかく、クセが無くて乗りやすい。そう書くと、没個性的に思え、ライディングが退屈に思えるかもしれないが、そうではない。ハイモッドのエッセンスを備え、BB30の効果を体感できるペダリングフィールは気持ちがいいし、キャノンデールらしい乗り心地の良さもある。廉価グレードながら、キャノンデール“らしさ”を持っているのがスーパーシックス5の素晴らしい点だ。
パーツアッセンブルも昨年モデルあたりから、廉価グレードのシートポストのデザインも良くなり、サドルもプロロゴの別注カラーが装備されるなど、完成車としてのトータルパッケージが、性能、スタイリング共にアップしているので、ポジションとサドルのフィッティングさえ合っていれば、購入後のカスタムに出費も少なくて済むだろう。
カーボンホイールか1400g程度の軽量アルミホイールを買い足せば、ロードレースやロングライドでかなり戦闘力の高いバイクになる。まさに性能のトップダウンの好例ともいえる車種であり、ホビーレースやロングライドに本格的に挑戦するライダーにとってぜひ購入リストに加えておきたい1台と言えるだろう。
キャノンデール スーパーシックス5 105
フレーム:スーパーシックスカーボンBB30
フォーク:スーパーシックスフルカーボン 1-1/8、1-1/2インチテーパーコラム アルミドロップエンド
サイズ:44、48、50、52、54、56、58、60(完成車)
カラー:エクスポーズドカーボン、チームレプリカ
ヘッドセット:スーパーシックス1.5ロアーベアリング
コンポーネント:シマノ・105
シートポスト:キャノンデール・C2 UDカーボン 31.6mm
価格:26万9000円
インプレライダーのプロフィール
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)
1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。
最近埼玉県所沢市北秋津に2店舗目となるOVER DO所沢店を開店した(日常勤務も所沢店)。
OVER-DOバイカーズサポート
吉本 司(バイクジャーナリスト)
71年生まれ。スポーツサイクル歴は25年。自転車専門誌の編集者を経てフリーランスの自転車ライターとなる。主にロードバイク関連の執筆が多いが、MTBから電動アシスト自転車まで幅広いジャンルのバイクに造詣が深い。これまで30台を上回るロードバイクを所有してきた。身長187センチ、体重71㎏。
ウェア協力:B・EMME(フォーチュン)
photo:Makoto.AYANO
text:Tsukasa.YOSHIMOTO
今回試乗する「スーパーシックス5」は、シリーズのボトムを受け持つモデル。外観は上位機種の“ハイモッド”タイプと区別がつかないものの、使用するカーボン素材が異なっている。上位機種はカーボン素材のグレードを高めてハイモッド化しているが、このモデルは弾性率を抑えて、軽さよりも耐久性を重視した仕様となる。
フレーム製法は前後の三角を別々に作り、最終的に両者をドッキングさせたいわゆる3ピース式。しかし、チューブを差し込んで前後を接着する形式ではなく、接合部にカーボンを巻き付けて一体化させている。これは接着式よりも手間のかかる製作方法だが、チューブの余分な重なり部分を減らしつつ、剛性や強度を高めるためだ。
フレーム形状は外径を上げたダウンチューブが目立つが、おとなしいシルエットと言えるだろう。とはいえ、トレンドにのっとりヘッドチューブの下ワンをワンポイントファイブ規格に設計したテーパードタイプを採用。「ディープラディアスヘッドチューブ」と呼ばれるヘッド部は、ヘッドベアリングを受ける部分全てをカーボンで成型することで軽量化される。さらに、ヘッドチューブ後方はエアロフィンにも似た成型を施すことで体積が大きく確保され、ヘッド部のねじれ剛性が高められている。
そして、BB部分は「ビートボックス」と呼ばれる形状。キャノンデールが提唱し、最新ロードバイクのトレンドである大口径BBシェルの「BB30」をベースに、BBシェル周辺をボリュームアップして最適なペダリングを演出するための剛性が追求されている。
ヘッドチューブからチェーンステーまでのラインを強化する一方、シートステーを細身に設計したことが、スーパーシックスのもう1つのポイントだ。アルミフレームの時代に“絨毯(じゅうたん)のような乗り心地”と称されたアワーグラス型のシートステーを受け継ぎつつ、チューブを横方向に広げた角形に近い断面にして、ねじれ剛性と振動吸収性をバランスしている。
キャノンデールは前衛的なデザインのモデルを数多く発表してきたメーカーとして知られるが、スーパーシックスシリーズは冒頭にも述べた通り極めてオーソドックスなシルエットだ。フォークはストレートブレードが多い中にあって、先端に向けて僅かにアールを描くトラディショナルな形状。ワンポイントファイブ径のコラム部でねじれ剛性を確保する一方、ブレード先端は路面からの入力に対してアクティブにすることで乗り心地を高める意図が見える。
そして、シートポストは従来型のセパレートタイプ。キャノンデールのプロダクトマーケティングのマレー・ウォッシュバーンによると「インテグラルシートポストは、サドル調整のしやすさを犠牲にする割には、得られる軽量化や振動吸収性のメリットが少ない。スーパーシックスはインテグラルシートポスト無しでも十分な軽さと快適性を実現している」とオーソドックスなシートポストを採用した理由を語る。インテグラルタイプやエアロ形状のシートポストが増えている昨今にあって、31.6㎜の丸タイプを使用するスーパーシックスは、ライダーやメカニックのことを第一に考えた実戦的な仕様だ。
また余談だが、開発陣はセッティングを出しやすいホリゾンタルフレームを理想としているが、選手から「シートポストを少しでも長くフレームから出した方が格好いい」との要望により、トップチューブの傾斜を僅かにしたスローピングフレームが採用されている。
プロチームであるリクイガス・キャノンデールのチームカラーが施され、一見するとフレームの外観は上位機種との違いを見いだすことができないスーパーシックス5だが、その走りはどれほどのパフォーマンスを秘めているのだろうか? 2人のテスターが検証する。
―インプレッション
「キャノンデールの世界観を身近に体験できる優れたモデル」
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)
スーパーシックスシリーズは、今回試乗したタイプのアルテグラ仕様完成車とハイモッドともに乗った経験があります。スーパーシックス5とハイモッドの違いは、レーシングカーで例えるなら、「同じマシンにウエイトハンディを乗せた状態」といった感じでしょうか。基本性能は共通で、どちらも非常に扱いやすいバイクに仕上げられています。
際立っているのは安定感です。最近のカーボンフォークはストレート形状が多く、クロモリ時代のような曲げタイプが少ないですが、スーパーシックスのブレード形状はエンド部分に向かってアールを描くオーソドックスなベンドタイプです。路面からの入力に対して、ブレードの先端が僅かにしなるような感覚で振動をしっかり吸収するので、これがハンドリングの安定感を与えてくれます。高速のダウンヒルでの安定感は抜群。ステアリングコラムもカーボン製なので、それも振動吸収性を高めてくれる1つの要因とも言えるでしょう。
フロントに対してリヤの振動吸収性も上手にバランスされるので、ギャップを越えた時にフレームの前後でバラバラの動きをしないのも安定感の良さに繋がっています。そして、ハンドリングについても、とてもナチュラル味付けなので入門者にも扱いやすいでしょう。
加速性能は上位機種と比べるとフレーム自体も200g程重く、パーツも重量のかさむ105グレードが装備されるので、その分だけ踏み出しはちょっとだるい感覚があります。特に上りを走ると重量を感じるのは仕方のないところ。しかし、平地をはじめスピードを乗せてしまえばタレは少ないので、軽快に走ることができます。
剛性面は上位機種と比べると少し柔らかです。特に緩急をつけるような走りだと柔らかさを若干感じます。ハイモッドも誰もが乗れる剛性だと思いますが、スーパーシックス5はさらに入門者でも無理なく乗れる剛性に調整されていると言えるでしょう。
アッセンブルパーツも以前はサードパーティ製のブレーキが装備されていたので不満もありましたが、現在はシマノ105なのでブレーキングの安心感は大幅に増しました。ただ、シュワルベのタイヤはちょっとスリッピーな感覚があり、ロードノイズも大きいのがウイークポイント。交換すれば相当に快適なライディングができるでしょう。
スーパーシックス5はいろいろな部分の性能が高く、それらが上手にまとめられているのでクセが無く、“こうした乗り方をしよう”と考えず自然に乗れるため、入門者にうってつけの存在です。CAAD10に105仕様もラインナップされていますが、スーパーシックス5の方が振動吸収性は高くてロングライドなどに適しています。基本性能が高いので、足回りをはじめパーツを交換しながら長く乗ることができる1台と言えます。グラフィックもかっこいいし、独自規格のBB30も搭載しているので、“ザ・キャノンデール”というテイストを最も身近に体験できるモデルではないでしょうか。
「トータルバランスに優れる理想的なエントリーカーボン」
吉本 司(バイクジャーナリスト)
おそらくトップメーカーのハイエンドモデルで最もプライスパフォーマンスに優れているモデルが、キャノンデールのスーパーシックス・ハイモッドだ。一昨年、現行モデルを試乗する機会を得たが、おそらく2011年もその座に揺らぎはない。なにしろ30万円を切るという思い切った価格設定だから。
そしてこのスーパーシックス5は、パーツこそシマノ・105のコンポを装備するが、フレームの外観は上位機種とほとんど見分けが付かず、ハイモッドのオーナーが嫉妬したくなるぐらいだ。フレームの金型、ジオメトリーがハイモッドと同じ。フレーム素材だけが異なるといえば、当然のことながらその走りは、上位機種の血統が受け継がれている。
最も魅力的なのは、その自然な走行感覚だろう。とにかく「クセがなくて乗りやすい」というひと言に尽きる。意識をしなくても最適なバランスをとれる位置で自然と乗ることができ、ハンドリングもナチュラル。
かといって、かったるさは無く、曲がりたい方向に重心を傾ければ車体がスッと反応する。余計なことに気を遣わずに走りに集中できるのだ。
絶妙な安定感は、前後の振動吸収性の高さも大きく貢献している。特にベンド加工されたフロントフォークは、大きな段差ではブレード先端の動きでバイクが弾かれることもなく、むしろスタビリティを上げてくれるし、細かな凹凸のある路面でも同様だ。
カーボン素材になってからというもの、フロントフォークは素材の振動減衰特性に頼ることでブレードは直線的な形状となり、ブレード先端を前後に動かずベンド型のフロントフォークは少なくなった。しかし、スーパーシックスシリーズに乗ると、ベンド形状はスタビリティや乗り心地の向上においてやはり大きな意味を持つことが分かる。もちろん、この形状と最新のカーボン技術によって最適化されているのは言うまでもないが、決してベンドフォークが古いモノではないことを、このシリーズは見事に語っている。
スーパーシックス5とハイモッドの違いは、重量もさることながらペダリングフィールにある。ハイモッドの方がチューブの肉厚が薄く、それでいて脚に固さを感じるため、出足での鋭さがある。スーパーシックス5の方がチューブの肉厚感というか、少々ウエットなフィーリングがある。したがって、アップダウンの多いコースや周回コースの折り返しで低速からの加速を強いられるシーンにおいて、上位機種を乗ったことがあるライダーにはその出足のよさが恋しくなるが、スーパーシックス5の性能だけを知るなら過不足はない。
ターゲットユーザーとなる初めてのカーボンフレームユーザーであれば、カーボンフレームの軽快さは十分に味わえる。そして、BB30を含めてこの部分は満足できるしっかり感があるのに、ペダリングフィールは脚の負担となるような固さはない。したがって、ペダルにしっかりトルクをかけながら回し続けられるので速度の維持性にも長けている。これはハイモッドでも特筆すべき性能の1つと言える。
とにかく、クセが無くて乗りやすい。そう書くと、没個性的に思え、ライディングが退屈に思えるかもしれないが、そうではない。ハイモッドのエッセンスを備え、BB30の効果を体感できるペダリングフィールは気持ちがいいし、キャノンデールらしい乗り心地の良さもある。廉価グレードながら、キャノンデール“らしさ”を持っているのがスーパーシックス5の素晴らしい点だ。
パーツアッセンブルも昨年モデルあたりから、廉価グレードのシートポストのデザインも良くなり、サドルもプロロゴの別注カラーが装備されるなど、完成車としてのトータルパッケージが、性能、スタイリング共にアップしているので、ポジションとサドルのフィッティングさえ合っていれば、購入後のカスタムに出費も少なくて済むだろう。
カーボンホイールか1400g程度の軽量アルミホイールを買い足せば、ロードレースやロングライドでかなり戦闘力の高いバイクになる。まさに性能のトップダウンの好例ともいえる車種であり、ホビーレースやロングライドに本格的に挑戦するライダーにとってぜひ購入リストに加えておきたい1台と言えるだろう。
キャノンデール スーパーシックス5 105
フレーム:スーパーシックスカーボンBB30
フォーク:スーパーシックスフルカーボン 1-1/8、1-1/2インチテーパーコラム アルミドロップエンド
サイズ:44、48、50、52、54、56、58、60(完成車)
カラー:エクスポーズドカーボン、チームレプリカ
ヘッドセット:スーパーシックス1.5ロアーベアリング
コンポーネント:シマノ・105
シートポスト:キャノンデール・C2 UDカーボン 31.6mm
価格:26万9000円
インプレライダーのプロフィール
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)
1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。
最近埼玉県所沢市北秋津に2店舗目となるOVER DO所沢店を開店した(日常勤務も所沢店)。
OVER-DOバイカーズサポート
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71年生まれ。スポーツサイクル歴は25年。自転車専門誌の編集者を経てフリーランスの自転車ライターとなる。主にロードバイク関連の執筆が多いが、MTBから電動アシスト自転車まで幅広いジャンルのバイクに造詣が深い。これまで30台を上回るロードバイクを所有してきた。身長187センチ、体重71㎏。
ウェア協力:B・EMME(フォーチュン)
photo:Makoto.AYANO
text:Tsukasa.YOSHIMOTO
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