最終個人TTでトップタイムを叩き出したマルティンが逆転総合優勝

2011年2月20日、ポルトガル南部のアルガルヴェ地方を舞台にしたヴォルタ・アン・アルガルヴェ（UCI2.1）が閉幕。最終個人タイムトライアルを制したトニ・マルティン（ドイツ、HTC・ハイロード）が逆転総合優勝に輝いた。注目のアルベルト・コンタドール（スペイン、サクソバンク・サンガード）は45秒遅れのステージ15位に終わった。

トップタイムを叩き出したトニ・マルティン（ドイツ、HTC・ハイロード） photo:www.voltaalgarve.comアルガルヴェを締めくくるのは、高低差100m弱の17.2kmコースで行なわれる個人タイムトライアル（以下個人TT）。このいわゆる「時間との闘い」が、僅差の総合争いに決着をつける。

前日の第4ステージを終えた時点で、総合首位はスティーブ・クミングス（イギリス、チームスカイ）。総合2位のコンタドールが6秒差、総合3位のマルティンが10秒差で続く展開。これまでの個人TT実績を見る限り、総合下位の選手たちに有利な展開であることは明らかだった。

ステージ15位に終わったアルベルト・コンタドール（スペイン、サクソバンク・サンガード） photo:www.voltaalgarve.com約半数の選手たちが走り終えた時点でトップに立ったのは、プロデビューしたばかりの22歳ジェシー・サージェント（ニュージーランド、レディオシャック）。昨年トラック世界選手権の個人追い抜きで銀メダル（4分18秒459）、団体追い抜きで銅メダル（3分58秒616）を獲得したスピードマンだ。

しかしサージェントのタイムも、総合17位リエーベ・ヴェストラ（オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM）によって22秒更新される。地元ポルトガルの期待を背負った昨年大会総合3位のティアゴ・マシャド（ポルトガル、レディオシャック）はヴェストラに21秒届かず。

リーダージャージのスティーブ・クミングス（イギリス、チームスカイ）はステージ26位 photo:www.voltaalgarve.com昨年ほぼ同じコースで行なわれた最終個人TTで優勝したルイスレオン・サンチェス（スペイン、ラボバンク）も思うようにタイムを伸ばせなかった。

ヴェストラのタイムを唯一破ったのは、総合3位につけていたマルティン。ドイツのナショナルチャンピオンジャージを着て走ったマルティンがヴェストラを5秒上回るトップタイムをマーク。総合2位のコンタドールは45秒遅れのステージ15位、リーダージャージを着て走ったクミングスは1分03秒遅れのステージ26位に終わり、マルティンの総合優勝が決定した。マルティンの平均スピードは49.417km/h。

逆転でアルガルヴェ総合優勝に輝いたトニ・マルティン（ドイツ、HTC・ハイロード） photo:www.voltaalgarve.comロード世界選手権タイムトライアルで過去2年連続で銅メダルに輝き、若手TTスペシャリストとして注目を集めるマルティンだが、近年はオールラウンダーとしての走りも目立つ。2009年にはパリ〜ニース山岳賞、ツール・ド・スイス総合2位に。昨年エネコツアーで総合優勝を飾っている。今後も中規模のステージレースを中心に、総合上位に絡む走りを見せることだろう。

HTC・ハイロードは若手のタジェイ・ヴァンガーデレン（アメリカ）をステージ6位に送り込むことし成功し、マルティンとヴァンガーデレンで総合ワンツーを果たした。ブライアン・ホルム監督はチーム公式サイトの中で「今朝、チーム全員でコースを一通りチェックしたんだ。マルティンだけは、万全を期すために、もう一度一人で試走していた。中間計測の時点で好タイムで、最後までそのペースを守った。タジェイ（ヴァンガーデレン）も良い走りをしたし、チームとしては大成功だ」と喜びを込めてマルティンらを賞賛した。

注目のコンタドールはステージ15位に終わり、表彰台圏外の総合4位にダウン。大会連覇は果たせなかったが、コンタドールは「自分は持てる力を全て出し切った。まだ調子が上がり切っていなかったんだ」と、楽観的に成績を受け止める。サクソバンク・サンガード公式サイトの中でコンタドールは「もっとトレーニングを積んで、実戦距離を伸ばさないとライバルたちに歯が立たない。マルティンは勝利に値する素晴らしい走りだった。」と語った。

レース展開はレース公式情報配信サイトjornalciclismo.comより。

ヴォルタ・アン・アルガルヴェ2011第5ステージ結果
1位　トニ・マルティン（ドイツ、HTC・ハイロード）　　　　　　　　　　　20'53"
2位　リエーベ・ヴェストラ（オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM）　　　　　　 +05"
3位　ティアゴ・マシャド（ポルトガル、レディオシャック）　　　　　　　　　+26"
4位　ジェシー・サージェント（ニュージーランド、レディオシャック）　　　　+27"
5位　アンドレアス・クレーデン（ドイツ、レディオシャック）　　　　　　　　+30"
6位　タジェイ・ヴァンガーデレン（アメリカ、HTC・ハイロード）
7位　ルイスレオン・サンチェス（スペイン、ラボバンク）
8位　セバスティアン・ロセレル（ベルギー、レディオシャック）　　　　　　　+31"
9位　トーマス・デヘント（ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM）　　　　　　　+39"
10位　シルヴァン・シャヴァネル（フランス、クイックステップ）　　　　　　+42"

個人総合成績
1位　トニ・マルティン（ドイツ、HTC・ハイロード）　　　　　　　　　　18h48'45"
2位　タジェイ・ヴァンガーデレン（アメリカ、HTC・ハイロード）　　　　　　　+32"
3位　リエーベ・ヴェストラ（オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM）　　　 　　　 +39"
4位　アルベルト・コンタドール（スペイン、サクソバンク・サンガード）　　　　+41"
5位　アンドレアス・クレーデン（ドイツ、レディオシャック）　　　　　 　　　+46"
6位　ティアゴ・マシャド（ポルトガル、レディオシャック）　　　　　　　 　　+47"
7位　スティーブ・クミングス（イギリス、チームスカイ）　　　　　　　　　 　+53"　
8位　レイン・ターラマエ（エストニア、コフィディス）　　　　　　　　　　　 +59"
9位　ルイスレオン・サンチェス（スペイン、ラボバンク）　　　　　　　　　+1'04"
10位　トーマス・デヘント（ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM）　　　　　 +1'05"

ポイント賞
タイラー・ファラー（アメリカ、ガーミン・サーヴェロ）

スプリント賞
セサル・フォンテ（ポルトガル、バルボット・エファペル）

山岳賞
リカルド・メストレ（ポルトガル、タヴィラ）

チーム総合成績
HTC・ハイロード

text:Kei Tsuji
photo:www.voltaalgarve.com