2011/01/12(水) - 14:06
ここ10年間でカーボンフレームは急速に台頭し、ハイグレードモデルはもちろん、入門モデルにまでカーボンが使われるようになってきた。その背景のひとつにカーボン専業ブランドの登場が挙げられる。専業とすることで技術を一本化し、ラインナップの拡充を図ることを惜しまなかったブランドがしのぎを削りあった結果、求めやすい価格も実現。市場におけるカーボンフレームの普及に大きく貢献したのがその理由だ。
そんなカーボン専業ブランドのひとつに『クォータ』がある。クォータはイタリアのシンテマ社が持つカーボンバイクブランド。非常に高いカーボン加工技術を有し、創業が2001年からという若いブランドにもかかわらず、近代のカーボンフレーム開発に数々のインパクトを与え、今日では押しも押されぬトップブランドに成長した。日本でも今中大介氏のインターマックス社を通じて早期から紹介されてきたので、その良さを知る人も多いだろう。
今回のテストバイクはそのクォータが送りだすユーティリティレーシングモデル、KEBEL(ケベル)だ。前モデルからフルモデルチェンジとなったが「どんな走行シーンでも高性能を発揮する」という従来のコンセプトはそのままに、性能の底上げを図っている。
一番のトピックは、各メディアによるインプレでも好評を博したクォータのフラグシップモデル「KOM」のスケルトンを採用したことだろう。
「KOM」は“King Of Mountain”(山岳王)の頭文字を拝したモデルだが、オールラウンドでハイパフォーマンスを発揮する希有なモデルだ。バイク性能の基礎となるそのスケルトンを採用したとあってはどうしても期待は高まる。
ほかの変更点として、下部が1-1/2インチ径に拡大された上下異径ヘッドチューブの採用。そしてエアロダイナミクス向上を図り、ワイヤーを内蔵方式に変更している点などだ。
もともと『ケベル』は万能でハイコストパフォーマンスなレースバイクだった。宇都宮ブリッツェンに供給する際に、今中氏が「あらゆるレースに対応できる性能があるから」という理由でKEBELを推したのも納得だ。それだけに今回の大きなモデルチェンジは気になるところだ。それではインプレッションに入ろう。
―インプレッション
「まさにイタリアンな身のこなしを感じるロードレーサー」
流郷克也(ユーキャン)
まず印象的に感じたのがそのハンドリングの「小気味良さ」だ。
混み合った集団を縫って走る。どんな状況だろうと狙った通りのラインを走る。急なライン変更を強いられる...ロードレースで必要になるそういったハンドリング性能を、このバイクは高いレベルで持っている。
また、平地、上り、下りなどあらゆる走行シーンでしっかりパフォーマンスを発揮してくれるうえに、不満や嫌なクセも見あたらない。
特に下りは思い通りのラインを気持ちよく走ってくれる。しかし、レーシングバイクとして運動性能がこれだけハイレベルで整っていると、もしかしたら下りで出した速度を平地でも出せるのではないかという気にさえさせてくれる。宇都宮ブリッツェンに支給されるバイクだけあって、そう思わせてくれるだけのポテンシャルを感じる。
さらに細部の感想を挙げていこう。クイックでレーシーなハンドリングを見せるだけあって、ヘッドやフォークも含めてフロント周りの剛性は高い。下りでの快適なコントロール性能は、この高剛性あってのものだろう。
また、さまざまなペダリングで試してみたが、ハンガー周辺の剛性も高い。しかし、いわゆる“おつり”がくるような過剰な硬さは感じない。レースを前提に、必要な箇所に必要なだけ剛性が割り振ってある。
またボリューム感のある見た目からは路面の凹凸を拾って跳ねるようなバイクかと思ったが、そうではなかった。特性としてはダンシングよりも高回転でクランクを回したほうがバイクがよく伸びる。
密集した大集団で高速で進む。おまけに勝負所で道は細く曲がりくねっている...イタリアのレースでよく見るそんなシチュエーションでも難なくこなせる造りだ。
問題となりそうなのはシートポストが独自の形状であることと、サイズ展開がやや少ないことくらいだろう。
本格的なレースをこなせるバイクとして、質も価格も十分満足できる仕上がりだ。レーシングバイクとして“すべてのシーンで高性能を発揮する”というクォータの謳い文句どおりと言って差し支えないだろう。レース機材としてのフレームセットを探している人なら、選択肢のひとつにぜひいれてほしい1本だ。
「クセがなく長くつきあえるレーシングバイク」
若生正剛(なるしまフレンド)
“潔い”。そう感じるほどレーシーなバイクだ。
ボリューム感たっぷりのフレームなので、重めのビッグギアを思い切り踏み込んで進ませるタイプのバイクかと思ったが、回転数を上げてペダリングをするほうがよく伸びて進んでくれる。上り、下り、平地とすべてのシチュエーションで嫌なクセも感じさせない。
また、下りにおける高いコントロール性能は印象深い。しかしそれ以上に、上りを高回転でリズムよくペダリングすることで得られるその推進力は素晴らしい。これらを活かしてヒルクライムに特化させるのも面白いかもしれない。
しかしフィールドを限定しなくても、クセがなくオールラウンドで活躍できるフレーム+フォークになっているので、KEBELを手に入れたユーザーが自分の使いたいレースに向けてパーツや装備を選択するカスタマイズから楽しめるだろう。
このフレームセットはフロント周りやBB周辺のしっかりした剛性感を含めて、どんな動きにも対応してくれる素性の良さがある。フレームとフォークが別々でなくセットでうまく機能している。この一体感ある全体的なバランスの良さはクォータの高い技術力を感じるところだ。
このようにKEBELは、操作性・剛性感・ポジションなど、どこからどう見てもレースを前提としたつくりになっている。特にそのシャープでクイックなハンドリングは、レースで大きな武器になると思えるほどの高い操作性を発揮する。ツーリングなどの用途をメインに考えている初心者ユーザーなどにはハンドルがクイック過ぎて向かないものの、ロードレースの機材としては秀逸のデキだ。
その上、ワイヤーが内蔵になっていたり、6角形のチューブ加工が施されていたりと、機能性はもちろんだがルックスもいい。あくまで消耗品としてのレース機材という面では優秀なフレームセットだが、所有欲をそそる部分もきちんと持っている。自分のレーススタイルに合わせやすいフレームセットなので、レースをする人全般に自信を持ってお勧めできるバイクだと言える。
クォータ KEBEL
フレーム カーボンモノコック
カラー ナチュラル、ホワイト/レッド
サイズ XS(480)、S(500)、M(530)、L(550)
フレーム重量 1,110g
フォーク カーボンモノコック 軽量カーボンフォーク トップ:1-1/8″ ボトム:1-1/2″
希望小売価格(税込み) 210,000円(フレームセット)
インプレライダーのプロフィール
流郷克哉(ユーキャン)
東京、神奈川、静岡、山梨で展開するサイクルショップ「YOU CAN(ユーキャン)」の多摩境店店長。選手時代は脱サラ後、複数チームを経て30歳で日本鋪道と契約。生涯成績は国内でジャパンカップアマチュア部門優勝、ツールド東北ステージ優勝など。フランスに単身渡仏後、1シーズンで60弱のロードレースに参戦。エリート4勝、ほか1勝を挙げるほか、10位以内フィニッシュが20レースを越えた。2004年に引退し、現在ユーキャン多摩境店にて店長をしながら高校生ら若手育成に努めている。
YOU CAN
若生正剛(なるしまフレンド)
自転車店「なるしまフレンド」店員。昭和第一学園在籍時に競技を始める。トラック競技で2年生時に初めてインターハイ出場を果たした。同じく3年生時は選抜、インターハイと大きな大会を連続出場。卒業後、自転車の楽しさを伝えたいと思い立ち、なるしまフレンドに入社。現在3年目を迎える。プロ選手としての経験が無いものの、ショップ店員としてはそれを逆手に一般自転車乗りの感覚を共有できることを強みにして接客している。
なるしまフレンド
ウェア協力:B・EMME(フォーチュン)
photo:Makoto.Ayano
text:Kiichi.Gotoda
そんなカーボン専業ブランドのひとつに『クォータ』がある。クォータはイタリアのシンテマ社が持つカーボンバイクブランド。非常に高いカーボン加工技術を有し、創業が2001年からという若いブランドにもかかわらず、近代のカーボンフレーム開発に数々のインパクトを与え、今日では押しも押されぬトップブランドに成長した。日本でも今中大介氏のインターマックス社を通じて早期から紹介されてきたので、その良さを知る人も多いだろう。
今回のテストバイクはそのクォータが送りだすユーティリティレーシングモデル、KEBEL(ケベル)だ。前モデルからフルモデルチェンジとなったが「どんな走行シーンでも高性能を発揮する」という従来のコンセプトはそのままに、性能の底上げを図っている。
一番のトピックは、各メディアによるインプレでも好評を博したクォータのフラグシップモデル「KOM」のスケルトンを採用したことだろう。
「KOM」は“King Of Mountain”(山岳王)の頭文字を拝したモデルだが、オールラウンドでハイパフォーマンスを発揮する希有なモデルだ。バイク性能の基礎となるそのスケルトンを採用したとあってはどうしても期待は高まる。
ほかの変更点として、下部が1-1/2インチ径に拡大された上下異径ヘッドチューブの採用。そしてエアロダイナミクス向上を図り、ワイヤーを内蔵方式に変更している点などだ。
もともと『ケベル』は万能でハイコストパフォーマンスなレースバイクだった。宇都宮ブリッツェンに供給する際に、今中氏が「あらゆるレースに対応できる性能があるから」という理由でKEBELを推したのも納得だ。それだけに今回の大きなモデルチェンジは気になるところだ。それではインプレッションに入ろう。
―インプレッション
「まさにイタリアンな身のこなしを感じるロードレーサー」
流郷克也(ユーキャン)
まず印象的に感じたのがそのハンドリングの「小気味良さ」だ。
混み合った集団を縫って走る。どんな状況だろうと狙った通りのラインを走る。急なライン変更を強いられる...ロードレースで必要になるそういったハンドリング性能を、このバイクは高いレベルで持っている。
また、平地、上り、下りなどあらゆる走行シーンでしっかりパフォーマンスを発揮してくれるうえに、不満や嫌なクセも見あたらない。
特に下りは思い通りのラインを気持ちよく走ってくれる。しかし、レーシングバイクとして運動性能がこれだけハイレベルで整っていると、もしかしたら下りで出した速度を平地でも出せるのではないかという気にさえさせてくれる。宇都宮ブリッツェンに支給されるバイクだけあって、そう思わせてくれるだけのポテンシャルを感じる。
さらに細部の感想を挙げていこう。クイックでレーシーなハンドリングを見せるだけあって、ヘッドやフォークも含めてフロント周りの剛性は高い。下りでの快適なコントロール性能は、この高剛性あってのものだろう。
また、さまざまなペダリングで試してみたが、ハンガー周辺の剛性も高い。しかし、いわゆる“おつり”がくるような過剰な硬さは感じない。レースを前提に、必要な箇所に必要なだけ剛性が割り振ってある。
またボリューム感のある見た目からは路面の凹凸を拾って跳ねるようなバイクかと思ったが、そうではなかった。特性としてはダンシングよりも高回転でクランクを回したほうがバイクがよく伸びる。
密集した大集団で高速で進む。おまけに勝負所で道は細く曲がりくねっている...イタリアのレースでよく見るそんなシチュエーションでも難なくこなせる造りだ。
問題となりそうなのはシートポストが独自の形状であることと、サイズ展開がやや少ないことくらいだろう。
本格的なレースをこなせるバイクとして、質も価格も十分満足できる仕上がりだ。レーシングバイクとして“すべてのシーンで高性能を発揮する”というクォータの謳い文句どおりと言って差し支えないだろう。レース機材としてのフレームセットを探している人なら、選択肢のひとつにぜひいれてほしい1本だ。
「クセがなく長くつきあえるレーシングバイク」
若生正剛(なるしまフレンド)
“潔い”。そう感じるほどレーシーなバイクだ。
ボリューム感たっぷりのフレームなので、重めのビッグギアを思い切り踏み込んで進ませるタイプのバイクかと思ったが、回転数を上げてペダリングをするほうがよく伸びて進んでくれる。上り、下り、平地とすべてのシチュエーションで嫌なクセも感じさせない。
また、下りにおける高いコントロール性能は印象深い。しかしそれ以上に、上りを高回転でリズムよくペダリングすることで得られるその推進力は素晴らしい。これらを活かしてヒルクライムに特化させるのも面白いかもしれない。
しかしフィールドを限定しなくても、クセがなくオールラウンドで活躍できるフレーム+フォークになっているので、KEBELを手に入れたユーザーが自分の使いたいレースに向けてパーツや装備を選択するカスタマイズから楽しめるだろう。
このフレームセットはフロント周りやBB周辺のしっかりした剛性感を含めて、どんな動きにも対応してくれる素性の良さがある。フレームとフォークが別々でなくセットでうまく機能している。この一体感ある全体的なバランスの良さはクォータの高い技術力を感じるところだ。
このようにKEBELは、操作性・剛性感・ポジションなど、どこからどう見てもレースを前提としたつくりになっている。特にそのシャープでクイックなハンドリングは、レースで大きな武器になると思えるほどの高い操作性を発揮する。ツーリングなどの用途をメインに考えている初心者ユーザーなどにはハンドルがクイック過ぎて向かないものの、ロードレースの機材としては秀逸のデキだ。
その上、ワイヤーが内蔵になっていたり、6角形のチューブ加工が施されていたりと、機能性はもちろんだがルックスもいい。あくまで消耗品としてのレース機材という面では優秀なフレームセットだが、所有欲をそそる部分もきちんと持っている。自分のレーススタイルに合わせやすいフレームセットなので、レースをする人全般に自信を持ってお勧めできるバイクだと言える。
クォータ KEBEL
フレーム カーボンモノコック
カラー ナチュラル、ホワイト/レッド
サイズ XS(480)、S(500)、M(530)、L(550)
フレーム重量 1,110g
フォーク カーボンモノコック 軽量カーボンフォーク トップ:1-1/8″ ボトム:1-1/2″
希望小売価格(税込み) 210,000円(フレームセット)
インプレライダーのプロフィール
流郷克哉(ユーキャン)
東京、神奈川、静岡、山梨で展開するサイクルショップ「YOU CAN(ユーキャン)」の多摩境店店長。選手時代は脱サラ後、複数チームを経て30歳で日本鋪道と契約。生涯成績は国内でジャパンカップアマチュア部門優勝、ツールド東北ステージ優勝など。フランスに単身渡仏後、1シーズンで60弱のロードレースに参戦。エリート4勝、ほか1勝を挙げるほか、10位以内フィニッシュが20レースを越えた。2004年に引退し、現在ユーキャン多摩境店にて店長をしながら高校生ら若手育成に努めている。
YOU CAN
若生正剛(なるしまフレンド)
自転車店「なるしまフレンド」店員。昭和第一学園在籍時に競技を始める。トラック競技で2年生時に初めてインターハイ出場を果たした。同じく3年生時は選抜、インターハイと大きな大会を連続出場。卒業後、自転車の楽しさを伝えたいと思い立ち、なるしまフレンドに入社。現在3年目を迎える。プロ選手としての経験が無いものの、ショップ店員としてはそれを逆手に一般自転車乗りの感覚を共有できることを強みにして接客している。
なるしまフレンド
ウェア協力:B・EMME(フォーチュン)
photo:Makoto.Ayano
text:Kiichi.Gotoda
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