2010年7月31日、スペイン・バスク地方において第30回クラシカ・サンセバスティアン(UCIプロツアー)が開催され、終盤の上りで飛び出した3名によるスプリント勝負でルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)が勝利。スペイン勢が3年連続で優勝を飾った。

ビスケー湾の真珠と呼ばれるサンセバスティアンをスタートビスケー湾の真珠と呼ばれるサンセバスティアンをスタート photo:Cor Vosレースの舞台となるサン・セバスティアンは、ビスケー湾に面した港湾都市。バスク語ではドノスティアと呼ばれ、フランス国境から僅か15kmしか離れていないことから、国内外から多数の観光客が集まるバスク地方随一のリゾート地として知られる。

レースは「クラシカ(クラシック)」の名を冠しているが、今年で開催30回目。山がちなバスク地方の内陸部を駆け抜ける234kmはアップダウンの連続で、1級山岳ハイスキベル峠(平均勾配5.8%・登坂距離7.8km)と2級山岳アルカレ峠(平均勾配6.3%・登坂距離2.7km)が大会の名物だ。

ビスケー湾の真珠と呼ばれるサンセバスティアンをスタートビスケー湾の真珠と呼ばれるサンセバスティアンをスタート photo:clasica-san-sebastian.diariovasco.com今年からこの2つの上りを2回ずつ通過する。最後のアルカレ峠はゴールの15km手前であり、上りでアタックを成功させた数名がゴールまで逃げ切るのが定石だ。

1週間前に閉幕したツール・ド・フランスで活躍した選手がそのままのコンディションで出場するのが例年のパターン。今年も総合2位アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)や総合3位デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)、総合4位サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)らが顔を揃えた。

バスクファンが詰めかけた上りを進むバスクファンが詰めかけた上りを進む photo:Cor Vos昨年は雨に見舞われたが、今年は熱い太陽がサンセバスティアンを照らした。レースは序盤から2006年大会覇者のシャビエル・フロレンシオ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)ら3名がエスケープ。このトリオは一時的に8分のリードを得た。

しかし地元バスクのエウスカルテルを中心とした集団コントロールによってタイム差は縮小。1回目のハイスキベル峠に差し掛かると、メイン集団から2007年大会2位のフアンマヌエル・ガラーテ(スペイン、ラボバンク)、ホセイバン・グティエレス(スペイン、ケースデパーニュ)、ゴルカ・ベルドゥーゴ(スペイン、エウスカルテル)の3名が飛び出し、続くアルカレ峠までにフロレンシオらを抜き去って行く。

1回目のハイスキベル峠の上りで集団から飛び出したフアンマヌエル・ガラーテ(スペイン、ラボバンク)やホセイバン・グティエレス(スペイン、ケースデパーニュ)1回目のハイスキベル峠の上りで集団から飛び出したフアンマヌエル・ガラーテ(スペイン、ラボバンク)やホセイバン・グティエレス(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Cor Vos最後のハイスキベル峠とアルカレ峠を前に、ガラーテ、グティエレス、ベルドゥーゴをメイン集団が追う展開。ハイスキベル峠の上り始めでのアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)のアタックを皮切りに、激しいアタック合戦が始まった。

ジロ・デ・イタリア新人賞のリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)やサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が果敢にペースを上げ、それまで逃げていたガラーテらを飲み込んで行く。

2回目のハイスキベル峠で先頭グループを形成するホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ら2回目のハイスキベル峠で先頭グループを形成するホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ら photo:Cor Vosサンチェスのペースアップにヴィノクロフ、カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が合流。地元バスクチーム所属の北京五輪金メダリストの活躍に沿道のバスクファンは沸いた。

追走グループを形成したロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)やライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)らは10秒遅れ。この追走グループは頂上まで1.5kmを残して何とか先頭5名をキャッチ。すると鋭いカウンターアタックでLLサンチェスが飛び出した。

牽制しながらラスト1kmへ向かうルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)とアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)牽制しながらラスト1kmへ向かうルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)とアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) photo:clasica-san-sebastian.diariovasco.comハイペースで上りを突き進んだLLサンチェスに対し、慌ててヴィノクロフとサストレが追走。ハイスキベル峠の頂上通過後にヴィノクロフとサストレはLLサンチェスに合流し、3名で先頭グループを形成して最後のアルカレ峠に挑んだ。

先頭3名は25秒のリードを築いてアルカレ峠を通過。ゴール地点サンセバスティアンに向かって、海を横目に下りを進む。やがてラスト4kmの緩い上りでヴィノクロフがアタックを仕掛け、これにLLサンチェスだけが合流し、サストレは脱落。しかしヴィノクロフとLLサンチェスは牽制状態に陥り、ラスト1kmでサストレが復帰する。

3名でのスプリントを制したルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)3名でのスプリントを制したルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Cor Vos最後は3名によるスプリント勝負に持ち込まれ、先行し続けたヴィノクロフをラスト150mで追い抜いたLLサンチェスが先着。ヴィノクロフが2位、サストレが3位の座を射止めた。

これまでパリ〜ニースやツアー・ダウンアンダーで総合優勝を飾り、ツール・ド・フランスでもステージ2勝の経験を持つLLサンチェスだが、これがプロツアークラスのワンデークラシック初制覇。直前のツールは自身最高の総合11位でフィニッシュしていた。

表彰台、左から2位アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)、優勝ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)、3位カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)表彰台、左から2位アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)、優勝ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)、3位カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) photo:Cor Vos「今シーズンここまで思うような結果を残せていなかったけど、ツールの闘いで調子が上がっていたんだ。厳しくて長いコースが名物のこんな重要なレースで勝てて嬉しい。(ハイスキベルとアルカレを2回通過する)新しいコースの採用によってより厳しいレースに変貌した。今年のレースは、2回目のハイスキベルで決まったと思う。最後はヴィノに食らいつくのに必死だったよ。これは残りのシーズンに向けてのモチヴェーションに繋がる勝利だ(レース公式サイト)」

LLサンチェスが所属するケースデパーニュは今シーズン限りでのスポンサー離脱が決まっている。今回の勝利が新スポンサー獲得に向けて良いアピールになったことは間違いない。

スプリントで敗れて2位に入ったヴィノクロフはレース公式サイトの中で「2位は残念な結果だが、身体的にも精神的にもまだ闘える力が残っていることを証明出来た。ツール・ド・フランスの疲れが残っているが、まだチームリーダーとして闘えることを実感したよ」とコメント。サンセバスティアンで初めて表彰台に上ったサストレは「今シーズンは運に見放されていたので、この表彰台に大きな喜びを感じている。チームの働きも良かったし、今日は脚が良く回った。とても満足だ」と語っている。今年ジロとツールを完走したサストレは、ブエルタ・ア・エスパーニャにも出場予定だ。

レース内容や選手コメントはレース公式サイト、ならびにストリーミング映像より。


クラシカ・サンセバスティアン2010結果
1位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)5h47'13"
2位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
3位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)
4位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック)+34"
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+37"
6位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
8位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
9位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
10位 リッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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