開幕を2日後に控えた7月2日、バルセロナのサン・パウ病院で有力選手たちの記者会見が行われた。鋭い言葉で場を締めたエヴェネプール、穏やかに変化を語ったヴィンゲゴー、そして感謝の言葉から始めたポガチャル。ツール開幕を目前に控えた3人の表情と言葉をお届けする。

サン・パウ病院の一室で行われた記者会見 photo:Sotaro.Arakawa
開幕を2日後に控えた7月2日、有力選手が招かれた記者会見の舞台は、現在は文化施設などとして使われているサン・パウ病院だった。中に入ると病院だった面影は薄く、美術館のような建物の一室に、各国のジャーナリストやカメラマンが詰めかけ、最後尾にはビデオクルーがずらりと並んだ。
まず入ってきたのは、今大会ダブルエース体制で総合上位を狙うレムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ)の2人だ。記者からの問いかけに対し、淡々と言葉を重ねるリポヴィッツとは対照的に、エヴェネプールは場の空気を一気に締めた。似通った質問が続く状況にやや辟易していたのか、冷ややかというよりも皮肉を効かせ、時折笑みを浮かべながら痛快なほど切れ味鋭く答えていく。

フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ)とレムコ・エヴェネプール(ベルギー) photo:Sotaro.Arakawa
具体例を挙げると、「対照的な2人(エヴェネプールとリポヴィッツ)はお互いから何を学ぶことができるのか」という記者の質問に対し、エヴェネプールは「僕は僕であり続ける。もし君が周りにいるジャーナリストから何を学べるか?と問われるようなものだ。まるで『君は悪いジャーナリスト』だと言われているように感じるだろう?」と回答。
エヴェネプールは続ける。「僕ら2人には異なる個性があり、それぞれの戦い方をするのみだ。僕は僕であり続け、変わる必要はないと思う。おそらくその考えは、リポヴィッツも同じこと。とてもおかしな質問だと思うよ」と、切れ味鋭く切り返した。
発言のなかで注目を集めたのは「春のクラシックシリーズ以降、ツールを見据えて4kg近く体重を絞った」という事実。その背景には、長年ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)のパフォーマンスコーチを務めていたティム・ヘームスケルク氏の存在がある。ヘームスケルク氏は今年5月からレッドブルのコーチに就任し、エヴェネプールの指導を開始。「全く異なるアプローチだった」と語る新体制の下で、エヴェネプールはあえて4月下旬以降は調整レースに出ず、スペインのシエラネバダでの高地トレーニングと試走を集中的に行ってきた。

記者会見後も取材に応じていたエヴェネプール photo:Sotaro.Arakawa
そして最後に、「新しいアプローチが正しかったかどうかは、結果が答えとなるだろう」と、エヴェネプールらしい強気の言葉を残し、その後のチームプレゼンテーションへと向かっていった。
エヴェネプールが作り出した緊張感の反動もあったのか、次にやってきたヴィンゲゴーの記者会見は、終始和やかに進んだ。

1人で登場したヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:Sotaro.Arakawa
今回が自身初となるジロとの連戦となるヴィンゲゴー。「ジロに出場した選手たちを軽んじるつもりはないが、ジロで全力を出し尽くす必要がなかったのは事実。そのためジロ終了後も、完全に疲弊しきった状態ではなく、回復も早かった」とコメント。さらに昨年と比べても「調子はよく、より強くなっている。それに精神的な状態も良いよ」と笑顔を見せた。
しかし、今大会は過去2度の総合優勝を支えてくれたワウト・ファンアールト(ベルギー)が不在。ヴィンゲゴーはそれについて「明らかに大きな痛手だ」と答え、「まず土曜(チームタイムトライアル)はもちろん、ツールを通しても大切な存在だった」とその不在を惜しんだ。

終始和やかな雰囲気で進んだヴィンゲゴーの記者会見 photo:Sotaro.Arakawa
そして質問は先のコーチ、ヘームスケルク氏について。「コーチの変更はやや突然のことだった。彼に8年間指導してもらい、本当に感謝している。チームを離れた彼の決断を尊重する。新しいコーチがつき、トレーニング面では大きな変化はないが、過去5年間続けていたツールに向けたスケジュールを大きく変えた。同じことの繰り返しではモチベーションが湧かなかったからで、変化が必要だと思った。だからこそ、ジロ出場を決めたんだ」と。
そして最後に、今年のツールで5勝クラブ入りがかかる、世界王者タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が登場した。その横には初出場の若手で、ゼッケン2をつけるイサーク・デルトロ(メキシコ)の姿も。特に印象的だったのは、最初に手を挙げ、質問した記者に対し「まずはこの場に来てくれてありがとう」と話し始めたことだ。

デルトロと共に記者会見に出席したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:Sotaro.Arakawa
その後、質問は6月のレースで落車し、顎を骨折し療養中のパートナー、ウルシュカ・ジガート(スロベニア、AGインシュランス・スーダル)の状態や、嵐の被害を受けた故郷スロベニアのコメンダに10万ユーロを寄付したことへと及んだ。
昨年との大きな違いは、ポガチャルがここまでわずか16日間しかレースを走っていないこと。しかしポガチャルはそんな指摘を「でもトレーニングでは距離を積んでいる」とさらりと受け流す。また今回、過去最強と呼ばれるチームメイトについて問われ、「ここ数年、僕らは毎年最高のチームで臨んでいる。もちろん時には問題が起こり、怪我人を抱えることもある。それがチーム力の低下に見られることもある」と、完璧に近い答えを返していた。
会見の最後に「隣にいるイサーク(デルトロ)に願う結果は?」と問われ、「ツール・ド・フランスの総合優勝かな」と即答し、会見場を後にした。
text&photo:Sotaro.Arakawa

開幕を2日後に控えた7月2日、有力選手が招かれた記者会見の舞台は、現在は文化施設などとして使われているサン・パウ病院だった。中に入ると病院だった面影は薄く、美術館のような建物の一室に、各国のジャーナリストやカメラマンが詰めかけ、最後尾にはビデオクルーがずらりと並んだ。
まず入ってきたのは、今大会ダブルエース体制で総合上位を狙うレムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ)の2人だ。記者からの問いかけに対し、淡々と言葉を重ねるリポヴィッツとは対照的に、エヴェネプールは場の空気を一気に締めた。似通った質問が続く状況にやや辟易していたのか、冷ややかというよりも皮肉を効かせ、時折笑みを浮かべながら痛快なほど切れ味鋭く答えていく。

具体例を挙げると、「対照的な2人(エヴェネプールとリポヴィッツ)はお互いから何を学ぶことができるのか」という記者の質問に対し、エヴェネプールは「僕は僕であり続ける。もし君が周りにいるジャーナリストから何を学べるか?と問われるようなものだ。まるで『君は悪いジャーナリスト』だと言われているように感じるだろう?」と回答。
エヴェネプールは続ける。「僕ら2人には異なる個性があり、それぞれの戦い方をするのみだ。僕は僕であり続け、変わる必要はないと思う。おそらくその考えは、リポヴィッツも同じこと。とてもおかしな質問だと思うよ」と、切れ味鋭く切り返した。
発言のなかで注目を集めたのは「春のクラシックシリーズ以降、ツールを見据えて4kg近く体重を絞った」という事実。その背景には、長年ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)のパフォーマンスコーチを務めていたティム・ヘームスケルク氏の存在がある。ヘームスケルク氏は今年5月からレッドブルのコーチに就任し、エヴェネプールの指導を開始。「全く異なるアプローチだった」と語る新体制の下で、エヴェネプールはあえて4月下旬以降は調整レースに出ず、スペインのシエラネバダでの高地トレーニングと試走を集中的に行ってきた。

そして最後に、「新しいアプローチが正しかったかどうかは、結果が答えとなるだろう」と、エヴェネプールらしい強気の言葉を残し、その後のチームプレゼンテーションへと向かっていった。
エヴェネプールが作り出した緊張感の反動もあったのか、次にやってきたヴィンゲゴーの記者会見は、終始和やかに進んだ。

今回が自身初となるジロとの連戦となるヴィンゲゴー。「ジロに出場した選手たちを軽んじるつもりはないが、ジロで全力を出し尽くす必要がなかったのは事実。そのためジロ終了後も、完全に疲弊しきった状態ではなく、回復も早かった」とコメント。さらに昨年と比べても「調子はよく、より強くなっている。それに精神的な状態も良いよ」と笑顔を見せた。
しかし、今大会は過去2度の総合優勝を支えてくれたワウト・ファンアールト(ベルギー)が不在。ヴィンゲゴーはそれについて「明らかに大きな痛手だ」と答え、「まず土曜(チームタイムトライアル)はもちろん、ツールを通しても大切な存在だった」とその不在を惜しんだ。

そして質問は先のコーチ、ヘームスケルク氏について。「コーチの変更はやや突然のことだった。彼に8年間指導してもらい、本当に感謝している。チームを離れた彼の決断を尊重する。新しいコーチがつき、トレーニング面では大きな変化はないが、過去5年間続けていたツールに向けたスケジュールを大きく変えた。同じことの繰り返しではモチベーションが湧かなかったからで、変化が必要だと思った。だからこそ、ジロ出場を決めたんだ」と。
そして最後に、今年のツールで5勝クラブ入りがかかる、世界王者タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が登場した。その横には初出場の若手で、ゼッケン2をつけるイサーク・デルトロ(メキシコ)の姿も。特に印象的だったのは、最初に手を挙げ、質問した記者に対し「まずはこの場に来てくれてありがとう」と話し始めたことだ。

その後、質問は6月のレースで落車し、顎を骨折し療養中のパートナー、ウルシュカ・ジガート(スロベニア、AGインシュランス・スーダル)の状態や、嵐の被害を受けた故郷スロベニアのコメンダに10万ユーロを寄付したことへと及んだ。
昨年との大きな違いは、ポガチャルがここまでわずか16日間しかレースを走っていないこと。しかしポガチャルはそんな指摘を「でもトレーニングでは距離を積んでいる」とさらりと受け流す。また今回、過去最強と呼ばれるチームメイトについて問われ、「ここ数年、僕らは毎年最高のチームで臨んでいる。もちろん時には問題が起こり、怪我人を抱えることもある。それがチーム力の低下に見られることもある」と、完璧に近い答えを返していた。
会見の最後に「隣にいるイサーク(デルトロ)に願う結果は?」と問われ、「ツール・ド・フランスの総合優勝かな」と即答し、会見場を後にした。
text&photo:Sotaro.Arakawa