世界王者ポガチャルが今シーズン初戦に選んだUAEツアーが開幕した。初日スプリントをジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が制し、2着のフィリプセンに斜行の降格処分が課された。



今季初レースを迎えたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:UAE Tour

アラビア半島の南東部、アラブ首長国連邦でUAEツアーが開幕した。ドバイツアーとアブダビツアーが合体する形で2019年にスタートし、今年で第7回目を迎える本大会。1週間のスケジュールの大半は砂漠を駆ける平坦路だが、3日目と7日目に用意された山頂フィニッシュが、総合優勝の行方を左右する。

ワールドツアー第3戦ということもあり、過去2度の総合優勝経験のある世界王者タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)ら世界トップ選手たちが集結。特にスプリンターにはヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)やティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)、ミランにオラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)などグランツールさながらの豪華な面々が揃った。

砂漠地帯を進む選手たち photo:CorVos

大会初日はシャムス太陽熱発電所から南にある、リワ宮殿に向かう138kmの平坦路。しかしフィニッシュ手前約1.5kmは最大勾配8%、平均勾配4.2%の上り坂のため、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー)など重量級のピュアスプリンターには厳しく、いきなり総合勢が動いてくる可能性も見られた。

時折雨の雫が落ちる中、気温30度を超えるレースは現地時間の1時20分にスタート。VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネの2名に、昨年のツール・ド・九州にも出場したカルロス・サムディオ(パナマ、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)を加えた3名が逃げ、メイン集団はリドル・トレックやアルペシン・ドゥクーニンクなどが先導。砂漠とアスファルトのツートンカラーが美しいコースを、2分前後のタイム差でレースは進行した。

残り32km地点で単独先頭に立ったマヌエーレ・トロッツィ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ) photo:CorVos

後半のリワ宮殿の周辺を巡るコースに入ると、短い急坂で、全身白のアルカンシエルに身を包んだポガチャルが加速。そのためコーイが遅れ、逃げとの差が一気に縮まる。それを知ったマヌエーレ・トロッツィ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)はアタックして単独先頭に立ち、一気にリードを2分まで拡げることに成功した。

しかし、相変わらずスプリンターチームが中心にペースを作るプロトンは、逃げ切りのサプライズを許さなかった。残り11kmでトロッツィを引き戻し、終盤に向けて徐々に緊張感の高まっていく集団でフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツXRG)が単独落車。エーススプリンターを失ったUAEは、ポガチャルでの勝負に切り替えた。

チューダー・プロサイクリングのトレインがフラムルージュ(残り1km)を先頭でくぐり、勾配が上がる頃にアルペシンに入れ替わる。残り300mからポガチャルが踏み込み先頭に立つ。しかし勝ったのはその背後から飛び出し、頭を振る豪快なスプリントでフィリプセンを振り切ったミランだった。

登りスプリントで先頭に立つジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) photo:UAE Tour

大会初日を制したジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) photo:UAE Tour

終始プロトンの先頭でペースを作ったチームメイトのアシストを、見事勝利につなげたミラン。「いつもの慣れた(平坦)スプリントとは違ったので、仕掛けるタイミングが重要だった。最初から力をセーブしたため、残り200mの地点で脚に力が残っていた」と勝因を語った。

2着だったフィリプセンは、フィニッシュ手前で大きく蛇行し、フィン・フィッシャーブラック(ニュージーランド、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)の進路を妨害したとして、トップ集団の最後尾である52位に降格されている。

リーダージャージを着用したジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) photo:UAE Tour
UAEツアー2025第1ステージ結果
1位 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) 3:31:34
2位 フィン・フィッシャーブラック(ニュージーランド、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
3位 トビアスルンド・アンドレースン(デンマーク、ピクニック・ポストNL)
4位 レナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット)
5位 オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL)
6位 アーロン・ゲイト(ニュージーランド、XDSアスタナ)
7位 アロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ)
8位 リオネル・タミニオー(ベルギー、ロット)
9位 フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)
10位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)
52位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
個人総合成績
1位 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) 3:31:24
2位 フィン・フィッシャーブラック(ニュージーランド、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:04
3位 トビアスルンド・アンドレースン(デンマーク、ピクニック・ポストNL) +0:06
4位 レナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット) +0:10
5位 オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL)
6位 アーロン・ゲイト(ニュージーランド、XDSアスタナ)
7位 アロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ)
8位 リオネル・タミニオー(ベルギー、ロット)
9位 フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)
10位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)
その他の特別賞
ポイント賞 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)
ヤングライダー賞 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)
チーム総合成績 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ
text:Sotaro.Arakawa
photo:UAE Tour, CorVos

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