「落ち葉のクラシック」ことイル・ロンバルディア。その市民レースであるグランフォンド イル・ロンバルディアに日本から参加した写真家の宇賀神善之さん。なんと、EFエデュケーション・イージーポストがサポートするツアーを通じて挑戦したクラシックレースのレポートが届きました。



ジャパンカップも終わったちょうど去年の今じぶん、CWにて面白く衝撃な記事を拝読。服部産業株式会社にお勤めでウィリエールの担当である「キット北村さん」が5大モニュメント市民レース完全走破に挑戦、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベに続くイル・ロンバルディア走破成功のストーリーが掲載されていました。

キット北村さんと私、宇賀神善之 (c)Keisuke Kitamura

5大モニュメントの残すはリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(LBL)とミラノ〜サンレモ。凄い人がいるなあと思っていたら、なんとご本人北村さんから来年はLBLとアムステルゴールドレースに挑戦するのでアドバイスくださいとご連絡。実は私もかつてベルギーを中心に行われる4月のスプリングクラシックスほぼ全部を走ったことがあるのです。

メッセンジャーで情報交換しているうちに私もその気になってきました。「La classica delle foglie morte (落ち葉のクラシック)」美しい言葉の響きにも導かれ私も残るクラシック「イル・ロンバルディア」へ挑戦しようと心が動いたのです。

GFイルロンバルディアのコース地図。 (c)gfilombardia.it

まずは旅の計画です。イル・ロンバルディアのウェブサイトからコースとを確認すると今年のプロのレースはベルガモをスタートしてコモにゴールする252kmですがグランフォンドではカントゥという街をスタートゴールとする110km。

カントゥにホテルをとってそこを拠点に行動できれば一番なのですがこの街は駅がありません。駅がないと空港から輪行で行けないわけで、ならばと最寄り駅を探すと10kmほど離れた街にいくつかホテルがありました。しかし、ストリートビューで周りを見渡すと日本で言う郊外の国道沿いに建つ殺風景ビジネスホテル風でクルマがないと不便そうな場所です。それに高級リゾート地の雰囲気が全くありません。

せっかくコモに行くのなら少しでもいいホテルをと、探せば探すほどスタート地点から離れていき、値段もどんどん上がっていきます。ならばスポーツツアー会社も視野に入れようと頭を切り替えGFイル・ロンバルディアのウェブサイトに戻ってツアーオペレーターのページをクリックすると7社がリストされていました。その中で目を引いたのが「TEAM EF COACHING Il Lombardia Pro Race Camp」。

コースプロフィール (c)gfilombardia.it

馴染みのあるEFのロゴがデザインされたウェブサイトにアクセスするとこうありました。「チームEFコーチングは、EFエデュケーション・イージーポストチームの全面的なサポートを受けながら、グランフォンド イル・ロンバルディアを走り、プロレースを観戦するというユニークな体験を提供します。チームカーとメカニックと一緒にルートを偵察し、コーチから栄養、戦略などに関するプロレベルの洞察を得、チームソワニエが回復と補給を手伝います。さらにレース中はチームへの独占アクセスも楽しめます。これらはすべて、他では絶対に得られない体験です。」

つまり、EFのコーチの指導を受けながらコースを試走し、EFのメカ、ソワニエによるバイクのメンテナンス、体のケアを受け、完全にプロ環境の中イル・ロンバルディアの市民レースに挑むという夢のようなツアーです。さらにプロレース観戦のガイド付き。

もちろん他社とも比較しましたがサービス内容が群を抜いており、空港からホテルまでの送迎、バイクを降りても素晴らしいイタリア文化に触れ、宿泊はコモ湖に面したホテル。コモ湖のサンセットクルーズからベラージオの美しいレストランへ。と続くと気持ちはもうリゾートロンバルディア。オーバースペックなのは重々承知。でももうここしかない!一生に一度の贅沢だ!とばかり申し込みました。ただ、ツアー価格も群を抜いておりました。

Day 1 THE MADONNA DEL GHISALLO 53.4km/1222m

そろそろコモ湖畔では朝が来て、嶮しい山の間から昇る太陽は美しい湖を輝かせ息を呑む光景の中トレーニングキャンプが始まる時間だろう。皆それぞれに名乗り合いこれから4日間を共に過ごす挨拶などしてるのかな。とそんなことを考えながら私はまだドバイ空港にいるのでした。

マドンナデルギザッロヘ登るツアー参加者たち。でも私はここにいないのでした……。 (c)Team EF coaching

00:05に出発予定だったEK313便は遅延に遅延を重ねなんと22時間遅れで羽田を立ち、乗り継ぎ便は次の日に振替。家を出て40時間程経ってもまだ中東にいます。

それにしてもバイクをレンタルにして良かった。散々気を遣ってパックした大型輪行バッグを羽田まで運び、ようやく預けた手荷物をフライトキャンセルで押し戻されて次の日もう一度預けに長蛇の列に並ぶなんてクレイジー過ぎる。そして遅延での乗り継ぎはロストバゲージの確率がグンと上がるのは経験済み。自分のバイクを持ってきてたら心労で倒れていたかもしれない。

そうそうたる選手のスペアバイクがレンタルされた (c)Yoshiyuki Ugajin

チームEFは自分のバイク持参を推奨するとしていたが、レンタルも可とアナウンスしていて、そのバイクはなんと選手スペアのSuperSix EVO LAB71!

こいつは是非乗ってみたい!と一瞬高揚したものの、スペアバイクなのでギア比はもちろん選手仕様だろう。私じゃとても踏めません。他にワイドレシオのSynapseも用意できるとあったので、それを借りることにした。ということで、持参するのは自分のサイコンとペダル、シューズ、ヘルメットのみ。

一路チーム拠点となる街、レッコに向かう。 (c)Yoshiyuki Ugajin

事前に12ページのキャンプロードブックPDFが送られてきて、それにはジョナサン・ウォーターズCEOの挨拶文に始まり到着日からの行動予定、ロンバルディア地方の天候気温、ホテルの紹介、緊急連絡先、持ち物パッキングリスト、帯同するコーチやマネージャー、メカニック、ソワニエの紹介、4日間の走るコースの詳細地図など、これを読んでおけば間違いはないという情報が詰まっていて大変役立ちました。

無事マルペンサ空港に到着してスマホの機内モードを解除すると、途端にチームチャットに連絡が入ります。送迎の組み直しなど迷惑をかけてしまったが、忙しい中マネージャーのダニエルさんが迎えにきてくれました。

ホテルの駐車場の一角がチームピットとなっている (c)Yoshiyuki Ugajin

マネージャーのダニエルさん、メカのフレッドさん (c)Yoshiyuki Ugajin
ホテルに着くとチームキットが渡された。このバッグにチームジャージ、ジレ、ウォーマー類、ランドリーバッグが入っている。 (c)Team EF coaching



ホテルの部屋に入るとレイクビューの素晴らしい光景が目に飛び込んでくる。さすがに疲れて横になりたいが今夜はレッコから20kmほど移動してベッラージョにある湖畔のレストランでディナーだそう。荷解きもそこそこに駐車場に行くと参加者の皆さんが既に集まっていた。

もう誰が誰だかわからない状態でみんな私に話しかけてくるのでかなり混乱してしまい、コーチのニキさんをキャンプ参加者の一人と勘違いしてしまい随分噛み合わない会話をしてしまった。

私のバイクをセットするメカのフレッドさん。コフィディスウィメンの水谷監督と仕事したこともあるそうです。 (c)Yoshiyuki Ugajin

ベッラージョのレストラン La Punta にてディナーやっと皆さんに合流できました! (c)Team EF coaching

ひとまず皆さんフレンドリーなのとようやく合流できたのとでホッとする。今日のMADONNA DEL GHISALLOトレーニングライドに参加できなくて残念だったが、参加メンバーに聞くと朝は大雨で大変だったそう。テリブルって言うかホリブル、レイニーと言うよりストーミーだったよ!と口にされてました。この雨が洪水と土砂崩れを起こし土曜日のプロレースがコース変更になったほどである。

天気予報を見ると明日からは晴れ。ストームは去ったようである。

この日参加できなかったブリーフィング。とても濃密な内容だったことが窺い知れる。 (c)Team EF coaching

補給を取る計画も学べる。 (c)Team EF coaching
雨は止み、コモ湖畔を走る。 (c)Team EF coaching



雲間から見下ろすコモ湖 (c)Team EF coaching

チームカーが常に帯同する。 (c)Team EF coaching


DAY2 THE INFAMOUS MURO DI SORMANO 73.8km/1560m

長旅と美食とワインでぐっすり眠れると思っていたら時差ボケで全然眠れない。22時にはベッドに入ったのに今は1時。ウトウトしてまだ3時。とぶつ切り睡眠で朝を迎える。今日はソルマーノまで偵察トレーニングライドだ。

本日のブリーフィング。下りのエクササイズ。 (c)Yoshiyuki Ugajin

朝食を済ませたら会議室でブリーフィングが行われた。昨晩の夕食会では面白い冗談を言ってみんなを笑わせていたザックコーチはキリリと引き締まった表情で会場に現れた。

まずは本日のコースプロフィールの確認。PCに接続されている大型ディスプレーには本日の勾配図が映され非常にわかりやすい。またホワイトボードに図にしてくれメンバーに伝わるように進めてくれる。

特に時間を割いたのが下りのテクニックについてで、最高速度を出す練習では無く最高の技術を学びましょうと身振りも交えて伝えてくれる。ブリーフィングというより大学の授業のようで非常に興味深い。

ソワニエ手製の補給食。 (c)Yoshiyuki Ugajin

揃いのチームキットでいよいよライドへ。 (c)Yoshiyuki Ugajin

そしてトレーニングライドへ、かなりライドのレベルが高く感じたブリーフィングだったのでニキコーチに「ハイレベルでとても緊張してきた。今日は皆さんにただひたすらついて行くだけです。」と言うとにこやかに「週にどのくらい乗るんだい?ああそれなら大丈夫。心配ないよ」と気遣ってくれる。

メンバーとなる参加者は8人。日本、チェコ、スウェーデン、カナダ、オランダが1人づつ、残る3人がUSA。年齢は私が一番年上だと思っていたけれど2つ上の60歳の方がいて驚いた。

リードコーチのザック・モーリスさん。 (c)Team EF coaching

EFのコーチを紹介すると、ザック・モーリスさんはカナダ出身の36歳。チームEFコーチングのディレクター。コーチ業ではワールドチーム以外にアメリカのプロサッカーやNFL選手の指導経験があると言うリードコーチ。

ニキ・セレンセンさんは元CSC〜サクソバンクで活躍した選手。05年ブエルタ、09年ツールでステージ優勝。デンマークナショナルチャンピオン4回。ロンバルディアは8回の出走経験がありこのキャンプの完璧なガイド役。2002年と2009年にはジャパンカップにも来ている。チームカーも帯同してトレーニングライドは始まった。

同じくコーチのニキ・セレンセンさん。 (c)Team EF coaching

走り出すととにかく速い。速く感じる。街を抜けるまでは信号ストップがあるだろうからちょっとは休めるかなと思ったが、こちらはほとんど信号が無い!交差点となるところはラウンドアバウトでそこを10人のパックで進入しクルマと同じようにひらりひらりと抜けていく。そしてこちらは右側通行。不慣れな道路事情にヒヤヒヤしながらとにかくツキ切れだけはしないように必死についていくが心拍計は早くもレッドゾーン。早速やばいのです。

ニキコーチは「ヨシ!前走者の後ろ1mを走るといいよ。」と言われ分かってるけど詰められない。アッソの街を抜け、登り区間に入るとジリジリと私は遅れ出した。ザックコーチに支えられ、ニキコーチに励まされ必死について行く。

ザックコーチに支えられ必死について行く。 (c)Team EF coaching

ムロディソルマーノ入り口まではもう10kmもないし平均勾配は7%だから、私のホームコースの那須岳や霧降高原とそう変わりない。この程度の坂は何度も経験しているのに体は重く、ここまでのハイペースも災いしたかチームメイトから離れてしまった。

そんな私に付き合ってくれたのはニキコーチだ。ひとりぼっちになることもなく、またのんびり登る地元のサイクリストとおしゃべりしながらなんとか悪名高いと言われるムロディソルマーノの入り口にたどり着いた。

ニキコーチと二人ぼっち。坂を見上げる私。 (c)Team EF coaching

ムロディソルマーノ。平均15.8%、最大27%。 (c)Yoshiyuki Ugajin

本当にキツいのはこれからだが、この時点で早くも私の脚は売れきれていた。体力無さ過ぎである。マネージャーのダニエルさんが「とにかく補給を取りなさい。」とライスケーキやAMACXのジェル、ミックスドリンクを差し出してくれる。わずかでも回復を願って夢中で体の中に押し込んだ。

そして凄まじい坂でした!入り口から少し下るので吸い込まれるようにムロに進むと突然金縛りにあったように足が動かなくなった。ナンジャコリャー!とスーパーローギアに落として立ち漕ぎすると、濡れた落ち葉にズルリとホイールが空回り。

振り返ると穏やかなこの風景。 (c)Yoshiyuki Ugajin

ソルマーノでアタック! (c)Team EF coaching

たまらず足をついて終了でした。再乗車しようにも進む前にバイクは下がり、ジグザグで行こうとすれば登れずにUターンして下っちゃう(笑)苦しそうでもなくスイスイと登ってくるのはE-BIKE。羨ましい!

チームを待たせるわけにもいかず乗るより押し上げた方が速いと、ここは歩きました。MTBのシューズで良かった!

登り切るとチームは待っていてくれました。ザックコーチから「ヨシ、ドリンクと補給食べて!下るからジレ着て!」と指示が飛び、せっかくだから記念写真でも、の雰囲気もなく一斉に下るのでした。このあたり非常にストイック!

練習が終わったらソワニエのイヴァンからマッサージを受ける。彼は昨年までエキポ・ケルンファルマの選手でしたが今のこの仕事が楽しいと言っていました。 (c)Yoshiyuki Ugajin

イヴァンは多忙。ボトルを作り、補給食を作り、ジャージを洗濯し、マッサージをし、選手の送迎も、機材の運搬も全部担当する。 (c)Yoshiyuki Ugajin

あとはホテルまで下るだけと思いきや、今朝のブリーフィングでやった実践。下って登っての反復4本、湖畔沿いの平坦に入って先頭交代ローテーションの練習と非常に内容の濃いトレーニングが続き、ローテーションの練習でドロップしてしまったら各自ホテルに戻りなさいとのお言葉に速攻ちぎれて一人旅。

マネージャーのダニエルさんは心配してチームカーに乗るかい?と声かけてくれたけどノーサンキュー。美しい湖と山々の風景の中この一人旅がとても気持ち良くて、ひとときの自由時間を味わうのでした。

スーパーで格安ビール買って部屋のテラスで一杯!美味い! (c)Yoshiyuki Ugajin


Day 3 KEEP THOSE LEGS SPINNING 24.5km/642m

本日はプロレースの日。朝食を済ますとレース観戦前に1時間ほどのライド。明日の準備として少し穏やかに足を回転させましょうとレイクサイドを走り出す。今日は楽しい観光ライドに違いないとコンパクトカメラを忍ばせたがしかし、やはりそれを出すこともなくただの重りとなるのでした。

赤絨毯がエントランスに続きます。 (c)Yoshiyuki Ugajin

ニキコーチは今日はイージーライドだから昨日みたいにキツくないよ。と言うもののザックコーチを機関車とするトレインは私の感覚で言えばロケットみたいな超特急!ピタリと真後ろに張り付き、昨日のようにツキ切れしないよう集中して約1時間。なんとか切れずについていけました。たった1時間弱のライドでしたが落ちこぼれることなく走り切れて良かった。ようやくみんなと走れたとちょっとは自信になりました。

ライドが終わればレース観戦に出かけます。4つ目の大きな峠ヴァルピアーナを過ぎて4kmほど下ったロンコラという小さな町でレースを待ちます。ランチのあとレース観戦というから、どこかでレジャーシートに腰を下ろしサンドイッチをつまみながらレースを待つのかと思っていたら着いたところは高級レストランでした。

ニキコーチとザックコーチ。気さくで面倒見の良いナイスガイズ。劣等生の私に本当によくお付き合い頂きました。 (c)Yoshiyuki Ugajin
この美意識の高さがイタリア! (c)Yoshiyuki Ugajin



プロトンが通過します。レムコ頑張れ! (c)Yoshiyuki Ugajin

規制が終わるとゴール地点のコモに向かいます。途中トイレ休憩を挟み2時間ほどでコモの街に着きました。EFのチームカーに乗っているので会場のパーキングまでスムーズです。選手が来るまであと1時間ほどでしょうか、すでにゴール地点はたくさんの観戦客で賑わっています。

コース沿いにいくつかある大型モニターで戦況をチェックしますが、ポガチャルの単独アタック、それを追うレムコの模様。ポギー強し!今年も勝つのか?

レースが来るまでパブリックビューイングで楽しみます。 (c)Yoshiyuki Ugajin

単独で姿を現した、タデイ・ポガチャル。 (c)Yoshiyuki Ugajin

チームバスの中を少し覗かせてもらいました。 (c)Yoshiyuki Ugajin
程なく仕事を終えたルイ・コスタが現れる。 (c)Yoshiyuki Ugajin



ポルトガルナショナルチャンピオンカラーのバイク。 (c)Yoshiyuki Ugajin
この日8位でレースを終えたニールソン・パウレスも帰ってきた。 (c)Yoshiyuki Ugajin




Day 4 GRANFONDO IL LOMBARDIA 110km/2153m

いよいよキャンプの最終日。GFイル・ロンバルディアの本番です。ホテルの朝食は特別に5時半に準備していただきました。6時にカントゥのスタート地点に向かうのでチームジャージに着替え、必要な荷物を持って食事を摂ります。それにしても未明から準備するチームスタッフには感謝です。

未明から準備にかかるチームスタッフ。 (c)Yoshiyuki Ugajin

夜明け前の暗い道、右も左もわからない中カントゥに着くと何やら街道沿いのレストランの駐車場に車を止めます。するとスタッフは折り畳みテーブルを出しボトルや補給食を並べ、バイクを下ろし始めました。ここがチームピットになるようです。

この時は暗過ぎてわかりませんでしたが、このパーキングはスタート地点に最も近く、ゴール地点の最後の曲がり角になるので絶好の場所と言えるでしょう。それにしてもよくこんなに都合の良い場所を確保できるもんだと感心しました。

1台1台にタイムチップを付けるフレッドさん。 (c)Yoshiyuki Ugajin
スタート地点へ出発です。 (c)Yoshiyuki Ugajin



夜明け前。コース沿い、スタート地点すぐそば、という好位置にピットを設ける。 (c)Yoshiyuki Ugajin

ジャージのポケットに必要分の補給食を詰め、バイクにボトルをセットすればあとはスタートグリッドに行くところでしょうが、「オーケーガイズ!カモン!」と向かう先は多くの参加者が行く方向とは逆方向。この時点で朝7時。

あたりはまだまだ暗い中、ダーッと走ってUターン。ダーッと走って登り坂。ダーッと走って戻ってくると本番15分前にグリッドイン。VIPスタートポジションの1stグリッドなので並ぶことなくギリギリまでアップできるのでした。凄い!

スタート前、マスコットの背後に2,200人の選手! (c)gfilombardia.it

大音量でロック音楽が流れる中、緊張が高まります。 (c)Yoshiyuki Ugajin
よっしゃ行くぜ!と気合いを入れます。 (c)Team EF coaching



カウントダウンが始まりスタートが切られると、全員が全力で飛び出していきました。話には聞いていたけどイタリアのアマチュアレースはマジのガチでした。まるでCXのホールショット狙いのように突っ込んで行く。CXなら30分の我慢だけどこんなスピードで3時間も4時間も走るのは私は無理!

一昨日のチーム練で速いペースで走って撃沈したこともあり、なんとしても自分のサイクリングペースに落としたいけれど、ものすごい数の選手が背後から次々と押し寄せてくるので流れに乗るしかない。まるで激流に飲まれた筏だ。

リズムが掴めないまま走っていると突然集団はサーッと左右に割れる。なんだ?って思うとラウンドアバウト。真ん中の縁石に突っ込みそうになる。まずは安全第一、とにかく危険回避と考えた結果キープライト。右端に沿って走れば左からの追い抜きだけを注意すればいいので多少気が楽になった。

なまじ1stグリッドで出走順が早かっただけに私の背後には2000人がいたはずだ。ボンボン抜いていく選手を見送って走っているとナンバー1900番台もチラホラ。スタートしてから15分もしないうちに1500人ぐらいに抜かれたのではないかと思われた。

カンツォの街まで20kmはほぼ平坦、アッソからジリジリ登っていくのだが、ここからは先日のトレーニングライドで試走済み。たった二日前に見た風景がすでに懐かしい。滝のある公園、可愛らしい家並み。美しい山々。美味しそうなレストラン。

ベッラージョ目指しコモ湖畔を走ります。 (c)Yoshiyuki Ugajin

どうせ遅いんだから立ち止まって写真撮れよ。と心の声が聞こえたが無視しました。写真なら土産物屋で絵葉書を買えばいい。景色は二つの目玉に焼きつけりゃいい。そう思ってレースに集中しました。(写真家としては失格ですが。)

登りで遅れる選手を一人二人と追い抜きながらマイペースで登るうちにムロデソルマーノの入り口に着きます。

ここから先は2択。左か右か。もちろん右に行きます。ソルマーノの壁は迂回することにしました。一度は行ったし、ニキコーチによると壁に行くのは外人と強豪ばかりで普通のイタリア人は行かないそうです。のちに調べると行かない:行くの割合は6:4でした。

ソルマーノを登りきると大会が用意した補給所があるのですがここはスキップ。この先の60km地点に我々EFのフィードポイントが用意されているからです。

ここから一気にコモ湖畔まで15kmのダウンヒル。一昨日のトレーニングでみっちり下り練をしたので少しは上手くなったのか豪快に下りました。とは言っても交通規制はないのでキープライトと対向車注意です。

ネッソの町まで下ると眼下にコモ湖が迫ります。今思えば写真撮れば良かったと思うくらい綺麗な景色でした。瞼には焼き付いているので自分だけに取っておきます。一路フィードポイント目指してペダルを踏むのですが、60kmを過ぎてもピンクのチームカーは見えてきません。あのド派手なクルマを見落とすわけがありませんがそうするうちにぐるりと右折してマドンナデルギザッロへの登坂が始まってしましました。

いよいよマドンナデルギザッロへの登りへ (c)Yoshiyuki Ugajin

チームカー、チームカーと呪文を唱えながら走ると見えました。ピンクのド派手なチームカー!自分のサイコンで63km地点にソワニエのイヴァンさんが手を振って待っていてくれました。我々の現在地はスマホのWhat'sAppアプリのライブロケーション共有で確認できるので私がそろそろ来るのはわかっていたようです。そしてレースの邪魔にならないよう左側に止まっていました。

大急ぎでAMACXのジェルとライスケーキを腹に押し込んでる間にバイクに新しいボトルが2本セットされています。もう行くわとバイクに跨ると全力で背中を押してくれました。

前日にチャットに送られてきたFeed1の確認写真。EFのサポートは本当にきめ細かいです。 (c)Team EF coaching

ここから先は初日の偵察ライドに参加できなかったので未知数です。登り口から激キツでサイコンには12%の表示。周りの選手たちも疲労感たっぷりです。ほんの5km登れば3km平坦、最後の教会まで残り1.5kmで終わる。そう考えて無心でペダルを踏みました。

斜度を示すサイコンの色が赤から黄色、黄色から赤。早く緑になってくれと祈りながらなんとか教会のある山頂通過しました。ここをほんの少し下ったところに大会の第2補給所があるのですがここもスキップ。一気に下ります。

本当に皆さん辛そうです。 (c)Yoshiyuki Ugajin

なんとか登り切りました。サイクリストの聖地だけに立ち寄る人も多いです。 (c)Yoshiyuki Ugajin

カンツォの町を抜け、セグリー湖畔を走りまだまだ綺麗な景色は続きますがだんだんと交通量が増えてきます。残り20kmを残す地点でFeed2。マネージャーのダニエルさんが見えました。腕を水平に伸ばした手にはボトルと輪ゴムで括られたAMACXのジェル。

"KEEP GOING YOSHI !"そう聞こえて彼の手からボトルをもぎ取ると最後の一絞り。ゴール目指してペダルを踏み込みました。

ゴール直前の登り坂。イヴァンさんがタイムチップの返却に行くから付き合うよと一緒に走ってくれました。最高に嬉しかった! (c)Yoshiyuki Ugajin
ハンドルバーにプロフィールシール。足切り時間を記入しました。 (c)Yoshiyuki Ugajin
このフロント31Xリア34のスーパーローギアが大助かりでした。 (c)Yoshiyuki Ugajin



レンタルしたキャノンデール Synapse Carbon LTD RLE。 (c)Yoshiyuki Ugajin

ロンド、ルーベ、LBL、に次ぐモニュメント4つ目のメダル獲得。 (c)Yoshiyuki Ugajin


筆者プロフィール
走った人:宇賀神善之 (c)Yoshiyuki Ugajin

宇賀神善之CWの記事に触発され2015年から春のクラシック観戦&市民レースに参加。フランドル、パリ〜ルーベ、アムステルゴールドレース、LBLの他、フレーシュ・ワロンヌ、スヘルデプライス、ブラバンツペイルのコースなどを走ってきました。パンデミックで渡欧を中断していましたが今回6年ぶりにモニュメントに挑戦。本業はアパレル企業を主なクライアントとするフォトグラファー。

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