今年最後のグランツールであるブエルタ・ア・エスパーニャが本日開幕。ポルトガル・リスボンでスタートする個人TTから、スペイン南部を舞台巡るレースは4日目に早くも山頂フィニッシュが登場。1週目のコース詳細を紹介します。



2024年ブエルタ・ア・エスパーニャコース全体図 image:Unipublic

ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス、そしてパリ2024オリンピックが閉幕した8月、スペインを巡る第79回ブエルタ・ア・エスパーニャが始まる。その開幕地に選ばれたのは、1997年にブエルタ史上初の国外スタートの地となったポルトガルの首都リスボン。そこからポルトガル国内で3日間走り、スペイン南部を巡る。2週目からはスペイン北部を西から東へと進み、マドリードでの個人タイムトライアルで締めくくられる。

全21ステージの内訳は下記の通りで、特筆するべき点は平坦ステージが1つしかないこと。集団スプリントのチャンスは4〜6ステージあるものの、スタートリストにピュアスプリンターの姿はない。また個人TTも総距離36.6km(12+24.6km)と比較的短いため正真正銘のクライマー向きの大会となり、200kmを超えるステージが登場しないこともポイントだ。

平坦ステージ:1
丘陵ステージ:5(山頂フィニッシュ2)
山岳ステージ:13(山頂フィニッシュ7)
個人タイムトライアル:2


クイーンステージ(最難関ステージ)は2週目を締めくくる第15ステージで、最大勾配24%の超級山岳クイトゥ・ネグル(距離18.9km/平均7.4%)が登場。第19、20ステージの2連続山頂フィニッシュを経て、最終日の個人TTでマイヨロホの持ち主が決まる。



8月17日(土) 第1ステージ
リスボン〜オエイラス 12km(個人TT)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第1ステージ コースプロフィール image:A.S.O.

大会初日はリスボンを出発し、沿岸を沿いながら西のオエイラスを目指す12kmの個人タイムトライアル。出場する全22チーム/176名の顔見せの意味合いも強く、丘一つない平坦はTTスペシャリスト向き。コーナーもスタート直後にあるだけのため、ハイスピードな戦いが繰り広げられる。

TT世界選手権でアルカンシエルを争う選手は揃っていないが、現ヨーロッパTT王者のジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が出場する。もちろん総合タイムを稼ぎたい、東京五輪TT金メダリストのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)や地元ポルトガル出身のジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)は当然勝利を狙ってくるだろう。



8月18日(日) 第2ステージ
カシュカイシュ〜オウレーン 194km(丘陵)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第2ステージ コースプロフィール image:A.S.O.

リゾート地であるカシュカイシュから内陸部を北に進み、オウレーンを目指す194kmは丘陵ステージ。最初に4級山岳を越え、その後は細かなアップダウンと平坦路が続き、終盤の4級山岳も低難易度のため集団スプリントが濃厚だ。

難所らしい区間はないものの、グランツールのロードレース初日は落車がつきもの。ツールと同じくブエルタでも集団スプリントが予想されるステージでは、落車してもトップと同タイムフィニッシュの扱いになる救済措置(3kmルール)が残り4kmまでに延長されるため、総合チームの先頭争いは残り4km地点で終了となる。

このステージでの注目は初出場のワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)と昨年3勝でマイヨプントス(ポイント賞)を得たカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)の直接対決。白熱のスプリントバトルを制するのは誰だ。



8月19日(月) 第3ステージ
ロウザン〜カシュテロ・ブランコ 191.2km(丘陵)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第3ステージ コースプロフィール image:A.S.O.

大会3日目も集団スプリントが予想される丘陵ステージだ。ロウザンをスタートした選手たちはコース中盤に山岳地帯を訪れ、スプリンターを退けるほどではない2級山岳と4級山岳をクリア。4級山岳の頂上からは42.6kmの下り&平坦路が続くため、逃げ切りに適しているとは言えない。

この日がポルトガル最終日のため、母国出身のルイ・コスタ(EFエデュケーション・イージーポスト)などは逃げから勝利を狙いたい。しかし前日と同じくスプリンターを擁するヴィスマやアルペシン、コフィディスなどのチームがタイトにタイム差をコントロールすることだろう。



8月20日(火) 第4ステージ
プラセンシア〜ピコ・ビリュエルカス 170.5km(山岳/山頂フィニッシュ)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第4ステージ コースプロフィール image:A.S.O.

いよいよスペインに入国する初日に、レース主催者は大会最初の山岳ステージを用意した。しかも最後に登る1級山岳ピコ・ビリュエルカス(距離14.6km/平均6.2%)は、終盤に最大勾配20%が登場する激坂だ。

プラセンシアのスタート後、2級山岳と1級山岳に取り掛かる。その後は長い下りと平坦路を経て、3級山岳をクリア。中間スプリントは最終山岳の登り口(残り15.4km)に設定されているため、マイヨプントスを争う選手たちには(ファンアールトを除き)ノーチャンスだろう。

最後に駆け上がる1級山岳ピコ・ビリュエルカスは最初の10kmは平均3〜4%の緩斜面が続き、フィニッシュ手前5km地点から二桁の勾配に跳ね上がる。約3kmに渡る急勾配区間を抜けるともう一度緩斜面が訪れ、フィニッシュ直前で15%の区間が設定されたトリッキーな登りだ。



8月21日(水) 第5ステージ
フエンテ・デル・マエストレ〜セビリア  177km(平坦)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第5ステージ コースプロフィール image:A.S.O.

前日のマイヨロホ争いから一転、第5ステージは大会唯一の平坦ステージ。コースもフエンテ・デル・マエストレから真南にあるセビリアまでのほぼ一直線で、カテゴリー山岳は一つもない。

中間スプリントが残り24.6km地点と終盤に設定されているため、逃げ容認後のレース前半はスローペースで進むはず。セビリアの市街地に入ってからコーナーが連続するものの、残り3.5kmからは長い直線路がフィニッシュまで続く。ちなみにこの日も救済措置は残り4kmから適応されるため、数少ないスプリント勝利を目指す選手たちが心置きなく躍動するだろう。



8月22日(木) 第6ステージ
カルフール・シュル・ヘレス・デ・ラ・フロンテラ〜ユンケラ 185.5km(山岳/山頂フィニッシュ)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第6ステージ コースプロフィール image:A.S.O.

大会6日目にしてようやく”逃げ屋”に出番が回ってきた。大会のメインスポンサーである「カルフール」のショッピングセンターをスタートし、真東のユンケラに向かうコースにカテゴリー山岳は4つ。最初は平坦路を進んで1級山岳をクリア後は、細かいアップダウンが連続する山岳/山頂フィニッシュだ。

頂上にフィニッシュが設定された3級山岳ラス・アベハスは、登坂距離8.8kmに平均3.9%と難易度は低い。しかし登りはじめに10%が登場。その後一度下りを挟むため、コースレイアウトを熟知していないと仕掛けどころが難しい。



8月23日(金) 第7ステージ
アルチドナ〜コルドバ 180.5km(丘陵)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第7ステージ コースプロフィール image:A.S.O.

アンダルシアの荒野を駆ける第7ステージは、終盤に2級山岳が1つだけ設定された丘陵ステージ。アルチドナを出発して140kmまでは平坦路を進み、最大勾配16%と厳しい2級山岳アルト・デル14%(距離7.4km/平均5.6%)を駆け上がる。フィニッシュ地点は急勾配の下りと約12kmの平坦路の先にある。

集団の登坂ペース次第では集団スプリントの可能性もあるものの、パンチャーが登りで仕掛けるはず。また激坂区間だけでなく、その後の下りも勝負どころとなるため独走も考えられる。あらゆる可能性を残したエキサイティングなレースが期待される。



8月24日(土) 第8ステージ
ウベダ〜カソルラ 159km(山岳/山頂フィニッシュ)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第8ステージ コースプロフィール image:A.S.O.

この日のフィニッシュ地点は3級山岳シエラ・デ・カソルラ(距離4.8km/平均7.1%)の山頂に設定された。ウベダから東の山岳地帯を目指し、沿うように南下してカソルラに向かう159kmの山岳ステージ。コース自体の獲得標高差は3,000mにも満たないが、最後の3級山岳シエラ・デ・カソルラは登り口に最大勾配20%が訪れ、フィニッシュ手前も平均13.5%に跳ね上がる。

大きなタイム差がつくようなステージではないものの、確実に今後のマイヨロホ争いを占うステージ。また登る集団のペース次第ではパンチャーにもチャンスはあるため、予測不能な登坂バトルが見られるだろう。



8月25日(日) 第9ステージ
モトリル〜グラナダ 178.5km(山岳)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第9ステージ コースプロフィール image:A.S.O.

ブエルタの第1週目を締めくくるのはコース後半に3つの1級山岳を越える山岳ステージ。アルボラン海を望むモトリルをスタートした選手たちは一路北に進路を取る。そして一度グラナダの市街地の近くを通過し、西の山岳地帯に足を踏み入れる。

等間隔に配置された3つの1級山岳はまず距離8.9km/平均7.6%を越え、最終山岳アルト・デ・ハザラナス(距離7.1km/平均9.5%)を2度越える強烈な山岳が待ち受ける。しかしフィニッシュ地点は山頂ではなく、最終山岳の頂上から下りと平坦路を経た先にある。

グラナダにフィニッシュした選手たちはすぐさま飛行機で約800kmを移動し、スペイン北西の街ビーゴで一度目の休息日を迎える。



8月26日(月) 休息日



text:Sotaro.Arakawa

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