2024/07/02(火) - 08:20
終盤に落車が相次いだツール・ド・フランス第3ステージは、集団スプリントで決着。ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)がエリトリアに初勝利をもたらし、またリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)はエクアドル人初のマイヨジョーヌ着用者となった。
7月1日(月)第3ステージ
ピアチェンツァ〜トリノ 230.8km(平坦)
イタリア・フィニッシュの最終日であるツール・ド・フランス第3ステージに、ようやくスプリンターの出番が回ってきた。今大会最長距離である230.8kmコースに難所はなく、あるのは平坦路と背の低い3つの4級山岳だけ。途中にツールも2度制したファウスト・コッピの終焉の地トルトーネ(4級山岳)を通り、最後の丘も残り49km地点で終わるため、勝利に飢えたスピードマンたちによるスプリント勝負が予想された。
大会3日目にして早くもマイヨジョーヌを着用したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)を先頭に、この日もツールカラーのラッピングがされた列車に見送られながらレースはスタートする。直後にマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を着るヨナス・アブラハムセンと今大会最年少20歳のヨハンネス・クルセット(共にノルウェー、ウノエックス・モビリティ)がアタック。しかしこれはあくまでもチームのアピール目的であったため、2人はしばらくするとバイクを止め、集団に戻っていった。
その後はリドル・トレックが集団のコントロールを担当。難易度の高いハードな開幕2日間を過ごした集団からは、約150kmに渡り逃げを目指す選手が現れなかった。
降雨の心配を払拭する晴天のなか、平均速度37km/h台とスローペースで進むプロトンはこの日一つ目の4級山岳トルトーネ(残り160km地点)に至る。そこでは山岳賞争いでもトップを立つアブラハムセンが、ふざけてスプリントするヨナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)を退け1ポイントを加算。そして選手たちは、フィニッシュスプリントの前哨戦である中間スプリント(残り136.5km地点)に突入した。
アルケアB&Bホテルズがアルノー・デマール(フランス)のためにトレインを組むなか、その背後からブライアン・コカール(フランス、コフィディス)やマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)、ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)の3名が飛び出す。大観衆が詰めかけるフィニッシュスプリントのような盛り上がりのなか、ピーダスンがトップ通過して20ポイントを獲得。直後に2位通過のフィリプセンが手を差し出し、第1ラウンドを制したピーダスンを祝福した。
その後は再び穏やかな空気感がプロトンを包み、今年スーダル・クイックステップからリドルに移籍したティム・デクレルク(ベルギー)が得意の長時間ペースメイクを披露する。そこにはエーススプリンターを抱えるアルペシン・ドゥクーニンクのシルヴァン・ディリエ(スイス)やジェイコ・アルウラーも牽引に選手を送りながら、順調にフィニッシュまでの距離を消化していった。
途中、優勝候補の1人であるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)が両方のホイールを交換するトラブルもありながら、集団は最後から2つ目の4級山岳(残り74.7km地点)に突入。そこでは地元の近いマッテオ・ソブレロ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がアタックし、先頭通過で観客を沸かせる。そしてその直後、トタルエネルジー一筋29歳のファビアン・グルリエ(フランス)がアタックした。
2020年以来、4年振りのツール出場を果たしたグルリエは続く最終4級山岳をトップで通過する。レース中継を独り占めしたグルリエは、フィニッシュまで続く平坦路で良いペースを刻んだものの、残り28km地点で依然デクレルクを先頭とするプロトンが引き戻す。そしてレースは今大会初めての集団スプリントに向け、一気に緊張感が高まっていった。
残り距離が15kmを切った集団ではカスパー・ピーダスン(デンマーク、スーダル・クイックステップ)が単独で落車。すぐにバイクに戻り完走したピーダスンだったが、検査の結果鎖骨を骨折しておりそのまま今大会2人目のリタイア者に。そしてここから落車の連鎖が始まった。
ラウンドアバウトの入口でブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル)も単独落車し、直後にマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がメカトラでバイク交換を強いられる。そのためチームメイトであるヤスペル・フィリプセン(ベルギー)が最終発射台を失うなか、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)をエースに据えるウノエックス・モビリティを先頭に、落車時の救済措置が取られる「3kmルール」の延長が実施された残り5km地点を通過した。
その後EFエデュケーション・イージーポストからロット・デスティニーと目まぐるしく集団先頭が代わるなか、集団の中央付近で大規模な落車が発生。これにカヴェンディッシュやフィリプセンが巻き込まれ、先頭集団は40名程度に絞られる。そしてエーススプリンターのビニヤム・ギルマイ(エリトリア)が集団中ほどに埋もれるアンテルマルシェ・ワンティを先頭に最終ストレートに突入し、ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、リドル・トレック)のリードアウトからピーダスンがスプリントを開始した。
先頭で踏むピーダスンの左からフェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)、右のフェンス側からギルマイが並ぶ。そしてトップスピードに達したギルマイはピーダスンを追い抜き、フィニッシュラインを先頭で通過。その結果ギルマイがエリトリア人として、また黒人アフリカ人として初のツール区間優勝を掴み取った。
2022年のジロ・デ・イタリアで勝利を挙げ、トップスプリンターの仲間入りをしたギルマイ。翌年に初出場したツールでは3位と勝利に迫ったものの、それ以降はなかなか勝ち星を重ねることはできず、しかし2度目の大舞台でようやくエーススプリンターに相応しい結果を手に入れた。
「この力を与え、サポートしてくれた神様に感謝したい。自転車競技を初めて以来の夢であったツールという舞台で、勝てたなんて信じられない。僕の家族や妻、そしてエリトリア、またアフリカにいる全ての人たちに感謝を伝えたい。これはチームで掴んだ勝利だ」と、途中涙で言葉に詰まりながらもギルマイは喜びを語った。
またマイヨジョーヌを着たポガチャルがトップと同タイムの区間38位でレースを終えた一方で、総合で同タイムの4位につけるリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)は区間14位でフィニッシュ。そのため「全ステージの順位の合計が少ない」カラパスがポガチャルを上回り、自身初、またエクアドル人として初のマイヨジョーヌ着用者に。ディフェンディング王者ながらもパリ五輪の選考外となった悔しさを、歴史的偉業によって晴らした。
7月1日(月)第3ステージ
ピアチェンツァ〜トリノ 230.8km(平坦)
イタリア・フィニッシュの最終日であるツール・ド・フランス第3ステージに、ようやくスプリンターの出番が回ってきた。今大会最長距離である230.8kmコースに難所はなく、あるのは平坦路と背の低い3つの4級山岳だけ。途中にツールも2度制したファウスト・コッピの終焉の地トルトーネ(4級山岳)を通り、最後の丘も残り49km地点で終わるため、勝利に飢えたスピードマンたちによるスプリント勝負が予想された。
大会3日目にして早くもマイヨジョーヌを着用したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)を先頭に、この日もツールカラーのラッピングがされた列車に見送られながらレースはスタートする。直後にマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を着るヨナス・アブラハムセンと今大会最年少20歳のヨハンネス・クルセット(共にノルウェー、ウノエックス・モビリティ)がアタック。しかしこれはあくまでもチームのアピール目的であったため、2人はしばらくするとバイクを止め、集団に戻っていった。
その後はリドル・トレックが集団のコントロールを担当。難易度の高いハードな開幕2日間を過ごした集団からは、約150kmに渡り逃げを目指す選手が現れなかった。
降雨の心配を払拭する晴天のなか、平均速度37km/h台とスローペースで進むプロトンはこの日一つ目の4級山岳トルトーネ(残り160km地点)に至る。そこでは山岳賞争いでもトップを立つアブラハムセンが、ふざけてスプリントするヨナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)を退け1ポイントを加算。そして選手たちは、フィニッシュスプリントの前哨戦である中間スプリント(残り136.5km地点)に突入した。
アルケアB&Bホテルズがアルノー・デマール(フランス)のためにトレインを組むなか、その背後からブライアン・コカール(フランス、コフィディス)やマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)、ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)の3名が飛び出す。大観衆が詰めかけるフィニッシュスプリントのような盛り上がりのなか、ピーダスンがトップ通過して20ポイントを獲得。直後に2位通過のフィリプセンが手を差し出し、第1ラウンドを制したピーダスンを祝福した。
その後は再び穏やかな空気感がプロトンを包み、今年スーダル・クイックステップからリドルに移籍したティム・デクレルク(ベルギー)が得意の長時間ペースメイクを披露する。そこにはエーススプリンターを抱えるアルペシン・ドゥクーニンクのシルヴァン・ディリエ(スイス)やジェイコ・アルウラーも牽引に選手を送りながら、順調にフィニッシュまでの距離を消化していった。
途中、優勝候補の1人であるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)が両方のホイールを交換するトラブルもありながら、集団は最後から2つ目の4級山岳(残り74.7km地点)に突入。そこでは地元の近いマッテオ・ソブレロ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がアタックし、先頭通過で観客を沸かせる。そしてその直後、トタルエネルジー一筋29歳のファビアン・グルリエ(フランス)がアタックした。
2020年以来、4年振りのツール出場を果たしたグルリエは続く最終4級山岳をトップで通過する。レース中継を独り占めしたグルリエは、フィニッシュまで続く平坦路で良いペースを刻んだものの、残り28km地点で依然デクレルクを先頭とするプロトンが引き戻す。そしてレースは今大会初めての集団スプリントに向け、一気に緊張感が高まっていった。
残り距離が15kmを切った集団ではカスパー・ピーダスン(デンマーク、スーダル・クイックステップ)が単独で落車。すぐにバイクに戻り完走したピーダスンだったが、検査の結果鎖骨を骨折しておりそのまま今大会2人目のリタイア者に。そしてここから落車の連鎖が始まった。
ラウンドアバウトの入口でブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル)も単独落車し、直後にマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がメカトラでバイク交換を強いられる。そのためチームメイトであるヤスペル・フィリプセン(ベルギー)が最終発射台を失うなか、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)をエースに据えるウノエックス・モビリティを先頭に、落車時の救済措置が取られる「3kmルール」の延長が実施された残り5km地点を通過した。
その後EFエデュケーション・イージーポストからロット・デスティニーと目まぐるしく集団先頭が代わるなか、集団の中央付近で大規模な落車が発生。これにカヴェンディッシュやフィリプセンが巻き込まれ、先頭集団は40名程度に絞られる。そしてエーススプリンターのビニヤム・ギルマイ(エリトリア)が集団中ほどに埋もれるアンテルマルシェ・ワンティを先頭に最終ストレートに突入し、ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、リドル・トレック)のリードアウトからピーダスンがスプリントを開始した。
先頭で踏むピーダスンの左からフェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)、右のフェンス側からギルマイが並ぶ。そしてトップスピードに達したギルマイはピーダスンを追い抜き、フィニッシュラインを先頭で通過。その結果ギルマイがエリトリア人として、また黒人アフリカ人として初のツール区間優勝を掴み取った。
2022年のジロ・デ・イタリアで勝利を挙げ、トップスプリンターの仲間入りをしたギルマイ。翌年に初出場したツールでは3位と勝利に迫ったものの、それ以降はなかなか勝ち星を重ねることはできず、しかし2度目の大舞台でようやくエーススプリンターに相応しい結果を手に入れた。
「この力を与え、サポートしてくれた神様に感謝したい。自転車競技を初めて以来の夢であったツールという舞台で、勝てたなんて信じられない。僕の家族や妻、そしてエリトリア、またアフリカにいる全ての人たちに感謝を伝えたい。これはチームで掴んだ勝利だ」と、途中涙で言葉に詰まりながらもギルマイは喜びを語った。
またマイヨジョーヌを着たポガチャルがトップと同タイムの区間38位でレースを終えた一方で、総合で同タイムの4位につけるリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)は区間14位でフィニッシュ。そのため「全ステージの順位の合計が少ない」カラパスがポガチャルを上回り、自身初、またエクアドル人として初のマイヨジョーヌ着用者に。ディフェンディング王者ながらもパリ五輪の選考外となった悔しさを、歴史的偉業によって晴らした。
ツール・ド・フランス2024第3ステージ
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 5:26:48 |
2位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター) | |
3位 | アルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット・デスティニー) | |
4位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | |
5位 | ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー) | |
6位 | フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
7位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | |
8位 | ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アスタナ・カザクスタン) | |
9位 | サム・ベネット(アイルランド、デカトロンAG2Rラモンディアル) | |
10位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | |
14位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
38位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
113位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | 15:20:18 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | |
4位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | |
5位 | ロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | +0:06 |
6位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:21 |
7位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | |
8位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | |
9位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
10位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
17位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | 76pts |
2位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 66pts |
3位 | ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケアB&Bホテルズ) | 60pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | 24pts |
2位 | ヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ) | 11pts |
3位 | フランク・ファンデンブルーク(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | 9pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 15:20:18 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +0:21 |
3位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 46:01:06 |
2位 | UAEチームエミレーツ | +0:30 |
3位 | イネオス・グレナディアーズ | +0:51 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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