本日6月29日(土)、世界最大の自転車レースである第111回ツール・ド・フランスが開幕する。大会初日としては稀なほど高難易度の丘陵ステージや4日目のガリビエ峠、白い未舗装路を通る9日目など、見所満載な第1週目のコースを紹介します。



ツール・ド・フランス2024 コースマップ image:A.S.O.

3年連続でフランス国外のグランデパール(開幕地)となった2024年のツール・ド・フランス。今年最大のトピックとなるのはもちろん、大会史上初となる終着地点がパリではないこと。オリンピックのため過密となったパリを避けるため、選手たちはフランス屈指のリゾート地であるニースを目指す。

イタリア中部トスカーナ州のフィレンツェからニースまでの総距離は3,498kmで、21日間に及ぶコースは平坦ステージが8、丘陵(中級山岳)ステージが4、山岳(上級山岳)ステージが7、そして2つの個人タイムトライアルが設定された。開幕3日間はイタリアを走り、フランス入国直後はいきなりガリビエ峠を駆け上がる。

最終日のフィニッシュ地点となる南仏ニース (c)CorVos

第1〜2週目はスプリンターが主役となる平坦ステージが多く、総合争いの本番は超級山岳トゥールマレーを越える第14ステージから。第15ステージの超級山岳プラトー・ド・ベイユの山頂で第2週目は終わり、第3週目の舞台となるアルプス山脈でマイヨジョーヌが本格的に争われる。

そして大会は先述したニースを舞台に、1989年以来35年振りの個人タイムトライアル(ニース)で締めくくられる。



6月29日(土)第1ステージ
フィレンツェ〜リミニ 206km(丘陵)


第1ステージ フィレンツェ〜リミニ image:A.S.O.

6月29日(土)フィレンツェ〜リミニ image:A.S.O.
近代ツールの中でも大会初日に獲得標高差3,600mを超えるのは稀なこと。それほど厳しい7つのカテゴリーが、第1ステージに用意された。

コースは往年の名選手ジーノ・バルタリの故郷であるフィレンツェをスタートし、イタリアの背骨であるアペニン山脈を西から東へと越えていく206km。約28km地点から一つ目の登りが始まり、勝負所は残り76.7kmから待ち受ける4つ(2、2、3、3級)の山岳。そしてフィニッシュ地点はサンマリノ共和国に位置する最終3級山岳の頂上(残り26.3km)から、下りと平坦路を走った先にある。

逃げに適したレイアウトであることはもちろん、集団のペース次第ではスプリントや総合勢によるアタック合戦など、マイヨジョーヌを賭けた予測不能な戦いが繰り広げられる。

フィニッシュ予定時刻:午前0時34分頃(日本時間)



6月30日(日)第2ステージ
チェゼナーティコ〜ボローニャ 199.2km(丘陵)


第2ステージ チェゼナーティコ〜ボローニャ image:A.S.O.

6月30日(日)チェゼナーティコ〜ボローニャ image:A.S.O.
イタリアでの2日目は前日より登坂距離こそ短いものの、勾配の厳しいカテゴリー山岳が6つも詰め込まれた2日連続の丘陵ステージだ。マルコ・パンターニ生誕の地チェゼナーティコから西の内陸に進む199.2kmコースの序盤は平坦路で、前半に2つの3級山岳をクリア。残り4つの丘を含むアップダウンはラスト60kmから登場する。

選手たちが終盤には登るのはイル・ロンバルディアの前哨戦ジロ・デッレミリアでお馴染みの激坂サンルーカ。この最大勾配が20%に達する丘(距離1.9km/平均10.4%)を含む18.4kmコースを2周し、フィニッシュラインはそこから11km進んだ先のボローニャ市街地に引かれている。

注目は爆発力も持ち合わせるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)はもちろん、昨年ジロ・デッレミリアで3度目の優勝を飾ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)だろう。

フィニッシュ予定時刻:午前0時6分頃(日本時間)



7月1日(月)第3ステージ
ピアチェンツァ〜トリノ 230.8km(平坦)


第3ステージ ピアチェンツァ〜トリノ image:A.S.O.

7月1日(月)ピアチェンツァ〜トリノ image:A.S.O.
イタリア最終日にしてようやくスプリンターに出番が回ってきた。今大会最も長い230.8kmステージに難所はなく、あるのは平坦路と背の低い3つの4級山岳だけ。ツールも2度制したファウスト・コッピの終焉の地トルトーネ(4級山岳)を経て、最後の丘も残り49km地点で終わるため、勝利に飢えたスピードマンたちによるスプリント勝負が見られそうだ。

その走りが期待されるのは昨年4勝のヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)や若手のアルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット・デスティニー)など。また区間優勝記録の更新かかるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)の35勝目が見られるか。

フィニッシュ予定時刻:午後11時57分頃(日本時間)



7月2日(火)第4ステージ
ピネローロ〜ヴァロワール 139.6km(山岳)


第4ステージ ピネローロ〜ヴァロワール image:A.S.O.

7月2日(火)ピネローロ〜ヴァロワール image:A.S.O.
前日の長く激しいスプリントバトルから一転、大会4日目に早くも険しい山岳ステージが用意された。イタリアのピネローロを出発した選手たちは西に進路を取り、登坂距離が39.9kmと長い2級山岳を越えてフランスに入国。直後に2つ目の2級山岳をクリアして、最後は標高2,642mの超級山岳ガリビエに臨む。

今回登るのは2022年大会で使用したテレグラフ経由ではなく、平均5.1%と勾配が緩やかな方。しかし登坂距離23kmの道のりは決して易しくはないため、総合を争う選手たちはアタックをうかがうよりも”集団から遅れてタイムを失わない”ことが最重要事項となる。ちなみにガリビエ峠の山頂をトップ通過した選手には「アンリ・デグランジュ賞」が贈られ、またフィニッシュ地点は頂上ではなく18.9kmを下った先にある。

フィニッシュ予定時刻:午前0時5分頃(日本時間)



7月3日(水)第5ステージ
サンジャン・ド・モーリエンヌ〜サン・ヴルバ 177.4km(平坦)


第5ステージ サンジャン・ド・モーリエンヌ〜サン・ヴルバ image:A.S.O.

7月3日(水)サンジャン・ド・モーリエンヌ〜サン・ヴルバ image:A.S.O.
スプリントから山岳ステージを経て、ツールは再びスプリンターの出番となる。総獲得標高差1,000mのコースは2つの4級山岳が設定された平坦ステージで、サヴォワ地方の名物であるぶどう畑の間を縫うように駆ける、風光明媚な景色が魅力のレイアウトだ。

後半はローヌ川に沿いながら北上し、ラスト25kmの平坦路でスピードを上げた集団がサン・ヴルバの市街地になだれ込む。最終ストレートは急コーナーもなく、幅広いコースがフィニッシュまで続く正真正銘のスプリンターのためのステージだ。

フィニッシュ予定時刻:午前0時16分頃(日本時間)



7月4日(木)第6ステージ
マコン〜ディジョン 163.5km(平坦)


第6ステージ マコン〜ディジョン image:A.S.O.

7月4日(木)マコン〜ディジョン image:A.S.O.
前日に勝利を収めたスプリンターは2連勝を、それ以外のライバルたちはリベンジを果たすべく集団スプリントに臨む。この日も選手たちはぶどう畑(ブルターニュ)を抜けながら、マコンから北のディジョンに向けて平坦路を駆けていく。

スプリンターや総合勢が注意しなければならないのは、進行方向が変わった直後に吹きつける横風。それによる集団分裂にはスプリンターチームはもちろん、総合系も選手を抱えるチームも細心の注意を払わなければならない。

またディジョン手前20kmからはコーナーも多く、数々の小さな町を通っていくので狭い道幅での落車にもご用心。起伏のない平坦路なので逃げ切りの可能性は極めて低く、800mの最終ストレートが白熱の集団スプリントを演出してくれるはず。スプリントバトルの第2ラウンドを静止、マイヨヴェールを引き寄せるのは誰になるか。

フィニッシュ予定時刻:午前0時19分頃(日本時間)



7月5日(金)第7ステージ
ニュイ・サン・ジョルジュ〜ジュヴレ・シャンベルタン 25.3km(個人タイムトライアル)


第7ステージ ニュイ・サン・ジョルジュ〜ジュヴレ・シャンベルタン image:A.S.O.

7月5日(金)ニュイ・サン・ジョルジュ〜ジュヴレ・シャンベルタン image:A.S.O.
マイヨジョーヌ争う選手たちにとって(4日目に次ぐ)2つ目、あるいは最初の試練がやってきた。ニュイ・サン・ジョルジュからジュヴレ・シャンベルタンを繋ぐコースは25.3kmで、中央にキュルテル・ヴェルジの丘(距離1.6km/平均6.1%)が待ち受ける。そのためアップダウンはもちろん、細かなコーナーがTTバイクを操る技術を求める。

現TT世界王者のレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)はもちろん、シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)など純粋なTTスペシャリストに適したレイアウト。しかし際立って難しい区間もないため、クライマーが大きくタイムを失う場所ではなさそうだ。

ちなみに3箇所ある中間計測地点は丘の直前(8.6km)と頂上(14.4km)、そしてフィニッシュまで続く平坦路の入口(19.9km)。ここを終えると大会最終日(第21ステージ)までTTバイクの出番はない。

最終出走者フィニッシュ予定時刻:午前0時29分頃(日本時間)



7月6日(土)第8ステージ
スミュール・アン・オーソワ〜コロンベ・レ・デュー・エグリーズ 183.4km(平坦)


第8ステージ スミュール・アン・オーソワ〜コロンベ・レ・デュー・エグリーズ image:A.S.O.

7月6日(土)スミュール・アン・オーソワ〜コロンベ・レ・デュー・エグリーズ image:A.S.O.
第1休息日まであと2日。開幕から7日間走ってきた選手たちの脚を痛めつけるようなステージが、第8日目に用意された。カテゴリーのついた山岳は5つ(いずれも短く急勾配)だが、それ以外にも細かなアップダウンが逃げを誘発し、スプリンターチームとの興味深い駆け引きが見られるはず。ラスト500mは登り基調で、フィニッシュの先にはシャルル・ド・ゴール(第18代大統領)を記念したロレーヌ十字が立っている。

獲得標高差2,400mはピュアスプリンターでも展開次第では耐えられるが、脚を残すという意味ではマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)やビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)に適したレイアウト。しかしこのようなステージではヤスペル・フィリプセン(ベルギー)とマチュー・ファンデルプール(オランダ)という2枚のカードを持つアルペシン・ドゥクーニンクが有利と言える。

フィニッシュ予定時刻:午前0時19分頃(日本時間)



7月7日(日)第9ステージ
トロワ〜トロワ 199km(丘陵)


第9ステージ トロワ〜トロワ image:A.S.O.

7月7日(日)トロワ〜トロワ 199km(丘陵) image:A.S.O.
2024年ツールの第1週目を締めくくるのは、計14箇所(総距離32.2km)の未舗装路が設定された199kmの丘陵ステージだ。更にそこに4箇所の4級山岳が加わるため、選手たちが慌ただしい最終日を迎えることとなる。No.14から1までの「白い道」のうち最長は4.2kmの第10セクター。また最も難易度の高い区間は第13、10、8セクターとなり、パンクや落車のリスクが選手たちに襲いかかる。

今年のストラーデビアンケを制したポガチャルや総合リーダーを守るワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)は、トラブル回避に務める保守的な走りをしてくるだろうか。ならば過去の優勝者であるトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)やファンデルプールの走りに注目したい。

フィニッシュ予定時刻:午前0時49分頃(日本時間)



7月8日(月)休息日 オルレアン



text:Sotaro.Arakawa
image:A.S.O.
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