2024/06/28(金) - 13:16
6月29日(土)に開幕を迎える第111回ツール・ド・フランス。中級山岳ステージで始まり個人タイムトライアルで幕を閉じる本大会で、総合優勝の証マイヨジョーヌを掴むのは誰か。ヴィンゲゴーやポガチャル、ログリッチやエヴェネプールなど有力候補をプレビューします。
イエロージャージを意味するマイヨジョーヌは総合リーダーの証。個人総合成績首位の選手だけが着用を許される栄光のジャージであり、総合優勝者は最終日ニースの表彰台でマイヨジョーヌを受け取ることになる。簡潔に説明するならば、開幕する6月29日(土)から7月21日(日)までの総距離3,498kmを最も少ない時間で走った選手が総合優勝に輝く。
仮に総合成績の上で2名が同タイムの場合は、個人タイムトライアルの成績を1/100秒のタイムまでさかのぼって比較し、それでも同タイムの場合は全ステージの順位の合計が少ない選手が上位に。それでも決まらない場合は最終ステージの順位で決定する。
第13回大会の1919年から続くマイヨジョーヌは、1987年から一貫してフランスのLCL銀行(コーポレートカラーも黄色)が今年もジャージのスポンサーを務める。もちろん毎ステージのマイヨジョーヌ着用者に与えられる「ライオンのぬいぐるみ」も健在だ。
また各ステージでは順位に応じたボーナスタイムが与えられ、ステージ1位の選手は10秒、ステージ2位の選手は6秒、ステージ3位の選手は4秒のタイムが総合時間からマイナスされる(個人TTは除く)。また計4つのステージ(第2、4、11、17ステージ)ではカテゴリーがついた山岳にもボーナスタイム(1位:8秒、2位:5秒、3位:2秒)が加算されるため、各チームの戦略に影響を及ぼす。
ヴィンゲゴーとポガチャルに対し、ログリッチとエヴェネプールはどう挑む?
2022年、23年と2連覇中のヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)にタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が挑む。その単純な構図が崩れたのは、4月に行われたイツリア・バスクカントリーでのことだった。
多くの選手を巻き込んだ落車により鎖骨と肋骨を骨折したヴィンゲゴーは、後に肺挫傷と気胸を負っていることを発表。しかしここからヴィンゲゴーは僅か1ヶ月後に練習復帰すると、驚異的な回復により高地トレーニングからツール出場にこぎつけた。本人は「状態は良く、モチベーションも高い」と語っているものの、ツールが実戦復帰となるため3連覇を狙えるコンディションであるかは不明なままだ。
世界トップの戦力でツール奪還狙うポガチャル
一方、達成すればマルコ・パンターニ(1998年)以来のダブルツールを目指すタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は今季絶好調。81kmの独走勝利を飾った今年3月のストラーデビアンケを皮切りに、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも34kmの独走優勝。そして臨んだジロでは総合2位に約10分の差をつけて総合優勝(区間6勝)を飾るなど、文字通り敵なしの強さを誇っている。
開幕前日の記者会見ではジロ後、コロナに感染していたことを告白したものの、「深刻な状態にはならなかった」とベストコンディションであることを強調。そしてポガチャルは今季の好調ぶりに加え、ツール奪還の追い風となっているのが他を圧倒するチーム力だ。
なぜならヴィスマはヴィンゲゴーの2連覇に大きく貢献したセップ・クス(アメリカ)が体調不良で不出場。そのためウィルコ・ケルデルマン(オランダ)と若手注目株マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ)が山岳アシストの大役を務めるものの、UAEは昨年総合3位で前哨戦のツール・ド・スイスを制したアダム・イェーツ(イギリス)と好調のジョアン・アルメイダ(ポルトガル)が揃う。またUAEにはパヴェル・シヴァコフ(ロシア)や若手のフアン・アユソ(スペイン)など豊富な山岳アシストがいるため、戦力的にユンボを上回る。
悲願の総合優勝を狙うログリッチと初出場のエヴェネプール
チーム戦力で言えば新たなタイトルスポンサーを迎えたレッドブル・ボーラ・ハンスグローエも、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を中心に強力なメンバーを揃えてきた。他チームならばエースであろうジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)とアレクサンドル・ウラソフ(ロシア)は献身的な山岳アシストが期待される。またログリッチ本人も前哨戦のクリテリウム・デュ・ドーフィネでは最終日の山岳で遅れる姿を見せたものの、ステージ2連勝とその実力を見せつけた。
そして先述した3名と合わせビッグ4の一人と数えられるのが、現タイムトライアル世界王者であるレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)だ。チームはスプリントなどステージ優勝狙いから一転、今年は自国のスター選手エヴェネプールのために総合系チームへと変貌。ただクライマーのミケル・ランダ(スペイン)を補強したのみと、戦力はライバルチームと比べると物足りない。
またエヴェネプールもヴィンゲゴーと同じ落車により、今年4月に鎖骨と肩甲骨を骨折。ドーフィネでは個人TTで区間優勝こそしたものの、山岳ステージでは早々と遅れるシーンが目立った。そのため山岳を耐え、第7と21ステージの個人TTでタイムを稼いで成功を狙う。
ロドリゲスとベルナルを揃えるイネオス
イネオス・グレナディアーズは4月のツール・ド・ロマンディで総合優勝を果たした23歳のカルロス・ロドリゲス(スペイン)が中心となる。調子次第ではダブルエースを担うエガン・ベルナル(コロンビア)とジロから連戦のゲラント・トーマス(イギリス)という2人の総合優勝経験者に加え、ベテランアシストのミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)が若き総合エース支える。またトーマス・ピドコック(イギリス)もジョーカーとしては面白い存在だ。
山岳では前年の総合4位サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)やフランス期待のダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)、リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)の走りにも注目。そして昨年チームで3勝を挙げたバーレーン・ヴィクトリアスはペリョ・ビルバオ(スペイン)と24歳サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)が総合争いの中心となる。
また総合表彰台に過去2度上がっているロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)は今大会、総合ではなくステージ優勝を狙う予定。開幕直前に来年のドーフィネでの引退とグラベルへの転向を発表したため、これが最後のツールとなる。
イエロージャージを意味するマイヨジョーヌは総合リーダーの証。個人総合成績首位の選手だけが着用を許される栄光のジャージであり、総合優勝者は最終日ニースの表彰台でマイヨジョーヌを受け取ることになる。簡潔に説明するならば、開幕する6月29日(土)から7月21日(日)までの総距離3,498kmを最も少ない時間で走った選手が総合優勝に輝く。
仮に総合成績の上で2名が同タイムの場合は、個人タイムトライアルの成績を1/100秒のタイムまでさかのぼって比較し、それでも同タイムの場合は全ステージの順位の合計が少ない選手が上位に。それでも決まらない場合は最終ステージの順位で決定する。
第13回大会の1919年から続くマイヨジョーヌは、1987年から一貫してフランスのLCL銀行(コーポレートカラーも黄色)が今年もジャージのスポンサーを務める。もちろん毎ステージのマイヨジョーヌ着用者に与えられる「ライオンのぬいぐるみ」も健在だ。
また各ステージでは順位に応じたボーナスタイムが与えられ、ステージ1位の選手は10秒、ステージ2位の選手は6秒、ステージ3位の選手は4秒のタイムが総合時間からマイナスされる(個人TTは除く)。また計4つのステージ(第2、4、11、17ステージ)ではカテゴリーがついた山岳にもボーナスタイム(1位:8秒、2位:5秒、3位:2秒)が加算されるため、各チームの戦略に影響を及ぼす。
ヴィンゲゴーとポガチャルに対し、ログリッチとエヴェネプールはどう挑む?
2022年、23年と2連覇中のヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)にタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が挑む。その単純な構図が崩れたのは、4月に行われたイツリア・バスクカントリーでのことだった。
多くの選手を巻き込んだ落車により鎖骨と肋骨を骨折したヴィンゲゴーは、後に肺挫傷と気胸を負っていることを発表。しかしここからヴィンゲゴーは僅か1ヶ月後に練習復帰すると、驚異的な回復により高地トレーニングからツール出場にこぎつけた。本人は「状態は良く、モチベーションも高い」と語っているものの、ツールが実戦復帰となるため3連覇を狙えるコンディションであるかは不明なままだ。
世界トップの戦力でツール奪還狙うポガチャル
一方、達成すればマルコ・パンターニ(1998年)以来のダブルツールを目指すタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は今季絶好調。81kmの独走勝利を飾った今年3月のストラーデビアンケを皮切りに、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも34kmの独走優勝。そして臨んだジロでは総合2位に約10分の差をつけて総合優勝(区間6勝)を飾るなど、文字通り敵なしの強さを誇っている。
開幕前日の記者会見ではジロ後、コロナに感染していたことを告白したものの、「深刻な状態にはならなかった」とベストコンディションであることを強調。そしてポガチャルは今季の好調ぶりに加え、ツール奪還の追い風となっているのが他を圧倒するチーム力だ。
なぜならヴィスマはヴィンゲゴーの2連覇に大きく貢献したセップ・クス(アメリカ)が体調不良で不出場。そのためウィルコ・ケルデルマン(オランダ)と若手注目株マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ)が山岳アシストの大役を務めるものの、UAEは昨年総合3位で前哨戦のツール・ド・スイスを制したアダム・イェーツ(イギリス)と好調のジョアン・アルメイダ(ポルトガル)が揃う。またUAEにはパヴェル・シヴァコフ(ロシア)や若手のフアン・アユソ(スペイン)など豊富な山岳アシストがいるため、戦力的にユンボを上回る。
悲願の総合優勝を狙うログリッチと初出場のエヴェネプール
チーム戦力で言えば新たなタイトルスポンサーを迎えたレッドブル・ボーラ・ハンスグローエも、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を中心に強力なメンバーを揃えてきた。他チームならばエースであろうジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)とアレクサンドル・ウラソフ(ロシア)は献身的な山岳アシストが期待される。またログリッチ本人も前哨戦のクリテリウム・デュ・ドーフィネでは最終日の山岳で遅れる姿を見せたものの、ステージ2連勝とその実力を見せつけた。
そして先述した3名と合わせビッグ4の一人と数えられるのが、現タイムトライアル世界王者であるレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)だ。チームはスプリントなどステージ優勝狙いから一転、今年は自国のスター選手エヴェネプールのために総合系チームへと変貌。ただクライマーのミケル・ランダ(スペイン)を補強したのみと、戦力はライバルチームと比べると物足りない。
またエヴェネプールもヴィンゲゴーと同じ落車により、今年4月に鎖骨と肩甲骨を骨折。ドーフィネでは個人TTで区間優勝こそしたものの、山岳ステージでは早々と遅れるシーンが目立った。そのため山岳を耐え、第7と21ステージの個人TTでタイムを稼いで成功を狙う。
ロドリゲスとベルナルを揃えるイネオス
イネオス・グレナディアーズは4月のツール・ド・ロマンディで総合優勝を果たした23歳のカルロス・ロドリゲス(スペイン)が中心となる。調子次第ではダブルエースを担うエガン・ベルナル(コロンビア)とジロから連戦のゲラント・トーマス(イギリス)という2人の総合優勝経験者に加え、ベテランアシストのミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)が若き総合エース支える。またトーマス・ピドコック(イギリス)もジョーカーとしては面白い存在だ。
山岳では前年の総合4位サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)やフランス期待のダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)、リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)の走りにも注目。そして昨年チームで3勝を挙げたバーレーン・ヴィクトリアスはペリョ・ビルバオ(スペイン)と24歳サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)が総合争いの中心となる。
また総合表彰台に過去2度上がっているロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)は今大会、総合ではなくステージ優勝を狙う予定。開幕直前に来年のドーフィネでの引退とグラベルへの転向を発表したため、これが最後のツールとなる。
歴代のツール総合優勝者
2023年 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク) |
2022年 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク) |
2021年 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) |
2020年 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) |
2019年 | エガン・ベルナル(コロンビア) |
2018年 | ゲラント・トーマス(イギリス) |
2017年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2016年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2015年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2014年 | ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア) |
2013年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2012年 | ブラドレー・ウィギンズ(イギリス) |
2011年 | カデル・エヴァンス(オーストラリア) |
2010年 | アンディ・シュレク(ルクセンブルク)※コンタドール失格による繰り上げ |
2009年 | アルベルト・コンタドール(スペイン) |
2008年 | カルロス・サストレ(スペイン) |
2007年 | アルベルト・コンタドール(スペイン) |
2006年 | オスカル・ペレイロ(スペイン)※ランディス失格による繰り上げ |
2005年 | |
2004年 | |
2003年 | |
2002年 | |
2001年 | |
2000年 | |
1999年 | |
1998年 | マルコ・パンターニ(イタリア) |
1997年 | ヤン・ウルリッヒ(ドイツ) |
1996年 | ビャルヌ・リース(デンマーク) |
1995年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1994年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1993年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1992年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1991年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1990年 | グレッグ・レモン(アメリカ) |
text:Sotaro.Arakawa
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