落車の頻発する雨模様のなか5時間・獲得標高5,000m超のサバイバルレース。小林海と金子宗平、そしてJCLチーム右京の山本と小石による4人の逃げは最後まで捕まらず、スプリントへ。レース展開のカギを握った選手たちのコメントをお届けする。



小林海(マトリックスパワータグ)が全日本選手権初制覇 photo:Makoto AYANO

優勝した小林海(マトリックスパワータグ)
勝てると思っていなかったので正直自分でもびっくりしています。ずっとキツかった。金子が強くて、負けるだろうなと思っていたし、JCLチーム右京は2人居るし、マサキ(山本大喜)も脚を貯めていたし。
最初からずっとキツくて、とくに序盤の5、6周がすごく速くて、これはもう無理だろうと思ってた。でも一周一周を集中してこなしました。

上りで先頭グループのペースを作る小林海(マトリックスパワータグ) photo:Makoto AYANO

(最後の局面に臨むまでどういう意図で居たのか?)あまり考えてはいなかったけど、先に2回アタックして、自分のイメージを少しでも相手に大きく見せることができればと、先に動いていました。

先頭を行く小石祐馬(JCLチーム右京)に続く小林海(マトリックスパワータグ) photo:Makoto AYANO

(ゴールスプリントについて)最後は金子が掛けたけど、200mか150m看板のところで勝ったと思った。金子も余裕があったし、僕は顔に出ないけど脚は本当にきつかったんです。でもラスト数周になって金子も余裕そうに見えるけど踏まないということはキツいんじゃないか?と思って。いや、脚はあったのかもしれないけど...。
スプリントでは「これは捲れるな」と思いました。ガチりましたね今日は。かなり。

優勝した小林海を祝福するマトリックスパワータグ photo:Makoto AYANO

2位 金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)
4人の逃げになっても、そこにJCLチーム右京の2人が入っていて、あえて後ろとのタイム差を広げすぎず微妙なタイム差のままにして自分を不安にさせて引かせようとしていると感じていました。まんまとそれにハマってしまった気もするけれど、追いつかれるのは嫌だったのでかなりの時間前を引くことになってしまいました。それでも平坦や風の強いところを避けるようにして、登りが急なところで後ろとのタイム差を広げるようにしていました。

ラスト2周最後の上りでペースを上げる金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム) photo:Makoto AYANO

最後のスプリントは「このメンバーなら行けるかな?」と思っていました。冬の間に今までやったことのないスプリントの練習をして、YouTubeで見つけた練習方法を真似してみたら200ワットくらい出力が上がったので、自分にちょっと自信がついていました。
スプリントで前に出て、でもすぐに抜かれてしまうかなと思っていたけれど、予想以上に粘れたので、もったいなかったな、と。悔しいけれど最後はああするしか無かったですね。あとはどれだけ脚を残していたかの勝負なので、仕方ないです。

今年はすごく調子が良くて、人生最高潮じゃないかと思えるほどです。今がピークかもしれませんね(笑)。
ダブルタイトルを狙っていたので悔しい気持ちはありますが、力を出し切った結果なので満足はしています。

3位 山本大喜(JCLチーム右京)

2周目、ディフェンディングチャンピオンの山本大喜(JCLチーム右京) photo:Makoto AYANO

JCLチーム右京のメンバーが集団の人数を絞っていく photo:Satoru Kato

小石(祐馬)さんには「上りでなく下りや平坦路でアタックして欲しい」と伝えて、自分は分のあるスプリント勝負に持ち込みたいというつもりでいました。しかしそれまでに攻撃をしてきたダメージが大きく、ラスト50kmから全身が攣り始めていました。
4人のなかでずっとツキイチになって我慢していましたが、最後のスプリントには備えていました。着いてって最後にスプリントに持ち込めるなら勝つ可能性はあるかな、と思っていました。最後には一度遅れた小石も追いついてきて、もう一度先にスプリントを掛けてくれたんですが、自分は腕も脚も攣っていて最後のスプリントでもまったくかからず...。

フィニッシュ後、悔しさに暮れる山本大喜(JCLチーム右京) photo:Makoto AYANO

チームとしては全員が仕事をしていい展開に持ち込めたと思います。チームは自分が望んだ最高の展開を作ってくれたが、エースである自分の力不足で勝利を逃した。4人になった時点で他の3人のほうが登れているなという感覚があって、自分は前に出れなかった。引いて遅れてはいけない、と。

世界を目指してこの1年ヨーロッパで走ってきて、しかし日本でも勝たなければいけない。ヨーロッパで日本チャンピオンジャージを着て走るためです。
この日本の特殊なレース...同じところを何度も周回して上りで何度もインターバルが掛かる。強度もまったく違う。これまでヨーロッパで戦うために体重を増やしてパワーを付けてきましたが...。
ここまでの蓄積した疲労があったわけでもなく、コンディショニングが悪かったわけでもない。しかしいつものヨーロッパのレースとは、求められるものも強度も違っていました。

10位 増田成幸(JCLチーム右京)

アタックして逃げグループをつくった増田成幸(JCLチーム右京) photo:Makoto AYANO

チームとしては勝つために中心になるのは岡、マサキ(山本大喜)、小石。それを自分と(石橋)マナブでサポートするという考えでした。逃げができたら自分かマナブが必ず乗っていこうと考えていました。なかなか決まらず、レースなかばになって皆がタレてきている感じだったとき、マサキと話をして「増田さんここで一発行ってくれますか?」と言われて自分がアタックしたんです。

自分たちが先手を取ったいい展開には持ち込めた。小石とマサキが勝負の4人に入ってくれたけど、あと一歩が足りなかった。勝ったマリノ選手が強かったですね。チーム目標にはあと一歩のところで届かなかったけど、チームとしてはうまく動けたし、皆で力を合わせて戦った結果だから大丈夫です。

5位 石上優大(愛三工業レーシングチーム)

上りで先頭集団を牽引した石上優大(愛三工業レーシングチーム) photo:Makoto AYANO

コンディショニングがうまくいかなくて苦しかったから、途中で降りようかなとも思いました。結果的には走れましたが、前で優勝争いをしたかった。勝負がしたかったです。

12位 岡本隼(愛三工業レーシングチーム)
前半から上りの得意な選手だけになる展開で、厳しかったですね。愛三としては草場と僕(岡本)が居るのでスプリントに持ち込むというのが戦略でした。大集団スプリントにはなりませんが、いくつかグループができるので、そのなかでは頭を取れるよう、前のグループで粘るように動きました。石上はこのコースは得意なので前に残る力があり、僕と草場はどのグループであっても頭を取れるように走りました。

8位争いの集団がラスト1周へ photo:Makoto AYANO

(最後は8位争いの集団で最終周回へ)ラスト1周の上りを終えた最初の下りコーナーで沿道の木が倒れてコースが塞がっていて、停まりきれずに落車してしまいました。結局はそのグループでの順位争いができず。上りの厳しいこのコースであっても何人かでトップ10に入っていければ強いチームになれると思っているので心残りです。しかし満足はできないですが、去年よりは良かったとは言えます。

6位 留目夕陽(EFエデュケーション・イージーポスト)

留目、新城、石上、岡の追走集団 photo:Makoto AYANO

「逃げを行かせて僕は後追いで」と思っていたけど、うまくいかなかったですね。逃げができて、JCLチーム右京を含む複数選手が居るチームを逃がしたことで(新城さんと)僕ら単騎の選手が追わなくちゃいけなくなり、そうするうちに脚が削られてしまった。脚が無かったこともあるけど、JCLチーム右京や他の選手らが強かった。
終盤に追走をしていて30秒~40秒まで近づいたときに一気に追いつく足がなかったのが、今の自分の力というか、実力不足の部分でした。

ただ、久しぶりに日本で走るレースは楽しかったです。7月中は日本国内で合宿を重ねて8月以降ヨーロッパに戻る予定です。まだ詳しいレーススケジュールは決まっていませんが、暫く日本に滞在して、またヨーロッパに帰ります。また頑張ります。

7位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)

ラスト1周へ。苦痛の表情を浮かべて遅れる新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:Makoto AYANO

残念な結果にはなってしまいましたね。もちろん優勝を狙ってスタートしたので...。途中落車もあり、気持ちよく終えるというレースにはならなかったですね。
(落車の理由は?) 自爆でした。その後身体が痛んでしまって...。擦過傷がありますが、転んでしまったこともレースですし、巻き戻すことはできないので、結果を受け止めます。転んでも勝つときは勝つし、今回はそれができる脚ではなかったということです。
(追走しながら留目と話したことは?)彼は単騎で走ったことはないし、日本の他のチームの選手でも焦って動いている選手が何人かいましたが、そのなかでどう立ち回ればいいかは僕が一番良く知っているから、少しアドバイスをしながら走っていました。

痛ましい姿でフィニッシュした新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:Makoto AYANO

(パリ・オリンピックに向けて)21年前、僕が自転車選手になるために降り立ったフランスはパリでの開催です。
僕の「始まりの地」でまた8月にあるオリンピック。感慨深いものがあります。そのために去年から出場枠取りをしてきたし、8月に向けてコーチとトレーニングとコンディショニングを早くからしてきていて、今のところ順調にきているので、皆さんに喜んでもらえるリザルトが持って帰れるように精一杯頑張りたいと思います。応援をよろしくお願いします。

14位 宮崎泰史(キナンレーシングチーム)

宮崎泰史(キナンレーシングチーム)と増田成幸(JCLチーム右京)の2人逃げ photo:Makoto AYANO

JCLチーム右京がずっとアタックを打っていて、チームメイトの人数が思ったより早く減ってしまっていたのもあってインターバルがかかるのも嫌だと感じていました。そこに増田(成幸)さんが行ったので、一緒に行けばローテーションを回してテンポで走れると思っていました。でもチームプレーだからと(先頭交代を)回してもらえず、タイム差が開けば回してくれると期待したけれど、甘かったですね。わかっていたことではあるけれど、あそこで行くべきではなかったです。失敗でしたね。吸収された後も力尽きてしまい、チームには申し訳なかったです。
フィジカル的にはタイムトライアルと今日のレースで行けると感じています。でも経験が足りなすぎるので、これをしっかり反省して次に活かせればと思います。


text&photo:Makoto.AYANO, Satoru Kato

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