2024/05/17(金) - 08:24
残り126km地点でマエストリと共に飛び出したジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)が、ジロ・デ・イタリア第12ステージで逃げ切り。ここ数年不振に喘いだ元世界王者が、初出場の舞台で区間優勝を手に入れた。
後半戦に突入した第107回ジロ・デ・イタリアは5月16日(木)に第12ステージを迎えた。その舞台はまるでアルデンヌクラシックのように丘が連続する193km。マルティンシクーロからアドリア海を沿岸を沿って北上するコースに平坦区間は最初の50kmだけ。その後は4つの4級山岳を含む8つの丘を越えていく。
ピュアスプリンターにとってノーチャンスであることはもちろん、登りにある程度耐性のあるスピードマンたちもペース次第では厳しそう。もちろん逃げ向きのレイアウトであり、残り9.3km地点に頂上を迎えるモンテ・ジョーヴェの丘が勝負所と見られた。
連日のように有力候補がレースを去るなか、この日は前日のフィニッシュ手前で落車したファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が自身の口で不出走を伝えた。チームのSNSに投稿された動画で「落車した際に胸を打ちつけてしまい、深刻な怪我ではないもののレース続行が不可能になってしまった。とても悲しい」と語り、初出場のジロを未勝利で去ることとなった。
逃げ切りに有利であるレイアウトであればあるほど、逃げ形成までに時間を要する今大会。逃げ向きである第12ステージもご多分に漏れず、最初の1時間の平均スピードが57km/hに達する激しい展開となり、なかでもチームとして初のグランツール出場を叶えたチューダー・プロサイクリングのマッテオ・トレンティン(イタリア)を含む3名が積極的に仕掛ける。しかしそれをプロトンは許さず、今度はサイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)ら3名が飛び出し1分のリードを得た。
そして最初の平坦区間が終わり、フィニッシュまで続く断続的なアップダウンが始まるとメイン集団からジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)がアタック。そこに脚質の似ている若手アンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)が追従し、また大会初日に勝利したジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)の姿も。
先頭の3名に追走集団が合流したため9名となり、そこに遅れてペラヨ・サンチェス(スペイン、モビスター)もジョイン。更にスーダル・クイックステップが牽引したプロトンから大人数が飛び出し、スタートから約60kmを進み38名の逃げ集団が形成される。そして逃げの人数が多過ぎると判断したアラフィリップが、ミルコ・マエストリ(イタリア、ポルティ・コメタ)を引き連れ残り126km地点でアタックした。
この日最初の4級山岳(残り99.8km地点)をマエストリが先頭で通過する頃に、36名いる第2集団との差は2分16秒まで拡がる。一方で4分53秒遅れのメイン集団では、第2集団にいる総合11位(5分57秒遅れ)のヤン・ヒルト(チェコ、スーダル・クイックステップ)を警戒したバーレーン・ヴィクトリアスが牽引。そこにリーダーチームであるUAEチームエミレーツからはルイ・オリヴェイラ(ポルトガル)が手を貸した。
第2集団では丘での速いペースによって選別がかかり、ナルバエスや第5ステージの勝者トマ・シャンピオン(フランス、コフィディス)、ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)など強力な9名の集団が形成される。またプロトンはレース先頭やナルバエス・グループではなく、ヒルトを含む第3集団とのタイム差を計算しながらペースを作ったため、残り30kmでアラフィリップたちに6分差を許した。
その後もアラフィリップとマエストリはローテーションを回しながら順調に残り距離を消化していき、残り15km地点で後続集団との差は45秒。またヒルトたちを飲み込んだメイン集団からは6分15秒のリードを得たため、この時点で第12ステージの勝者は先頭の2人とそれを追う9名に絞られた。
カテゴリーのつかない最後の丘モンテ・ジョーヴェに入り、アラフィリップが加速してマエストリを引き離す。その50秒後方ではヴァルグレンのペースアップにより人数が絞られ、頂上手前の急坂ではクインテン・ヘルマンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が良いリズムで登っていく。その動きにより追走はヘルマンスとナルバエスの2名になったものの、肝心のアラフィリップとの差は35秒から縮まらない。
残り126km地点から先頭に立ったアラフィリップは下りと平坦路でも一切そのスピードを落とすことなく、フィニッシュラインの引かれたファーノの街に到着。そして最終ストレートの沿道に集まった大観衆の声援に応えながら、元世界王者が自身初となるジロ区間優勝を掴み取った。
これでツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャに続き、3大ツール全てでの区間優勝を果たしたアラフィリップ。「まず序盤60kmのプロトンを牽引してくれたチームメイトに感謝したい。そのおかげで逃げに乗ることができ、その後はミルコ(マエストリ)と良い協調を築くことができた。単独先頭に立ってから、無線で後ろからナルバエスが迫っていると伝えられたんだ。だから全力で登り、夢だったジロでの勝利を叶えた」と、2021年のツール以来3年振りとなるグランツールでの勝利を喜んだ。
2022年の落車による怪我以降、時折勝利を挙げながらも以前のような成績が残せないでいたアラフィリップ。また昨年の冬には所属チームのGMであるパトリック・ルフェーブル氏との軋轢も報じられるなか、改めてその強さをジロという舞台で証明した。
2位には31秒遅れでナルバエスが入り、ヘルマンスは3位。プロトンでは最後の丘でボーラ・ハンスグローエがダニエル・マルティネス(コロンビア)のために攻勢に出るシーンがあったものの、成功はせず5分25秒遅れでフィニッシュ。そのため総合順位に変動はなかった。
後半戦に突入した第107回ジロ・デ・イタリアは5月16日(木)に第12ステージを迎えた。その舞台はまるでアルデンヌクラシックのように丘が連続する193km。マルティンシクーロからアドリア海を沿岸を沿って北上するコースに平坦区間は最初の50kmだけ。その後は4つの4級山岳を含む8つの丘を越えていく。
ピュアスプリンターにとってノーチャンスであることはもちろん、登りにある程度耐性のあるスピードマンたちもペース次第では厳しそう。もちろん逃げ向きのレイアウトであり、残り9.3km地点に頂上を迎えるモンテ・ジョーヴェの丘が勝負所と見られた。
連日のように有力候補がレースを去るなか、この日は前日のフィニッシュ手前で落車したファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が自身の口で不出走を伝えた。チームのSNSに投稿された動画で「落車した際に胸を打ちつけてしまい、深刻な怪我ではないもののレース続行が不可能になってしまった。とても悲しい」と語り、初出場のジロを未勝利で去ることとなった。
逃げ切りに有利であるレイアウトであればあるほど、逃げ形成までに時間を要する今大会。逃げ向きである第12ステージもご多分に漏れず、最初の1時間の平均スピードが57km/hに達する激しい展開となり、なかでもチームとして初のグランツール出場を叶えたチューダー・プロサイクリングのマッテオ・トレンティン(イタリア)を含む3名が積極的に仕掛ける。しかしそれをプロトンは許さず、今度はサイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)ら3名が飛び出し1分のリードを得た。
そして最初の平坦区間が終わり、フィニッシュまで続く断続的なアップダウンが始まるとメイン集団からジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)がアタック。そこに脚質の似ている若手アンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)が追従し、また大会初日に勝利したジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)の姿も。
先頭の3名に追走集団が合流したため9名となり、そこに遅れてペラヨ・サンチェス(スペイン、モビスター)もジョイン。更にスーダル・クイックステップが牽引したプロトンから大人数が飛び出し、スタートから約60kmを進み38名の逃げ集団が形成される。そして逃げの人数が多過ぎると判断したアラフィリップが、ミルコ・マエストリ(イタリア、ポルティ・コメタ)を引き連れ残り126km地点でアタックした。
この日最初の4級山岳(残り99.8km地点)をマエストリが先頭で通過する頃に、36名いる第2集団との差は2分16秒まで拡がる。一方で4分53秒遅れのメイン集団では、第2集団にいる総合11位(5分57秒遅れ)のヤン・ヒルト(チェコ、スーダル・クイックステップ)を警戒したバーレーン・ヴィクトリアスが牽引。そこにリーダーチームであるUAEチームエミレーツからはルイ・オリヴェイラ(ポルトガル)が手を貸した。
第2集団では丘での速いペースによって選別がかかり、ナルバエスや第5ステージの勝者トマ・シャンピオン(フランス、コフィディス)、ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)など強力な9名の集団が形成される。またプロトンはレース先頭やナルバエス・グループではなく、ヒルトを含む第3集団とのタイム差を計算しながらペースを作ったため、残り30kmでアラフィリップたちに6分差を許した。
その後もアラフィリップとマエストリはローテーションを回しながら順調に残り距離を消化していき、残り15km地点で後続集団との差は45秒。またヒルトたちを飲み込んだメイン集団からは6分15秒のリードを得たため、この時点で第12ステージの勝者は先頭の2人とそれを追う9名に絞られた。
カテゴリーのつかない最後の丘モンテ・ジョーヴェに入り、アラフィリップが加速してマエストリを引き離す。その50秒後方ではヴァルグレンのペースアップにより人数が絞られ、頂上手前の急坂ではクインテン・ヘルマンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が良いリズムで登っていく。その動きにより追走はヘルマンスとナルバエスの2名になったものの、肝心のアラフィリップとの差は35秒から縮まらない。
残り126km地点から先頭に立ったアラフィリップは下りと平坦路でも一切そのスピードを落とすことなく、フィニッシュラインの引かれたファーノの街に到着。そして最終ストレートの沿道に集まった大観衆の声援に応えながら、元世界王者が自身初となるジロ区間優勝を掴み取った。
これでツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャに続き、3大ツール全てでの区間優勝を果たしたアラフィリップ。「まず序盤60kmのプロトンを牽引してくれたチームメイトに感謝したい。そのおかげで逃げに乗ることができ、その後はミルコ(マエストリ)と良い協調を築くことができた。単独先頭に立ってから、無線で後ろからナルバエスが迫っていると伝えられたんだ。だから全力で登り、夢だったジロでの勝利を叶えた」と、2021年のツール以来3年振りとなるグランツールでの勝利を喜んだ。
2022年の落車による怪我以降、時折勝利を挙げながらも以前のような成績が残せないでいたアラフィリップ。また昨年の冬には所属チームのGMであるパトリック・ルフェーブル氏との軋轢も報じられるなか、改めてその強さをジロという舞台で証明した。
2位には31秒遅れでナルバエスが入り、ヘルマンスは3位。プロトンでは最後の丘でボーラ・ハンスグローエがダニエル・マルティネス(コロンビア)のために攻勢に出るシーンがあったものの、成功はせず5分25秒遅れでフィニッシュ。そのため総合順位に変動はなかった。
ジロ・デ・イタリア2024第12ステージ結果
1位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ) | 4:07:44 |
2位 | ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | +0:31 |
3位 | クインテン・ヘルマンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | +0:32 |
4位 | ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) | +0:43 |
5位 | クリスティアン・スカローニ(イタリア、アスタナ・カザクスタン) | |
6位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、チューダー・プロサイクリング) | +1:30 |
7位 | サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック) | |
8位 | ハイス・レイムライゼ(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | |
9位 | ミルコ・マエストリ(イタリア、ポルティ・コメタ) | |
10位 | バンジャマン・トマ(フランス、コフィディス) | |
13位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | +5:25 |
12位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
17位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 45:22:35 |
2位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) | +2:40 |
3位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +2:56 |
4位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +3:39 |
5位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +4:27 |
6位 | ロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | +4:57 |
7位 | ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、アスタナ・カザクスタン) | +5:19 |
8位 | フィリッポ・ザナ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) | +5:23 |
9位 | エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア、モビスター) | +5:28 |
10位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | +5:52 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | 229pts |
2位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 166pts |
3位 | ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 92pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 104pts |
2位 | シモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス) | 59pts |
3位 | ヴァランタン・パレパントル(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) | 55pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 45:27:02 |
2位 | フィリッポ・ザナ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) | +0:56 |
3位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | +1:25 |
チーム総合成績
1位 | デカトロンAG2Rラモンディアル | 136:21:48 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +7:07 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | +20:31 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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