世界王者の名に相応しい圧巻の強さ。第4回パリ〜ルーベ・ファムはヴェロドロームでの小集団スプリントに持ち込まれ、自ら厳しい展開に持ち込んだロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム)がフォスやバルサモを下し、初優勝に輝いた。



初制覇目指すマリアンヌ・フォス photo:CorVos
バルサモとファンダイクを揃えるリドル・トレック photo:CorVos


アルカンシエルを着用して悲願の優勝を狙うロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos

その過酷さから「北の地獄」とも呼ばれるパリ〜ルーベは、今年も女子レースが先陣を切る。その舞台となるのはパリ近郊のドゥナンから蛇行するように石畳(パヴェ)を越え、北のルーベ・ヴェロドロームを目指す148.5kmだ。

登場するパヴェ・セクターは全17箇所(総距離29.2km)で、今年もアランベールは通過しないものの、最高難易度を示す5つ星の「No.11 モンサン・ぺヴェル」と「No.4 カルフール・ド・ラルブル」は健在。曇り空ながら気温は20度を越え、現地時間午後1時45分にスタートが切られた。

ゼッケン1をつけて走り出したのは、昨年覇者かつカナダ王者のアリソン・ジャクソン(EFエデュケーション・キャノンデール)。また世界王者ロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム)は初制覇を目指すべくロレーナ・ウィーベス(オランダ)と共に臨み、1週間前のロンド・ファン・フラーンデレンを制したエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)は不出場のためリドル・トレックはエリーザ・バルサモ(イタリア)をエースに据えた。

DSMフィルメニッヒ・ポストNLの先導でこの日最初の石畳区間に突入 photo:CorVos

序盤に単独逃げを試みたのは地元フランス出身のヴィクトワール・ジョンシェイ(チームコムギ・グランデスト)。それを追うメイン集団ではジャクソンの落車など小さなトラブルもありながら、最大2分に迫るリードを得たジョンシェイを早々と吸収。その後はモビスターや好調のマリアンヌ・フォス(オランダ)を擁するヴィスマ・リースアバイクがプロトンを先導し、DSMフィルメニッヒ・ポストNLを先頭にこの日一つ目の石畳「No.17 ホーニング〜ヴァンディニー」に突入した。

初制覇に燃えるコペッキーはトラブル回避の最善策である集団先頭付近に位置を取り、時には先頭に出ながら最初の石畳区間をクリアする。そしてセクター14を前の舗装路区間ではアムベル・クラーク(オランダ、FDJスエズ)がアタックし、ウィーベスが引き戻した直後にジャクソンがアタック。そのため13の石畳を残す地点(残り66km)からレースは激しい展開に持ち込まれた。

レース中盤から早くもペースを上げ、展開を厳しくするロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos

セクター13の直前にはコペッキーがチームカーからアーレンキーを受け取り、石畳で緩んだステムのネジを自ら締めるシーンもありながら、選手たちは4つ星の「No14. オシー・レ・オルシ〜ベルセ」に突入。そこで猛スピードで集団先頭に復帰したコペッキーは自らペースを上げ、フォスとファイファー・ジョルジ(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)、クリスティーナ・シュヴァインバーガー(オーストリア、フェニックス・ドゥクーニンク)の3名が食らいつく。

10秒のリードでこの日初の5つ星「No.11 モンサン・ぺヴェル」に突入した先頭4名だったが、エレン・ファンダイク(オランダ、リドル・トレック)の先導の甲斐もあり追走集団がコペッキーらに合流。コペッキーやファンダイクによる加速もありながら、地元フランスの24歳ジャド・ヴィエル(フランス、FDJスエズ)が集団を抜け出し単独先頭に立った。

ヴィエルが30秒差を得たことでプロトンのペースは落ち着き、石畳と石畳を繋ぐ舗装路に出る度にファンダイクがペースアップを試みる。それにメイン集団から一人、また一人と選手が遅れていき、ヴィエルを捉える頃にその数は31名まで絞られる。その後クラークの飛び出しにファンダイクが反応し、先頭に立った2名は後続に15秒差をつけながら「No.5 カンフィン・アン〜ペヴェル」に突入した。

シクロクロスで培ったテクニックで安定した走りを見せるマリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

アタックや集団牽引など、アシストに徹したエレン・ファンダイク(オランダ、リドル・トレック) photo:CorVos

追走するメイン集団ではコペッキーがペースを上げ、フォスとバルサモ以外を振り落とす。コペッキーらがクラークとファンダイクに追いついたため、先頭は実力者揃いの5名となり、この日2つ目にして最後の5つ星「No.4 カルフール・ド・ラルブル」に突入。そこでバルサモが遅れ、追走集団から単独追走するジョルジと2人で先頭を目指した。

しかし先頭のペースが緩んだため、ジョルジとバルサモは先頭集団にジョイン。その後はファンダイクが先頭でペースを作りながら最後3つの石畳をクリアし、そのまま先頭の6名がルーベ・ヴェロドロームに到着した。

1周半を回るヴェロドロームで主導権を握ったのは、スプリンターのバルサモとアシストのファンダイクを残すリドル・トレック。大観衆のなかファンダイクを先頭にラスト1周の鐘が鳴り、2番手にはジョルジ、その背後にフォスがつく。そして残り半周で早くもジョルジが腰を上げ、懸命に踏み込むイギリス王者を外側からバルサモ、内側からフォスが追い抜く。

フォスとバルサモを抜き、先頭に立ったロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム) photo:A.S.O.

それまで静観していたコペッキーが最終コーナーでようやくスプリントを開始し、最終ストレートでバルサモの外側から2人に並ぶ。そしてトップスピードで2人のスプリンターを上回ったコペッキーが、雄叫びを上げながらフィニッシュラインを駆け抜けた。

初優勝を果たしたロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム) photo:A.S.O.

トラック競技の中距離2種目(エリミネーション&ポイントレース)の世界王者でもあるコペッキーが見せた、狙いすましたヴェロドロームでのスプリント。

おでこに土埃をつけながらインタビューに答えたコペッキーは、「ここでの勝利が今シーズンの目標だった。チームが私に自信を与えてくれ、レースまでの2日間はチームが私を笑わせ、リラックスさせてくれた。それがこの勝利に繋がった。フォスとバルサモという2人の強いスプリンターがいるなか、スプリントには緊張しながら臨んだ。最後は行き場をなくしたものの、皆が早めにスプリントしてくれたので勝つことができた」と、念願の制覇を振り返った。

そして表彰式にて石畳で作られたトロフィーを高々と掲げたコペッキー。2位にはバルサモ、3位にはフォスをフィニッシュライン直前で抜いたジョルジが入り、表彰台に上がっている。

石のトロフィーを掲げるロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos

パリ〜ルーベ・ファム2024表彰台:2位バルサモ、1位コペッキー、3位ジョルジ photo:CorVos

パリ〜ルーベ・ファム2024結果
1位 ロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム) 3:47:13
2位 エリーザ・バルサモ(イタリア、リドル・トレック)
3位 ファイファー・ジョルジ(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)
4位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)
5位 アムベル・クラーク(オランダ、FDJスエズ)
6位 エレン・ファンダイク(オランダ、リドル・トレック) +0:06
7位 ロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス・プロタイム) +0:28
8位 ヴィクトワール・ベルトー(フランス、コフィディス・ウィメン)
9位 マリー・ルネット(フランス、FDJスエズ)
10位 キンバリー・ルコート(モーリシャス、AGインシュランス・スーダル)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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