2024/03/28(木) - 17:00
2024モデルの新作として注目集めるビアンキの軽量モデル"SPECIALISSIMA"。レーシンググレードの"RC"を筆頭に、"PRO"、"COMP"と用意される全3モデルを、ビアンキサポートライダーとして国内レースを走ってきた編集部員・高木が一気乗り。
創業139年と長い歴史を持ち、現存する世界最古のバイクブランドとして知られるビアンキ。コーポレートカラーのチェレステは色鮮やかかつお洒落なイメージもあり、老若男女、ベテランからビギナーまで幅広い層から支持を集めるブランドでもある。
レースシーンにおいてもその存在感は際立っている。数年前にはロットNLユンボへ供給し数々のレースで勝利を収めており、現在ではアルケアB&Bホテルズへバイクをサポート。世界最高峰のワールドツアーレースで、熱い戦いを繰り広げる選手を支えるブランドだ。
そんなビアンキが2024モデルとして発表したのが、軽量オールラウンダーのSPECIALISSIMA。ピュアクライマーとして開発されてきたシリーズに、エアロ性能を加えることで、あらゆるシーンで活躍するオールラウンドレーサーとして長足の進歩を遂げた一作だ。
注目集まる新型SPECIALISSIMAだが、その性能を確かめられるようにとショップ/メディア向け試乗会が開催された。舞台となったのは神奈川県葉山市の湘南国際村。アップダウンに富んだエリアながら海に面し、時折強い風が吹きつけるロケーションは、SPECIALISSIMAのクライミングバイクとしての側面だけでなく、強化されたエアロダイナミクスを体感するにもうってつけ。
今回、テストを担当するのは、歴代OLTREシリーズやSPECIALISSIMAシリーズなど、多くのビアンキバイクをテストし、ビアンキのサポートライダーの経歴もある私、CW編集部員の高木。エアロロードのOLTREシリーズと同様に、SPECIALISSIMAシリーズも、"RC"、"PRO"、"COMP"という3つのグレードが用意される。それでは、それぞれ3モデルのインプレッションをお届けしよう。
ビアンキ SPECIALISSIMA RC
SPECIALISSIMAの中で最高グレードに位置付けられる"SPECIALISSIMA RC"。ハイモジュラスカーボンを使用したフレームはシートステーやチェーンステーを細く設計する一方、ヘッドチューブ、トップチューブ、ダウンチューブなど前部分に重量を配分することで、優れたクライミング性能を発揮。一方で、OLTREの開発で得たノウハウをもとに、エアロダイナミクスにも優れるデザインも与えられている。
ビアンキのレーシング部門であるレパルトコルサは「急勾配でなくても速さが発揮できるようチューニングを施した」という新型SPECIALISSIMA。エアロロードである"OLTRE RC"に対し、勾配8.8%以上でなければ有利とならなかった旧作に対し、新モデルでは6.2%以上の斜度であればSPECIALISSIMAの方が速いという試験結果を残している。
完成車にはステム一体型ハンドル"RCインテグレーテッドハンドルバー"が搭載される。ハンドルの形状は2度フレアし、リーチは73mmでドロップ125mmのコンパクトハンドルとなる。もちろん軽量性にも優れており、330g(ステム長110mm、ハンドル幅380mm)という数値をマークしている。
RC完成車にはREPARTO CORSE 33R CERAMITECHチューブレスレディーカーボンホイールが装着されている。リム内幅は21mmで、主流となりつつある28Cタイヤとの相性も良く、33mmハイトというスペックはオールラウンドに使いやすい。フロントが640g、リアが740g、前後で1380gとレースに即投入できるスペックだ。
更に、145gと軽量な"C139カーボンサドル"が装着されるなど、RC完成車にアセンブルされるレパルトコルセ製のパーツ群はどれをとっても非常に高性能。フレーム重量はもちろん、これらのパーツの存在もあり、55サイズのペダルレス完成車重量が6.6kgに仕上げられている。
カラーリングはフレームの上半分がマットカーボンで下側へ行くにつれチェレステにグラデーションしていくCARBON/CK METALLIC/CK16の1色展開。ダウンチューブの右側面にはBIANCHロゴ、左側面にREPARTO CORSEロゴが入る、RCならではのアシンメトリーデザインとなる。
サイズは47と50、53、55、57の5サイズ展開。価格はフレームセットで792,000円(税込)、デュラエースR9270完成車では、パワーメーター付きのFC-R9200-Pが付属し、価格は1,947,000円(税込)となる。
■SPECIALISSIMA RC インプレッション
SPECIALISSIMA RCを実際に手に取るのは初めてだったが、持ち上げてみると非常に軽い。フレームの形状を見ても、F1やSUPER GTなどのモータースポーツのマシンのような無駄がない形状のレーシングバイクで乗る前からワクワクさせられる。
一踏み目から感じる加速感に加えて、足から伝わってくるレースバイクらしい剛性感。踏み込んだ力がBBからチェーンステー、リアホイールへ伝わり推進力へと変わっていく。低速域から高速域まで一気に加速できるため、踏んでいて楽しめる。一方で、バイク自体がライダーに求める脚力レベルは高いように感じた。それも含めてレーシングモデル"RC"だと。
RC完成車に搭載されている一体型ハンドル"RCインテグレーテッドハンドルバー"はハンドル幅が380mmで2度フレアするというエアロトレンドを抑えた形状が魅力的。ブラケットを内向きに倒すセッティングも規制された今、ブラケット部の幅が狭いハンドルのニーズは増していくだろうことを考えると、レーサーにとっては嬉しい設計だ。剛性感も高く、全力でもがいてもハンドルがよじれないため、思い切りスプリントすることができる。使いこなすには上半身の筋肉も必要そうだ。
一方で、ステム一体型ハンドルに慣れていないと乗り心地は硬く感じてしまいそうだ。ただ、一体型ハンドルも慣れが必要なパーツの一つとなるので、使いこなせてしまえばレースでアドバンテージを得られるはず。
平地巡航に関しては軽量ロードではあるものの、エアロ性能に優れるフレームやステム一体型ハンドル、レパルトコルセのホールのおかげで、速度を維持していくのも容易だった。
長い登りに入り、軽いギアで大きくバイクを左右に振りながらダンシングしてみたが、非常に振りが軽く乗りやすい。フレームだけでなく、ハンドルやサドルなど、バイク上部のパーツが軽い恩恵を最も感じられるシチュエーションだ。
気になるのは同門のライバルであるOLTRE RCとの比較だろう。昨年、OLTRE RCを試乗させてもらった際には、登り、特に緩斜面ではエアロロードらしからぬ登りの性能を感じた。その経験を踏まえれば、平均時速が速い緩斜面ではOLTRE RCに軍配が上がりそうだが、急斜面になったとたんSPECIALISSIMAは水を得た魚のように加速していく。6.2%の斜度が閾値となるというレパルトコルセのテスト結果は、体感としても妥当だろう。
また、経験上軽量バイクはクイックだったりピーキーだったりすることが多いだが、SPECIALISSIMAに関しては下りも扱いやすい印象だ。REPARTO CORSE 33R CERAMITECHチューブレスレディーカーボンホイールは硬すぎず柔らかすぎない程よい剛性感。脚にもダメージが来づらい乗り味である一方、ダウンヒルにおいてはブレることなく正確なライントレースを可能とする。
一方、素直な性格のフレームなので組み合わせるホイールによって色んなカスタムが出来そうだ。高剛性な25~40mmハイトのホイールを組み合わせればヒルクライム、40mm以上のリムハイトのホイールを合わせればロードレースやクリテリウムで活躍してくれる1台に仕上げられるだろう。SPECIALISSIMA RCは一秒でも速く走りたいレーサーにおすすめしたい。
ビアンキ SPECIALISSIMA PRO
続いてはSPECIALISSIMA PRO。ジオメトリーやデザインはRCと同じくハイモジュラスカーボンを使用したフレームで、一見するとカラーリングの違いだけに見えてしまう。その大きな違いはビアンキ独自の振動除去テクノロジー"カウンターヴェイル"を搭載している点だ。
完成車に用意されるハンドルも、RC同様にステム一体型ハンドル"RCインテグレーテッドハンドルバー"を採用。サドルはカーボンレールを採用し、重量は180gのVelomann Mitora 139 Hyperサドルが装着されている。
ホイールはVelomann Palladium チューブレスレディーカーボンホイールを標準装備。フロントが684g、リアが776g、前後で1460gとレースやトレーニングまで幅広く使用できるスペックだ。リムハイトが33mmでオールラウンドに使いやすく、タイヤ幅は32Cまで対応している。
カラーはMW - CARBON/CKMETALLIC/CK16とMV - CARBON/GRAPHITE IRID/BLACKの2色がラインアップされる。サイズは47と50、53、55、57の5サイズ展開。価格はフレームセットで638,000円(税込)、ULTEGRA R8100シリーズの完成車で1,177,000円(税込)。
■SPECIALISSIMA PROインプレッション
漕ぎ出しからも剛性の高さを感じ、RCよりはしなやかではあるものの踏んだ感触がダイレクトな印象だ。また、Velomann Palladium チューブレスレディーカーボンホイールのパリっとした乗り味のおかげで、加速も非常にスムーズだ。スピードが乗ってからの巡航も軽快だ。ペダルレスの状態で6.6kgのRCと比べると、PROは7.0kgと400gほどの重量増になるが、ディスクロードであることを考慮しても、十分すぎる軽さに感じる。
上位モデルと共通のステム一体型ハンドルの"RCインテグレーテッドハンドルバー"が搭載され、ハンドル回りがエアロになったことでハンドルの風抜けが良く、加速も巡航性能もスムーズな印象になっている。ハンドリングもニュートラルで操作しやすい。
ビアンキ独自の振動除去テクノロジー"カウンターヴェイル"を搭載しているとあって、路面に凹凸がある荒れた舗装路でも、非常に乗り心地が良いのもPROの大きなメリットだ。レースバイクであっても、ダイレクトな振動が伝わってくるのはストレスに感じるし、ダメージが蓄積されるため、細かな振動をカットしてくれるのは好印象。
登りも軽快で、シッティングでケイデンスを高めながら駆け上がっていくことも、ダンシングでリズミカルに登っていくこともできる。登りが好きになれるバイクだと感じる。レースはもちろんだが、カウンターヴェイルのおかげで乗り心地も良くサイクリングにもピッタリな一台だ。RCがレースに特化したレーシングバイクであるなら、PROはレースからゆったりライドまでこなせる懐の深いバイクだった。
ビアンキ SPECIALISSIMA COMP
SPECIALISSIMAシリーズではミドルグレードとなる"COMP"。オールラウンドに使用できるカーボンディスクロードで、ロードレースにチャレンジしたい方やカスタムを楽しみたい方向けに用意された一台だ。
RCとPROの完成車ではステム一体型ハンドルが採用されているのに対し、COMPの完成車ではトラディショナルなアルミ製のエアロステムとハンドルを採用している。サドルには220gのVelomann Mitora H1 139サドルを搭載した。
PROグレードと同様にVelomann Palladium チューブレスレディーカーボンホイールがアセンブルされている。レースやトレーニングまで幅広く使用できる。リムハイトが33mmでオールラウンドに使いやすく、タイヤ幅は32Cまで対応している。
カラーはビアンキらしいMQ-CK16/GRAPHITE、MF-GRAPHITE/BLACKの2色がラインアップされる。サイズは47と50、53、55、57の5サイズ展開。価格は105 R7150シリーズの完成車で836,000円(税込)。
■SPECIALISSIMA COMPインプレッション
完成車重量7.8kgとミドルグレードらしい重量感ではあるものの、漕ぎ出しからはSPECIALISSIMAのどのグレードにも共通する剛性の高さを体感できるのがこのCOMPの魅力。
ステム一体型ハンドルを採用していないことも特徴で、ハンドルに拘りがあるライダーやポジションの固まっていないビギナーにもマッチしてくれる。剛性に優れるフレームに対してステムを交換することでしなやかさや硬さを調整するなど、ハンドル回りのカスタムもしやすい一台。
スタンダードなグレードであるものの登りや平坦、下りも安定した走りが特徴的。持った時の重量は感じるものの、ダンシング時には軽快で、スタンダードモデルとは思えない性能を秘めているように感じた。
さらに、ニュートラルなハンドリングで乗りやすい。リムブレーキバイクからディスクロードに乗り換える方にもおすすめできる。SPECIALISSIMA COMPはロードレースやヒルクライムバイクなどでもしっかり活躍してくれるポテンシャルを秘めつつ、自身の好みに寄せたバイクを作り上げたいサイクリストにおすすめしたい万能な一台だった。
今回のビアンキ試乗会では多くのモデルの試乗車が用意されていたため、vol.1ではSPECIALISSIMAの全グレードをインプレッション。そして、vol.2ではOLTREシリーズに加わったエントリーグレード「OLTRE RACE」とSPECIALISSIMAと共にモデルチェンジを果たしたミドルグレード・オールラウンドバイク「SPRINT」をインプレッションしていく予定だ。
text:Michinari TAKAGI
photo:Naoki Yasuoka
創業139年と長い歴史を持ち、現存する世界最古のバイクブランドとして知られるビアンキ。コーポレートカラーのチェレステは色鮮やかかつお洒落なイメージもあり、老若男女、ベテランからビギナーまで幅広い層から支持を集めるブランドでもある。
レースシーンにおいてもその存在感は際立っている。数年前にはロットNLユンボへ供給し数々のレースで勝利を収めており、現在ではアルケアB&Bホテルズへバイクをサポート。世界最高峰のワールドツアーレースで、熱い戦いを繰り広げる選手を支えるブランドだ。
そんなビアンキが2024モデルとして発表したのが、軽量オールラウンダーのSPECIALISSIMA。ピュアクライマーとして開発されてきたシリーズに、エアロ性能を加えることで、あらゆるシーンで活躍するオールラウンドレーサーとして長足の進歩を遂げた一作だ。
注目集まる新型SPECIALISSIMAだが、その性能を確かめられるようにとショップ/メディア向け試乗会が開催された。舞台となったのは神奈川県葉山市の湘南国際村。アップダウンに富んだエリアながら海に面し、時折強い風が吹きつけるロケーションは、SPECIALISSIMAのクライミングバイクとしての側面だけでなく、強化されたエアロダイナミクスを体感するにもうってつけ。
今回、テストを担当するのは、歴代OLTREシリーズやSPECIALISSIMAシリーズなど、多くのビアンキバイクをテストし、ビアンキのサポートライダーの経歴もある私、CW編集部員の高木。エアロロードのOLTREシリーズと同様に、SPECIALISSIMAシリーズも、"RC"、"PRO"、"COMP"という3つのグレードが用意される。それでは、それぞれ3モデルのインプレッションをお届けしよう。
ビアンキ SPECIALISSIMA RC
SPECIALISSIMAの中で最高グレードに位置付けられる"SPECIALISSIMA RC"。ハイモジュラスカーボンを使用したフレームはシートステーやチェーンステーを細く設計する一方、ヘッドチューブ、トップチューブ、ダウンチューブなど前部分に重量を配分することで、優れたクライミング性能を発揮。一方で、OLTREの開発で得たノウハウをもとに、エアロダイナミクスにも優れるデザインも与えられている。
ビアンキのレーシング部門であるレパルトコルサは「急勾配でなくても速さが発揮できるようチューニングを施した」という新型SPECIALISSIMA。エアロロードである"OLTRE RC"に対し、勾配8.8%以上でなければ有利とならなかった旧作に対し、新モデルでは6.2%以上の斜度であればSPECIALISSIMAの方が速いという試験結果を残している。
完成車にはステム一体型ハンドル"RCインテグレーテッドハンドルバー"が搭載される。ハンドルの形状は2度フレアし、リーチは73mmでドロップ125mmのコンパクトハンドルとなる。もちろん軽量性にも優れており、330g(ステム長110mm、ハンドル幅380mm)という数値をマークしている。
RC完成車にはREPARTO CORSE 33R CERAMITECHチューブレスレディーカーボンホイールが装着されている。リム内幅は21mmで、主流となりつつある28Cタイヤとの相性も良く、33mmハイトというスペックはオールラウンドに使いやすい。フロントが640g、リアが740g、前後で1380gとレースに即投入できるスペックだ。
更に、145gと軽量な"C139カーボンサドル"が装着されるなど、RC完成車にアセンブルされるレパルトコルセ製のパーツ群はどれをとっても非常に高性能。フレーム重量はもちろん、これらのパーツの存在もあり、55サイズのペダルレス完成車重量が6.6kgに仕上げられている。
カラーリングはフレームの上半分がマットカーボンで下側へ行くにつれチェレステにグラデーションしていくCARBON/CK METALLIC/CK16の1色展開。ダウンチューブの右側面にはBIANCHロゴ、左側面にREPARTO CORSEロゴが入る、RCならではのアシンメトリーデザインとなる。
サイズは47と50、53、55、57の5サイズ展開。価格はフレームセットで792,000円(税込)、デュラエースR9270完成車では、パワーメーター付きのFC-R9200-Pが付属し、価格は1,947,000円(税込)となる。
■SPECIALISSIMA RC インプレッション
SPECIALISSIMA RCを実際に手に取るのは初めてだったが、持ち上げてみると非常に軽い。フレームの形状を見ても、F1やSUPER GTなどのモータースポーツのマシンのような無駄がない形状のレーシングバイクで乗る前からワクワクさせられる。
一踏み目から感じる加速感に加えて、足から伝わってくるレースバイクらしい剛性感。踏み込んだ力がBBからチェーンステー、リアホイールへ伝わり推進力へと変わっていく。低速域から高速域まで一気に加速できるため、踏んでいて楽しめる。一方で、バイク自体がライダーに求める脚力レベルは高いように感じた。それも含めてレーシングモデル"RC"だと。
RC完成車に搭載されている一体型ハンドル"RCインテグレーテッドハンドルバー"はハンドル幅が380mmで2度フレアするというエアロトレンドを抑えた形状が魅力的。ブラケットを内向きに倒すセッティングも規制された今、ブラケット部の幅が狭いハンドルのニーズは増していくだろうことを考えると、レーサーにとっては嬉しい設計だ。剛性感も高く、全力でもがいてもハンドルがよじれないため、思い切りスプリントすることができる。使いこなすには上半身の筋肉も必要そうだ。
一方で、ステム一体型ハンドルに慣れていないと乗り心地は硬く感じてしまいそうだ。ただ、一体型ハンドルも慣れが必要なパーツの一つとなるので、使いこなせてしまえばレースでアドバンテージを得られるはず。
平地巡航に関しては軽量ロードではあるものの、エアロ性能に優れるフレームやステム一体型ハンドル、レパルトコルセのホールのおかげで、速度を維持していくのも容易だった。
長い登りに入り、軽いギアで大きくバイクを左右に振りながらダンシングしてみたが、非常に振りが軽く乗りやすい。フレームだけでなく、ハンドルやサドルなど、バイク上部のパーツが軽い恩恵を最も感じられるシチュエーションだ。
気になるのは同門のライバルであるOLTRE RCとの比較だろう。昨年、OLTRE RCを試乗させてもらった際には、登り、特に緩斜面ではエアロロードらしからぬ登りの性能を感じた。その経験を踏まえれば、平均時速が速い緩斜面ではOLTRE RCに軍配が上がりそうだが、急斜面になったとたんSPECIALISSIMAは水を得た魚のように加速していく。6.2%の斜度が閾値となるというレパルトコルセのテスト結果は、体感としても妥当だろう。
また、経験上軽量バイクはクイックだったりピーキーだったりすることが多いだが、SPECIALISSIMAに関しては下りも扱いやすい印象だ。REPARTO CORSE 33R CERAMITECHチューブレスレディーカーボンホイールは硬すぎず柔らかすぎない程よい剛性感。脚にもダメージが来づらい乗り味である一方、ダウンヒルにおいてはブレることなく正確なライントレースを可能とする。
一方、素直な性格のフレームなので組み合わせるホイールによって色んなカスタムが出来そうだ。高剛性な25~40mmハイトのホイールを組み合わせればヒルクライム、40mm以上のリムハイトのホイールを合わせればロードレースやクリテリウムで活躍してくれる1台に仕上げられるだろう。SPECIALISSIMA RCは一秒でも速く走りたいレーサーにおすすめしたい。
ビアンキ SPECIALISSIMA PRO
続いてはSPECIALISSIMA PRO。ジオメトリーやデザインはRCと同じくハイモジュラスカーボンを使用したフレームで、一見するとカラーリングの違いだけに見えてしまう。その大きな違いはビアンキ独自の振動除去テクノロジー"カウンターヴェイル"を搭載している点だ。
完成車に用意されるハンドルも、RC同様にステム一体型ハンドル"RCインテグレーテッドハンドルバー"を採用。サドルはカーボンレールを採用し、重量は180gのVelomann Mitora 139 Hyperサドルが装着されている。
ホイールはVelomann Palladium チューブレスレディーカーボンホイールを標準装備。フロントが684g、リアが776g、前後で1460gとレースやトレーニングまで幅広く使用できるスペックだ。リムハイトが33mmでオールラウンドに使いやすく、タイヤ幅は32Cまで対応している。
カラーはMW - CARBON/CKMETALLIC/CK16とMV - CARBON/GRAPHITE IRID/BLACKの2色がラインアップされる。サイズは47と50、53、55、57の5サイズ展開。価格はフレームセットで638,000円(税込)、ULTEGRA R8100シリーズの完成車で1,177,000円(税込)。
■SPECIALISSIMA PROインプレッション
漕ぎ出しからも剛性の高さを感じ、RCよりはしなやかではあるものの踏んだ感触がダイレクトな印象だ。また、Velomann Palladium チューブレスレディーカーボンホイールのパリっとした乗り味のおかげで、加速も非常にスムーズだ。スピードが乗ってからの巡航も軽快だ。ペダルレスの状態で6.6kgのRCと比べると、PROは7.0kgと400gほどの重量増になるが、ディスクロードであることを考慮しても、十分すぎる軽さに感じる。
上位モデルと共通のステム一体型ハンドルの"RCインテグレーテッドハンドルバー"が搭載され、ハンドル回りがエアロになったことでハンドルの風抜けが良く、加速も巡航性能もスムーズな印象になっている。ハンドリングもニュートラルで操作しやすい。
ビアンキ独自の振動除去テクノロジー"カウンターヴェイル"を搭載しているとあって、路面に凹凸がある荒れた舗装路でも、非常に乗り心地が良いのもPROの大きなメリットだ。レースバイクであっても、ダイレクトな振動が伝わってくるのはストレスに感じるし、ダメージが蓄積されるため、細かな振動をカットしてくれるのは好印象。
登りも軽快で、シッティングでケイデンスを高めながら駆け上がっていくことも、ダンシングでリズミカルに登っていくこともできる。登りが好きになれるバイクだと感じる。レースはもちろんだが、カウンターヴェイルのおかげで乗り心地も良くサイクリングにもピッタリな一台だ。RCがレースに特化したレーシングバイクであるなら、PROはレースからゆったりライドまでこなせる懐の深いバイクだった。
ビアンキ SPECIALISSIMA COMP
SPECIALISSIMAシリーズではミドルグレードとなる"COMP"。オールラウンドに使用できるカーボンディスクロードで、ロードレースにチャレンジしたい方やカスタムを楽しみたい方向けに用意された一台だ。
RCとPROの完成車ではステム一体型ハンドルが採用されているのに対し、COMPの完成車ではトラディショナルなアルミ製のエアロステムとハンドルを採用している。サドルには220gのVelomann Mitora H1 139サドルを搭載した。
PROグレードと同様にVelomann Palladium チューブレスレディーカーボンホイールがアセンブルされている。レースやトレーニングまで幅広く使用できる。リムハイトが33mmでオールラウンドに使いやすく、タイヤ幅は32Cまで対応している。
カラーはビアンキらしいMQ-CK16/GRAPHITE、MF-GRAPHITE/BLACKの2色がラインアップされる。サイズは47と50、53、55、57の5サイズ展開。価格は105 R7150シリーズの完成車で836,000円(税込)。
■SPECIALISSIMA COMPインプレッション
完成車重量7.8kgとミドルグレードらしい重量感ではあるものの、漕ぎ出しからはSPECIALISSIMAのどのグレードにも共通する剛性の高さを体感できるのがこのCOMPの魅力。
ステム一体型ハンドルを採用していないことも特徴で、ハンドルに拘りがあるライダーやポジションの固まっていないビギナーにもマッチしてくれる。剛性に優れるフレームに対してステムを交換することでしなやかさや硬さを調整するなど、ハンドル回りのカスタムもしやすい一台。
スタンダードなグレードであるものの登りや平坦、下りも安定した走りが特徴的。持った時の重量は感じるものの、ダンシング時には軽快で、スタンダードモデルとは思えない性能を秘めているように感じた。
さらに、ニュートラルなハンドリングで乗りやすい。リムブレーキバイクからディスクロードに乗り換える方にもおすすめできる。SPECIALISSIMA COMPはロードレースやヒルクライムバイクなどでもしっかり活躍してくれるポテンシャルを秘めつつ、自身の好みに寄せたバイクを作り上げたいサイクリストにおすすめしたい万能な一台だった。
今回のビアンキ試乗会では多くのモデルの試乗車が用意されていたため、vol.1ではSPECIALISSIMAの全グレードをインプレッション。そして、vol.2ではOLTREシリーズに加わったエントリーグレード「OLTRE RACE」とSPECIALISSIMAと共にモデルチェンジを果たしたミドルグレード・オールラウンドバイク「SPRINT」をインプレッションしていく予定だ。
text:Michinari TAKAGI
photo:Naoki Yasuoka
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