2023/12/09(土) - 13:28
12月2日、常夏の楽園サイパン島でロードレース「ヘル・オブ・マリアナ」が開催され、日本から5人の選手が参戦。さいたま那須サンブレイブの藤田涼平と重田倫一郎がワンツーフィニッシュを決めて賞金1,800ドルを手にした。日本から参加しやすい南国のファン系レースの様子をレポート。
日本からわずか3時間半のフライトで到着する、太平洋に浮かぶサイパン島。年間平均気温27℃という常夏の島はアメリカ合衆国の自治領である北マリアナ諸島における中心地であり、日本から最も近いビーチリゾートとして日本から数多くの人が訪れる観光地だ。
そんなサイパン島を舞台にロードレースイベント「ヘル・オブ・マリアナ センチュリーサイクル」が開催された。スーサイドクリフやグロット、ラオラオベイなどサイパンを代表するスポットを巡りながら、日本の小豆島よりも小さい島(約115キロ平米)を1周。距離約100kmで獲得標高・約1,500mを走破するタフなレースだ。
サイパンは小さく狭い島だが、レースコースは幹線道路のメインルートからアプローチできる島内の登りをいくつも経由することで「マリアナの地獄」「ミクロネシア地域でもっともタフなバイクレース」というキャッチコピーにふさわしい、走りがいのあるコースに仕上がっている。「ツール・ド・おきなわを凝縮したようなコース」とは名言だ。
ヘル・オブ・マリアナの開催は今年で15回目。コロナ禍による2年間の中断があったものの、今年は3年ぶりに開催にこぎつけた。参加総数175人は過去に比べ少なかったが、ローカルレースでありながら参加国はアメリカ、韓国、ロシア、グアムやフィリピンなど複数国に及ぶ。
UCIレースでは無いものの、プロ・年代別カテゴリーには多額の賞金が出るため上位争いは白熱、毎年のように出場する常連選手も多い。日本からの参加も約10年前からコンスタントにあり、過去には2015年に中村龍太郎が優勝、森本誠が準優勝を果たすなど好成績を収めている(中村さんの2016年の参戦レポート)。また過去5回優勝している現地在住の美枝子ケリーさんは誰もが知るレジェンドだ(今回は出場せず)。
今回参加した6人の日本人のうち3人はさいたま那須サンブレイブの選手たちで、マリアナ政府観光局の招待によるもの。初の海外レースだがプロとしての意地もあり、負けられないところだ。もっともこのレースはトップレーサーだけのものでなく、先頭集団以外の大多数の参加者にとっては制限時間内にレース完走を目指すチャレンジでもある。今年はいくつかの登りと北部をカットした50kmのショートコースも用意され、ビギナーも出場しやすくなった。
レースは土曜の6時15分、夜明けとともにスタート。前列のプロクラス15人が出走した後、時間差で一般クラスが走り出す。いかにもローカルといった風情のサイクリストも多く、国際色豊かながらも和やかな雰囲気。今年はとくに韓国人グループの人数が多く、インフルエンサーとして有名な女性たちも。
走り出しはサイパンの中心街ガラパンを通過するフラットな幹線道路。以前はスタートすぐに小高い丘のレーダータワーへの急坂を登ったが、今年はコース変更により海岸線をしばし南下。島の南部へと向かう。
先頭のプロクラスでスタートアタックとともにスピードを上げて抜け出たのは藤田涼平を含む3人のグループ。若干の下り勾配に加えて追い風に乗った3人は後続を引き離して行くが、後方でチームメイトの重田倫一郎が追走している情報を得た藤田がペースを落とし、待つことに。
平坦路が少なく、中盤から後半にかけて厳しい坂が連続するこのレースでは先を急ぐメリットは大きくない。後方の4人と合流し、先頭集団は再構築された。そしてほどなく坂の連続する区間で脚のない選手は脱落し、バラバラに。
先頭集団からアタックを掛けて独走を始めたのはグアムの選手。藤田はその選手に脚を使わせるつもりだったと言う。数キロして藤田と重田の2名を含む先頭グループが先行の選手を捉えると、キングフィッシャーゴルフクラブへの細道の急勾配アップダウン区間に。ここで藤田がパンクしてしまう。レースにメカニックカー随行はあるが、最新のディスクブレーキ仕様ホイールの提供は無い。しかもチームのサポートカーが向かいにくい細道の先だった。
しかし藤田を助けたのがチームメイトの鈴木道也だった。鈴木は渡航の際にバイクが破損して、現地で手配した「借り物バイク」で走っていたが、そのバイクのグレードが低いためにもともとレースでの上位争いは諦めて走っていた。数分遅れで現場に差し掛かると、ホイールを藤田に提供し、自らはリタイア。藤田は約7分遅れでレースを続行した。
絞られた集団で先頭付近につける重田。アタックをチェックしながらも藤田を待つが、後半の勝負どころ、残り20kmで2人はついに合流を果たした。
昼前に雨が降り出し、路面を濡らす。濡れると極端にスリッピーになるサイパンの道が明暗を分けた。最高標高地点のKOMスーサイドクリフの登りはグアムのライアン・マティエンゾがリードするが、往復の下りではテクニックに秀でる藤田と重田が追い抜き、差をつけることに成功。
ダイビングの名所「グロット」の往復と、戦跡「バンザイクリフ」の往復区間を経て決定的な差をつけた藤田と重田の2人がフィニッシュへ。ゴールライン手前では余裕を持っての2人並んでの歓喜のガッツポーズ。レースの大半で前を牽いた藤田が先頭でフィニッシュした。
さいたま那須サンブレイブのワン・ツーフィニッシュ勝利。ホイールを提供することで勝利に貢献した鈴木も抱き合って喜ぶ。1分35秒遅れの3位は登りで強さを見せたグアムのマティエンゾ選手。フィニッシュすると握手してお互いの健闘を称え合う。藤田のサイコンは実測データで走行距離101km、獲得標高1,591m、タイム3:17:35を示していた。
パンクで遅れた7分を取り返し、登りでもっとも強かった藤田涼平。細かい登りを繰り返すコースにクライマータイプの脚質を存分に発揮した。
レースを振り返って藤田は言う。「パンクはあったけど最終的には強い勝ち方ができました。厳しいコースでした。地脚のある選手が残るレースです。勝因としては雨が降っても対応できるようにタイヤの空気圧を4気圧ぐらいにセットしていたのが良かった。暑いのが苦手なんですが、雨が降って涼しくなったのも幸いしました。下りも登りも有利になったので、僕にとっては恵みの雨でした」。
「ペースを上げすぎないように、藤田さんを待ちながら走りました」と言う2位の重田倫一郎は作新学院大学出身で11月よりチームに合流したばかり。来季は鈴木とともに佐渡ゴールデンアイビスで活動する。
島の北部に新しい道路が開通することで、来年はもう少し距離が伸び、標高差も増す可能性があるという。しかし藤田は「これ以上の厳しさは不要かな」と笑う。「後半は脚が攣っていました。天気が良くなって暑いと、もっと厳しいレースになったでしょうね」。
ヘル・オブ・マリアナの先頭争いはそれなりにレベルが高いが、大多数の選手にとっては完走や自分自身へのチャレンジといったレースだ。最年少14歳から70歳、プロ選手からローカルライダー、ロードバイクではなくMTBやクロスバイクで参加する選手も。最終走者は7時間オーバーで完走しているが、MCは「完走した誰もが勝者」といった讃え方でフィニッシュするすべての選手を祝福してくれる。
昼にかけてすべての選手がフィニッシュ。夕方からはハイアットリージェンシー サイパンホテルでディナーを兼ねたアワードパーティだ。シャワーを浴び、ビーチでひと泳ぎしてから出席する参加者たち。ごきげんな雰囲気の中、表彰式が開催される。
プロクラス優勝の藤田涼平はご存知バルセロナ五輪ロード代表の藤田晃三の息子。そのストーリーを知ったMCが表彰台登壇時にそれを紹介して会場を盛り上げる。賞金はなんと1位$1,000(14万7千円)、2位$800(11万8千円)、3位$500(7万4千円)。
美味しい食事をしながら表彰が続く。驚かされるのはその表彰カテゴリーの多さだ。ロング、ショートの距離別に、それぞれ年代&性別、そしてMTB部門や最年長賞など、対象は数え切れないほど。結果として多くの選手達が表彰台に登り、メダルと賞金を受け取ることに。これはこの大会の伝統で、なるべく多くの選手に賞を授けたいという意図が伝わってくる。そして「プロクラス男女優勝者は来年のレースへ招待する(かも)」とアナウンスされた。藤田は来年も出場することになるかもしれない。
日本人参加者の2人にも話を聞いた。みごと4時間45分で完走、年代別1位で表彰されたpepe-uniさん(ハンドルネーム)は8月に1200kmブルベのパリ〜ブレスト〜パリに出て89時間で完走した実力の持ち主。
「今という時を逃さないように、今年の走り納めにと参加しました。長距離ブルベをやっていると、逆に100kmの走り方が難しかったです(笑)。どこの国の人もフレンドリーで、一緒に走るのが楽しかったです。この大会はユルさやアバウトさがいいですね」と、メダルを手に表彰台では弾けてみせた。
5時間54分で完走した齊藤雄一さんはロングコース完走52人中の50位。普段レースなどには出たことがなく、これが初レースだった。参加の動機は「会社の自転車好き同僚の飲み会でシクロワイアードの記事をみていて、その場のノリでジャンケンに負けた人が出ることになったから」だそう。
「補給食を落としてハンガーノックになり、足が攣って動けなくなった。2回転んでコンタクトレンズも無くし、苦難のフルコースでした(笑)。ありえないぐらい追い込まれてしまいましたが、這ってでも完走しようと思い、あらゆる努力を尽くして最後まで走りきりました!」と、かなり大変な体験をした模様だった。しかし完走メダルを受け取った顔は充足感でいっぱいだ。
2時間以上楽しめる表彰式で、表彰されて賞金を手にした大勢の選手たちはホクホク顔。そのうえ豪華なディナー料金もエントリーフィーに含まれているというから驚きだ。
勝負にシビアな競技ではなく、誰もがハッピーになれるロードレース。来年のヘル・オブ・マリアナは、例年どおり12月の第1日曜日に開催される予定だ。
■サイパンへはユナイテッド航空の直行便で
成田〜サイパンの直行便を週3便で運航するのがユナイテッド航空だ。日本との時差は1時間。今回の出場選手の利用フライトは出発便が木曜PM09:25成田出発で、サイパン到着はAM02:00。帰国便は月曜AM07:05サイパン出発、09:45成田到着。つまりレース前日にコース下見と準備の1日、レース翌日には丸一日のバカンスが可能な日程だ。梱包した自転車の持ち込みは収納ケースの重さが23kg以下ならロードバイクも受託手荷物として預け入れることができ、スポーツ用品特別料金も不要。
ユナイテッド航空 成田/サイパン線 フライト時間:3時間半
機材:ボーイング737-800型
スケジュール
UA0825便 成田 21:25 / サイパン 02:00 (+1) (火・木・日)
UA0824便 サイパン 07:00 / 成田 09:35 (月・水・金)
ユナイテッド航空
■ホテル クラウンプラザ サイパン
クラウン プラザ リゾート サイパンはガラパン地区のシーサイドにあるホテル。リニューアルしたばかりのフレッシュさと料理の質に定評ありのおすすめホテル。ホテル前のビーチには日本人スタッフのいるSAKURA MARINEもありマニャガハ島へのボート送迎やビーチアクティビティのアレンジも可能。
CROWNE PLAZA RESORT SAIPAN
■サイパン・バイクプロ
「SAIPAN BIKE PRO(サイパン・バイクプロ)」は、ガラパンのジョーテンから南へ5km降った地点にあるサイクルショップ。もちろん旅行者のトラブルやメンテナンスも行ってくれるという。ジャイアントを主力ブランドとし、様々なバイクにも対応。マウンテンバイクのレンタルもある。
住所:CDA Bldg ( Morgen Bldg ), Beach Rd, Oleai, Saipan 96950
営業日:月~土(日曜は定休日)
日本からわずか3時間半のフライトで到着する、太平洋に浮かぶサイパン島。年間平均気温27℃という常夏の島はアメリカ合衆国の自治領である北マリアナ諸島における中心地であり、日本から最も近いビーチリゾートとして日本から数多くの人が訪れる観光地だ。
そんなサイパン島を舞台にロードレースイベント「ヘル・オブ・マリアナ センチュリーサイクル」が開催された。スーサイドクリフやグロット、ラオラオベイなどサイパンを代表するスポットを巡りながら、日本の小豆島よりも小さい島(約115キロ平米)を1周。距離約100kmで獲得標高・約1,500mを走破するタフなレースだ。
サイパンは小さく狭い島だが、レースコースは幹線道路のメインルートからアプローチできる島内の登りをいくつも経由することで「マリアナの地獄」「ミクロネシア地域でもっともタフなバイクレース」というキャッチコピーにふさわしい、走りがいのあるコースに仕上がっている。「ツール・ド・おきなわを凝縮したようなコース」とは名言だ。
ヘル・オブ・マリアナの開催は今年で15回目。コロナ禍による2年間の中断があったものの、今年は3年ぶりに開催にこぎつけた。参加総数175人は過去に比べ少なかったが、ローカルレースでありながら参加国はアメリカ、韓国、ロシア、グアムやフィリピンなど複数国に及ぶ。
UCIレースでは無いものの、プロ・年代別カテゴリーには多額の賞金が出るため上位争いは白熱、毎年のように出場する常連選手も多い。日本からの参加も約10年前からコンスタントにあり、過去には2015年に中村龍太郎が優勝、森本誠が準優勝を果たすなど好成績を収めている(中村さんの2016年の参戦レポート)。また過去5回優勝している現地在住の美枝子ケリーさんは誰もが知るレジェンドだ(今回は出場せず)。
今回参加した6人の日本人のうち3人はさいたま那須サンブレイブの選手たちで、マリアナ政府観光局の招待によるもの。初の海外レースだがプロとしての意地もあり、負けられないところだ。もっともこのレースはトップレーサーだけのものでなく、先頭集団以外の大多数の参加者にとっては制限時間内にレース完走を目指すチャレンジでもある。今年はいくつかの登りと北部をカットした50kmのショートコースも用意され、ビギナーも出場しやすくなった。
レースは土曜の6時15分、夜明けとともにスタート。前列のプロクラス15人が出走した後、時間差で一般クラスが走り出す。いかにもローカルといった風情のサイクリストも多く、国際色豊かながらも和やかな雰囲気。今年はとくに韓国人グループの人数が多く、インフルエンサーとして有名な女性たちも。
走り出しはサイパンの中心街ガラパンを通過するフラットな幹線道路。以前はスタートすぐに小高い丘のレーダータワーへの急坂を登ったが、今年はコース変更により海岸線をしばし南下。島の南部へと向かう。
先頭のプロクラスでスタートアタックとともにスピードを上げて抜け出たのは藤田涼平を含む3人のグループ。若干の下り勾配に加えて追い風に乗った3人は後続を引き離して行くが、後方でチームメイトの重田倫一郎が追走している情報を得た藤田がペースを落とし、待つことに。
平坦路が少なく、中盤から後半にかけて厳しい坂が連続するこのレースでは先を急ぐメリットは大きくない。後方の4人と合流し、先頭集団は再構築された。そしてほどなく坂の連続する区間で脚のない選手は脱落し、バラバラに。
先頭集団からアタックを掛けて独走を始めたのはグアムの選手。藤田はその選手に脚を使わせるつもりだったと言う。数キロして藤田と重田の2名を含む先頭グループが先行の選手を捉えると、キングフィッシャーゴルフクラブへの細道の急勾配アップダウン区間に。ここで藤田がパンクしてしまう。レースにメカニックカー随行はあるが、最新のディスクブレーキ仕様ホイールの提供は無い。しかもチームのサポートカーが向かいにくい細道の先だった。
しかし藤田を助けたのがチームメイトの鈴木道也だった。鈴木は渡航の際にバイクが破損して、現地で手配した「借り物バイク」で走っていたが、そのバイクのグレードが低いためにもともとレースでの上位争いは諦めて走っていた。数分遅れで現場に差し掛かると、ホイールを藤田に提供し、自らはリタイア。藤田は約7分遅れでレースを続行した。
絞られた集団で先頭付近につける重田。アタックをチェックしながらも藤田を待つが、後半の勝負どころ、残り20kmで2人はついに合流を果たした。
昼前に雨が降り出し、路面を濡らす。濡れると極端にスリッピーになるサイパンの道が明暗を分けた。最高標高地点のKOMスーサイドクリフの登りはグアムのライアン・マティエンゾがリードするが、往復の下りではテクニックに秀でる藤田と重田が追い抜き、差をつけることに成功。
ダイビングの名所「グロット」の往復と、戦跡「バンザイクリフ」の往復区間を経て決定的な差をつけた藤田と重田の2人がフィニッシュへ。ゴールライン手前では余裕を持っての2人並んでの歓喜のガッツポーズ。レースの大半で前を牽いた藤田が先頭でフィニッシュした。
さいたま那須サンブレイブのワン・ツーフィニッシュ勝利。ホイールを提供することで勝利に貢献した鈴木も抱き合って喜ぶ。1分35秒遅れの3位は登りで強さを見せたグアムのマティエンゾ選手。フィニッシュすると握手してお互いの健闘を称え合う。藤田のサイコンは実測データで走行距離101km、獲得標高1,591m、タイム3:17:35を示していた。
パンクで遅れた7分を取り返し、登りでもっとも強かった藤田涼平。細かい登りを繰り返すコースにクライマータイプの脚質を存分に発揮した。
レースを振り返って藤田は言う。「パンクはあったけど最終的には強い勝ち方ができました。厳しいコースでした。地脚のある選手が残るレースです。勝因としては雨が降っても対応できるようにタイヤの空気圧を4気圧ぐらいにセットしていたのが良かった。暑いのが苦手なんですが、雨が降って涼しくなったのも幸いしました。下りも登りも有利になったので、僕にとっては恵みの雨でした」。
「ペースを上げすぎないように、藤田さんを待ちながら走りました」と言う2位の重田倫一郎は作新学院大学出身で11月よりチームに合流したばかり。来季は鈴木とともに佐渡ゴールデンアイビスで活動する。
島の北部に新しい道路が開通することで、来年はもう少し距離が伸び、標高差も増す可能性があるという。しかし藤田は「これ以上の厳しさは不要かな」と笑う。「後半は脚が攣っていました。天気が良くなって暑いと、もっと厳しいレースになったでしょうね」。
ヘル・オブ・マリアナの先頭争いはそれなりにレベルが高いが、大多数の選手にとっては完走や自分自身へのチャレンジといったレースだ。最年少14歳から70歳、プロ選手からローカルライダー、ロードバイクではなくMTBやクロスバイクで参加する選手も。最終走者は7時間オーバーで完走しているが、MCは「完走した誰もが勝者」といった讃え方でフィニッシュするすべての選手を祝福してくれる。
昼にかけてすべての選手がフィニッシュ。夕方からはハイアットリージェンシー サイパンホテルでディナーを兼ねたアワードパーティだ。シャワーを浴び、ビーチでひと泳ぎしてから出席する参加者たち。ごきげんな雰囲気の中、表彰式が開催される。
プロクラス優勝の藤田涼平はご存知バルセロナ五輪ロード代表の藤田晃三の息子。そのストーリーを知ったMCが表彰台登壇時にそれを紹介して会場を盛り上げる。賞金はなんと1位$1,000(14万7千円)、2位$800(11万8千円)、3位$500(7万4千円)。
美味しい食事をしながら表彰が続く。驚かされるのはその表彰カテゴリーの多さだ。ロング、ショートの距離別に、それぞれ年代&性別、そしてMTB部門や最年長賞など、対象は数え切れないほど。結果として多くの選手達が表彰台に登り、メダルと賞金を受け取ることに。これはこの大会の伝統で、なるべく多くの選手に賞を授けたいという意図が伝わってくる。そして「プロクラス男女優勝者は来年のレースへ招待する(かも)」とアナウンスされた。藤田は来年も出場することになるかもしれない。
日本人参加者の2人にも話を聞いた。みごと4時間45分で完走、年代別1位で表彰されたpepe-uniさん(ハンドルネーム)は8月に1200kmブルベのパリ〜ブレスト〜パリに出て89時間で完走した実力の持ち主。
「今という時を逃さないように、今年の走り納めにと参加しました。長距離ブルベをやっていると、逆に100kmの走り方が難しかったです(笑)。どこの国の人もフレンドリーで、一緒に走るのが楽しかったです。この大会はユルさやアバウトさがいいですね」と、メダルを手に表彰台では弾けてみせた。
5時間54分で完走した齊藤雄一さんはロングコース完走52人中の50位。普段レースなどには出たことがなく、これが初レースだった。参加の動機は「会社の自転車好き同僚の飲み会でシクロワイアードの記事をみていて、その場のノリでジャンケンに負けた人が出ることになったから」だそう。
「補給食を落としてハンガーノックになり、足が攣って動けなくなった。2回転んでコンタクトレンズも無くし、苦難のフルコースでした(笑)。ありえないぐらい追い込まれてしまいましたが、這ってでも完走しようと思い、あらゆる努力を尽くして最後まで走りきりました!」と、かなり大変な体験をした模様だった。しかし完走メダルを受け取った顔は充足感でいっぱいだ。
2時間以上楽しめる表彰式で、表彰されて賞金を手にした大勢の選手たちはホクホク顔。そのうえ豪華なディナー料金もエントリーフィーに含まれているというから驚きだ。
勝負にシビアな競技ではなく、誰もがハッピーになれるロードレース。来年のヘル・オブ・マリアナは、例年どおり12月の第1日曜日に開催される予定だ。
■サイパンへはユナイテッド航空の直行便で
成田〜サイパンの直行便を週3便で運航するのがユナイテッド航空だ。日本との時差は1時間。今回の出場選手の利用フライトは出発便が木曜PM09:25成田出発で、サイパン到着はAM02:00。帰国便は月曜AM07:05サイパン出発、09:45成田到着。つまりレース前日にコース下見と準備の1日、レース翌日には丸一日のバカンスが可能な日程だ。梱包した自転車の持ち込みは収納ケースの重さが23kg以下ならロードバイクも受託手荷物として預け入れることができ、スポーツ用品特別料金も不要。
ユナイテッド航空 成田/サイパン線 フライト時間:3時間半
機材:ボーイング737-800型
スケジュール
UA0825便 成田 21:25 / サイパン 02:00 (+1) (火・木・日)
UA0824便 サイパン 07:00 / 成田 09:35 (月・水・金)
ユナイテッド航空
■ホテル クラウンプラザ サイパン
クラウン プラザ リゾート サイパンはガラパン地区のシーサイドにあるホテル。リニューアルしたばかりのフレッシュさと料理の質に定評ありのおすすめホテル。ホテル前のビーチには日本人スタッフのいるSAKURA MARINEもありマニャガハ島へのボート送迎やビーチアクティビティのアレンジも可能。
CROWNE PLAZA RESORT SAIPAN
■サイパン・バイクプロ
「SAIPAN BIKE PRO(サイパン・バイクプロ)」は、ガラパンのジョーテンから南へ5km降った地点にあるサイクルショップ。もちろん旅行者のトラブルやメンテナンスも行ってくれるという。ジャイアントを主力ブランドとし、様々なバイクにも対応。マウンテンバイクのレンタルもある。
住所:CDA Bldg ( Morgen Bldg ), Beach Rd, Oleai, Saipan 96950
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