2023/11/10(金) - 12:00
「ツールへの再出場は喜びと不安が入り混じっていた」とエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)は今年のツール・ド・フランスを振り返る。2022年1月の大怪我から復帰し、今年キャリア最多となる79レースを走った元ツール覇者にさいたまクリテリウムで話を聞いた。
「ツール・ド・フランスのスタートラインに立った時の気持ちは、家族や近しい友人以外理解しえないほどのもの。それぐらい僕にとって今年のツールは特別なものだった」。4年振りのさいたまクリテリウムでのインタビューに対し、エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)は今年のツールをそう振り返った。
「だからこそ最初の数日間はナーバスになっていた。それは身体のことだけではなく、あの出来事(大怪我)からここまで戻ってこれた事実が信じられなかったから。僕が再びあの舞台に立てるだなんて周りの人たちは思っていなかっただろう。だからあの時の僕は、喜びと不安が入り混じるような気持ちだった」。
ベルナルが母国コロンビアでのトレーニング中に大怪我を負ったのは2022年1月24日のこと。肋骨など20箇所の骨折を負い、更に外傷性気胸など一時は命の危険にまで瀕していた。ここから計6度の手術を経て同年8月に早くもレース復帰を果たし、2023年は1月のブエルタ・ア・サンフアンを経て、4月のツール・ド・ロマンディ(UCIワールドツアー)では総合8位に入賞。ツールとブエルタ・ア・エスパーニャを連続完走するなどシーズンを通して走り続けた。
出場したレース数は79。ツールで総合優勝した2019年(62レース)、ジロ・デ・イタリアを制した2021年(66レース)を上回る自身の最多記録更新だ。しかし未だトップレースで勝負に絡むレベルにはほど遠く、かつてプロトンの中心だった時の覇権は失われている。ベルナルは「トップレベルで戦うには、まだ全てが足りていない」と、完全復活までの道のりは遠いと話す。
大怪我に見舞われる直前にイネオスと5年(2026年まで)の長期契約を結んだベルナル。一時は世界最強と呼ばれていたチームは、2021年のジロを最後のグランツールでの総合優勝から遠ざかっており、テイオ・ゲイガンハート(イギリス)やパヴェル・シヴァコフ(フランス)、盟友ダニエル・マルティネス(コロンビア)など総合エースたちが退団。自動的に、契約が残るベルナルには完全復調への重圧がのし掛かることになった。
「でも、そのプレッシャーは僕自身にとって必要なこと」と、ベルナルは言う。「今年はまだトップレベルには届かなかった。そこに戻るためのトレーニングがこのあとの最優先課題となるし、そのために全力を尽くす」とも。
ベルナルが来シーズン狙うは2021年ジロ第16ステージ以来となる勝利を挙げること。そしてその次にブエルタでマイヨロホを勝ち取り、クリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)に続くグランツール全制覇を目指すこと。
「この後はコロンビアで数日過ごし、またヨーロッパに戻ってトレーニングを再開する予定だ」と語るベルナル。来年のレーススケジュールは12月の合宿で決まる予定という。26歳のかつての王者にとって、来季は勝負を賭けた年となる。
text:Sotaro.Arakawa
「ツール・ド・フランスのスタートラインに立った時の気持ちは、家族や近しい友人以外理解しえないほどのもの。それぐらい僕にとって今年のツールは特別なものだった」。4年振りのさいたまクリテリウムでのインタビューに対し、エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)は今年のツールをそう振り返った。
「だからこそ最初の数日間はナーバスになっていた。それは身体のことだけではなく、あの出来事(大怪我)からここまで戻ってこれた事実が信じられなかったから。僕が再びあの舞台に立てるだなんて周りの人たちは思っていなかっただろう。だからあの時の僕は、喜びと不安が入り混じるような気持ちだった」。
ベルナルが母国コロンビアでのトレーニング中に大怪我を負ったのは2022年1月24日のこと。肋骨など20箇所の骨折を負い、更に外傷性気胸など一時は命の危険にまで瀕していた。ここから計6度の手術を経て同年8月に早くもレース復帰を果たし、2023年は1月のブエルタ・ア・サンフアンを経て、4月のツール・ド・ロマンディ(UCIワールドツアー)では総合8位に入賞。ツールとブエルタ・ア・エスパーニャを連続完走するなどシーズンを通して走り続けた。
出場したレース数は79。ツールで総合優勝した2019年(62レース)、ジロ・デ・イタリアを制した2021年(66レース)を上回る自身の最多記録更新だ。しかし未だトップレースで勝負に絡むレベルにはほど遠く、かつてプロトンの中心だった時の覇権は失われている。ベルナルは「トップレベルで戦うには、まだ全てが足りていない」と、完全復活までの道のりは遠いと話す。
大怪我に見舞われる直前にイネオスと5年(2026年まで)の長期契約を結んだベルナル。一時は世界最強と呼ばれていたチームは、2021年のジロを最後のグランツールでの総合優勝から遠ざかっており、テイオ・ゲイガンハート(イギリス)やパヴェル・シヴァコフ(フランス)、盟友ダニエル・マルティネス(コロンビア)など総合エースたちが退団。自動的に、契約が残るベルナルには完全復調への重圧がのし掛かることになった。
「でも、そのプレッシャーは僕自身にとって必要なこと」と、ベルナルは言う。「今年はまだトップレベルには届かなかった。そこに戻るためのトレーニングがこのあとの最優先課題となるし、そのために全力を尽くす」とも。
ベルナルが来シーズン狙うは2021年ジロ第16ステージ以来となる勝利を挙げること。そしてその次にブエルタでマイヨロホを勝ち取り、クリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)に続くグランツール全制覇を目指すこと。
「この後はコロンビアで数日過ごし、またヨーロッパに戻ってトレーニングを再開する予定だ」と語るベルナル。来年のレーススケジュールは12月の合宿で決まる予定という。26歳のかつての王者にとって、来季は勝負を賭けた年となる。
text:Sotaro.Arakawa
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