日本最大級のオフロードバイクの祭典「シマノバイカーズフェスティバル」が今年も開催。クロスカントリーやダウンヒルに加え、グラベルバイクで楽しめるレースやツーリング種目、そしてレースでもツーリングでもない新種目「Trail Ride+」など、これまでにない新たな楽しみ方を満喫できる2日間に。青空の下、サイクリストが盛り上がった様子をレポートしよう。



今年で第31回大会を迎えるオフロードの祭典「シマノバイカーズフェスティバル」

今年で第31回大会を迎えるオフロードの祭典「シマノバイカーズフェスティバル」。イベント当日は澄み渡った青空が広がり、会場となる富士見パノラマには朝から多くのサイクリストたちが続々と集まった。

富士見パノラマリゾートは、長野県諏訪郡富士見町にあるスキー場。南アルプス山脈の北端に位置する入笠山の東斜面を利用したゲレンデで、夏季はマウンテンバイクのコースとして運用している。MTB全日本選手権の会場としてよく選ばれており、マウンテンバイカーにとっては馴染み深い場所だろう。

富士見町町長で富士見パノラマリゾート理事長の名取重治氏が開会式で挨拶
MCシンジさんと絹代さんが会場を盛り上げる



一番最初のレースであるXC Kidsには多くの子供たちが集った

大人顔負けのスタートダッシュを決めて、駆け出していく

沢田時(宇都宮ブリッツェン)が背中を押してくれるサポートシーン
沢田時と記念撮影


シマノバイカーズフェスティバルの一番最初のイベントとなったXC Kidsには多くの子供たちが集まった。号砲が鳴ると、大人顔負けのスタートダッシュを決め、子供たちが勢いよく駆け抜けていく。ゲストライダーとして宇都宮ブリッツェンの沢田時も参加。沢田が登りで苦戦している子供の背中を後押しする場面もあり、子ども達にとってきっと忘れられない経験にもなったはず。

このXC Kidsに始まったクロスカントリー種目は、レース時間が30分と初心者でも参加しやすいXC Light、1~4名までのチームで参加できる2時間の耐久種目となるXC Endurance、60分の本格的なレースであるXC Raceなど様々な種目が用意されている。

種目に応じて、XCエリアに設けられたコースは切り替えられ、難易度や距離が細やかに調整されているのもシマノバイカーズならでは。31年のノウハウが詰まった運用で、2日間にわたって参加者たちを楽しませてくれるのだ。

60分の本格的なレースであるXC Race

沢田時(宇都宮ブリッツェン)を先頭にXC Raceがスタート

土ぼこりを上げながらフルスピードで駆け抜けていく
沢田時(宇都宮ブリッツェン)はレース中にウィーリーを披露し、会場を湧かせていた


GX Raceはル・マン方式のスタート

愛車までダッシュ
バイクに飛び乗りXCコースへ入っていく


更に、同じXCエリアのコースを使って行われるのがグラベルバイクやシクロクロスで参加できるGX LightとGX Race。ユニークなのはスタートで、いわゆるル・マン方式を採用している。まず、スタートラインに並んだ参加者たちはランで出走し、ピットに並べられた自身のバイクに乗車してレースを始めるスタート方式で、ちょっとしたデュアスロンのような要素も追加された面白い競技だ。

一方、メインゲレンデをXC種目と二分して行われるのがダウンヒル種目。メインとなる特設コースは、距離が1,220m、高低差が218mのコースを一気に下っていく本格的な設定となっている。初日となる土曜日には、複数人で走るチームタイムトライアル形式のDH Teamとソロで走るDH Raceの2種目が用意された。

天狗岳や権現岳が壮大に見える景色が広がる

一気に加速していく
森林区間はテクニカルなコース


3人で走るDH Team

DH種目のスタート地点へは、リフトで上がっていくことになる。10分ほどリフトに揺られた先の広場からは、天狗岳や権現岳が壮大に見える景色が広がっていて、この景色を味わえるのはDH種目参加者の特権。

スタートまでのカウントダウンがスタートするとライダーの緊張感が伝わってくる。スタートすると、小刻みな連続コーナーを物凄いスピードでクリアしていく。森林区間に入ると岩やバンク、木などが入り乱れるダウンヒルコースを駆け下りていく様子は、オフロード経験はシクロクロスのみの筆者を圧倒する迫力があった。

DHは井出川直樹(TEAM A&F)が解説、MCアリーさんが実況

コースウォークでは東京五輪のXCに出場した山本幸平(YAMAMOTO ATHLETE FARM)がコースのライン取りを教えてくれる

今年から新しく追加されたカテゴリー「Trail Ride+」は、レースでもツーリングでもない日常の延長線上にある異日常を体験できる種目。コースウォークでは東京五輪XCに出場した山本幸平(YAMAMOTO ATHLETE FARM)やシマノサポートライダーが、参加者にコースの注意箇所とライン取りを細かく説明していく貴重な機会となっていた。

コースウォークの後は初めのタイム計測を行い、その後には3時間15分のフリー走行時間が用意される。タイム短縮やスキルアップのためにひたすら反復走行を繰り返す参加者が多く見受けられた。そして、フリー走行後には締めのタイム計測が行われ、1日を通して成長を体感できる種目となっていた。

ツーリング種目はロードバイクやMTB、グラベルバイク、シクロクロス、E-BIKEなど様々な車種で参加できる
ツーリング種目は7時30分に集合


南八ヶ岳オンロードライドはシマノレーシングの野寺監督や選手たちが帯同してくれる

レース系種目と並んで、シマノバイカーズフェスティバルの人気イベントとなるのが、ツーリング種目。MTBの大会として認知されているシマノバイカーズフェスティバルだが、実はオンロード系のツーリングイベントも充実しており、会場にはロードバイクに乗ったサイクリストの姿も多い。

もちろん、MTBでのツーリング種目も用意されているほか、グラベルバイク、シクロクロス、E-BIKEなど様々な車種の特性を引き出し、楽しめるようなコースが設定されたツーリング種目には多数用意されている。初日の土曜日だけでも18種類のライドが用意され、どの種目の参加者も楽しそうにスタートしていく。数時間経った後、富士見パノラマへと戻ってくる参加者の顔はどれも満足そうで、皆さん一日を満喫していたのであろうことがファインダー越しにも伝わってきた。

中でも、今年人気を集めていたのが南八ヶ岳オンロードライド。102kmと55kmのカテゴリーが用意され、シマノレーシングの野寺監督や現役選手たちが帯同してくれるライドとなっていた。走行中には、様々なアドバイスをもらえたとのことで、一際満足度も高かったよう。この他のライドにもコースを知り尽くしたスタッフが帯同してくれ、メカトラブルがあった時にも対応してくれるため、初心者でも安心して参加しやすいのもポイントだ。

自然豊かなグラベルコースを走り抜けていく

レジェンドライダー達によるデュアルスラローム対決

さらに夕方には、レジェンドライダー達によるデュアルスラローム対決が実施された。伝説的なMTBユニット「ダートブロス」の塚本岳と柳原康弘をはじめ、高松健二、栗瀬裕太といった名選手らが参加。芝に設置されたスラロームコースで白熱した対決には、往年のファンたちが熱い声援を送っていた。

多くのメーカーが集まる出展ブースもシマノバイカーズフェスティバルのみどころの一つ。シマノのブースにはレイザーのヘルメット、シマノのビンディングシューズが展示され、実際に製品を手に取りながらシマノスタッフが製品の説明を行っていた。グラベルコンポーネントであるGRXが搭載されたバイクパッキング仕様の展示車両も多くの来場者の興味を惹いていた。

会場で一番大きなシマノブース
グラベルコンポーネントであるGRXが搭載された展示車



レイザーのヘルメットが試着できる

オフロード用のビンディングシューズを展示
シマノテクニカルセンターが設置され、会場での修理対応も行われていた


また、シマノテクニカルサポートとセルフメカニックコーナーが設置され、会場での修理対応も行われていた。トラブルとは縁の切れないオフロードライドだけに、こういった取り組みは嬉しいところ。

シマノブースのほかにも、多くのメーカーがたくさんの試乗車や新製品を展示し、多くの方が足を運んでいたのは例年通り。駆け足ながら、各ブースの様子は写真にて紹介していこう。

ダボスのバイクにOGK技研のサイクルトレーラー「Camilyキャミリー」が取り付けられていた
グラベルバイクにオルトリーブのバッグ類を取り付けたデモ車両


AERO-R2とFM-Xが人気があるという
ジャイアントとLivのブースにはMTB全日本選手権のマスターズDHを制した及川功申さん(ジャイアント港北店)の新型ダウンヒルレースマシン「GLORY」を展示


BMCのグラベルバイク、MTBの試乗車が多数展開
マックオフは使用用途に応じたケミカルをわかりやすく展示


ちなみに、昨年までは駐車場エリアに出展ブースは集められていたのに対し、今年はガラリとレイアウトを変更したのも大きなポイント。チケット売り場前はツーリングの受付集合地点として使われ、ブースエリアはゲレンデと駐車場エリアの2つに分かれることとなった。

その理由となるのが、試乗体験の改善。MTBの試乗コースが大幅に改良され、より本格的な環境でバイクの性能を試すことが出来るようになった。800mのメインコース、そして400mのショートコースの2つが用意され、ちょっとしたドロップオフなどもあるシングルトラックと、芝スラロームが選択できる分岐も用意されるなど、力が入った設定だ。

トライスポーツの一押しは軽量パーツブランドのダリモのカーボンハンドル
ケープラスヘルメットとKOOのサングラスを展示


ミズタニ自転車はパッシエの竹製ハンドルバーなどを展示
スコットはMTB試乗車を多数用意


ピレリのサポートを受ける竹之内悠がタイヤの使用感を話してくれた
マルイのブースではDTスイスのホイールとトピークのフロアポンプなどを展示


コースを設定したのは、普段からMTBを楽しむシマノの若手社員だという。経験豊富なライダーが設定したコースで、最新バイクの性能を試せる機会ということで、MTBの試乗をメインとするメーカーは、コースからちかいゲレンデ側へと配置されることとなったのだ。

更に、MTBだけでなくグラベルバイクの試乗コースも大幅に拡大。今回、実際にグラベル試乗コースを走ったが、800mという距離の中にグラベルらしいダブルトラックの下りや登り、砂利から土、アスファルトへの路面変化などあらゆる要素が詰まっていてグラベルの楽しさ、そして機材の性能を体感することができた。

実際にグラベル試乗コースを走ってきました

走りごたえのあるグラベルバイク試乗コースでジャイアント REVOLT X ADVANCED PRO を試乗

また、各テーマごとの特別な展示企画も用意されるのも新たな取り組み。クルマに自転車を積んで移動し、アウトドアフィールドで自転車を楽しむライフスタイル「6Wheel&Camping Zone」エリアでは「自転車xクルマxキャンプ」をテーマにアウトドアの世界観を体感できるブースが多数出展。実際、このバイカーズフェスティバルにおいても、駐車場にテントを張って2日間参加する参加者も多く、非常に多くの参加者が興味をそそられていた様子。

また、八ヶ岳山麓や諏訪湖周辺の地元グルメが集結し、パンや高原野菜、ベーコンなどを購入することができるバイカーズマルシェや、大阪堺の伝統技法「注染」の実演とうちわ製作体験をワークショップブースなど、家族や仲間で楽しめる企画も用意されており、2日間を通して飽きることなく楽しめる、まさに「バイカーズフェスティバル」として開催されているのだ。

アウトドアフィールドで自転車を楽しむライフスタイル「6Wheel Life」のブース

優勝者にはチャンピオンジャージとグラスが贈られる

バイカーズバーガーも販売された photo:Michinari TAKAGI
夕方まで表彰式が行われ、最後まで盛り上がっていた photo:Michinari TAKAGI


最後に、シマノの文化推進課の久保氏にインタビューを行った。



シマノ文化推進課 久保氏インタビュー

シマノバイカーズフェスティバルの運営・企画をメインで担ったシマノの文化推進課の久保氏

■今大会では様々な新企画が目白押しでした。これらを取り入れた理由を教えてもらえますか?

「マウンテンバイクの楽しみを広げたい」「こんな楽しみ方があるよ」と社内でもMTB好きの若い社員の意見を取り入れたんです。シマノには自転車文化のすそ野を広げていくというミッションがあるので、これから始めた人も、これまで長くMTBに乗ってきた方も、等しく楽しめるようなイベントにしたいんですよ。バイカーズビレッジや大型LEDビジョン、6Wheel Lifeなど、色んな企画は全てMTBの楽しさを伝えたいという想いの結晶です。

種目に関しても、XC系の種目はこれまでレベルに関わらず1つのカテゴリーで、競技志向の人もファン志向の人にも間口を広げていたのですが、反面どっちつかずにもなっていたんです。ですので今年は、RACEとLIGHTの2カテゴリーに分けました。テクニカルなコースを走りたければRACE、始めたばかりとか、簡単なコースなら走れるといった層にはLIGHTを用意して、それぞれに楽しんでもらえればと思っています。

■特にトレイルライド+は注目されていると感じました。

MTB好きの方は普段からトレイルを走っていると思うのですが、そういったマウンテンバイカーならではの楽しみ方があるんだよと伝えるために始めたんですよ。コンセプトとしては、「記録」じゃなくて、「成長」を残せるような種目として用意したんです。

どういった仕掛けかといえば、まず自分のスタート地点を把握するタイム計測が行われます。その後に自由に練習ができるフリー走行時間があって、そこで自分が苦手なところを克服できる。その際に、シマノのサポートライダーがアドバイスをしてくれます。アドバイスを受けて、練習して、自分の走りの発見もできる。その後に締めのタイム計測にチャレンジすることで、成長を実感することができる。「自分はこんなに走れるんだ!」と感じてもらえたら企画冥利に尽きますね。

ダウンヒル種目の参加者がこぞってLEDビジョンを観ながら仲間を応援

■1日を終えて、手ごたえはいかがでしたか?

今年はこんなにガラッと変えたのですが、皆さんには楽しんでもらえている様子でなによりでした。ダウンヒル種目の際にはLEDビジョンの前に参加者がこぞって観戦し、歓声が上がっている様子を見ると、改めてやって良かったなと感じました。これを続けることによってMTB好きの輪が広がって、盛り上がっていってくれればと思います。

今年はこれらの企画も初めてなので、来年以降も継続することによってMTBを楽しんでみようとか、この大会の中でステップアップしていってもらえればなと思います。そういった取組みの代表的な部分がトレイルライド+なんですが、従来のクロスカントリーやダウンヒル、グラベルクロスといった種目も2日間開催としているのは、ステップアップを実感してもらいたいからなんですよ。

土曜にレースを走って、失敗してしまった、納得いかない部分があった。そこで終わるのではなくて、大会で開催されているクリニックを受講したり、会場にいるサポートライダーからアドバイスをもらって、問題を解決して、もう一度翌日にレースに出てみる。そんな楽しみ方をしてくれる人が増えると嬉しいですね。ここで得たものを普段のライドでも活かして楽しんで走ってもらえれば、次のスキルアップに繋がり、もっと自転車が好きになる。そしてまた来年、富士見でお会いする、という好循環を起こしたいんです。

「MTB好きがもっと増えて、盛り上がっていってくれればなと思います!」と語る久保氏

■来年の大会に向けて、インスピレーションはありましたか?

まずは今大会でやったことをブラッシュアップして継続していきたいです。まずは、LEDビジョンなどは来年以降も続けていきたいですね。

また来年もシマノバイカーズフェスティバルに来たいよね!と言ってもらえるような大会にして、仲間同士が誘い合って次回も参加してくれるように、頑張ります。

text&photo:Michinari TAKAGI
edit:Naoki Yasuoka

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