11.8kmの独走勝利を掴んだミハウ・クフィアトコフスキは「悪い思い出のあったこの場で掴んだ勝利は特別」と喜んだ。「まだまだツールは続いていく」と言うポガチャルや「このステージは僕に向いていなかった」と語るヴィンゲゴーなど、ツール13日目を終えた選手たちのコメントを紹介します。



区間優勝 ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)

超級グランコロンビエールを制したミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

これは一人で掴んだ勝利ではなく、僕には(共に逃げた)18名の友人がいた。クレイジーなレースだったよ。逃げに乗った時は正直、「最終山岳の麓までのフリーチケット」としてしか思っていなかった。つまり、この逃げ集団がステージ優勝を争うとは思っていなかったんだ。

今朝のプランは大きな逃げ集団に入ること。UAEが勝利を狙っていたのであれば、あれほどの人数の逃げを許してしまったことが敗因だろう。今日は人生で一番と言えるほどコンディションが良かったのだが、まさか勝てるとは思っていなかった。ただ。こうして僕はいま勝利者インタビューに答えている。

2年連続でフランス独立記念日に勝利を挙げたイネオス・グレナディアーズ photo:CorVos

グラン・コロンビエールという山岳の山頂で勝利することができ、特別な気持ちがある。ここは(2020年に総合エースだった)エガン・ベルナルが大幅にタイムを失った場所。その後彼がリタイアしたこともあり、僕らにとってここは苦い思い出があったんだ。だが、その後リチャル(カラパス)と共に今日のようにスタートから全力で踏み続け、ツール初勝利を掴んだ。その時はラスト15kmをリチャルと一緒に楽しみながら走ることができたのだが、一人だった今日の登りは人生で一番辛かった。

そんな苦しみの中でも集中し続けペースを守り、長い登りでも力を出し続けた。詰めかけた大観衆からの声援がなければ、この勝利は不可能だっただろう。なぜならチームカーが背後にいなかったので、無線がなく状況を把握することができなかった。そんな不安の中でもファンの応援が背中を押してくれた。素晴らしい気持ちだったよ。

区間3位&総合2位&マイヨブラン(ヤングライダー賞) タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)

ヴィンゲゴーからボーナスタイム含め8秒を奪ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

もちろんステージ優勝が欲しかったが、概ね満足と言える結果だ。だが今日は逃げ集団を祝福したいし、ミハウ・クフィアトコフスキは本当に強かった。また最後は数秒を奪い返すことができ、成功のステージとなった。

ツールはまだまだ続いていくものの、僕らにとって良い状況にある。明日からも一日一日集中し、今日のようなチャンスを掴んでタイム差を奪いたい。チームとしても素晴らしい走りを見せることができ、勝利こそなかったが今日のステージから皆は自信とモチベーションを得ることができただろう。

区間4位&マイヨジョーヌ ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)

マイヨジョーヌの保持に成功したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

この結果にフラストレーションはもちろん、落ち込んでもいないよ。僕らの狙いは逃げ集団がステージ優勝することで、その通りになったので良い結果と言える。今日のレイアウトは全く僕に向いていなかった。だから正直、この差でレースを終えることができて良かったと思っている。それに来たる山岳は(登坂距離が長く)僕に適しているので、それらの山岳ステージが楽しみだよ。

ポガチャルの最終アシストを務めたアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)

アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)の牽引で登坂するプロトン photo:CorVos

序盤の平坦区間からプロトンのコントロールを担当し、逃げグループが大きかったので難しさもあった。これで(第2休息日まで)あと2日だ。

―終盤でのアタックは計画通りの動きだったのか?

いや、違う。観客が多く、集団後方にいるライバルたちは前に上がることが難しいと思って仕掛けた。それにライバルたちの脚色を確かめたかったという理由もある。結果的に誰も引き離すことはできなかったものの、良い試みだったと思う。

最後の2.5km地点ほどからは追い風で、速いペースで牽引すればタデイ(ポガチャル)がスプリントで飛び出せると考えた。逃げ切りを許してしまったことは残念だが、この結果はチームに良い影響を与えるだろう。来るステージでまたトライするよ。

セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)

予想していた結果と大きな乖離はない。UAEがレースをコントロールし、ステージ優勝を狙うことは明白だった。だが最終山岳前に彼らのペースが緩んだため、逃げ切りが成功したのだろう。

アダム・イェーツが飛び出した瞬間、「そのまま行かせてもいいな」とも思った。そのまま彼がボーナスタイムを取ってくれれば、こちらとしては良いことだからね。だがヨナス(ヴィンゲゴー)に「追うべき?」か聞いたら「追ってくれ」と言われたので差を埋めたんだ。

区間5位&総合8位 トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)

クフィアトコフスキの勝利を喜ぶトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

昨年(7月14日)は僕がラルプデュエズで勝利し、今日はクフィアトコフスキが勝った。だからフランス革命記念日を「イネオス・デー」に改名した方がいいんじゃないかな(笑)?

UAEがハイペースで逃げグループに迫っていたため、最終山岳ではクフィアトコフスキがプロトンに戻り、アシストしてもらうか話し合っていたんだ。だから結果的に彼がステージ優勝して、本当にレースは予測できないものだと実感したよ。僕はこのツールに向けてテネリフェ(での合宿)とツール・ド・スイスと、ずっと一緒に準備を進めていた。だからこの勝利が彼にとってどれだけ大きな成果なのか理解できる。僕も本当に嬉しいよ。

―最後に物凄い加速を見せたポガチャルの走りについてどう思うか?

17kmに渡る登りの最後で、まるで集団スプリントをするかのようなスピードを見せた。それまで既に僕は約700wで踏み続けていたんだ。だから加速した彼はどれほどの出力だったのだろうね(笑)。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.

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