独走勝利を挙げたベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)は「常軌を逸した勝利だ」と喜び、エヴェネプールからタイムを奪ったログリッチは「思惑通りライバルからタイム差を奪えた」と満足気に語った。ジロ8日目を選手たちのコメントで振り返ります。



区間優勝 ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)

フィニッシュを目指し邁進するベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:RCS Sport

アタックした理由は単純に一人の方が勝つチャンスが高まるから。集団だと選手間の力学が働き、展開が読めないからね。幸運にも最後まで逃げ切る脚があり、勝利を掴むことができた。

―アタックした直後から最後まで勝つ自信があったか?

ずっとではないにせよ、最初の(仕掛けた)山岳で脚の状態の良さは感じており、少し加速してみたら誰もついてこなかった。そしてそのまま”良い日”になったのだよ。この数ヶ月はとても良い走りができており、それをこの勝利に繋げることができた。僕にとっては常軌を逸した結果だよ。

初出場のジロで区間優勝を飾ったベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos

―今シーズン挙げた3つの勝利の全てが、ここイタリアの地で挙げている。

そうなんだよ。過去にもイタリアでは(2021年のU23ジロで区間優勝するなど)良い結果を残している。僕に向いているレースが多く、適した地なのだろうね。

―アイルランド人選手としてジロで勝利した6人目の選手となった。

歴代の勝利者には、名だたる選手がその名を連ねている。そこに並ぶことができ、心から誇りに思うよ。

区間3位 フィリッポ・ザナ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)

今日は厳しいステージとなった。ヒーリーは強く、彼についていく脚はなかった。3位は僕自身にとっても、またチームにとっても良い結果と言えるだろう。応援してくれた皆にありがとうと伝えたい。

10位&総合6位 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)

ログリッチと共に総合上位陣からタイムを稼いだテイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

激しい展開の序盤に僕とG(トーマス)、パヴェル(シヴァコフ)が入った集団が形成されたのだが、すぐに後続グループに追いつかれた。その後逃げ集団が形成されるまで2時間もかかる、一日を通して速いペースで展開した。テクニカルなコースを経て最初のカテゴリー山岳に入り、それからはまるでクラシックのような短い激坂とダウンヒルの連続だった。そして終盤に予想していた通りアタックが起こり、Gと僕が前の集団に入ることができた。

レース前のミーティングではチャンスがあればタイムを稼ぎ、ただ決して危険は侵さないようにというのが決め事だった。僕らはその作戦を忠実に遂行した。2人の優勝候補(エヴェネプールとログリッチ)がいるこのレースで戦略を立てるのは難しい。僕らには強いチームがいるものの、チーム力はある程度拮抗しているからね。待つ時は待ち、行くときは行く。僕らは僕らの戦い方を実行した。その考えはこの後のステージでも基本的には変わらない。

区間11位&総合3位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)

最終山岳でアタックし、エヴェネプールを引き離すプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

良いステージとなった。脚の調子は良く、チャンスを掴みに行った結果、運良くライバルたちからタイム差を稼ぐことができた。とにかく激しい展開に持ち込みたかった。コンディションは良いが、今日明らかとなったようにライバルたちも強い。明日の個人TTは平坦路なので、この脚で良い結果が得られるだろう。

区間12位&総合5位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)

互いの健闘を称え合うログリッチとトーマス photo:RCS Sport

悪くない日だった。なんとかログリッチに食らいつくことができた。明日のTTに向け、準備は万全だ。

総合2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)

登りで遅れ、タイムを失ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:RCS Sport

最良の日とはならなかった。ログリッチのアタックに反応してしまう失敗を犯した。あの時、ついていくのではなく自分のペースを守っていればよかった。脚の調子は良くなかったものの、まだパニックになるような状況ではない。重要なのは冷静を保ち、集中すること。ジロはまだまだ続いていくのだからね。

今日は大事な学びを得た日。幸いにも有力選手たちに対しまだ30秒程度のアドバンテージがある。明日の個人タイムトライアルで更にその差を拡げたい。

マリアローザ アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM)

マリアローザのキープに成功したアンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM) photo:RCS Sport

このピンクジャージを守ることができ、ホッとしている。本格的な登坂勝負が繰り広げられ、限界近くまで踏み込まなければならなかった。でも予想はしていたし、本来ならば昨日起こるはずの勝負だ。そんな中でも全力で戦い、マリアローザをキープすることができて本当に嬉しいよ。

―マリアローザを着用していたからこそ、可能だった結果だと思うか?

そうだね。ピンクを着ていなければ不可能だっただろう。残り60kmから覚悟を決め、100%の力で臨んだ。それがこの結果に繋がり、自信になるし、何より展開をコントロールしてくれたチームメイトに感謝したい。

EFエデュケーション・イージーポストのティージェイ・ヴァンガーデレン監督

チームカーに乗りはじめてから、今日が最良の日だ。ベン(ヒーリー)とは緻密な作戦を立てており、バルギルが総合タイムを稼ぐための動きをすると思い、彼の牽引を上手く利用できないかと考えていた。だがベンはそれらの作戦を無にするアタックを仕掛けた。

彼の背後についた僕は「ここから登るからペースを上げよう」、「ここでは力を抜いて休もう」、「次のコーナーはこんな感じだ」などという指示を送った。まるで彼とタイムトライアルをしているような感覚だった。ベンは素晴らしい才能の持ち主で、今年その殻を破った。プロトンではこれから長きに渡りベン・ヒーリーという名が呼ばれることになるだろう。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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