2023/05/13(土) - 07:45
標高2,135mの1級山岳グランサッソ・ディタリアにフィニッシュするジロ・デ・イタリア7日目。アルベルト・コンタドールがオーナーを務めるエオーロ・コメタのダヴィデ・バイス(イタリア)が、大舞台でプロ初勝利を飾った。
ジロ・デ・イタリア第7ステージは大会最初の山頂フィニッシュ。イタリアにはアルプス山脈以外にも標高3,000m級の山が2つあり、この日のフィニッシュ地点はその一つであるグランサッソ・ディタリア(もう一つはシチリア島のエトナ山)だ。全長26.4km/平均勾配3.4%の登りだが、本格的な登坂は残り4.4kmから始まり、その区間は平均8.2%で最大勾配13%に達する。
かつてはマルコ・パンターニも制したグランサッソがジロのフィニッシュ地点となるのは5回目。直近では2018年にマリアローザを着たサイモン・イェーツ(イギリス、当時ミッチェルトン・スコット)が、今大会も出場するティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)を振り切って勝利。まだ雪が残る標高2,130mでのマリアローザ争いが期待された。
正式スタートが切られると直ぐに4名グループによる先行が始まる。その中で最も総合タイムが良いシモーネ・ペティッリ(イタリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)でも7分49秒遅れだったため、メイン集団を先導するチームDSMはこの逃げを容認。慌ただしい追走劇となった前日から打って変わり、この日は終始穏やかな雰囲気が逃げとプロトンを包んだ。
逃げグループのメンバー(ゼッケン番号順)
ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ)
ヘノック・ムルブラン(エリトリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)
シモーネ・ペティッリ(イタリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
カレル・ヴァチェク(チェコ、チーム・コラテック)
突如降り出した雨が路面と選手を濡らすなか、先頭の4名は今大会最大のリードとなる8分差を稼ぎ出す。そのためペティッリがバーチャルマリアローザに立つなか、最初の中間スプリントをバイスが先頭で通過。その8分44秒後にやってきたプロトンの先頭は前日勝者のマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が取り、最終的なマリアチクラミーノ(ポイント賞)獲得に向けて4ポイントを上積みした。
直後に訪れた2級山岳ロッカラーゾの頂上もバイスがトップ通過する一方で、現アフリカ大陸王者かつ留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデベロップメントチーム)の出場したツール・ドゥ・ルワンダ(UCI2.1)で総合優勝を飾ったムルブランが逃げグループから脱落する。ムルブランは長い時間をかけてチームDSMが牽くプロトンに戻っていった。
最終山岳グランサッソ・ディタリアを目指して北へ一直線に進む中、タイム差は11分から13分を行ったり来たり。チームDSMに逃げを捉える意思はなく、最終的にマリアローザを譲ることのないタイム差(7分49秒以内)を考えながらペースを作った。
最終山岳の直前に設定された2級山岳カラーシオに突入したプロトンでは、サムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)が沿道のファンから受け取ったアロスティチーニ(アペニン山脈の名産品である羊の串焼き)を、カメラモトや横にいたニコラス・ダッラヴァッレ(イタリア、チーム・コラテック)にふるまうシーンも。また、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が前日に続いてチェーンを落としたものの、チームメイトの助けを受けて集団に復帰を果たしている。
イネオスが統制された連携でチーム力を見せつけた一方で、レムコ・エヴェネプール(ベルギー)を擁するスーダル・クイックステップからは、登坂も苦手ではないダヴィデ・バッレリーニ(イタリア)やヨセフ・チェルニー(チェコ)が脱落する。第2、第3週と徐々に厳しさを増す山岳ステージに向けて、エヴェネプールが不安要素を露呈した。
カラーシオの頂上もバイスがトップで通過して18点の山岳ポイントを獲得。マリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を着るティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)がプロトンの先頭で4点は加算したものの、この時点でピノとバイスが46点で並んだ。
そして8分のリードを得た先頭3名がいよいよグランサッソ・ディタリア(距離26.4km/平均勾配3.4%)に突入。メイン集団は変わらずチームDSMが先導し、虚を突くアタックに備えてスーダル・クイックステップやAG2Rシトロエンが前方で人数を集める。しかし強い向かい風の中ペースアップを図るチームは現れず、また先頭を追うアタックも起こらなかったため、今大会最初の山頂フィニッシュの勝利は先頭3名に委ねられた。
沿道に雪壁のある最終山岳に入っても順調にローテーションを回すバイス、ペティッリ、ヴァチェクは、いずれもジロで勝利を挙げたことがないだけでなくプロ未勝利の3名。残り4kmを通過してワールドチームの意地を見せたいペティッリが加速。それにヴァチェクが遅れ、追いついた後しばらしくしてから自らアタックを仕掛けた。
しかし、ここまで逃げ続けた疲労具合はほぼイーブンだったため決定的な動きには繋がらず、勝負は3名によるスプリントへ。残り200mでペティッリが先んじて腰を上げたものの、その動きを冷静に見たバイスが反応。そしてバイスがプロ初勝利とともに、チームに2年振りとなるジロ区間優勝をもたらした。
「まだ自分が成し遂げたことが理解できない。こんな形でプロ初勝利を飾ることができるなんて、素晴らしい以外の言葉はない。今日は勝利ではなく、山岳ポイントを狙うべく逃げに乗ったんだ。だが途中から目標を勝利に切り替え、力を温存して勝利することができた。この勝利をチームメイトで、いま(脳腫瘍と)戦っているアルトゥロ・グラヴァロスに捧げたい」と、勝利だけではなくマリアアッズーラも獲得したバイスは喜びを語った。
エオーロ・コメタのオーナーを務めるアルベルト・コンタドールは解説席で何度も拳を振り、身体いっぱいに喜びを表現した。そのチームで2021年にプロデビューしたバイスは25歳のクライマーで、今年3月のティレーノ~アドリアティコでは連日のように逃げに乗り、その積極的な走りをジロのステージ優勝という金星に繋げた。
トップから3分10秒遅れでやってきたメイン集団では、フィニッシュ手前でエディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)の加速に、昨年までチームメイトだったトーマスが追従する。しかしその2人をエヴェネプールとログリッチが軽々と抜いていき、エヴェネプールが先着したもののボーナスタイムや後続とのタイム差はつかなかった。
ジロ・デ・イタリア第7ステージは大会最初の山頂フィニッシュ。イタリアにはアルプス山脈以外にも標高3,000m級の山が2つあり、この日のフィニッシュ地点はその一つであるグランサッソ・ディタリア(もう一つはシチリア島のエトナ山)だ。全長26.4km/平均勾配3.4%の登りだが、本格的な登坂は残り4.4kmから始まり、その区間は平均8.2%で最大勾配13%に達する。
かつてはマルコ・パンターニも制したグランサッソがジロのフィニッシュ地点となるのは5回目。直近では2018年にマリアローザを着たサイモン・イェーツ(イギリス、当時ミッチェルトン・スコット)が、今大会も出場するティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)を振り切って勝利。まだ雪が残る標高2,130mでのマリアローザ争いが期待された。
正式スタートが切られると直ぐに4名グループによる先行が始まる。その中で最も総合タイムが良いシモーネ・ペティッリ(イタリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)でも7分49秒遅れだったため、メイン集団を先導するチームDSMはこの逃げを容認。慌ただしい追走劇となった前日から打って変わり、この日は終始穏やかな雰囲気が逃げとプロトンを包んだ。
逃げグループのメンバー(ゼッケン番号順)
ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ)
ヘノック・ムルブラン(エリトリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)
シモーネ・ペティッリ(イタリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
カレル・ヴァチェク(チェコ、チーム・コラテック)
突如降り出した雨が路面と選手を濡らすなか、先頭の4名は今大会最大のリードとなる8分差を稼ぎ出す。そのためペティッリがバーチャルマリアローザに立つなか、最初の中間スプリントをバイスが先頭で通過。その8分44秒後にやってきたプロトンの先頭は前日勝者のマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が取り、最終的なマリアチクラミーノ(ポイント賞)獲得に向けて4ポイントを上積みした。
直後に訪れた2級山岳ロッカラーゾの頂上もバイスがトップ通過する一方で、現アフリカ大陸王者かつ留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデベロップメントチーム)の出場したツール・ドゥ・ルワンダ(UCI2.1)で総合優勝を飾ったムルブランが逃げグループから脱落する。ムルブランは長い時間をかけてチームDSMが牽くプロトンに戻っていった。
最終山岳グランサッソ・ディタリアを目指して北へ一直線に進む中、タイム差は11分から13分を行ったり来たり。チームDSMに逃げを捉える意思はなく、最終的にマリアローザを譲ることのないタイム差(7分49秒以内)を考えながらペースを作った。
最終山岳の直前に設定された2級山岳カラーシオに突入したプロトンでは、サムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)が沿道のファンから受け取ったアロスティチーニ(アペニン山脈の名産品である羊の串焼き)を、カメラモトや横にいたニコラス・ダッラヴァッレ(イタリア、チーム・コラテック)にふるまうシーンも。また、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が前日に続いてチェーンを落としたものの、チームメイトの助けを受けて集団に復帰を果たしている。
イネオスが統制された連携でチーム力を見せつけた一方で、レムコ・エヴェネプール(ベルギー)を擁するスーダル・クイックステップからは、登坂も苦手ではないダヴィデ・バッレリーニ(イタリア)やヨセフ・チェルニー(チェコ)が脱落する。第2、第3週と徐々に厳しさを増す山岳ステージに向けて、エヴェネプールが不安要素を露呈した。
カラーシオの頂上もバイスがトップで通過して18点の山岳ポイントを獲得。マリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を着るティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)がプロトンの先頭で4点は加算したものの、この時点でピノとバイスが46点で並んだ。
そして8分のリードを得た先頭3名がいよいよグランサッソ・ディタリア(距離26.4km/平均勾配3.4%)に突入。メイン集団は変わらずチームDSMが先導し、虚を突くアタックに備えてスーダル・クイックステップやAG2Rシトロエンが前方で人数を集める。しかし強い向かい風の中ペースアップを図るチームは現れず、また先頭を追うアタックも起こらなかったため、今大会最初の山頂フィニッシュの勝利は先頭3名に委ねられた。
沿道に雪壁のある最終山岳に入っても順調にローテーションを回すバイス、ペティッリ、ヴァチェクは、いずれもジロで勝利を挙げたことがないだけでなくプロ未勝利の3名。残り4kmを通過してワールドチームの意地を見せたいペティッリが加速。それにヴァチェクが遅れ、追いついた後しばらしくしてから自らアタックを仕掛けた。
しかし、ここまで逃げ続けた疲労具合はほぼイーブンだったため決定的な動きには繋がらず、勝負は3名によるスプリントへ。残り200mでペティッリが先んじて腰を上げたものの、その動きを冷静に見たバイスが反応。そしてバイスがプロ初勝利とともに、チームに2年振りとなるジロ区間優勝をもたらした。
「まだ自分が成し遂げたことが理解できない。こんな形でプロ初勝利を飾ることができるなんて、素晴らしい以外の言葉はない。今日は勝利ではなく、山岳ポイントを狙うべく逃げに乗ったんだ。だが途中から目標を勝利に切り替え、力を温存して勝利することができた。この勝利をチームメイトで、いま(脳腫瘍と)戦っているアルトゥロ・グラヴァロスに捧げたい」と、勝利だけではなくマリアアッズーラも獲得したバイスは喜びを語った。
エオーロ・コメタのオーナーを務めるアルベルト・コンタドールは解説席で何度も拳を振り、身体いっぱいに喜びを表現した。そのチームで2021年にプロデビューしたバイスは25歳のクライマーで、今年3月のティレーノ~アドリアティコでは連日のように逃げに乗り、その積極的な走りをジロのステージ優勝という金星に繋げた。
トップから3分10秒遅れでやってきたメイン集団では、フィニッシュ手前でエディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)の加速に、昨年までチームメイトだったトーマスが追従する。しかしその2人をエヴェネプールとログリッチが軽々と抜いていき、エヴェネプールが先着したもののボーナスタイムや後続とのタイム差はつかなかった。
ジロ・デ・イタリア2023第7ステージ結果
1位 | ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ) | 6:08:40 |
2位 | カレル・ヴァチェク(チェコ、チーム・コラテック) | +0:09 |
3位 | シモーネ・ペティッリ(イタリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) | +0:16 |
4位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +3:10 |
5位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
6位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | |
7位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | |
8位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | |
9位 | エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー) | |
10位 | クリスティアン・スカローニ(イタリア、アスタナ・カザフスタン) | |
28位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM) | |
152位 | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) | +30:05 |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM) | 29:02:38 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:28 |
3位 | オレリアン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン) | +0:30 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +1:00 |
5位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +1:12 |
6位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +1:26 |
7位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
8位 | テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +1:30 |
9位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +1:54 |
10位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:59 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 110pts |
2位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 99pts |
3位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 87pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ) | 86pts |
2位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 50pts |
3位 | カレル・ヴァチェク(チェコ、チーム・コラテック) | 36pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM), | 29:02:38 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ), | +0:28 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +1:00 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 87:11:43 |
2位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +2:15 |
3位 | ユンボ・ヴィスマ | +2:34 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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