2023/05/12(金) - 08:00
フィニッシュ手前300mでデマルキとクラークの逃げ切りが潰えたジロ・デ・イタリア第6ステージ。トップスプリンターたちによるスピード勝負をマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が制し、3大グランツール全てでの区間優勝を達成した。
2日連続の集団スプリントが予想されるジロ・デ・イタリア第6ステージの舞台は、イタリア南部にある歴史深い港湾都市ナポリ。前回大会の第8ステージの舞台でもあるが、2つのコースが重ならない162kmの平坦ステージだ。コースはナポリを出発してヴェスヴィオ火山の麓を囲うように南東に向かい、アドリア海沿岸を沿うように方向を変えながらナポリに帰ってくる。カテゴリー山岳は中盤に2つ(2級と3級)設定され、市街地が近づくにつれ地形はなだらかになっていく。
前日に多数の落車を誘発した雨は上がり、この日は太陽が選手たちを照らした。2度の落車に見舞われたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)はチームプレゼンテーションで渡されたサッカーボールでリフティングを披露して快調さをアピール。落車した他の選手たちの中から怪我によるリタイア者はでなかったものの、クレモン・ルッソ(フランス、アルケア・サムシック)が新型コロナウイルスに感染して未出走。しかし同部屋だったワレン・バルギル(フランス)らチームメイトたちは陰性で、無事に6日目のスタートを切っている。
スタート直後に飛び出したアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)に追従したのは、36歳のサイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)や38歳のフランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、エオーロ・コメタ)らベテラン選手たち。直後にメイン集団の先頭にいる選手たちが横に拡がり蓋したことで、5名の逃げグループが成立した。
第6ステージで逃げた5名
アレクサンドル・ドゥレットル(フランス、コフィディス)
フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、エオーロ・コメタ)
サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)
チャーリー・クオーターマン(イギリス、チーム・コラテック)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)
逃げ集団に対し5分半のリードを許したプロトンでは、最初の2級山岳でイネオス・グレナディアーズが高速牽引を開始する。このハイペースに前日の落車で膝を痛めたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン)が遅れ、チームは4名のアシストを送ってグルペットを形成。この日カヴェンディッシュは勝負に絡むことはできず、更に下りで落車に見舞われたものの、18分25秒遅れで制限時間内にフィニッシュしている。
ここまでのレースで顕になった山岳で遅れるスーダル・クイックステップのアシスト陣につけ込むように、イネオスはカテゴリーのつかない登りでもハイペースの牽引を敢行した。しかしエヴェネプールを孤立させるまでには至らず、その後リーダチームでありながらもスプリントを狙うチームDSMやバーレーン・ヴィクトリアスが集団コントロールを引き継いだ。
2つ目にして最後の3級山岳を3分のリードで突入した逃げ集団では、デマルキが加速してクラークが追従する。その他の選手を置き去りにした36歳コンビはそのまま頂上を通過し、ナポリの市街地に設定されたフィニッシュラインを目指して邁進した。
プロトンではアマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア、トレック・セガフレード)が長時間先頭を引き、共にドイツ人のフロリアン・ストーク(チームDSM)とヤシャ・ズッタリン(バーレーン・ヴィクトリアス)が協力しながら先頭とのタイム差を縮める。だがデマルキとクラークは共にジロ初勝利を掴もうと粘りの走りを見せる。25kmを過ぎても2分となかなか詰まることのないタイム差に、前日勝者のカーデン・グローブス(オーストラリア)を擁するアルペシン・ドゥクーニンクも牽引に選手を送った。
その甲斐もあり、残り15kmで1分17秒差まで迫ったメイン集団ではプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がパンクするシーンも。しかし素早いバイク交換によって集団に戻り、直後にメカトラに見舞われたゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)もフィリッポ・ガンナ(イタリア)の強力牽引によって残り5km地点で集団復帰を叶えている。
勝てば3大グランツールでの区間優勝を達成するクラークと、マリアローザ着用経験はあるものの、ステージ優勝の経験はないデマルキ。残り5km地点で39秒遅れと逃げ切りの可能性を見えてきたものの、追い風がスピードを阻害し、また互いに牽制したため残り300mでプロトンに飲み込まれた。
2日連続の集団スプリントに持ち込まれた勝負は、逃げを捉えた直後にフェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)がスプリントを開始する。このアーリースプリントをシモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)が潰し、ガビリアの背後を取ったマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が残り50mで先頭へ。
ガビリアのスピードが落ちるなか、タイミングを図って腰を上げたマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)のジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)もトップスピードに到達。しかし、これ以上ないタイミングの飛び出しと、他を寄せ付けない速度を保ったピーダスンが、雄叫びをあげながらフィニッシュラインを先頭で通過した。
昨年挙げたツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャでの勝利に続き、ジロ初勝利を飾ったピーダスンが3大グランツール区間優勝を達成。「スプリンターチームが選手を送って追走を強いられる、とてもタフなステージだった。逃げた2人には申し訳なく思う気持ちもあるが、チームメイトの牽引に報いる勝利。本当に嬉しいよ」と元世界王者は喜びを語った。
一方、寸前のところで勝利を逃したクラークは「長年の夢であったジロでの勝利。過去に2位、3位、4位に入ったことがあるので、今日はどうしても勝ちたかった。力を出し尽くしたが、あと10秒足りなかった。だがアレッサンドロ(デマルキ)と一緒じゃなければこの走りは不可能だった。彼に感謝したい」と、悔しさを表した。
総合首位の証であるマリアローザは「昨日とは違い、1秒1秒を噛み締めながら走ることができた」と語るアンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM)がキープ。ミランの区間2位とマリアチクラミーノ保持に貢献した新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は18分25秒遅れの148位でフィニッシュしている。
2日連続の集団スプリントが予想されるジロ・デ・イタリア第6ステージの舞台は、イタリア南部にある歴史深い港湾都市ナポリ。前回大会の第8ステージの舞台でもあるが、2つのコースが重ならない162kmの平坦ステージだ。コースはナポリを出発してヴェスヴィオ火山の麓を囲うように南東に向かい、アドリア海沿岸を沿うように方向を変えながらナポリに帰ってくる。カテゴリー山岳は中盤に2つ(2級と3級)設定され、市街地が近づくにつれ地形はなだらかになっていく。
前日に多数の落車を誘発した雨は上がり、この日は太陽が選手たちを照らした。2度の落車に見舞われたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)はチームプレゼンテーションで渡されたサッカーボールでリフティングを披露して快調さをアピール。落車した他の選手たちの中から怪我によるリタイア者はでなかったものの、クレモン・ルッソ(フランス、アルケア・サムシック)が新型コロナウイルスに感染して未出走。しかし同部屋だったワレン・バルギル(フランス)らチームメイトたちは陰性で、無事に6日目のスタートを切っている。
スタート直後に飛び出したアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)に追従したのは、36歳のサイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)や38歳のフランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、エオーロ・コメタ)らベテラン選手たち。直後にメイン集団の先頭にいる選手たちが横に拡がり蓋したことで、5名の逃げグループが成立した。
第6ステージで逃げた5名
アレクサンドル・ドゥレットル(フランス、コフィディス)
フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、エオーロ・コメタ)
サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)
チャーリー・クオーターマン(イギリス、チーム・コラテック)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)
逃げ集団に対し5分半のリードを許したプロトンでは、最初の2級山岳でイネオス・グレナディアーズが高速牽引を開始する。このハイペースに前日の落車で膝を痛めたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン)が遅れ、チームは4名のアシストを送ってグルペットを形成。この日カヴェンディッシュは勝負に絡むことはできず、更に下りで落車に見舞われたものの、18分25秒遅れで制限時間内にフィニッシュしている。
ここまでのレースで顕になった山岳で遅れるスーダル・クイックステップのアシスト陣につけ込むように、イネオスはカテゴリーのつかない登りでもハイペースの牽引を敢行した。しかしエヴェネプールを孤立させるまでには至らず、その後リーダチームでありながらもスプリントを狙うチームDSMやバーレーン・ヴィクトリアスが集団コントロールを引き継いだ。
2つ目にして最後の3級山岳を3分のリードで突入した逃げ集団では、デマルキが加速してクラークが追従する。その他の選手を置き去りにした36歳コンビはそのまま頂上を通過し、ナポリの市街地に設定されたフィニッシュラインを目指して邁進した。
プロトンではアマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア、トレック・セガフレード)が長時間先頭を引き、共にドイツ人のフロリアン・ストーク(チームDSM)とヤシャ・ズッタリン(バーレーン・ヴィクトリアス)が協力しながら先頭とのタイム差を縮める。だがデマルキとクラークは共にジロ初勝利を掴もうと粘りの走りを見せる。25kmを過ぎても2分となかなか詰まることのないタイム差に、前日勝者のカーデン・グローブス(オーストラリア)を擁するアルペシン・ドゥクーニンクも牽引に選手を送った。
その甲斐もあり、残り15kmで1分17秒差まで迫ったメイン集団ではプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がパンクするシーンも。しかし素早いバイク交換によって集団に戻り、直後にメカトラに見舞われたゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)もフィリッポ・ガンナ(イタリア)の強力牽引によって残り5km地点で集団復帰を叶えている。
勝てば3大グランツールでの区間優勝を達成するクラークと、マリアローザ着用経験はあるものの、ステージ優勝の経験はないデマルキ。残り5km地点で39秒遅れと逃げ切りの可能性を見えてきたものの、追い風がスピードを阻害し、また互いに牽制したため残り300mでプロトンに飲み込まれた。
2日連続の集団スプリントに持ち込まれた勝負は、逃げを捉えた直後にフェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)がスプリントを開始する。このアーリースプリントをシモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)が潰し、ガビリアの背後を取ったマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が残り50mで先頭へ。
ガビリアのスピードが落ちるなか、タイミングを図って腰を上げたマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)のジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)もトップスピードに到達。しかし、これ以上ないタイミングの飛び出しと、他を寄せ付けない速度を保ったピーダスンが、雄叫びをあげながらフィニッシュラインを先頭で通過した。
昨年挙げたツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャでの勝利に続き、ジロ初勝利を飾ったピーダスンが3大グランツール区間優勝を達成。「スプリンターチームが選手を送って追走を強いられる、とてもタフなステージだった。逃げた2人には申し訳なく思う気持ちもあるが、チームメイトの牽引に報いる勝利。本当に嬉しいよ」と元世界王者は喜びを語った。
一方、寸前のところで勝利を逃したクラークは「長年の夢であったジロでの勝利。過去に2位、3位、4位に入ったことがあるので、今日はどうしても勝ちたかった。力を出し尽くしたが、あと10秒足りなかった。だがアレッサンドロ(デマルキ)と一緒じゃなければこの走りは不可能だった。彼に感謝したい」と、悔しさを表した。
総合首位の証であるマリアローザは「昨日とは違い、1秒1秒を噛み締めながら走ることができた」と語るアンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM)がキープ。ミランの区間2位とマリアチクラミーノ保持に貢献した新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は18分25秒遅れの148位でフィニッシュしている。
ジロ・デ・イタリア2023第6ステージ結果
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 3:44:45 |
2位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
3位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ) | |
4位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
5位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター) | |
6位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) | |
7位 | ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ) | |
8位 | マリウス・マイヤーホーファー(ドイツ、チームDSM) | |
9位 | ロレンツォ・ロータ(イタリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) | |
10位 | シモーネ・ヴェラスコ(イタリア、アスタナ・カザフスタン) | |
148位 | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) | +18:25 |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM) | 22:50:48 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:28 |
3位 | オレリアン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン) | +0:30 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +1:00 |
5位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +1:12 |
6位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +1:26 |
7位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
8位 | トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード) | +1:29 |
9位 | テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +1:30 |
10位 | ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ) | +1:39 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 110pts |
2位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 99pts |
3位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 83pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 40pts |
2位 | ポール・ラペラ(フランス、AG2Rシトロエン) | 26pts |
3位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 22pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM), | 22:50:48 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ), | +0:28 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +1:00 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 68:36:13 |
2位 | ユンボ・ヴィスマ | +1:49 |
3位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +2:15 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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