2023/01/15(日) - 22:29
「ミスもあったけれど、終始冷静に走ることができた。ようやく勝てました」と新チャンピオンは振り返る。圧倒的なフィジカルを武器に、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)がついにシクロクロス全日本選手権エリートレースで勝利した。
最高気温15度で薄曇り。晴れとは言わないまでも、好天によってワイルドネイチャー名物の砂区間は男子エリートレース開始までに乾燥度を増すことに。レース後半には少しだけ雨粒が落ちる時間帯があったものの、スタートからフィニッシュまで、コースは一切泥要素無しの状態が保たれた。
14時45分、ポイントランキングで選りすぐられた51名が一気に加速体制に入ったが、スタートダッシュ中にまず一度、そして第1コーナーでもう一度落車が発生。まだ宇都宮ブリッツェンジャージ姿が見慣れない沢田時がホールショットを決めたものの、その背後では優勝候補の一角である竹内遼(GHISALLO RACING)が2度に渡るアクシデントでほぼ最後尾までポジションを落としてしまう。
1周回2.6kmコース序盤〜中盤のハイスピード区間で先頭に立った織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)には沢田が続き、数秒間隔を空けて横山航太(シマノレーシング)、小坂光(宇都宮ブリッツェン)、竹之内悠(Cinelli - Vision)、加藤健悟(臼杵レーシング)、そして堀川滉太(NEBcycling)の順で1周目の砂区間へと入る。砂下りで織田が転倒する場面があったが、「焦って何も考えられなくなったけれど、すぐに冷静さを取り戻すことができた」と再乗車し、沢田を抑えた状態で2周目に入った。
すると、周回序盤のシケインで織田が早くも攻撃に出る。「砂が圧倒的に速い悠さんを合流させたくなかったし、(沢田)時の前でシケインを飛べばアドバンテージができると思った」と先行し、降車する沢田に対して小さなリードを得る。後ろを振り返らずに踏み続ける織田は、レース序盤に走りを観察できたという沢田や、それ以降の選手を少しずつ引き離していった。
男子U23で優勝した柚木伸元(朝明高校)のラップタイムが6分30秒だったのに対し、アクセル全開で飛ばす織田の2周目のラップタイムは全カテゴリー通じての最速記録である6分05秒。3周目に入る頃に沢田とのタイム差は13秒まで広がっていた。
その後方では堀川がプロ選手を相手に3番手と気を吐いていたが、やがてフィジカルに勝る竹之内や小坂らにパスされてしまう(最終的に10位)。砂のアドバンテージを武器にする竹之内は、1.1気圧という攻めの空気圧セッティングを施したチューブラータイヤで走行順位を上げていく。その勢いはレース中盤、織田を単独追走していた沢田の元まで届いた。
2位争いが激化するのを尻目に、織田がワイルドネイチャーの砂コースを飛ばしに飛ばす。「しっかりと考え、ペース配分をうまくできた。差がどんどん開いていって、ああ、良かったって思いました」と言う織田はペースを緩めることもせず、むしろ後半9周目にはラップタイムを上げてみせる。最終ラップも安定した走りでこなし、最後の砂区間を駆け降りた織田が勝利。フィニッシュラインで待ち構えたフォトグラファーの父と固く手を握り合った。
ジュニアとアンダーで全日本タイトルを獲っているものの、エリートカテゴリーでは2年連続2位と勝利を取りこぼしていた織田が、ついに悲願の全日本チャンピオンに輝いた。それも、今季CXシーズン負けなしの11連勝、さらに2年連続エリート2位と誰よりも大きなプレッシャーを克服して。
織田は表彰式でチャンピオンジャージと金メダルを受け取った後、電話で弱虫ペダル作者の渡辺航先生に勝利を報告。「(先生は)"ようやく獲ったな"、って言ってくれました。去年は先生の目の前でボロ負けしましたからね」と、重荷から解放された笑顔を光らせた。
「今日は序盤、(沢田)時の後ろで冷静に判断できたのが良かった。ミスもありましたが、ちゃんと考えながら走れました」と言う織田は、この後大きな目標として見据えるシクロクロス世界選手権に日本チャンピオンとして臨む。1週間前の前哨戦(X2Oトロフェー)ではチャンピオンジャージ姿を披露することになるはずだ。
激しい2位争いを制したのは、ラスト2周回で「砂勝負だとまずいのでスピード区間で思いっきり仕掛けた」と振り返る沢田。目標としていたチーム内でのチャンピオンリレーは叶わなかったものの、「(同会場での)プレ大会と比べて自分のコンディションはかなり良かったし、それは万全の体制を組んでくれた新チームのおかげ。今日はただ聖が強かった」と新チームに感謝しつつ、良きライバルである織田を讃える。
試走の様子から期待されていた竹之内は3位だった。「聖のフィジカルは頭ひとつ抜けてるし、綺麗に走っているのを見て嬉しかった」と、やはり優勝した織田を讃える。2年連続の全日本3位だが、「今年は体制が変わり、メカも含めて1人なのですが、それでもスポンサーがついてくれて、助けてくれる仲間がいて、こうやってレースを走れた。同じ3位だけど中身が全く違う」と安堵した表情が印象に残った。
12月にコロナ感染し、フィジカルを上げるのが大変だったと言う横山が4位となり、ほぼ最後尾から粘り強く追い上げた竹内遼(GHISALLO RACING)とのスプリントを制した小坂が5位。以降丸山厚(BOMA/ROND CX TEAM)、千田尚孝(自転車村R_HANGOUT)、加藤と続き、10位の堀川までがフルラップ完走者となった。
最高気温15度で薄曇り。晴れとは言わないまでも、好天によってワイルドネイチャー名物の砂区間は男子エリートレース開始までに乾燥度を増すことに。レース後半には少しだけ雨粒が落ちる時間帯があったものの、スタートからフィニッシュまで、コースは一切泥要素無しの状態が保たれた。
14時45分、ポイントランキングで選りすぐられた51名が一気に加速体制に入ったが、スタートダッシュ中にまず一度、そして第1コーナーでもう一度落車が発生。まだ宇都宮ブリッツェンジャージ姿が見慣れない沢田時がホールショットを決めたものの、その背後では優勝候補の一角である竹内遼(GHISALLO RACING)が2度に渡るアクシデントでほぼ最後尾までポジションを落としてしまう。
1周回2.6kmコース序盤〜中盤のハイスピード区間で先頭に立った織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)には沢田が続き、数秒間隔を空けて横山航太(シマノレーシング)、小坂光(宇都宮ブリッツェン)、竹之内悠(Cinelli - Vision)、加藤健悟(臼杵レーシング)、そして堀川滉太(NEBcycling)の順で1周目の砂区間へと入る。砂下りで織田が転倒する場面があったが、「焦って何も考えられなくなったけれど、すぐに冷静さを取り戻すことができた」と再乗車し、沢田を抑えた状態で2周目に入った。
すると、周回序盤のシケインで織田が早くも攻撃に出る。「砂が圧倒的に速い悠さんを合流させたくなかったし、(沢田)時の前でシケインを飛べばアドバンテージができると思った」と先行し、降車する沢田に対して小さなリードを得る。後ろを振り返らずに踏み続ける織田は、レース序盤に走りを観察できたという沢田や、それ以降の選手を少しずつ引き離していった。
男子U23で優勝した柚木伸元(朝明高校)のラップタイムが6分30秒だったのに対し、アクセル全開で飛ばす織田の2周目のラップタイムは全カテゴリー通じての最速記録である6分05秒。3周目に入る頃に沢田とのタイム差は13秒まで広がっていた。
その後方では堀川がプロ選手を相手に3番手と気を吐いていたが、やがてフィジカルに勝る竹之内や小坂らにパスされてしまう(最終的に10位)。砂のアドバンテージを武器にする竹之内は、1.1気圧という攻めの空気圧セッティングを施したチューブラータイヤで走行順位を上げていく。その勢いはレース中盤、織田を単独追走していた沢田の元まで届いた。
2位争いが激化するのを尻目に、織田がワイルドネイチャーの砂コースを飛ばしに飛ばす。「しっかりと考え、ペース配分をうまくできた。差がどんどん開いていって、ああ、良かったって思いました」と言う織田はペースを緩めることもせず、むしろ後半9周目にはラップタイムを上げてみせる。最終ラップも安定した走りでこなし、最後の砂区間を駆け降りた織田が勝利。フィニッシュラインで待ち構えたフォトグラファーの父と固く手を握り合った。
ジュニアとアンダーで全日本タイトルを獲っているものの、エリートカテゴリーでは2年連続2位と勝利を取りこぼしていた織田が、ついに悲願の全日本チャンピオンに輝いた。それも、今季CXシーズン負けなしの11連勝、さらに2年連続エリート2位と誰よりも大きなプレッシャーを克服して。
織田は表彰式でチャンピオンジャージと金メダルを受け取った後、電話で弱虫ペダル作者の渡辺航先生に勝利を報告。「(先生は)"ようやく獲ったな"、って言ってくれました。去年は先生の目の前でボロ負けしましたからね」と、重荷から解放された笑顔を光らせた。
「今日は序盤、(沢田)時の後ろで冷静に判断できたのが良かった。ミスもありましたが、ちゃんと考えながら走れました」と言う織田は、この後大きな目標として見据えるシクロクロス世界選手権に日本チャンピオンとして臨む。1週間前の前哨戦(X2Oトロフェー)ではチャンピオンジャージ姿を披露することになるはずだ。
激しい2位争いを制したのは、ラスト2周回で「砂勝負だとまずいのでスピード区間で思いっきり仕掛けた」と振り返る沢田。目標としていたチーム内でのチャンピオンリレーは叶わなかったものの、「(同会場での)プレ大会と比べて自分のコンディションはかなり良かったし、それは万全の体制を組んでくれた新チームのおかげ。今日はただ聖が強かった」と新チームに感謝しつつ、良きライバルである織田を讃える。
試走の様子から期待されていた竹之内は3位だった。「聖のフィジカルは頭ひとつ抜けてるし、綺麗に走っているのを見て嬉しかった」と、やはり優勝した織田を讃える。2年連続の全日本3位だが、「今年は体制が変わり、メカも含めて1人なのですが、それでもスポンサーがついてくれて、助けてくれる仲間がいて、こうやってレースを走れた。同じ3位だけど中身が全く違う」と安堵した表情が印象に残った。
12月にコロナ感染し、フィジカルを上げるのが大変だったと言う横山が4位となり、ほぼ最後尾から粘り強く追い上げた竹内遼(GHISALLO RACING)とのスプリントを制した小坂が5位。以降丸山厚(BOMA/ROND CX TEAM)、千田尚孝(自転車村R_HANGOUT)、加藤と続き、10位の堀川までがフルラップ完走者となった。
シクロクロス全日本選手権2023 男子エリート結果
1位 | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 1:02:35 |
2位 | 沢田時(宇都宮ブリッツェン) | +0:58 |
3位 | 竹之内悠(Cinelli - Vision) | +1:06 |
4位 | 横山航太(シマノレーシング) | +2:09 |
5位 | 小坂光(宇都宮ブリッツェン) | +2:39 |
6位 | 竹内遼(GHISALLO RACING) | +2:42 |
7位 | 丸山厚(BOMA/ROND CX TEAM) | +4:53 |
8位 | 千田尚孝(自転車村R_HANGOUT) | +5:01 |
9位 | 加藤健悟(臼杵レーシング) | +5:45 |
10位 | 堀川滉太(NEBcycling) | +8:18 |
text&photo:So Isobe
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