2022/11/18(金) - 18:01
例年好評のツール・ド・おきなわ市民レース各クラスの優勝者たちによる参戦レポートをお届け。「ホビーレース甲子園」で栄光を掴んだ選手たちの自筆レポートで、勝負のインサイドが明らかになる。一番バッターは140kmオープンに優勝した井上和郎(バルバワークスハクサンストア)だ。
こんにちは、バルバワークスハクサンストアマネージャースタッフの井上和郎です。この度、2022ツール・ド・おきなわ市民140kmオープンクラスで優勝することができました。普段は、バルバワークスのスタッフとして、石川県白山市にありますハクサンストアに勤務しております。店舗での販売、メカニック業務などを行いながら、同ストアのコミュニティクラブ運営も行っており、レース活動、イベント活動などを通じてサイクルスポーツを長く楽しんでいただける仲間を増やせるよう日々奮闘しております。
ツール・ド・おきなわは、ロードシーズン最終戦にして、年間で最大の目標です。
沖縄という観光地を満喫できることに加えて、参加してくる選手達のモチベーションが高く、「ホビーレーサーの甲子園」と言われるのも納得の大会なので、我々も気合いの入れ方は半端じゃないです。
普段の練習会は、福井、石川、富山に2店舗ずつあるそれぞれのバルバストアごとに、火、水、木、土、日の5:20~行っております。おきなわに向けても、参加メンバーを中心に直前まで練習会を行ってきました。おきなわ前になると、真っ暗闇の中での練習となるなか、最後まで皆さんがんばって準備してきました。
ツール・ド・おきなわ参戦に当たっては、日本旅行さんにツアーを組んでいただいて、かりゆしビーチリゾートのホテル、往復のフライト、那覇空港からホテルまでのバイク運搬、バス手配、100、140kmスタート地点までのバス移動など、ストレスなくレースに参戦できるよう至れり尽くせりです。
個人的には、前々回2018年は5位、翌年2019年は29位と惨敗。今年は例年に比べ安定した練習量で、狙うは「市民140kmオープンの優勝」。年齢的には41歳とマスター対象だけど、次(210km)へのステップを考えてオープンで勝ちたいとエントリーしました。
5月の美山時に72kgあった体重もJBCF南魚沼時には64kg台に。CTLは81で、終盤に登りで千切れていたので、おきなわまでに体重62kg台、CTL100を目指し乗り込みを増やしました。ところが、JBCF南魚沼に向けて追い込んだ無理がたたり、約10日間身体が動かず休養状態。若干風邪気味に。練習、仕事、睡眠、身体のケアなど、バランスを取ることの難しさを痛感しましたが、今の状況に合わせてやり繰りする術を身につけることもできました。
そこから立て直しを図り、南魚沼後に休養したことから身体は回復。なんだかんだ急ピッチで仕上げてきました。乗り込みをしながら、トルクをかけ、不足していた登坂力と持久力強化を心がけました。10月は55時間、1752km、11月おきなわまでは27時間、804kmの練習量。目標値には届きませんでしたが、体重63.5kg、CTL87、FTP288W(4.53W/kg)で当日を迎えることに。
そのほかの準備としては、朝練時には気温が一桁の北陸から最高で30℃近くまで気温が上がるおきなわに移動してすぐにレースを走るので、暑さと汗をかくことに慣れる暑熱順化を意識しました。実践したのは、シャワーだけじゃなく湯船につかることと、外練だけじゃなくインドアトレーニングを組み合わせること。お風呂につかりながら、羽地の坂を耐えるイメトレをしたりすると、それだけで発汗量が増えたりするのでぜひ試してみてください(笑)
機材面では、待ちに待ったCOLNAGO C68が届いたのでさっそく組み上げて乗り始めました。乗り味はそれまで乗っていたC64に比べてマイルドに。その分、ギアをかけてグイグイ踏むことを意識するようにしました。エアロ性能を稼ぎたく、C-C380mmの一体型エアロハンドルVISION METRON 5D Super Compactを選択。超高剛性と、ショートリーチ、ショートドロップの握りが気に入りました。
ホイールは、Campagnolo BORA ULTRA WTO 45。登りの不安を拭ってくれる軽さが魅力的ですが、反応性や伸びを考えると50mmリムハイト以上のホイールでも良いと思いました。
そんなこんなでいよいよツアースタート。日本旅行さんのツアーで、那覇空港に着いてからのバス移動や自転車運搬を全てお任せでできたのも、毎回ながらありがたいと思いました。小松空港発のフライトが機材トラブルでキャンセルになるトラブルにも、すぐに対応していただき、むしろ当初の予定より早く着く神対応でした。
個人的には、移動が多いとむくんだり便秘になるので、塩分摂取を極力控えて水分補給を小まめにおこないました。宿泊先のかりゆしビーチリゾートには4時前には着きましたが、フライト変更でバイクが遅れたため、予定変更でビーチまでお散歩。これぞ沖縄!という雰囲気に心からリラックスできました。レンタカーも早めに配車してもらい、ドライブがてらブルーシールアイスを食べに。翌日になればレースモードに入っていくので、リラックスした時間がありがたかったです。レース前日の土曜日は、練習、受付、バイク預け、買い出しと予定が盛りだくさん。
1日中不安定で読めない天候でしたが、予定を先延ばしにはできなかったので、覚悟を決めて朝一に自転車でコース変更になった部分のコース試走に。多少なりとも汗をかけたのが良かったのと、実際に走ったことでコース熟知度が格段に上がりました。その後、受付、車で100kmメンバーとコース下見を行い、買い出し、夕食、就寝。若干興奮気味で11時前に就寝。
当日朝は、4時起床で荷物をまとめてチェックアウト。100km、140km組は、かりゆしビーチリゾートからツアーバスでスタート地点まで移動。これも毎回ながら何のストレスもなくありがたいです。そして毎度おなじみYOUTUBEでゆずの「栄光の架け橋」をバックミュージックにしたオリンピック振り返り動画を見て心のウォーミングアップを。感情移入しすぎて泣いてしまうのも毎度おなじみなのですが・・・。
レースに向けた朝食は、前日に買い出ししておきました。おにぎり4個(油味噌、梅干し)、ウィダーマルチビタミン、SAVASプロテインドリンク。スタート地点のオクマビーチに6時過ぎには着いていて、レーススタートを9時過ぎ(先行レースの通過時間で前後する)と予想していたので、着替えてから7時ぐらいにいただきました。
エチゼンストア高橋君から「よくそんなに食えますね。」と。このレースは後半に暑さでエネルギーが吸収できなくなるから、レース前&スタート直後でしっかり食べておきたかったのです。
レース中の補給食の中身は、エネモチ 3本、スペシャルジェル 3本(マグオンジェル×2&CSPP1を別容器に混ぜて準備)、グランフォンドウォーター&CSPP1 ボトル2本。ボトルは補給所のオフィシャルから受け取れるのがペットボトルなので、詰め替えが容易なKABUTOのボトルを準備しました。スクリュー式と異なり、引っ張れば開く蓋なので受け取ったペットボトル飲料を短時間で移し替えられました。
また、最後の慶佐次補給所で、50kmレースを終えたチームメイトが補給してくれるということで、グランフォンドウォーター&CSPP1のボトルを1本託しました。慶佐次補給所で特製ボトルを受け取れるのは本当にありがたいと思いました。
ウォーミングアップは距離も長いので、身体を温めるというよりはほぐす感じで。股関節回りのコリが気になったのでマッサージガンで股関節ほぐしを。最前列スタートで普久川登り口まででアップできそうなので、乗ってのアップはサラッとオクマビーチ沿いを走りました。真っ白な砂のビーチが、一瞬レースモードを忘れさせてくれて気負いが取れた気がしました。
レース戦略については、ラストのコースプロフィールが変更になり、登り切りからフィニッシュまでの距離が短いことから、最後の登りの重要度がさらに上がった印象。
そこで、①最後の登りで単独アタックをして、独走で逃げ切る→登りきりで20秒以上のタイム差を稼げれば逃げ切れそう。②ペースが速くて逃げられそうになかったらスプリント→集団の動きを見つつ、残り200mを切るまで待つ、の2プランに絞りました。
登坂力に不安を残しているので、動きがあったときに乗り遅れないように意識しました。マークする選手としては、ゼッケン下二桁が50番以内の選手はシード選手なので、該当選手は当然見ていくことに。
JBCFレースでは今年E1に上がれた身分なのであまり選手情報がなかったですが、麒麟山の田崎選手、力も人数も揃っている湾岸サイクリング・ユナイテッドの方々、Roppongi Expressの菊川選手(2018年大会で先着されている方)をチェックしていこうと決めました。
レースペースを見ながら、終盤の人数があまりにも多すぎるなら自ら厳しいレースにしようとは思っていました。バルバメンバーとしては、トヤマストアから濱野選手、佐久間選手、エチゼンストアから高橋選手が出場。全員残れる脚があり、特に弱冠17歳の佐久間選手は積極的に動くと言っていて、登坂力もずば抜けている。濱野選手は乗り込みの成果が出て好調。高橋選手は、パンチ力があるので最後まで残ったらスプリントで絡めるはず。終盤に協調できれば各々の勝率が上がるので、まずは生き残りを。
スタート地点でリオオリンピック日本代表の内間康平選手と再会しました。内間選手は僕より絞れていて、しかも「カズオさんゴツくなりましたね」と。登りへの不安が増しつつも、お互い無事に走りきりましょう、と。
いよいよレーススタート。招集からスタート地点までの移動を終えると30秒前。慌ただしくスタート。前回のリザルトからシード枠をいただていたので慌てることなく最前列からスタート。人数も例年より少ないのと、皆さん安全意識が高く、落ち着いた雰囲気。
普久川ダムの入り口まで先頭付近をキープ。普久川ダム1本目は、ペースはまずまずで逃げはあるけど、大きく離れていかないのと、集団の主要メンバーも積極的にまとめにいっているので脚を使わないよう意識。普久川ダム1本目:17分58秒288W。バルバメンバーもみんな上がってきて心強い。
普久川ダム2本目までのアップダウン&平坦区間。ダムの下りは皆さん声を掛け合って安全に。3名が逃げていって約1分のタイム差がついていく。メンバーは強力だけど、メイン集団もまだまだ追う気満々なので焦らず協調しながら普久川ダム2本目に備えました。
奥の登り:10分43秒249W。普久川ダム2本目の手前でけっこうな大雨に。視界が悪くなり、路面も滑りやすいので、一気に集団先頭付近まで上がって登り口に。入り口で麒麟山の田崎さんがハイペースで突っ込んでいく。いよいよ始まったと思いました。
それを皮切りに積極的な抜け出しがかかる。佐久間選手も積極的にペースアップに加わっている。1本目より速いペース&アタック散発的で山岳賞争いで一気にペースアップ。かなり速いと感じるペースで、登り切りが10番手ぐらいをなんとかキープ。普久川ダム1本目:17分48秒287W。その後の下りで中切れなどあり、10番手でもちょっと焦るぐらいに先頭が見えなくなる。
前を追いながら補給所通過。下りの苦手な佐久間選手はいるだろうか...。アクエリ1本&水1本をオフィシャルから受け取り、アクエリはボトルに移し、水は背中ポケットに。下りきりでなんとか先頭に合流。先行していた選手と合流しながらの不安定でハイペースのまま学校坂に突入したら、麒麟山の田崎さんが6倍を余裕で越えるペースで引き始める。ライバルをふるい落としていく意気込みを感じ、こちらも本気モードで追従。
湾岸サイクリング・ユナイテッドは人数を残したい感じで、田崎さんの1本引き状態でクリア。この時点で一気に余裕がなくなり、防戦一方の予感。よりいっそうマークすべき選手を外さないよう心がけた。バルバメンバーもここで崩壊気味に。学校坂:5分22秒336W。
学校坂のハイペースが祟って、一気に集団の動きが鈍り、それとともに集団のローテーションが乱れ始めアタックでの抜け出しが頻発。抜け出すメンバーとその勢い、集団の反応の仕方を見ながら対応しました。前回、前々回は、自信過剰で積極的に反応して撃沈したので、任せられる人がいたら任せようと。
脚の具合からあまり積極的には行けず、とにかく羽地で勝負できるよう意識して組み立てました。ここら辺からジェルを飲んでも、ボトルを飲んでも、イマイチ吸収している感じがなくなり、内臓にもきている感じ。「ここからは精神力勝負だ」と、気合いを入れ直す。
慶佐次補給所では、50kmをフィニッシュして駆けつけてくれたトヤマストアのひろみさんから特製ボトルを受け取る。ここだけは絶対に取りこぼしてはいけないと、取ること優先で集団の後方でしっかりキャッチ。追加で水1本をオフィシャルから受け取り、被る。補給を取ると、前方でペースアップしているがなんとか食らいついて登りをクリア。もう後ろを見る余裕もないけど、ライバルは全員視界に残せている。
濱野選手から「もうかなり厳しいです」と。みんな余裕がなくなってきた。有銘の登りに入ると、その濱野選手がアタック!逃がしてはもらえなかったが、このタイミングでの攻撃は他のチームにとってはイヤだろう。その後も動きが激しく、羽地の麓までに3名の逃げ。タイム差は15秒ほど。
脚は痙りかけていたけど、まだいける、というかいくしかない!と麓からアタック! 奇しくも3年前に両脚が痙って集団から脱落したのと同じポイント。その悪夢を振り払うつもりで全開で!
イメージではそのまま前に追いついて4人でのスプリント!というイメージで追いかけるも、ダンシングしたら両脚が痙りかける。ここで前回と違ったのはシッティングに切り替えて粘れたこと。この最終局面で痙らずに耐えられたのは、クラブメンバーとの乗り込みの成果だなぁ、と。
しかし、旧コースの分岐を過ぎてペースアップしたメイン集団に吸収される。ガチに脚のある選手によるペースアップに食われたので瀕死で食らいつく。ペースアップで人数を減らしてきたが、元々マークしていた選手ばかりなので、ここで諦めたら終わりだと死に物狂い。
一緒に練習したクラブメンバー、送り出してくれた妻のことなど、諦めたらがっかりさせてしまう、という思いが頭に浮かびなんとか踏ん張れた。羽地:10分3秒279W。
頂上をなんとか越え、下りに入ったところでメイン集団が先行選手を吸収。湾岸サイクリング・ユナイテッドが3名を残し、雑賀選手を中心にまとめにかかってる。下りで雑賀選手の番手を取りに行ったら、同チーム石橋選手が割って入ってきた。ここで湾岸サイクリング・ユナイテッドのエースは石橋選手と判断。
この後ろを死守して58号線に。スプリントを嫌う選手が早がけしていくが、完全にスプリントの様相。左向かいのため、皆右に寄っていくが、混沌としているので湾岸サイクリング・ユナイテッドのトレインの後ろでギリギリまで待った。
残り200mを切っても混沌とした状態でペースは落ちない。残り150mから風上だけどガラガラの左側からスプリント。この判断は本能的だったけど、混沌とした集団の中でラインがどうのこうの考えるより、もがくことに集中できて結果として良かったです。もがき始めた瞬間に両脚が痙るも、シッティングに切り替えて踏み切りなんとか先着できました。
今、レースを終えて思うのは、まずは、3年ぶりで、コロナウィルスも完全に収束していない中、大会を開催していただき本当にありがとうございます、という感謝の気持ちです。この歳になっても、心の底から熱中でき、1年の目標にできるこの大会は、自分にとってはなくてはならないモノだと思いました。
また、普段から共に練習し切磋琢磨する仲間の存在、いつも支えてくれ快くレースに送り出してくれる妻の存在があるから、最後の最後まで諦めずに走りきることができました。今年140kmオープンで優勝できたことで、来年は市民210kmにチャレンジします。今年以上の大きな目標ですが、またクラブメンバーとともにがんばっておきなわにチャレンジしたいと思います。
レースデータ
・距離:136.92km
・時間:3時間45分37秒
・平均速度:36.4km/h
・最高速度:77.7km/h
・平均心拍:145bpm
・最高心拍:178bpm
・平均ケイデンス:84rpm
・最高ケイデンス:124rpm
・平均パワー:194W
・最大パワー:908W
・NP:251W
・獲得標高:1583m
井上和郎(バルバワークスハクサンストア)
こんにちは、バルバワークスハクサンストアマネージャースタッフの井上和郎です。この度、2022ツール・ド・おきなわ市民140kmオープンクラスで優勝することができました。普段は、バルバワークスのスタッフとして、石川県白山市にありますハクサンストアに勤務しております。店舗での販売、メカニック業務などを行いながら、同ストアのコミュニティクラブ運営も行っており、レース活動、イベント活動などを通じてサイクルスポーツを長く楽しんでいただける仲間を増やせるよう日々奮闘しております。
ツール・ド・おきなわは、ロードシーズン最終戦にして、年間で最大の目標です。
沖縄という観光地を満喫できることに加えて、参加してくる選手達のモチベーションが高く、「ホビーレーサーの甲子園」と言われるのも納得の大会なので、我々も気合いの入れ方は半端じゃないです。
普段の練習会は、福井、石川、富山に2店舗ずつあるそれぞれのバルバストアごとに、火、水、木、土、日の5:20~行っております。おきなわに向けても、参加メンバーを中心に直前まで練習会を行ってきました。おきなわ前になると、真っ暗闇の中での練習となるなか、最後まで皆さんがんばって準備してきました。
ツール・ド・おきなわ参戦に当たっては、日本旅行さんにツアーを組んでいただいて、かりゆしビーチリゾートのホテル、往復のフライト、那覇空港からホテルまでのバイク運搬、バス手配、100、140kmスタート地点までのバス移動など、ストレスなくレースに参戦できるよう至れり尽くせりです。
個人的には、前々回2018年は5位、翌年2019年は29位と惨敗。今年は例年に比べ安定した練習量で、狙うは「市民140kmオープンの優勝」。年齢的には41歳とマスター対象だけど、次(210km)へのステップを考えてオープンで勝ちたいとエントリーしました。
5月の美山時に72kgあった体重もJBCF南魚沼時には64kg台に。CTLは81で、終盤に登りで千切れていたので、おきなわまでに体重62kg台、CTL100を目指し乗り込みを増やしました。ところが、JBCF南魚沼に向けて追い込んだ無理がたたり、約10日間身体が動かず休養状態。若干風邪気味に。練習、仕事、睡眠、身体のケアなど、バランスを取ることの難しさを痛感しましたが、今の状況に合わせてやり繰りする術を身につけることもできました。
そこから立て直しを図り、南魚沼後に休養したことから身体は回復。なんだかんだ急ピッチで仕上げてきました。乗り込みをしながら、トルクをかけ、不足していた登坂力と持久力強化を心がけました。10月は55時間、1752km、11月おきなわまでは27時間、804kmの練習量。目標値には届きませんでしたが、体重63.5kg、CTL87、FTP288W(4.53W/kg)で当日を迎えることに。
そのほかの準備としては、朝練時には気温が一桁の北陸から最高で30℃近くまで気温が上がるおきなわに移動してすぐにレースを走るので、暑さと汗をかくことに慣れる暑熱順化を意識しました。実践したのは、シャワーだけじゃなく湯船につかることと、外練だけじゃなくインドアトレーニングを組み合わせること。お風呂につかりながら、羽地の坂を耐えるイメトレをしたりすると、それだけで発汗量が増えたりするのでぜひ試してみてください(笑)
機材面では、待ちに待ったCOLNAGO C68が届いたのでさっそく組み上げて乗り始めました。乗り味はそれまで乗っていたC64に比べてマイルドに。その分、ギアをかけてグイグイ踏むことを意識するようにしました。エアロ性能を稼ぎたく、C-C380mmの一体型エアロハンドルVISION METRON 5D Super Compactを選択。超高剛性と、ショートリーチ、ショートドロップの握りが気に入りました。
ホイールは、Campagnolo BORA ULTRA WTO 45。登りの不安を拭ってくれる軽さが魅力的ですが、反応性や伸びを考えると50mmリムハイト以上のホイールでも良いと思いました。
そんなこんなでいよいよツアースタート。日本旅行さんのツアーで、那覇空港に着いてからのバス移動や自転車運搬を全てお任せでできたのも、毎回ながらありがたいと思いました。小松空港発のフライトが機材トラブルでキャンセルになるトラブルにも、すぐに対応していただき、むしろ当初の予定より早く着く神対応でした。
個人的には、移動が多いとむくんだり便秘になるので、塩分摂取を極力控えて水分補給を小まめにおこないました。宿泊先のかりゆしビーチリゾートには4時前には着きましたが、フライト変更でバイクが遅れたため、予定変更でビーチまでお散歩。これぞ沖縄!という雰囲気に心からリラックスできました。レンタカーも早めに配車してもらい、ドライブがてらブルーシールアイスを食べに。翌日になればレースモードに入っていくので、リラックスした時間がありがたかったです。レース前日の土曜日は、練習、受付、バイク預け、買い出しと予定が盛りだくさん。
1日中不安定で読めない天候でしたが、予定を先延ばしにはできなかったので、覚悟を決めて朝一に自転車でコース変更になった部分のコース試走に。多少なりとも汗をかけたのが良かったのと、実際に走ったことでコース熟知度が格段に上がりました。その後、受付、車で100kmメンバーとコース下見を行い、買い出し、夕食、就寝。若干興奮気味で11時前に就寝。
当日朝は、4時起床で荷物をまとめてチェックアウト。100km、140km組は、かりゆしビーチリゾートからツアーバスでスタート地点まで移動。これも毎回ながら何のストレスもなくありがたいです。そして毎度おなじみYOUTUBEでゆずの「栄光の架け橋」をバックミュージックにしたオリンピック振り返り動画を見て心のウォーミングアップを。感情移入しすぎて泣いてしまうのも毎度おなじみなのですが・・・。
レースに向けた朝食は、前日に買い出ししておきました。おにぎり4個(油味噌、梅干し)、ウィダーマルチビタミン、SAVASプロテインドリンク。スタート地点のオクマビーチに6時過ぎには着いていて、レーススタートを9時過ぎ(先行レースの通過時間で前後する)と予想していたので、着替えてから7時ぐらいにいただきました。
エチゼンストア高橋君から「よくそんなに食えますね。」と。このレースは後半に暑さでエネルギーが吸収できなくなるから、レース前&スタート直後でしっかり食べておきたかったのです。
レース中の補給食の中身は、エネモチ 3本、スペシャルジェル 3本(マグオンジェル×2&CSPP1を別容器に混ぜて準備)、グランフォンドウォーター&CSPP1 ボトル2本。ボトルは補給所のオフィシャルから受け取れるのがペットボトルなので、詰め替えが容易なKABUTOのボトルを準備しました。スクリュー式と異なり、引っ張れば開く蓋なので受け取ったペットボトル飲料を短時間で移し替えられました。
また、最後の慶佐次補給所で、50kmレースを終えたチームメイトが補給してくれるということで、グランフォンドウォーター&CSPP1のボトルを1本託しました。慶佐次補給所で特製ボトルを受け取れるのは本当にありがたいと思いました。
ウォーミングアップは距離も長いので、身体を温めるというよりはほぐす感じで。股関節回りのコリが気になったのでマッサージガンで股関節ほぐしを。最前列スタートで普久川登り口まででアップできそうなので、乗ってのアップはサラッとオクマビーチ沿いを走りました。真っ白な砂のビーチが、一瞬レースモードを忘れさせてくれて気負いが取れた気がしました。
レース戦略については、ラストのコースプロフィールが変更になり、登り切りからフィニッシュまでの距離が短いことから、最後の登りの重要度がさらに上がった印象。
そこで、①最後の登りで単独アタックをして、独走で逃げ切る→登りきりで20秒以上のタイム差を稼げれば逃げ切れそう。②ペースが速くて逃げられそうになかったらスプリント→集団の動きを見つつ、残り200mを切るまで待つ、の2プランに絞りました。
登坂力に不安を残しているので、動きがあったときに乗り遅れないように意識しました。マークする選手としては、ゼッケン下二桁が50番以内の選手はシード選手なので、該当選手は当然見ていくことに。
JBCFレースでは今年E1に上がれた身分なのであまり選手情報がなかったですが、麒麟山の田崎選手、力も人数も揃っている湾岸サイクリング・ユナイテッドの方々、Roppongi Expressの菊川選手(2018年大会で先着されている方)をチェックしていこうと決めました。
レースペースを見ながら、終盤の人数があまりにも多すぎるなら自ら厳しいレースにしようとは思っていました。バルバメンバーとしては、トヤマストアから濱野選手、佐久間選手、エチゼンストアから高橋選手が出場。全員残れる脚があり、特に弱冠17歳の佐久間選手は積極的に動くと言っていて、登坂力もずば抜けている。濱野選手は乗り込みの成果が出て好調。高橋選手は、パンチ力があるので最後まで残ったらスプリントで絡めるはず。終盤に協調できれば各々の勝率が上がるので、まずは生き残りを。
スタート地点でリオオリンピック日本代表の内間康平選手と再会しました。内間選手は僕より絞れていて、しかも「カズオさんゴツくなりましたね」と。登りへの不安が増しつつも、お互い無事に走りきりましょう、と。
いよいよレーススタート。招集からスタート地点までの移動を終えると30秒前。慌ただしくスタート。前回のリザルトからシード枠をいただていたので慌てることなく最前列からスタート。人数も例年より少ないのと、皆さん安全意識が高く、落ち着いた雰囲気。
普久川ダムの入り口まで先頭付近をキープ。普久川ダム1本目は、ペースはまずまずで逃げはあるけど、大きく離れていかないのと、集団の主要メンバーも積極的にまとめにいっているので脚を使わないよう意識。普久川ダム1本目:17分58秒288W。バルバメンバーもみんな上がってきて心強い。
普久川ダム2本目までのアップダウン&平坦区間。ダムの下りは皆さん声を掛け合って安全に。3名が逃げていって約1分のタイム差がついていく。メンバーは強力だけど、メイン集団もまだまだ追う気満々なので焦らず協調しながら普久川ダム2本目に備えました。
奥の登り:10分43秒249W。普久川ダム2本目の手前でけっこうな大雨に。視界が悪くなり、路面も滑りやすいので、一気に集団先頭付近まで上がって登り口に。入り口で麒麟山の田崎さんがハイペースで突っ込んでいく。いよいよ始まったと思いました。
それを皮切りに積極的な抜け出しがかかる。佐久間選手も積極的にペースアップに加わっている。1本目より速いペース&アタック散発的で山岳賞争いで一気にペースアップ。かなり速いと感じるペースで、登り切りが10番手ぐらいをなんとかキープ。普久川ダム1本目:17分48秒287W。その後の下りで中切れなどあり、10番手でもちょっと焦るぐらいに先頭が見えなくなる。
前を追いながら補給所通過。下りの苦手な佐久間選手はいるだろうか...。アクエリ1本&水1本をオフィシャルから受け取り、アクエリはボトルに移し、水は背中ポケットに。下りきりでなんとか先頭に合流。先行していた選手と合流しながらの不安定でハイペースのまま学校坂に突入したら、麒麟山の田崎さんが6倍を余裕で越えるペースで引き始める。ライバルをふるい落としていく意気込みを感じ、こちらも本気モードで追従。
湾岸サイクリング・ユナイテッドは人数を残したい感じで、田崎さんの1本引き状態でクリア。この時点で一気に余裕がなくなり、防戦一方の予感。よりいっそうマークすべき選手を外さないよう心がけた。バルバメンバーもここで崩壊気味に。学校坂:5分22秒336W。
学校坂のハイペースが祟って、一気に集団の動きが鈍り、それとともに集団のローテーションが乱れ始めアタックでの抜け出しが頻発。抜け出すメンバーとその勢い、集団の反応の仕方を見ながら対応しました。前回、前々回は、自信過剰で積極的に反応して撃沈したので、任せられる人がいたら任せようと。
脚の具合からあまり積極的には行けず、とにかく羽地で勝負できるよう意識して組み立てました。ここら辺からジェルを飲んでも、ボトルを飲んでも、イマイチ吸収している感じがなくなり、内臓にもきている感じ。「ここからは精神力勝負だ」と、気合いを入れ直す。
慶佐次補給所では、50kmをフィニッシュして駆けつけてくれたトヤマストアのひろみさんから特製ボトルを受け取る。ここだけは絶対に取りこぼしてはいけないと、取ること優先で集団の後方でしっかりキャッチ。追加で水1本をオフィシャルから受け取り、被る。補給を取ると、前方でペースアップしているがなんとか食らいついて登りをクリア。もう後ろを見る余裕もないけど、ライバルは全員視界に残せている。
濱野選手から「もうかなり厳しいです」と。みんな余裕がなくなってきた。有銘の登りに入ると、その濱野選手がアタック!逃がしてはもらえなかったが、このタイミングでの攻撃は他のチームにとってはイヤだろう。その後も動きが激しく、羽地の麓までに3名の逃げ。タイム差は15秒ほど。
脚は痙りかけていたけど、まだいける、というかいくしかない!と麓からアタック! 奇しくも3年前に両脚が痙って集団から脱落したのと同じポイント。その悪夢を振り払うつもりで全開で!
イメージではそのまま前に追いついて4人でのスプリント!というイメージで追いかけるも、ダンシングしたら両脚が痙りかける。ここで前回と違ったのはシッティングに切り替えて粘れたこと。この最終局面で痙らずに耐えられたのは、クラブメンバーとの乗り込みの成果だなぁ、と。
しかし、旧コースの分岐を過ぎてペースアップしたメイン集団に吸収される。ガチに脚のある選手によるペースアップに食われたので瀕死で食らいつく。ペースアップで人数を減らしてきたが、元々マークしていた選手ばかりなので、ここで諦めたら終わりだと死に物狂い。
一緒に練習したクラブメンバー、送り出してくれた妻のことなど、諦めたらがっかりさせてしまう、という思いが頭に浮かびなんとか踏ん張れた。羽地:10分3秒279W。
頂上をなんとか越え、下りに入ったところでメイン集団が先行選手を吸収。湾岸サイクリング・ユナイテッドが3名を残し、雑賀選手を中心にまとめにかかってる。下りで雑賀選手の番手を取りに行ったら、同チーム石橋選手が割って入ってきた。ここで湾岸サイクリング・ユナイテッドのエースは石橋選手と判断。
この後ろを死守して58号線に。スプリントを嫌う選手が早がけしていくが、完全にスプリントの様相。左向かいのため、皆右に寄っていくが、混沌としているので湾岸サイクリング・ユナイテッドのトレインの後ろでギリギリまで待った。
残り200mを切っても混沌とした状態でペースは落ちない。残り150mから風上だけどガラガラの左側からスプリント。この判断は本能的だったけど、混沌とした集団の中でラインがどうのこうの考えるより、もがくことに集中できて結果として良かったです。もがき始めた瞬間に両脚が痙るも、シッティングに切り替えて踏み切りなんとか先着できました。
今、レースを終えて思うのは、まずは、3年ぶりで、コロナウィルスも完全に収束していない中、大会を開催していただき本当にありがとうございます、という感謝の気持ちです。この歳になっても、心の底から熱中でき、1年の目標にできるこの大会は、自分にとってはなくてはならないモノだと思いました。
また、普段から共に練習し切磋琢磨する仲間の存在、いつも支えてくれ快くレースに送り出してくれる妻の存在があるから、最後の最後まで諦めずに走りきることができました。今年140kmオープンで優勝できたことで、来年は市民210kmにチャレンジします。今年以上の大きな目標ですが、またクラブメンバーとともにがんばっておきなわにチャレンジしたいと思います。
レースデータ
・距離:136.92km
・時間:3時間45分37秒
・平均速度:36.4km/h
・最高速度:77.7km/h
・平均心拍:145bpm
・最高心拍:178bpm
・平均ケイデンス:84rpm
・最高ケイデンス:124rpm
・平均パワー:194W
・最大パワー:908W
・NP:251W
・獲得標高:1583m
井上和郎(バルバワークスハクサンストア)
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