2021/11/01(月) - 12:32
UCIシクロクロスW杯は早くも第5戦。スリッピーな泥コースでエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)が勝利。女子レースでは20歳の注目株カータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス)がついにW杯初勝利を飾った。
石畳が敷かれた登りホームストレートの終盤区間 photo:CorVos
10月最後の日曜日、翌週末にヨーロッパ選手権を控えるシクロクロストップ選手たちがベルギーのフラームス=ブラバント州の街オーベレルエイセに集結。ヨーロッパチャンピオンジャージを決める重要なレースを前に、早くも第5戦目を迎えたUCIシクロクロスワールドカップでその仕上がりぶりを確認することとなった。
毎年12月に開催されてきた歴史と伝統あるオーベレルエイセのレースだが、今季16戦までボリュームアップしたワールドカップに組み込まれたことで開催時期が1ヶ月早まることに。今年ブリュッセル近郊の起伏ある硬い粘土質のコースは雨に濡れ、スリップダウンを誘発させる難しいコンディション下でレースが行われた。
先頭グループを組むカータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス)とパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
序盤の混乱に巻き込まれ、追走を強いられたルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)は3位 photo:CorVos
女子エリートレースで、アスファルトから石畳に切り替わる長い上りホームストレートを先頭で駆け抜けたのは、ワールドカップランキングリーダーのデニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)だった。直後のピットインの混乱で後方に埋もれた新旧世界チャンピオンのルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)とセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)たちを尻目にベッツィマが逃げ、若いパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス)とカータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス)が追走。2周目中盤を過ぎてこの3名がまとまり、先頭グループを形成することとなった。
めきめきと力を伸ばし、今季エリートレースの最前線を走るようになったヴァスとピーテルスが積極的にリード。すると3周目、滑りやすい林間下りセクションで3番手ベッツィマがグリップを失い落車してしまう。10秒弱という小さなリードだったものの、追いかけるベッツィマは最後まで上り調子の2人を捉えることはできなかった。
こうして若手2人の一騎打ちに持ち込まれ、重い芝生の登り区間で「とても調子が良かったので積極的に主導権を握ろうとした」と振り返るヴァスがアタック。「追いかけようとしたけれど、彼女の背後で何度かタイヤを空転させてしまった」と悔やむピーテルスを置き去りにして、フィニッシュまで続く独走態勢に持ち込んだ。
ピーテルスを引き離して走るカータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス) photo:CorVos
UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第5戦 女子エリート表彰台 photo:CorVos
力強く最終ラップを踏み切り、オランダ勢を退けた20歳のヴァスがUCIワールドカップ初勝利を達成した。「調子が良かったけれど、勝てるとは思っていなかった。自分自身まだベストとは言えないけれど、初めてのワールドカップ優勝は本当に嬉しい」と喜ぶヴァス。今年はMTBの世界選手権U23で4位に入り、続くロード世界選手権の女子エリートレースでも4位。勢いそのままにシーズンインしたシクロクロスでは今季初めてワールドカップの表彰台に登るなど、そのタレントぶりを惜しげも無く発揮する中での勝利だった。また、序盤の混乱で追走を強いられていたブラントは終盤にベッツィマを抜き去り3位でレースを終えている。
手に汗握るアタック合戦 タイミングを狙ったイゼルビットが泥レースを制する
女子レースによって泥がむき出しとなり、雨粒落ちる中スタートを迎えた男子エリートレース。ロードシーズンを終えて静養していたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)のトレーニング再開ニュースが流れる中、好調クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・サーカスCXチーム)とダーン・ソエテ(ベルギー、CXチームデスハフト・グループヘンス・マースコンテナーズ)先導で1周回を完了した。
エリ・イゼルビットとマイケル・ファントーレンハウト(共にベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) photo:CorVos
滑りやすい路面。ピットワークも混乱状態に photo:CorVos
スリッピーな泥や轍を捌くテクニック、ランニング力も問われるレースで、やがて先頭はヘルマンスとランキングリーダーのエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)、そしてチームメイトのマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)の3名に絞られる。1対2の状況を打開したいヘルマンスだったが、女子レースでベッツィマが転倒した下り区間でスリップダウン。さらにピットストップで壊れたシューズを履き替えたことで勝負権を失ってしまった。
ヘルマンスと入れ替わるように第4戦で勝利したトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)が先頭グループに加わり、全7周回の後半戦に入るとパウェルスサウゼンの二人によるチームプレーが勃発。まずファントーレンハウトがアタックし、アールツによる追走と合流&カウンターアタックと再合流を経て、再びファントーレンハウトが、続いてアールツがアタック。体力を搾り尽くすようなバトルの末、最終周回突入の登りホームストレート最終区間で「今日は長いレースになると思っていたので、アタックするタイミングをずっと考えていた」と言うイゼルビットが先頭を奪った。
アールツも粘りを見せたものの、短い登り区間でがむしゃらに踏みつけたイゼルビットがとうとうリードを奪い取る。続く下りコーナーではファントーレンハウトがアールツのラインに割り込み2番手へ。スピードを失った元欧州王者を尻目に、序盤からレースを作った2人がそれぞれ単独走のままフィニッシュへと飛び込んだ。
最終周回でのアタックを決め、勝利したエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) photo:CorVos
UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第5戦 男子エリート表彰台 photo:CorVos
「最終周回は一か八かの勝負。トーンのアタックは僕にとって完璧だったんだ。なぜなら彼が踏み止めたタイミングで仕掛ければ良かったから。雨もレースの行方をわからなくしたけれど、素晴らしい戦いだったと思う。僕自身最後は力を残せていなかったけれど、それ以上に皆も疲れていたようだ」と言うイゼルビットが、早くも今季7勝目を挙げると共にランキングポイントを上積み。翌週のヨーロッパチャンピオン防衛に向けて弾みを付けている。
翌日は過酷極まりない石畳登坂「コッペンベルグ」を組み込んだX2Oトロフェー第1戦が行われる。
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10月最後の日曜日、翌週末にヨーロッパ選手権を控えるシクロクロストップ選手たちがベルギーのフラームス=ブラバント州の街オーベレルエイセに集結。ヨーロッパチャンピオンジャージを決める重要なレースを前に、早くも第5戦目を迎えたUCIシクロクロスワールドカップでその仕上がりぶりを確認することとなった。
毎年12月に開催されてきた歴史と伝統あるオーベレルエイセのレースだが、今季16戦までボリュームアップしたワールドカップに組み込まれたことで開催時期が1ヶ月早まることに。今年ブリュッセル近郊の起伏ある硬い粘土質のコースは雨に濡れ、スリップダウンを誘発させる難しいコンディション下でレースが行われた。
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女子エリートレースで、アスファルトから石畳に切り替わる長い上りホームストレートを先頭で駆け抜けたのは、ワールドカップランキングリーダーのデニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)だった。直後のピットインの混乱で後方に埋もれた新旧世界チャンピオンのルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)とセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)たちを尻目にベッツィマが逃げ、若いパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス)とカータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス)が追走。2周目中盤を過ぎてこの3名がまとまり、先頭グループを形成することとなった。
めきめきと力を伸ばし、今季エリートレースの最前線を走るようになったヴァスとピーテルスが積極的にリード。すると3周目、滑りやすい林間下りセクションで3番手ベッツィマがグリップを失い落車してしまう。10秒弱という小さなリードだったものの、追いかけるベッツィマは最後まで上り調子の2人を捉えることはできなかった。
こうして若手2人の一騎打ちに持ち込まれ、重い芝生の登り区間で「とても調子が良かったので積極的に主導権を握ろうとした」と振り返るヴァスがアタック。「追いかけようとしたけれど、彼女の背後で何度かタイヤを空転させてしまった」と悔やむピーテルスを置き去りにして、フィニッシュまで続く独走態勢に持ち込んだ。
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力強く最終ラップを踏み切り、オランダ勢を退けた20歳のヴァスがUCIワールドカップ初勝利を達成した。「調子が良かったけれど、勝てるとは思っていなかった。自分自身まだベストとは言えないけれど、初めてのワールドカップ優勝は本当に嬉しい」と喜ぶヴァス。今年はMTBの世界選手権U23で4位に入り、続くロード世界選手権の女子エリートレースでも4位。勢いそのままにシーズンインしたシクロクロスでは今季初めてワールドカップの表彰台に登るなど、そのタレントぶりを惜しげも無く発揮する中での勝利だった。また、序盤の混乱で追走を強いられていたブラントは終盤にベッツィマを抜き去り3位でレースを終えている。
手に汗握るアタック合戦 タイミングを狙ったイゼルビットが泥レースを制する
女子レースによって泥がむき出しとなり、雨粒落ちる中スタートを迎えた男子エリートレース。ロードシーズンを終えて静養していたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)のトレーニング再開ニュースが流れる中、好調クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・サーカスCXチーム)とダーン・ソエテ(ベルギー、CXチームデスハフト・グループヘンス・マースコンテナーズ)先導で1周回を完了した。
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ヘルマンスと入れ替わるように第4戦で勝利したトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)が先頭グループに加わり、全7周回の後半戦に入るとパウェルスサウゼンの二人によるチームプレーが勃発。まずファントーレンハウトがアタックし、アールツによる追走と合流&カウンターアタックと再合流を経て、再びファントーレンハウトが、続いてアールツがアタック。体力を搾り尽くすようなバトルの末、最終周回突入の登りホームストレート最終区間で「今日は長いレースになると思っていたので、アタックするタイミングをずっと考えていた」と言うイゼルビットが先頭を奪った。
アールツも粘りを見せたものの、短い登り区間でがむしゃらに踏みつけたイゼルビットがとうとうリードを奪い取る。続く下りコーナーではファントーレンハウトがアールツのラインに割り込み2番手へ。スピードを失った元欧州王者を尻目に、序盤からレースを作った2人がそれぞれ単独走のままフィニッシュへと飛び込んだ。
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「最終周回は一か八かの勝負。トーンのアタックは僕にとって完璧だったんだ。なぜなら彼が踏み止めたタイミングで仕掛ければ良かったから。雨もレースの行方をわからなくしたけれど、素晴らしい戦いだったと思う。僕自身最後は力を残せていなかったけれど、それ以上に皆も疲れていたようだ」と言うイゼルビットが、早くも今季7勝目を挙げると共にランキングポイントを上積み。翌週のヨーロッパチャンピオン防衛に向けて弾みを付けている。
翌日は過酷極まりない石畳登坂「コッペンベルグ」を組み込んだX2Oトロフェー第1戦が行われる。
UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第4戦 女子エリート結果
1位 | カータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス) | 48:07 |
2位 | パック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス) | +0:15 |
3位 | ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:33 |
4位 | デニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | |
5位 | クララ・ホンシンガー(アメリカ、キャノンデール/シクロクロスワールド) | +0:44 |
6位 | リヌ・ブルキエ(フランス、A.Sバイククロスチーム) | +0:53 |
7位 | ヤラ・カステリン(オランダ、IKOクレラン) | +1:24 |
8位 | シリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +1:36 |
9位 | シルヴィア・ペルシコ(イタリア、バルカー・トラベル&サービス) | |
10位 | アマンディーヌ・フーケント(アルケアプロサイクリング) |
UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第5戦 男子エリート結果
1位 | エリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | 1:00:28 |
2位 | マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +0:09 |
3位 | トーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:26 |
4位 | ローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +0:46 |
5位 | クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・サーカスCXチーム) | +1:02 |
6位 | ラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +1:11 |
7位 | コルネ・ファンケッセル(オランダ、トルマンス・サーカスCXチーム) | +1:23 |
8位 | ニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | +1:53 |
9位 | キャメロン・メイソン(イギリス、トリニティレーシング) | +1:58 |
10位 | ライアン・カンプ(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +2:26 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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