2010/06/24(木) - 01:03
新城幸也と土井雪広が欧州から一時帰国する。西谷、宮澤、野寺、福島らはすでに今季、重要なレースで勝利を挙げている。参加する全ての選手が年間の最も高いステータスに位置づける全日本選手権が今週末行われる。
6月26日(土)、27日(日)に広島県中央森林公園で行われる全日本自転車競技選手権大会ロードレース。6つのクラスで行われ、勝者はナショナルチャンピオンジャージの着用を一年間許される。国内で行われる中で最もステータスの高いレースだ。トップ選手はもちろん、それ以外の選手にとってもここで結果を残すことが、年間の最大の目標だ。
コースは3年連続となる広島県中央森林公園。1周12.3kmのアップダウンとテクニカルなカーブの続く、強者だけしか残れないもの。各地にコースは数あれど、総合力で最も強い者を選ぶコースとして、誰もが認めるコースだ。
またこのレースを限りに引退する野寺秀徳(シマノレーシング)の引退セレモニーがレース後に有志で行われる。ステージエリアで行われるもので、メッセージカードの贈呈や記念撮影が予定されている。
大会スケジュール
6月26日(土)
8時00分 ジュニア(92、93年生まれ、10周)、U17(94~97年生まれ、5周)スタート
12時00分 U23(88~91年生まれ、13周)スタート
6月27日(日)
8時00分 女子(エリートおよび92~95年生まれ、7周)スタート
11時00分 男子エリート(16周)スタート
全6クラスが4つのレースで出走する。
なお、男子エリートにはU23選手の参加も可能だが、その場合はU23に出られない。今年は24名のU23カテゴリー選手がエリートカテゴリーに出走する。
各クラスともにそれぞれ今年のロード世界選手権代表候補選考会を兼ねると要綱に記載されている。
男子エリート
新城幸也(Bboxブイグテレコム)
なんといっても注目は新城だ。去る5月のジロ・デ・イタリアでステージ3位をはじめ、各ステージで暴れまわり、もはやグラン・ツールで勝負に絡むビッグスターになった。チームのツール・ド・フランス出場選手は遅くとも翌々日の6月29日には発表される。もちろん各国での選手権結果をふまえて決定されるためだ。唯一の弱点は孤軍参加であること。現在の国内トップ選手たちは彼の元チームメイトが多いが、今やライバル。しかし得意の終盤独走パターンに持ち込めば勝利は確実。タイトルを獲ってツールへ乗り込む強い意志で、新城は全日本に臨む。
土井雪広(スキルシマノ)
土井もこの日のために帰国する。4月のツアー・オブ・ターキーでは連日勝負に絡む走りで総合6位、6月のツール・ド・ルクセンブルグでもアシストながらも上位に食い込む走りを見せた。この2つはカテゴリー超級。得意の上りで活躍した。広島のコースは彼にとっては上りが物足りないだろうが、昨年は最後の7人のゴールスプリントに参加している。さらにパワーアップした土井が見られる。
宮澤崇史、佐野淳哉(TEAM NIPPO)
チームの総合力でトップのニッポ。エーススプリンターの宮澤と、フィジカルで最強の佐野の組み合わせで幅広い戦い方に対応する。昨年は違うチームから単騎で出場して2位だったが、今年は井上和郎ら強力なチームメイトを得て出場する。宮澤のスプリント、佐野の逃げ、そして井上らが控える布陣は最強だ。
野寺秀徳、鈴木真理(シマノレーシング)
この全日本選手権をもって引退する野寺に注目したい。ジロ・デ・イタリア完走、2度の全日本チャンピオン、そして2003年以来7年連続で全日本3位以内という驚異の成績を持つ。1週間前の西日本ロードでは、誰よりも動いて圧勝。チームとしては鈴木真理とのツートップで臨む。
昨年にスプリンターの鈴木は、ゴールまで10kmを残してまさかの単独アタックに出るという、自力で展開する強さも身につけた。そして若手の畑中勇介ら全員が国内トップレベルに達している。その中でも阿部嵩之が半年間のベールを脱いで久しぶりに国内レースに出場する。国内トップの独走力と切れ味鋭い走りが見もの。チームワーク最強のシマノの戦いに注目だ。
西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)
現日本チャンピオンの西谷をエースに臨むチームは、今年もアジアツアーを中心に活動を続けてきた。ツール・ド・ランカウイでは盛との連携でステージ優勝。選手間では評価の最も高いのが西谷だ。それは結果に現れない部分での強さ、1対1になったときの強さ、そしてレースに対する真摯な取り組みがあるからだ。ディフェンディングチャンピオンとして、ジェラジャ・マレーシア個人総合2位の別府匠らと固いチームの結束で臨む。
福島晋一(クムサン・ジンセン・アジア)
2週間前の全日本個人TTチャンピオンの福島は38歳。今だ進化を続ける驚異の選手だ。2003年にこの広島で全日本チャンピオンになっている。
5月のツアー・オブ・ジャパンとツール・ド・熊野の両方で活躍。ヒルクライマーたちを打ち負かすほどの登坂能力と、誰も寄せ付けない独走力そして何よりもアタックを連発する熱い心が武器だ。チームは全日本個人TT2位の奈良基、そして五十嵐丈士の3人で参加。少数ながらも必ずや目立つ動きをしてくる。
清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)
昨シーズン大活躍の清水に期待したい。彼にとって昨年ただひとつ力を出し切れなかったのが全日本選手権。その雪辱を果たす積極的な走りに注目だ。39歳の飯島誠は今シーズンも調子がいい。1週間前の西日本ロードではメンバーを引き上げる強力な走りを展開、狩野智也も全行程の8割を逃げ続けて調子を上げている。チームとしてはこの3人に等しくチャンスがあるのが強みだ。
向川尚樹(マトリックスパワータグ・コラテック)
各ステージで活躍したツール・ド・熊野は個人総合6位。1週間前の西日本ロードでも、単独アタックで逃げに合流するなど調子を上げている。チームにはベテランの阿部、真鍋がいて心強い。真鍋は昨年の全日本では終盤まで先頭で展開していた。今年のレースでは、終盤まで先頭集団に複数が入っている展開に期待したい。
小森亮平(Vendee U)
21歳の小森もこの日にあわせ帰国。08年のU23チャンピオンはエリートクラスに出る。地元広島出身でここはホームコースでもある。昨年も終盤まで先頭集団で展開、唯一U23の年齢で10位に食い込んでいる。
大学生、クラブチーム
大学生では内間康平(鹿屋体育大学)と西薗良太(東京大学)の2人が群を抜いている。内間はツアー・オブ・タイランドでステージ優勝、学生個人ロード優勝、西薗は昨年のインカレチャンピオン、そして2年連続の学生個人TTチャンピオンだ。青柳憲輝・早川朋宏(法政大学)、伊藤雅和(鹿屋体育大学)、越海誠一(日本大学)、木守望(京都産業大学)らも十分に先頭集団で展開する力がある。内間と西薗が逃げる姿を見たいところだ。
来年に山口国体を控える白石真悟(シマノドリンキング)、今季Jシリーズで2勝の武井亨介(FOLZA)、ベテラン西谷雅史(オーベストディープラスデザイン)、実業団富士山優勝の森本誠と高岡亮寛(ともにイナーメ・アイランド信濃山形)、フランス武者修行から一時帰国の才田直人(かぶちゃん農園・ボンシャンス飯田)らの走りは見逃せない。
男子エリートの注目は新城だがそれは選手にとっても同じ。全ての選手がマークする中、新城はどう動くか。そして恐るべき38歳の福島はいつアタックをかけるか。新城と福島の2人が逃げたらたとえ5人がかりでも追いつくことは不可能。勝負強い野寺は8年連続の表彰台となるか。宮澤は?佐野は?西谷は?内間はいつ逃げるか、西薗はどこで仕掛けるか?ぜひとも現地で確かめよう。
女子
萩原と片山の一騎打ち
昨年は西加南子(LUMINARIA)が新女王に輝いたが、今年も接戦が予想されるのが女子だ。まずは2週間前の全日本個人TTチャンピオンとなった萩原麻由子(サイクルベースあさひレーシング)を挙げよう。国内ビッグレースでのいい結果がなかなかなかったが、昨秋のジャパンカップ女子優勝で完全復活。対するはMTB・XCの女王、片山梨絵(SPECIALIZED)を挙げよう。登坂力にすぐれレース巧者。昨年の全日本で最も強い走りを見せたのは片山だ。
明珍裕子(朝日大学)はここ1年で急速に力をつけている。昨年のインカレチャンピオン、1週間前の学生個人TTチャンピオンと、もはや大学生では最強だ。アップダウンの厳しい広島も彼女向きのコース。豊岡英子(パナソニックレディース)、森田正美(チームブリヂストン・アンカー)、森本朱美(スミタ・ラバネロ)は昨年5人のゴールスプリントをしたメンバー。このコースにおいては力は拮抗している。そして1週間前の西日本ロードで優勝の唐見実世子(MUUR ZERO)の仕上がり具合も見どころだろう。
92年から95年生まれのジュニア女子は同時出走になる。福本千佳(Ready Go JAPAN)が有力だ。中村友香(奈良北高)の積極さも見どころ。
U23
ブリヂストン勢に対抗する鹿屋、日大勢
昨年のチャンピオン平井栄一を擁するブリヂストン・エスポワール勢が有力候補だ。平井のほか、ジュニア・アンダー、ロード・TTと走りは違っても今年で5年連続の全日本チャンピオン嶌田義明が有力。
対する鹿屋体育大学は高宮正嗣、野口正則、元砂勇雪、山本元喜の1・2年生で臨む。高宮は2週間前の全日本個人TTで嶌田に僅差で敗れての2位。大いに期待が持てる。野口は今年調子を上げつつある。そして山本は昨年のジュニアで悔しい2位。雪辱を期したいところ。
窪木一茂、高橋将輝、雨宮正樹をはじめとする日本大学勢が有力。実績のある窪木はもちろんだが、1年生ながら早くも結果を出している雨宮に特に注目したい。
中山卓士(チームユーラシア・ムセーウバイクス)は昨年2位で、1週間前の西日本ロードではU23トップの8位に入って好調。この日のために帰国する松尾修作(Team CKT tmit-Champion System)、小坂光(宇都宮ブリッツェン)、澤田賢匠(マトリックスパワータグ・コラテック)そして丸本悠太(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)らが見どころだ。
ジュニア
92、93年生まれのジュニアは大分・日出暘谷高出身の黒枝士揮(鹿屋体育大学)と六峰亘の戦いが見どころだ。黒枝は昨年のチャンピオン、六峰は今年の東西チャレンジロードチャンピオンだ。さらに高校選抜優勝の長瀬幸治(栄北高)、昨年のU17チャンピオン山崎航(金沢高)、中井俊亮(榛生昇陽高校)、鍵本大地(崇徳高)、小石祐馬、徳田鍛造(北桑田高)らが注目だ。
観戦に行こう
全ての選手の真剣勝負を、ぜひとも自分の目で確かめてみよう。
アクセスは飛行機または車が便利。空港からタクシーで中まで入るのが一番スマート。小さくとも自転車があるとより便利。空港から会場、あるいは一番の観戦ポイントの最高地点「展望台」への行き来がしやすい。アップダウンはあるが。
車の場合、帰りの駐車場出口料金所が大渋滞になるので時間帯を考えよう。
公園内は飲料の自販機が少しだけしかないため、事前に飲食料は十分に用意しておこう。トイレは常設、仮設ともにある。日差しや雨をさえぎるものがないため、十分な対策をしておこう。特に込み合う観戦ポイントでは傘よりも雨具や帽子を活用しよう。
コース上はもちろん立ち入れないが、特にイン側に気をつけよう。歩道などの上にいても、選手はセンチ単位でラインを攻めてくる。自分の靴は歩道上でも体やバッグ、カメラなどがはみ出ていることもある。一歩下って観戦しよう。また終盤のアタック合戦は道幅を一杯に使うことがある。それまでのラインとは全く違うところを走るのでこれも気をつけたいところ。
さらにもうひとつ、当日は全ての選手が高い目標に挙げている全日本選手権だ。選手はもちろん、スタッフなども最高に神経を集中させている。特にスタート前は至近距離での接触をなるべく控えよう。どうしてもであれば、近くの関係者に聞いてみるのもいい。レース中はそのぶん、大きな声で選手を応援しよう。
photo:Hideaki.TAKAGI、Kei.TSUJI、Yufta.OMATA
text:Hideaki.TAKAGI
6月26日(土)、27日(日)に広島県中央森林公園で行われる全日本自転車競技選手権大会ロードレース。6つのクラスで行われ、勝者はナショナルチャンピオンジャージの着用を一年間許される。国内で行われる中で最もステータスの高いレースだ。トップ選手はもちろん、それ以外の選手にとってもここで結果を残すことが、年間の最大の目標だ。
コースは3年連続となる広島県中央森林公園。1周12.3kmのアップダウンとテクニカルなカーブの続く、強者だけしか残れないもの。各地にコースは数あれど、総合力で最も強い者を選ぶコースとして、誰もが認めるコースだ。
またこのレースを限りに引退する野寺秀徳(シマノレーシング)の引退セレモニーがレース後に有志で行われる。ステージエリアで行われるもので、メッセージカードの贈呈や記念撮影が予定されている。
大会スケジュール
6月26日(土)
8時00分 ジュニア(92、93年生まれ、10周)、U17(94~97年生まれ、5周)スタート
12時00分 U23(88~91年生まれ、13周)スタート
6月27日(日)
8時00分 女子(エリートおよび92~95年生まれ、7周)スタート
11時00分 男子エリート(16周)スタート
全6クラスが4つのレースで出走する。
なお、男子エリートにはU23選手の参加も可能だが、その場合はU23に出られない。今年は24名のU23カテゴリー選手がエリートカテゴリーに出走する。
各クラスともにそれぞれ今年のロード世界選手権代表候補選考会を兼ねると要綱に記載されている。
男子エリート
新城幸也(Bboxブイグテレコム)
なんといっても注目は新城だ。去る5月のジロ・デ・イタリアでステージ3位をはじめ、各ステージで暴れまわり、もはやグラン・ツールで勝負に絡むビッグスターになった。チームのツール・ド・フランス出場選手は遅くとも翌々日の6月29日には発表される。もちろん各国での選手権結果をふまえて決定されるためだ。唯一の弱点は孤軍参加であること。現在の国内トップ選手たちは彼の元チームメイトが多いが、今やライバル。しかし得意の終盤独走パターンに持ち込めば勝利は確実。タイトルを獲ってツールへ乗り込む強い意志で、新城は全日本に臨む。
土井雪広(スキルシマノ)
土井もこの日のために帰国する。4月のツアー・オブ・ターキーでは連日勝負に絡む走りで総合6位、6月のツール・ド・ルクセンブルグでもアシストながらも上位に食い込む走りを見せた。この2つはカテゴリー超級。得意の上りで活躍した。広島のコースは彼にとっては上りが物足りないだろうが、昨年は最後の7人のゴールスプリントに参加している。さらにパワーアップした土井が見られる。
宮澤崇史、佐野淳哉(TEAM NIPPO)
チームの総合力でトップのニッポ。エーススプリンターの宮澤と、フィジカルで最強の佐野の組み合わせで幅広い戦い方に対応する。昨年は違うチームから単騎で出場して2位だったが、今年は井上和郎ら強力なチームメイトを得て出場する。宮澤のスプリント、佐野の逃げ、そして井上らが控える布陣は最強だ。
野寺秀徳、鈴木真理(シマノレーシング)
この全日本選手権をもって引退する野寺に注目したい。ジロ・デ・イタリア完走、2度の全日本チャンピオン、そして2003年以来7年連続で全日本3位以内という驚異の成績を持つ。1週間前の西日本ロードでは、誰よりも動いて圧勝。チームとしては鈴木真理とのツートップで臨む。
昨年にスプリンターの鈴木は、ゴールまで10kmを残してまさかの単独アタックに出るという、自力で展開する強さも身につけた。そして若手の畑中勇介ら全員が国内トップレベルに達している。その中でも阿部嵩之が半年間のベールを脱いで久しぶりに国内レースに出場する。国内トップの独走力と切れ味鋭い走りが見もの。チームワーク最強のシマノの戦いに注目だ。
西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)
現日本チャンピオンの西谷をエースに臨むチームは、今年もアジアツアーを中心に活動を続けてきた。ツール・ド・ランカウイでは盛との連携でステージ優勝。選手間では評価の最も高いのが西谷だ。それは結果に現れない部分での強さ、1対1になったときの強さ、そしてレースに対する真摯な取り組みがあるからだ。ディフェンディングチャンピオンとして、ジェラジャ・マレーシア個人総合2位の別府匠らと固いチームの結束で臨む。
福島晋一(クムサン・ジンセン・アジア)
2週間前の全日本個人TTチャンピオンの福島は38歳。今だ進化を続ける驚異の選手だ。2003年にこの広島で全日本チャンピオンになっている。
5月のツアー・オブ・ジャパンとツール・ド・熊野の両方で活躍。ヒルクライマーたちを打ち負かすほどの登坂能力と、誰も寄せ付けない独走力そして何よりもアタックを連発する熱い心が武器だ。チームは全日本個人TT2位の奈良基、そして五十嵐丈士の3人で参加。少数ながらも必ずや目立つ動きをしてくる。
清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)
昨シーズン大活躍の清水に期待したい。彼にとって昨年ただひとつ力を出し切れなかったのが全日本選手権。その雪辱を果たす積極的な走りに注目だ。39歳の飯島誠は今シーズンも調子がいい。1週間前の西日本ロードではメンバーを引き上げる強力な走りを展開、狩野智也も全行程の8割を逃げ続けて調子を上げている。チームとしてはこの3人に等しくチャンスがあるのが強みだ。
向川尚樹(マトリックスパワータグ・コラテック)
各ステージで活躍したツール・ド・熊野は個人総合6位。1週間前の西日本ロードでも、単独アタックで逃げに合流するなど調子を上げている。チームにはベテランの阿部、真鍋がいて心強い。真鍋は昨年の全日本では終盤まで先頭で展開していた。今年のレースでは、終盤まで先頭集団に複数が入っている展開に期待したい。
小森亮平(Vendee U)
21歳の小森もこの日にあわせ帰国。08年のU23チャンピオンはエリートクラスに出る。地元広島出身でここはホームコースでもある。昨年も終盤まで先頭集団で展開、唯一U23の年齢で10位に食い込んでいる。
大学生、クラブチーム
大学生では内間康平(鹿屋体育大学)と西薗良太(東京大学)の2人が群を抜いている。内間はツアー・オブ・タイランドでステージ優勝、学生個人ロード優勝、西薗は昨年のインカレチャンピオン、そして2年連続の学生個人TTチャンピオンだ。青柳憲輝・早川朋宏(法政大学)、伊藤雅和(鹿屋体育大学)、越海誠一(日本大学)、木守望(京都産業大学)らも十分に先頭集団で展開する力がある。内間と西薗が逃げる姿を見たいところだ。
来年に山口国体を控える白石真悟(シマノドリンキング)、今季Jシリーズで2勝の武井亨介(FOLZA)、ベテラン西谷雅史(オーベストディープラスデザイン)、実業団富士山優勝の森本誠と高岡亮寛(ともにイナーメ・アイランド信濃山形)、フランス武者修行から一時帰国の才田直人(かぶちゃん農園・ボンシャンス飯田)らの走りは見逃せない。
男子エリートの注目は新城だがそれは選手にとっても同じ。全ての選手がマークする中、新城はどう動くか。そして恐るべき38歳の福島はいつアタックをかけるか。新城と福島の2人が逃げたらたとえ5人がかりでも追いつくことは不可能。勝負強い野寺は8年連続の表彰台となるか。宮澤は?佐野は?西谷は?内間はいつ逃げるか、西薗はどこで仕掛けるか?ぜひとも現地で確かめよう。
女子
萩原と片山の一騎打ち
昨年は西加南子(LUMINARIA)が新女王に輝いたが、今年も接戦が予想されるのが女子だ。まずは2週間前の全日本個人TTチャンピオンとなった萩原麻由子(サイクルベースあさひレーシング)を挙げよう。国内ビッグレースでのいい結果がなかなかなかったが、昨秋のジャパンカップ女子優勝で完全復活。対するはMTB・XCの女王、片山梨絵(SPECIALIZED)を挙げよう。登坂力にすぐれレース巧者。昨年の全日本で最も強い走りを見せたのは片山だ。
明珍裕子(朝日大学)はここ1年で急速に力をつけている。昨年のインカレチャンピオン、1週間前の学生個人TTチャンピオンと、もはや大学生では最強だ。アップダウンの厳しい広島も彼女向きのコース。豊岡英子(パナソニックレディース)、森田正美(チームブリヂストン・アンカー)、森本朱美(スミタ・ラバネロ)は昨年5人のゴールスプリントをしたメンバー。このコースにおいては力は拮抗している。そして1週間前の西日本ロードで優勝の唐見実世子(MUUR ZERO)の仕上がり具合も見どころだろう。
92年から95年生まれのジュニア女子は同時出走になる。福本千佳(Ready Go JAPAN)が有力だ。中村友香(奈良北高)の積極さも見どころ。
U23
ブリヂストン勢に対抗する鹿屋、日大勢
昨年のチャンピオン平井栄一を擁するブリヂストン・エスポワール勢が有力候補だ。平井のほか、ジュニア・アンダー、ロード・TTと走りは違っても今年で5年連続の全日本チャンピオン嶌田義明が有力。
対する鹿屋体育大学は高宮正嗣、野口正則、元砂勇雪、山本元喜の1・2年生で臨む。高宮は2週間前の全日本個人TTで嶌田に僅差で敗れての2位。大いに期待が持てる。野口は今年調子を上げつつある。そして山本は昨年のジュニアで悔しい2位。雪辱を期したいところ。
窪木一茂、高橋将輝、雨宮正樹をはじめとする日本大学勢が有力。実績のある窪木はもちろんだが、1年生ながら早くも結果を出している雨宮に特に注目したい。
中山卓士(チームユーラシア・ムセーウバイクス)は昨年2位で、1週間前の西日本ロードではU23トップの8位に入って好調。この日のために帰国する松尾修作(Team CKT tmit-Champion System)、小坂光(宇都宮ブリッツェン)、澤田賢匠(マトリックスパワータグ・コラテック)そして丸本悠太(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)らが見どころだ。
ジュニア
92、93年生まれのジュニアは大分・日出暘谷高出身の黒枝士揮(鹿屋体育大学)と六峰亘の戦いが見どころだ。黒枝は昨年のチャンピオン、六峰は今年の東西チャレンジロードチャンピオンだ。さらに高校選抜優勝の長瀬幸治(栄北高)、昨年のU17チャンピオン山崎航(金沢高)、中井俊亮(榛生昇陽高校)、鍵本大地(崇徳高)、小石祐馬、徳田鍛造(北桑田高)らが注目だ。
観戦に行こう
全ての選手の真剣勝負を、ぜひとも自分の目で確かめてみよう。
アクセスは飛行機または車が便利。空港からタクシーで中まで入るのが一番スマート。小さくとも自転車があるとより便利。空港から会場、あるいは一番の観戦ポイントの最高地点「展望台」への行き来がしやすい。アップダウンはあるが。
車の場合、帰りの駐車場出口料金所が大渋滞になるので時間帯を考えよう。
公園内は飲料の自販機が少しだけしかないため、事前に飲食料は十分に用意しておこう。トイレは常設、仮設ともにある。日差しや雨をさえぎるものがないため、十分な対策をしておこう。特に込み合う観戦ポイントでは傘よりも雨具や帽子を活用しよう。
コース上はもちろん立ち入れないが、特にイン側に気をつけよう。歩道などの上にいても、選手はセンチ単位でラインを攻めてくる。自分の靴は歩道上でも体やバッグ、カメラなどがはみ出ていることもある。一歩下って観戦しよう。また終盤のアタック合戦は道幅を一杯に使うことがある。それまでのラインとは全く違うところを走るのでこれも気をつけたいところ。
さらにもうひとつ、当日は全ての選手が高い目標に挙げている全日本選手権だ。選手はもちろん、スタッフなども最高に神経を集中させている。特にスタート前は至近距離での接触をなるべく控えよう。どうしてもであれば、近くの関係者に聞いてみるのもいい。レース中はそのぶん、大きな声で選手を応援しよう。
photo:Hideaki.TAKAGI、Kei.TSUJI、Yufta.OMATA
text:Hideaki.TAKAGI
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