自身3度目の五輪に挑む新城幸也が7月15日、オンライン記者会見に出席。「世界トップの走りを見てほしい。日本人が見たことのない光景がそこにはある」と、東京五輪に臨む現状や展望を語った。



7月に帰国しトレーニングを積んでいる新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)7月に帰国しトレーニングを積んでいる新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
「数字で言えば30位以内に入るのも難しいです」。ロンドン、リオに続き3度目となる五輪の目標を聞かれると、新城は間髪を入れずそう答えた。「紙の上で僕は勝負から遠い所にいます。それは自分でも分かっていますし、僕がいくら獲得標高差や暑さの準備しようが、いまツール・ド・フランスを走っている選手と僕の世界の順位というものは分かっています」。

増田成幸と2人で出場する男子ロードレースは総距離234km、獲得標高差4,865mと、欧州のレースと比べても難易度の高いコースで行われる。各国が登りに適性のあるクライマーを中心としたメンバーを揃えるなか、たしかに「紙の上」では新城の勝つチャンスは高くない。

「でもロードレースは天気で展開も変わるし、何が起こるかわかりません。日本で行われる五輪に対するモチベーションは高いですし、1つでも良い結果を残したいとずっと思っています。計算では測れない力を出せたらと思っています」。

五輪に向け強化した点を「登りに対する苦手意識の克服ですね」と答えた新城。今年3月のパリ〜ニースでシーズンの開幕を迎えると、300kmを走るミラノ〜サンレモやステージレースを経てジロ・デ・イタリアに出場。「ジロ・デ・イタリアに出させてもらってキツいステージをいくつもこなしてきたので、登りへの不安は減りましたね」と言うように、8人から5人まで減ったチームで総合2位のダミアーノ・カルーゾ(イタリア)のアシストを務め、世界トップのクライマーですら脱落していく険しい山岳ステージを越えてきた。

ジロ・デ・イタリアでは5人まで絞られたチームでアシストをこなした新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)ジロ・デ・イタリアでは5人まで絞られたチームでアシストをこなした新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
ツール・ド・フランスの予備メンバーに選出されていたため、ジロ後はリカバリーを中心にツールと五輪を走る準備をしていたと明かした新城。その影響もあり、ジロ最終ステージである5月30日が五輪前最後の実戦となったことについて、「これだけレースを走らずに挑む五輪は初めてです。(ロンドンとリオ五輪は)ツールを走って一週間後に五輪がありました。いくら練習ができていても結果を出すのはレースなので、そのレースへの緊張感や不安というのはあります」と心情を素直に語った。

7月に帰国し、そのままナショナルチームに合流。増田とともにコースの試走などトレーニングを積み、各区間を最低でも5回は走りレースをイメージしたと言う。

「コース自体は頭に入っています。ただ計り知れないのが天候で、雨や晴れによってレース展開が変わります。5人いるチームもあるので、僕らが主体でレースを動かすのではなく、2人で協力しながら、2人のどちらかが日本にとって良い成績が出せればと思っています」。

連日厳しい山岳が登場することで知られるジロ・デ・イタリアを完走した新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)連日厳しい山岳が登場することで知られるジロ・デ・イタリアを完走した新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で一年間の延期が決まった昨年の心境を聞かれると、新城は「嬉しかったです」と答えた。

「中止じゃなくて嬉しかったという意味です。僕は18歳からずっと欧州でレースをしていて、日本で国際レースを走ったことがない。なので、この東京五輪は僕が現役で走っている間に日本で走れる最高の舞台なんです。それが中止ではなく延期ということが、それだけで嬉しかったです」。

東京都における緊急事態宣言の発令を受け、東京では無観客での開催が決定、沿道での観戦も自粛が要請された。だが静岡県の川勝知事は7月11日、フィニッシュ地点である富士スピードウェイでは観客を入れて実施する考えを発表した。

そのことについて新城は「各自感染症対策をした上で」という前置きをしながら、「世界トップの走りを見てほしいですね。250kmという東京から名古屋ぐらいまで距離を走ってきた選手を、日本の方は目の前で見たことがないと思います。選手がどれほど速く坂を登っているのか、これだけの人数が前を通るとどれぐらいの風が吹くのだとか、普段感じられないところを体感してほしい」と話した。

3度目の五輪に挑む新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)3度目の五輪に挑む新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
男子ロードレースは開会式翌日の7月24日、午前11時のスタートが予定されている。東京・武蔵野の森公園を出発し、道志みち、富士山麓、そしてレース最大の難所である三国峠(最大勾配18%)と2度目の籠坂峠を越え、富士スピードウェイでフィニッシュする。

望むレース展開についての質問に「逆に一番望んでいない展開はスローペースのまま集団で三国峠まで行くことですね。その前からレースが動いて欲しい。さすがに道志みち(残り150km地点)から動くのは僕にとってもきついですが、それでも三国峠よりは良い」と笑顔で答えた。

最後にスタートの朝に食べるものを聞かれると、「ヨーロッパと同じものを食べます。オートミールとパスタとオムレツと、パンとジャム」と新城。「いつも通りです」。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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