2021/05/16(日) - 04:48
今大会最南端のカンパニア州を走るジロ・デ・イタリア第8ステージで9名の逃げ切りが決まり、ヴィクトル・ラフェ(コフィディス)がプロ初勝利。マリアローザは動かなかったが、マリアチクラミーノを着る今大会2勝のカレブ・ユアン(ロット・スーダル)が膝の痛みによりレースを去っている。
5月15日(土)第8ステージ
フォッジャ〜グアルディア・サンフラモンディ 170km ★★★
イタリア南部の内陸部を逃げる先頭9名 photo:LaPresse
5月15日(土)第8ステージ フォッジャ〜グァルディア・サンフラモンディ 170km ★★★ image:RCS Sport
5月15日(土)第8ステージ フォッジャ〜グァルディア・サンフラモンディ 170km ★★★ image:RCS Sport
2021年のジロは北イタリアの比重が高く、この日のフィニッシュ地点であるカンパニア州グアルディア・サンフラモンディが今大会の南の端。開幕からイタリア半島を南下し続けたジロは、翌日から最終決戦地アルプスやドロミテに向けた北上が始まる。
標高1,392mの2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァ(登坂距離18.9km・平均勾配4.6%)を越え、4級山岳グアルディア・サンフラモンディ(登坂距離3km・平均勾配6.9%・最大勾配11%)にフィニッシュするレイアウトは総合争いを活発化させるには難易度が低く、スプリンターが勝負に絡むには難易度が高すぎる。獲得標高差2,800mのステージはズバリ逃げ向きだ。
スタートから逃げグループ形成までに要した時間は1時間強。逃げのスペシャリストであれば誰でも逃げに乗りたいコースレイアウトに加え、プーリア州の平野を吹き抜けた秒速5メートルほどの北風がアタックを許さない状況を生み出した。
集団先頭では矢継ぎ早にアタックが繰り返されたものの、イネオス・グレナディアーズをはじめとする総合系チームが横風集団分裂を狙ってペースアップしたため誰も抜け出すことができない。マリアローザを着るアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ)や、悪いタイミングで落車したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)、ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)らが後方に取り残されるシーンも見られたがメイン集団に戻っている。
数名が飛び出しては吸収され、数十名が遅れては復帰するの繰り返し。高速巡航するメイン集団の中ではカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が膝の痛みによりリタイアした。前日にステージ2勝目を飾ったマリアチクラミーノ着用者は全グランツール出場予定で、ツールとブエルタでもステージ優勝を狙う。
ようやく逃げが決まったのは54km地点。平野を抜けて山岳地帯に入ったことで風も弱まり、メイン集団は合計9名の逃げグループに先行を許可した。
逃げグループを形成した9名
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)総合15分09秒遅れ
ヴィクトル・ラフェ(フランス、コフィディス)総合18分43秒遅れ
フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、エオーロ・コメタ)総合20分38秒遅れ
ジョヴァンニ・カルボーニ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)
ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM)
コービー・ホーセンス(ベルギー、ロット・スーダル)
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
アレクシー・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)
横風&追い風が吹くステージ序盤に発生したエシュロン photo:CorVos
プーリア州からカンパニア州を目指すプロトン photo:LaPresse
2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァの下りをこなすプロトン photo:LaPresse
「総合に関係のない逃げが先行して、メイン集団がゆったりと走る展開が理想的」と語っていたマリアローザ擁するグルパマFDJがメイン集団を徹底コントロールし、逃げを追いかけることなく淡々と2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァを6分15秒遅れでクリアする。下りに向けた位置取りでタイム差が縮まることはあっても、ステージ優勝に興味を示すチームが現れなかったため、実質的に先頭9名の逃げ切りが容認された。
では誰が勝つのか。1人も欠けることなく、つまりスプリンターのガビリアが脱落することもなく、2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァを越えた逃げグループは、最高スピードが90km/hに達する下りでもばらけない。登り返しで踏んで飛び出したガビリアもしばらくして落車。ガビリアは逃げグループに復帰したものの、最後の登坂勝負には絡むことができずにステージ9位に終わっている。それでも中間スプリントでの12ポイントとフィニッシュ地点での2ポイント獲得によりガビリアはポイント賞ランキング6位まで浮上した。
膝の痛みを抱えるカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)はクリート調整をしながら走ったもののリタイア photo:CorVos
マリアローザをエスコートするグルパマFDJ photo:LaPresse
ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)を含む逃げ photo:CorVos
メイン集団から概ね6分のリードを得た逃げグループの協調体制が崩れ、ステージ優勝争いが活発化したのは残り25kmを切ってから。純粋な登坂勝負に持ち込みたくないカンペナールツやアルントがアタックを連発する。
最後の4級山岳グアルディア・サンフラモンディを前にようやくライバルたちを振り切ったカンペナールツとカルボーニが先頭に立ち、残り3km地点でカルボーニが独走状態に。そのままフィニッシュまで独走が続くと思われたが、粘り強く追走を続けたラフェが残り2km地点で先頭カルボーニを捉えた。
そして、最大勾配11%のこの最終登坂でラフェが抜け出した。ガヴァッツィやアルントらの追走は届かずに、25歳のラフェがそのまま4級山岳グアルディア・サンフラモンディにフィニッシュ。今大会4回目の逃げ切りが決まった。バーレーン・ヴィクトリアスやEFエデュケーション・NIPPOが終盤にかけてペースアップしたメイン集団は4分48秒遅れでフィニッシュにたどり着いている。
逃げグループに乗ったヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス) photo:CorVos
独走で逃げ切ったヴィクトル・ラフェ(フランス、コフィディス) photo:LaPresse
「残り25kmを切ってからのアタック合戦ではネルソン・オリヴェイラを重点的にマークしていた。状況をうまくコントロールしながら、残り3km地点で加速して先頭を奪うことに成功したんだ」と、コフィディスに11年ぶりとなるジロのステージ優勝をもたらしたラフェは語る。最後の勝利は、愛三工業レーシングに所属するダミアン・モニエ(フランス)が新城幸也と一緒に逃げた2010年大会第17ステージだった。
4月のブエルタ・ア・コムニタバレンシアナで総合4位&ヤングライダー賞1位に入っているラフェ。「いまだにジロでステージ優勝したのが信じられないよ。チームのリーダーはエリア・ヴィヴィアーニであり、明日以降も彼のために働きたい」と、キャリア最大の勝利を手にした若いフレンチオールラウンダーは語っている。
マリアローザはヴァルテルがキープ。残り2km地点で発生した落車によって集団が割れ、30秒程度のタイムを失ったルイス・フェルファーク(ベルギー、アルペシン・フェニックス)やペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が総合順位を下げている。
ステージ優勝を飾ったヴィクトル・ラフェ(フランス、コフィディス) photo:CorVos
マリアローザを守ったアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ) photo:LaPresse
5月15日(土)第8ステージ
フォッジャ〜グアルディア・サンフラモンディ 170km ★★★
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2021年のジロは北イタリアの比重が高く、この日のフィニッシュ地点であるカンパニア州グアルディア・サンフラモンディが今大会の南の端。開幕からイタリア半島を南下し続けたジロは、翌日から最終決戦地アルプスやドロミテに向けた北上が始まる。
標高1,392mの2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァ(登坂距離18.9km・平均勾配4.6%)を越え、4級山岳グアルディア・サンフラモンディ(登坂距離3km・平均勾配6.9%・最大勾配11%)にフィニッシュするレイアウトは総合争いを活発化させるには難易度が低く、スプリンターが勝負に絡むには難易度が高すぎる。獲得標高差2,800mのステージはズバリ逃げ向きだ。
スタートから逃げグループ形成までに要した時間は1時間強。逃げのスペシャリストであれば誰でも逃げに乗りたいコースレイアウトに加え、プーリア州の平野を吹き抜けた秒速5メートルほどの北風がアタックを許さない状況を生み出した。
集団先頭では矢継ぎ早にアタックが繰り返されたものの、イネオス・グレナディアーズをはじめとする総合系チームが横風集団分裂を狙ってペースアップしたため誰も抜け出すことができない。マリアローザを着るアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ)や、悪いタイミングで落車したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)、ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)らが後方に取り残されるシーンも見られたがメイン集団に戻っている。
数名が飛び出しては吸収され、数十名が遅れては復帰するの繰り返し。高速巡航するメイン集団の中ではカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が膝の痛みによりリタイアした。前日にステージ2勝目を飾ったマリアチクラミーノ着用者は全グランツール出場予定で、ツールとブエルタでもステージ優勝を狙う。
ようやく逃げが決まったのは54km地点。平野を抜けて山岳地帯に入ったことで風も弱まり、メイン集団は合計9名の逃げグループに先行を許可した。
逃げグループを形成した9名
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)総合15分09秒遅れ
ヴィクトル・ラフェ(フランス、コフィディス)総合18分43秒遅れ
フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、エオーロ・コメタ)総合20分38秒遅れ
ジョヴァンニ・カルボーニ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)
ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM)
コービー・ホーセンス(ベルギー、ロット・スーダル)
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
アレクシー・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)
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では誰が勝つのか。1人も欠けることなく、つまりスプリンターのガビリアが脱落することもなく、2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァを越えた逃げグループは、最高スピードが90km/hに達する下りでもばらけない。登り返しで踏んで飛び出したガビリアもしばらくして落車。ガビリアは逃げグループに復帰したものの、最後の登坂勝負には絡むことができずにステージ9位に終わっている。それでも中間スプリントでの12ポイントとフィニッシュ地点での2ポイント獲得によりガビリアはポイント賞ランキング6位まで浮上した。
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最後の4級山岳グアルディア・サンフラモンディを前にようやくライバルたちを振り切ったカンペナールツとカルボーニが先頭に立ち、残り3km地点でカルボーニが独走状態に。そのままフィニッシュまで独走が続くと思われたが、粘り強く追走を続けたラフェが残り2km地点で先頭カルボーニを捉えた。
そして、最大勾配11%のこの最終登坂でラフェが抜け出した。ガヴァッツィやアルントらの追走は届かずに、25歳のラフェがそのまま4級山岳グアルディア・サンフラモンディにフィニッシュ。今大会4回目の逃げ切りが決まった。バーレーン・ヴィクトリアスやEFエデュケーション・NIPPOが終盤にかけてペースアップしたメイン集団は4分48秒遅れでフィニッシュにたどり着いている。
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「残り25kmを切ってからのアタック合戦ではネルソン・オリヴェイラを重点的にマークしていた。状況をうまくコントロールしながら、残り3km地点で加速して先頭を奪うことに成功したんだ」と、コフィディスに11年ぶりとなるジロのステージ優勝をもたらしたラフェは語る。最後の勝利は、愛三工業レーシングに所属するダミアン・モニエ(フランス)が新城幸也と一緒に逃げた2010年大会第17ステージだった。
4月のブエルタ・ア・コムニタバレンシアナで総合4位&ヤングライダー賞1位に入っているラフェ。「いまだにジロでステージ優勝したのが信じられないよ。チームのリーダーはエリア・ヴィヴィアーニであり、明日以降も彼のために働きたい」と、キャリア最大の勝利を手にした若いフレンチオールラウンダーは語っている。
マリアローザはヴァルテルがキープ。残り2km地点で発生した落車によって集団が割れ、30秒程度のタイムを失ったルイス・フェルファーク(ベルギー、アルペシン・フェニックス)やペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が総合順位を下げている。
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ジロ・デ・イタリア2021第8ステージ結果
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | 83pts |
2位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス) | 76pts |
3位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス) | 69pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 26pts |
2位 | ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 18pts |
3位 | コービー・ホーセンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 18pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ) | 31:10:53 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:11 |
3位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:00:16 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 93:35:22 |
2位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 0:01:05 |
3位 | バイクエクスチェンジ | 0:02:15 |
text:Kei Tsuji
photo:CorVos
photo:CorVos
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