2020/10/10(土) - 08:44
横風によって集団分裂や落車が多発したジロ・デ・イタリア第7ステージの平均スピードは驚異的な51.234km/h!ジロ史上最速ステージは集団スプリントで締めくくられ、アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が圧巻の3勝目をマークした。
イタリア半島の「長靴のかかと」を走るジロ第7ステージはほぼまっ平。カテゴリー山岳は設定されず、バジリカータ州のマテーラからプーリャ州のブリンディジまでひたすら平坦路が続いている。獲得標高差500mの平坦ステージの難易度は1つ星。しかしアドリア海から吹き付ける北風によって難易度5つ星クラスの危険なステージとなった。
世界遺産マテーラの旧市街を離れてすぐ、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)ら4名の逃げグループが先行を開始する。しかしスタートから10km足らずで、つまりフィニッシュまで130km以上の距離を残してメイン集団では横風ペースアップが開始。マリアローザ擁するドゥクーニンク・クイックステップが率先してペースを上げると、メイン集団はエシュロンを形成しながら概ね4つのグループに分裂した。
総合1位ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)や総合3位ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)、総合5位ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)、総合8位ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)、そしてスプリンターのアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)やペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)らが約25名で構成された第1集団に入った一方で、その他のマリアローザ候補&スプリンターは後続集団に取り残された。序盤から逃げたデヘントら4名はすぐさま第1集団に吸収されている。
ドゥクーニンク・クイックステップやユンボ・ヴィスマ、サンウェブが牽引した第1集団に対して、30秒遅れの第2集団に取り残されたのは総合2位ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)や総合7位ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)、総合10位ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、新城幸也(バーレーン・マクラーレン)。さらにその後方に総合4位ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル)、総合6位ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング)、総合21位サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)を含む第3集団という展開に。
しかしフィニッシュまで100km近く距離を残していたこともあり、風が弱まった区間でペースアップが中断されたため集団は一つに戻った。最初の1時間を56.470km/hという猛烈スピードで駆け抜けた集団が落ち着くと、序盤にも逃げていたシモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)とマルコ・フラッポルティ(イタリア、ヴィーニザブKTM)が再びアタック。しかしこの意地の張り合いのようなイタリアンUCIプロチームの逃げも短命に終わっている。
ヴィヴィアーニ、デマール、サガンの順で第1スプリント(66km地点)を通過したメイン集団では、落車に巻き込まれたフルサンやファンフックが地面に転ぶシーズンも。ペースアップを警戒して常に緊張感を持って進むメイン集団ではその後も落車が多発。残り45kmのアーチ下で発生した落車にフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)やファンフック、ポッツォヴィーヴォが巻き込まれ、その後のエシュロンでイルヌル・ザカリン(ロシア、CCCチーム)も脱落。ファンフックを含む集団は一時的に1分以上の遅れを被ったが、残り21km地点で再び集団は一つに戻っている。
進行方向(風向き)の変更とともにペースアップがかかるメリハリのきいたレース進行。いつも決まってドゥクーニンク・クイックステップが先陣を切ったものの、決定的な集団分裂は生まれなかった。残り10kmを切ると、道幅を目一杯使った各チームのトレインによるスピード争いが始まり、イスラエル・スタートアップネイション、ロット・スーダル、グルパマFDJ、ドゥクーニンク・クイックステップを先頭にフィニッシュ地点のブリンディジに突入していく。
スプリンターチームの中で最も多くの人数を揃えたのはグルパマFDJとイスラエル・スタートアップネイション。コーナーが連続する複雑な市街地で危険回避のために集団先頭に立ったユンボ・ヴィスマから、最終コーナーを抜けた残り1kmでグルパマFDJが主導権を奪う。
フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)やダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が先頭を奪うなど、ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、グルパマFDJ)のリードアウトが完璧とは言えない中でも、いざスプリントが始まるとマリアチクラミーノを着るデマールの加速力が際立った。
バッレリーニの後ろから残り200mで加速したデマール。大きく空いたスペースに向かってラインを変えたデマールが、スリップストリームに入るサガンに並ばせることなく猛進した。ラスト1kmを60km/hオーバーで駆け抜けたデマールが悠々とフィニッシュラインでガッツポーズした。
「最後は筋力勝負だった。トップスプリンターが勢揃いする正真正銘の集団スプリントだったけど、今日もチームのおかげで自分の勝負に持ち込むことができたよ」と、3度目のステージ優勝を掴み、今シーズンの勝利数を13まで伸ばしたデマール。1982年にベルナール・イノーが記録した1大会ステージ4勝というフランス人選手最多勝の記録更新が見えてきた。
マリアチクラミーノのリードを大幅に拡大することに成功したデマールとは対照的に、「混沌としたスプリントの末に勝利まであと一歩のところまで行ったけど、今日は自分の日じゃなかった」と語るサガンは第2ステージと第4ステージに続く3度目のステージ2位。サガンは今シーズンまだ勝利をつかめていない。
この日、選手たちは143kmという距離を2時間47分28秒という時間で走り切ってしまった。主催者の想定最速タイムよりも20分近く速くフィニッシュしたステージの平均スピードは51.234km/h。これは2012年大会第18ステージで記録された49.439km/hを上回るジロ史上最速記録(タイムトライアルを除く)。この想定外の高速な展開によってUCIコミッセールは特例措置としてタイムリミットを22分まで延長している。落車により21分27秒遅れでフィニッシュしたトニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)も完走扱いとなっている。
デマールと同タイムでフィニッシュしたのは68名。ドゥクーニンク・クイックステップに終始安全にエスコートしたホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)がマリアローザをキープしている。危険な横風ステージで総合タイムを失う有力選手は現れなかった。
イタリア半島の「長靴のかかと」を走るジロ第7ステージはほぼまっ平。カテゴリー山岳は設定されず、バジリカータ州のマテーラからプーリャ州のブリンディジまでひたすら平坦路が続いている。獲得標高差500mの平坦ステージの難易度は1つ星。しかしアドリア海から吹き付ける北風によって難易度5つ星クラスの危険なステージとなった。
世界遺産マテーラの旧市街を離れてすぐ、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)ら4名の逃げグループが先行を開始する。しかしスタートから10km足らずで、つまりフィニッシュまで130km以上の距離を残してメイン集団では横風ペースアップが開始。マリアローザ擁するドゥクーニンク・クイックステップが率先してペースを上げると、メイン集団はエシュロンを形成しながら概ね4つのグループに分裂した。
総合1位ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)や総合3位ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)、総合5位ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)、総合8位ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)、そしてスプリンターのアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)やペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)らが約25名で構成された第1集団に入った一方で、その他のマリアローザ候補&スプリンターは後続集団に取り残された。序盤から逃げたデヘントら4名はすぐさま第1集団に吸収されている。
ドゥクーニンク・クイックステップやユンボ・ヴィスマ、サンウェブが牽引した第1集団に対して、30秒遅れの第2集団に取り残されたのは総合2位ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)や総合7位ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)、総合10位ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、新城幸也(バーレーン・マクラーレン)。さらにその後方に総合4位ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル)、総合6位ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング)、総合21位サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)を含む第3集団という展開に。
しかしフィニッシュまで100km近く距離を残していたこともあり、風が弱まった区間でペースアップが中断されたため集団は一つに戻った。最初の1時間を56.470km/hという猛烈スピードで駆け抜けた集団が落ち着くと、序盤にも逃げていたシモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)とマルコ・フラッポルティ(イタリア、ヴィーニザブKTM)が再びアタック。しかしこの意地の張り合いのようなイタリアンUCIプロチームの逃げも短命に終わっている。
ヴィヴィアーニ、デマール、サガンの順で第1スプリント(66km地点)を通過したメイン集団では、落車に巻き込まれたフルサンやファンフックが地面に転ぶシーズンも。ペースアップを警戒して常に緊張感を持って進むメイン集団ではその後も落車が多発。残り45kmのアーチ下で発生した落車にフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)やファンフック、ポッツォヴィーヴォが巻き込まれ、その後のエシュロンでイルヌル・ザカリン(ロシア、CCCチーム)も脱落。ファンフックを含む集団は一時的に1分以上の遅れを被ったが、残り21km地点で再び集団は一つに戻っている。
進行方向(風向き)の変更とともにペースアップがかかるメリハリのきいたレース進行。いつも決まってドゥクーニンク・クイックステップが先陣を切ったものの、決定的な集団分裂は生まれなかった。残り10kmを切ると、道幅を目一杯使った各チームのトレインによるスピード争いが始まり、イスラエル・スタートアップネイション、ロット・スーダル、グルパマFDJ、ドゥクーニンク・クイックステップを先頭にフィニッシュ地点のブリンディジに突入していく。
スプリンターチームの中で最も多くの人数を揃えたのはグルパマFDJとイスラエル・スタートアップネイション。コーナーが連続する複雑な市街地で危険回避のために集団先頭に立ったユンボ・ヴィスマから、最終コーナーを抜けた残り1kmでグルパマFDJが主導権を奪う。
フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)やダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が先頭を奪うなど、ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、グルパマFDJ)のリードアウトが完璧とは言えない中でも、いざスプリントが始まるとマリアチクラミーノを着るデマールの加速力が際立った。
バッレリーニの後ろから残り200mで加速したデマール。大きく空いたスペースに向かってラインを変えたデマールが、スリップストリームに入るサガンに並ばせることなく猛進した。ラスト1kmを60km/hオーバーで駆け抜けたデマールが悠々とフィニッシュラインでガッツポーズした。
「最後は筋力勝負だった。トップスプリンターが勢揃いする正真正銘の集団スプリントだったけど、今日もチームのおかげで自分の勝負に持ち込むことができたよ」と、3度目のステージ優勝を掴み、今シーズンの勝利数を13まで伸ばしたデマール。1982年にベルナール・イノーが記録した1大会ステージ4勝というフランス人選手最多勝の記録更新が見えてきた。
マリアチクラミーノのリードを大幅に拡大することに成功したデマールとは対照的に、「混沌としたスプリントの末に勝利まであと一歩のところまで行ったけど、今日は自分の日じゃなかった」と語るサガンは第2ステージと第4ステージに続く3度目のステージ2位。サガンは今シーズンまだ勝利をつかめていない。
この日、選手たちは143kmという距離を2時間47分28秒という時間で走り切ってしまった。主催者の想定最速タイムよりも20分近く速くフィニッシュしたステージの平均スピードは51.234km/h。これは2012年大会第18ステージで記録された49.439km/hを上回るジロ史上最速記録(タイムトライアルを除く)。この想定外の高速な展開によってUCIコミッセールは特例措置としてタイムリミットを22分まで延長している。落車により21分27秒遅れでフィニッシュしたトニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)も完走扱いとなっている。
デマールと同タイムでフィニッシュしたのは68名。ドゥクーニンク・クイックステップに終始安全にエスコートしたホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)がマリアローザをキープしている。危険な横風ステージで総合タイムを失う有力選手は現れなかった。
ジロ・デ・イタリア2020第7ステージ結果
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 2:47:28 |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
3位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | |
4位 | ベン・スウィフト(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | |
5位 | アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
6位 | ルディ・バルビエ(フランス、イスラエル・スタートアップネイション) | |
7位 | ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
8位 | エンリコ・バッタリーン(イタリア、バーレーン・マクラーレン) | |
9位 | フィリッポ・フィオレッリ(イタリア、バルディアーニCSF) | |
10位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス) | |
67位 | 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 24:48:29 |
2位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | 0:00:43 |
3位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 0:00:48 |
4位 | ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:59 |
5位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) | 0:01:01 |
6位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング) | 0:01:05 |
7位 | ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ) | 0:01:19 |
8位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 0:01:21 |
9位 | パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:01:26 |
10位 | ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:01:32 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 161pts |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 106pts |
3位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | 83pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) | 41pts |
2位 | ヨナタン・カイセド(エクアドル、EFプロサイクリング) | 40pts |
3位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング) | 19pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 24:48:29 |
2位 | ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:59 |
3位 | ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ) | 0:01:33 |
チーム総合成績
1位 | ドゥクーニンク・クイックステップ | 74:29:50 |
2位 | サンウェブ | 0:01:22 |
3位 | イネオス・グレナディアーズ | 0:03:34 |
text:Kei Tsuji
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