2020/09/20(日) - 15:43
「思ってたよりずっとイイ」。55万円というプライスを下げるCREOシリーズのエントリーアルミモデルは、れっきとしたスポーツバイクだ。カーボンモデル、そしてシマノSTEPSと都内有数のヒルクライムスポットで乗り比べたバッテリーレポートも含め紹介していきたい。
E-BIKEが本格的な広がりを見せつつある日本市場へ、昨年スペシャライズドが満を持して投入したTURBO SLシリーズ。売れ線となるクロスバイクのVADO SLや、名作MTB"STUMPJUMPER"をベースとしたLEVO SL、そして超軽量E-ロードとして注目を集めるCREO SLと、一気に隙のないラインアップを揃えてきた。
当初、カーボンモデルのみ発表されていたCREO SLにシーズン途中から追加されたアルミモデルが、今回紹介するTURBO CREO SL E5 COMPだ。E-BIKEの枠を超える軽量性と走行性能を狙ったCREO SLの核となる新開発の"SL1.1"ユニットはそのままに、フレームをFACTカーボンからE5アルミへ置き換えることで、より手の届きやすい価格を実現した普及モデルだ。このバイクの登場により、ハイエンドのS-WORKSグレードからこのモデルまで、よりCREOシリーズのラインアップにも厚みが増すこととなった。
TURBO SLシリーズのキーとなるのが、スペシャライズドが独自に開発した"SLユニット"。その開発コンセプトは、過去のTURBOシリーズのユーザーから集めたデータをもとに余剰性能を省くことで、スポーツバイク本来の軽快な乗り味を犠牲にしない軽量性を実現するというもの。
その結果、最大トルク35Nm・定格出力240Wと、数字だけで見れば他ブランドのユニットに対して控えめなスペックであるが、アンダー2kgという圧倒的に軽量かつコンパクトなモーターの開発に成功した。更に、スマートで大容量なインチューブバッテリーと組み合わせることで、スポーツバイク本来の運動性能と外観を損なわず、必要十分なアシスト力と最長130kmもの航続距離を誇る新世代のアシストユニットとして完成したのがSLユニットだ。
TURBO CREO SL E5 COMPは、そんな先進的なSLユニットをスペシャライズドが誇るE5アルミフレームに搭載することで、既存のE-BIKEの概念を覆す走りをより手の届きやすい存在にした。軽くスムースな加速感、ノーマルなロードバイクと同レベルの取り回しやすさ、E-BIKEとは判らない洗練されたルックス。それらが50万円代で手に入る、バリューフォーマネーなモデルとなる。
アルミモデルのE-BIKEということで、懸念される乗り心地の硬さについてもスペシャライズドは対策済みだ。同社のエンデュランスレーサーであるROUBAIXのために開発されたステアリングコラム内蔵サスペンション"Future Shock1.5"を採用し、不快な振動や路面ギャップからの衝撃を取り去ってくれる。
ユーティリティ面については上位モデルと同じ仕様となっている。航続距離を最大194kmまで伸ばす追加バッテリー"レンジエクステンダー"や、スマートフォンと連携することでアシスト特性をチューニングできる"Mission Control"アプリ、トップチューブに備えられたコントロールパネル"Turbo Connect Unit"など、TURBOシリーズの特徴は全てこのモデルにも受け継がれている。
アセンブルされるコンポーネントはシマノ GRX810シリーズ。グラベル仕様の"EVO"の展開および、XSサイズの設定が無いのがカーボンモデルとの大きな違い。タイヤ幅は重量が嵩むE-BIKEという事も考慮されてか、スペシャライズド Turbo Proの28mmがアセンブルされている。
今回のインプレッションでは、関東のサイクリストにはおなじみのヒルクライムスポット「都民の森」へ、手前の平坦区間も含めた約26㎞で実施した。斜度が緩く下りや平坦も点在する序盤から中盤にかけてはノーマルモード、斜度が厳しくなる終盤はターボモードに切り替えつつ、最も快適で実用的な速度域をキープしながらテストした。
― インプレッション
TURBO CREO SL E5 COMPの全体的な印象と言えば、もちろんカーボンモデルと比べれば重さこそ感じるものの、アシストをONにしてペダルを回している限り加速感は瓜二つ。先述の通りパワーユニット(SLユニット)そのものが上級グレードと変わらないことが理由だが、エントリーグレードでも上級モデルと同じフィーリングを味わえるのは購買欲をそそるポイントだ。
大きく違うのが衝撃に対するリアの突き上げ感と、強く踏み込んだ時のBB付近のしなりという2点。前輪が受ける衝撃はFuture Shock 1.5が打ち消してくれるが、リアはアルミらしく結構ゴツゴツくる。もちろん重量のあるパワーユニットを積んでいるため柔軟性のあるフレーム設計が難しいという事情もあるのだろうが、タイヤを替えて空気圧を下げれば乗り心地はおおよそ改善可能なのでご安心を。ちなみに、現在のタイヤセットは純正の28mmから2mmアップの30mm(空気圧は4前後)だ。
正直に言えばカーボンモデルのCREOに好印象を抱いていただけに、テスト前までE5 COMPには「安かろう重かろう」というマイナスイメージを持っていたことはここだけの話。でも実際に乗ってみると、軽量コンパクトなSLユニットも相まって、とにかく走りはスムーズ。巨大なパワーにモノを言わせて走れるシマノSTEPSやボッシュPERFORMANCE CXと違い、適切なギア選びとケイデンスを考える必要があったりと、いい意味でペダル(人力)バイクを操る愉しみがE5 COMPにもある。ワインディングを登る時、そして下る時、その根幹にはEパワーだけに拠らない「走る」フレーム設計があることに気づいた。
さて、ここまで読んで「しっかり走るのは分かったけど、バッテリーの減り具合ってどうなのよ?」と疑問を持った方も多いはず。いくら走るE-BIKEでも、例え30kmしか走れなければ購入には繋がらないし、軽さと引き換えにバッテリー容量を犠牲にしたCREOなら、しかも重たいアルミモデルならばその不安はなおさらだ。
そこでCW編集部では、従来から取材用バイクとして所有しているミズタニ自転車のSeraph E-01S(シマノ STEPS搭載)と、東京のヒルクライムスポットである「都民の森(区間距離26km)」で、実際に同じように走った上で簡易的な比較テストを行ってみた(実際に乗ったのは最近E-BIKEにお熱のメタボ会長)。区間と、それに対するバッテリーの消費量は以下の通りだ。
E-BIKEが本格的な広がりを見せつつある日本市場へ、昨年スペシャライズドが満を持して投入したTURBO SLシリーズ。売れ線となるクロスバイクのVADO SLや、名作MTB"STUMPJUMPER"をベースとしたLEVO SL、そして超軽量E-ロードとして注目を集めるCREO SLと、一気に隙のないラインアップを揃えてきた。
当初、カーボンモデルのみ発表されていたCREO SLにシーズン途中から追加されたアルミモデルが、今回紹介するTURBO CREO SL E5 COMPだ。E-BIKEの枠を超える軽量性と走行性能を狙ったCREO SLの核となる新開発の"SL1.1"ユニットはそのままに、フレームをFACTカーボンからE5アルミへ置き換えることで、より手の届きやすい価格を実現した普及モデルだ。このバイクの登場により、ハイエンドのS-WORKSグレードからこのモデルまで、よりCREOシリーズのラインアップにも厚みが増すこととなった。
TURBO SLシリーズのキーとなるのが、スペシャライズドが独自に開発した"SLユニット"。その開発コンセプトは、過去のTURBOシリーズのユーザーから集めたデータをもとに余剰性能を省くことで、スポーツバイク本来の軽快な乗り味を犠牲にしない軽量性を実現するというもの。
その結果、最大トルク35Nm・定格出力240Wと、数字だけで見れば他ブランドのユニットに対して控えめなスペックであるが、アンダー2kgという圧倒的に軽量かつコンパクトなモーターの開発に成功した。更に、スマートで大容量なインチューブバッテリーと組み合わせることで、スポーツバイク本来の運動性能と外観を損なわず、必要十分なアシスト力と最長130kmもの航続距離を誇る新世代のアシストユニットとして完成したのがSLユニットだ。
TURBO CREO SL E5 COMPは、そんな先進的なSLユニットをスペシャライズドが誇るE5アルミフレームに搭載することで、既存のE-BIKEの概念を覆す走りをより手の届きやすい存在にした。軽くスムースな加速感、ノーマルなロードバイクと同レベルの取り回しやすさ、E-BIKEとは判らない洗練されたルックス。それらが50万円代で手に入る、バリューフォーマネーなモデルとなる。
アルミモデルのE-BIKEということで、懸念される乗り心地の硬さについてもスペシャライズドは対策済みだ。同社のエンデュランスレーサーであるROUBAIXのために開発されたステアリングコラム内蔵サスペンション"Future Shock1.5"を採用し、不快な振動や路面ギャップからの衝撃を取り去ってくれる。
ユーティリティ面については上位モデルと同じ仕様となっている。航続距離を最大194kmまで伸ばす追加バッテリー"レンジエクステンダー"や、スマートフォンと連携することでアシスト特性をチューニングできる"Mission Control"アプリ、トップチューブに備えられたコントロールパネル"Turbo Connect Unit"など、TURBOシリーズの特徴は全てこのモデルにも受け継がれている。
アセンブルされるコンポーネントはシマノ GRX810シリーズ。グラベル仕様の"EVO"の展開および、XSサイズの設定が無いのがカーボンモデルとの大きな違い。タイヤ幅は重量が嵩むE-BIKEという事も考慮されてか、スペシャライズド Turbo Proの28mmがアセンブルされている。
今回のインプレッションでは、関東のサイクリストにはおなじみのヒルクライムスポット「都民の森」へ、手前の平坦区間も含めた約26㎞で実施した。斜度が緩く下りや平坦も点在する序盤から中盤にかけてはノーマルモード、斜度が厳しくなる終盤はターボモードに切り替えつつ、最も快適で実用的な速度域をキープしながらテストした。
― インプレッション
TURBO CREO SL E5 COMPの全体的な印象と言えば、もちろんカーボンモデルと比べれば重さこそ感じるものの、アシストをONにしてペダルを回している限り加速感は瓜二つ。先述の通りパワーユニット(SLユニット)そのものが上級グレードと変わらないことが理由だが、エントリーグレードでも上級モデルと同じフィーリングを味わえるのは購買欲をそそるポイントだ。
大きく違うのが衝撃に対するリアの突き上げ感と、強く踏み込んだ時のBB付近のしなりという2点。前輪が受ける衝撃はFuture Shock 1.5が打ち消してくれるが、リアはアルミらしく結構ゴツゴツくる。もちろん重量のあるパワーユニットを積んでいるため柔軟性のあるフレーム設計が難しいという事情もあるのだろうが、タイヤを替えて空気圧を下げれば乗り心地はおおよそ改善可能なのでご安心を。ちなみに、現在のタイヤセットは純正の28mmから2mmアップの30mm(空気圧は4前後)だ。
正直に言えばカーボンモデルのCREOに好印象を抱いていただけに、テスト前までE5 COMPには「安かろう重かろう」というマイナスイメージを持っていたことはここだけの話。でも実際に乗ってみると、軽量コンパクトなSLユニットも相まって、とにかく走りはスムーズ。巨大なパワーにモノを言わせて走れるシマノSTEPSやボッシュPERFORMANCE CXと違い、適切なギア選びとケイデンスを考える必要があったりと、いい意味でペダル(人力)バイクを操る愉しみがE5 COMPにもある。ワインディングを登る時、そして下る時、その根幹にはEパワーだけに拠らない「走る」フレーム設計があることに気づいた。
さて、ここまで読んで「しっかり走るのは分かったけど、バッテリーの減り具合ってどうなのよ?」と疑問を持った方も多いはず。いくら走るE-BIKEでも、例え30kmしか走れなければ購入には繋がらないし、軽さと引き換えにバッテリー容量を犠牲にしたCREOなら、しかも重たいアルミモデルならばその不安はなおさらだ。
そこでCW編集部では、従来から取材用バイクとして所有しているミズタニ自転車のSeraph E-01S(シマノ STEPS搭載)と、東京のヒルクライムスポットである「都民の森(区間距離26km)」で、実際に同じように走った上で簡易的な比較テストを行ってみた(実際に乗ったのは最近E-BIKEにお熱のメタボ会長)。区間と、それに対するバッテリーの消費量は以下の通りだ。
CREO E5とSeraph E-01Sのバッテリー消費比較(@都民の森 ※最終区間はアシストモード最強)
十里木~橘橋(約5km) | 橘橋~上川乗(8.6km/総距離13.6km) | 上川乗~ゲート(区間10km/総距離23km) | ゲート~都民の森(区間3km/総距離26km) | 平均電費 | |
---|---|---|---|---|---|
CREO(320Wh) | 残99%(3.2Wh消費) | 残90%(13kmで32Wh消費) | 残62%(23kmで122Wh消費) | 45%(23kmで176Wh消費) | 2.82Wh/km |
Seraph(418Wh) | 残100%(ほぼ消費なし) | 残98%(13kmで8.4Wh消費) | 残85%(23kmで63Wh消費) | 残75%(23kmで105Wh消費) | 2.34Wh/km |
距離26kmの都民の森をほどほどのペースで登り切って、CREOのバッテリー残量は45%。ただしこれは、ターボの出力設定を行う「Mission Controlアプリ」で、自分のペースにに合ったアシスト量(ECOモードでモーター出力の25%、SPORTモードで50%、TURBOモードで75%)に設定してのデータということも触れておきたい。
その理由は、デフォルト設定(ECOモードでモーター出力の30%、SPORTモードで60%、TURBOモードで100%)では何となくパワーの持て余し感が強かったことと、26km全区間をTURBOモードで登った時にバッテリー残量がほぼゼロになってしまったから。結果的には少しアシスト量を抑えてやることで、アシストとバッテリーの持続性を大きく伸ばすことができたことはとても大きな収穫だった。つまりCREOのバッテリー評価は、「デフォルトだと都民の森往復は厳しいけれど、アシスト量をいじれば全然OK」ということになる。
そして何より、Mission Controlアプリの操作がとても簡単で、完成度が非常に高いことは大きな収穫だった。STEPSもアプリ上で各種調整を行うことが可能だが、Mission Controlは3モードの各アシスト量を、0から100%までほぼ無段階で調整することができるのだ。マッピング(アシスト調整)の楽しみも大きく、自分の好みのモードを作り上げたときの喜びは、おそらく他のE-BIKEにはないものだと感じる。クルマやバイクのセッティングを楽しんだことのある方にはばっちりハマるだろう。
正直に言えば、この2ユニットのうち、スポーツバイク初心者に推したいのは高出力でバッテリー容量も大きいシマノSTEPSだ。バッテリー残量を気にせずとも都民の森ならHIGH(アシスト強)モードで走り切れてしまうし、「楽」を優先するならベストだろう。
しかしスポーツバイクを経験した方が2台目として購入するならば、走る楽しみがより強いSLユニットのCREOがいい。根本的な走りも現在国内で購入できるE-BIKEの中ではトップクラスだし、予算に余裕があるならカーボンモデルだが、アルミのE5 COMPだって悪くなんか決してない。55万円以上の広がりがある、良きスポーツE-BIKEだった。
スペシャライズド TURBO CREO SL E5 COMP
フレーム:pecialized E5 Premium Aluminum frame
フォーク:Future Shock 2.0 w/ Smooth Boot, Boost
モーター:スペシャライズド SL 1.1
バッテリー容量:320Wh
コンポーネント:シマノ GRX、他
タイヤ:スペシャライズド Turbo Pro, 700x28mm
サイズ:S、M、L
カラー:Flo Red / Black、GLOSS CAST BLUE / BLACK / HYPER
税抜価格:550,000円
その理由は、デフォルト設定(ECOモードでモーター出力の30%、SPORTモードで60%、TURBOモードで100%)では何となくパワーの持て余し感が強かったことと、26km全区間をTURBOモードで登った時にバッテリー残量がほぼゼロになってしまったから。結果的には少しアシスト量を抑えてやることで、アシストとバッテリーの持続性を大きく伸ばすことができたことはとても大きな収穫だった。つまりCREOのバッテリー評価は、「デフォルトだと都民の森往復は厳しいけれど、アシスト量をいじれば全然OK」ということになる。
そして何より、Mission Controlアプリの操作がとても簡単で、完成度が非常に高いことは大きな収穫だった。STEPSもアプリ上で各種調整を行うことが可能だが、Mission Controlは3モードの各アシスト量を、0から100%までほぼ無段階で調整することができるのだ。マッピング(アシスト調整)の楽しみも大きく、自分の好みのモードを作り上げたときの喜びは、おそらく他のE-BIKEにはないものだと感じる。クルマやバイクのセッティングを楽しんだことのある方にはばっちりハマるだろう。
正直に言えば、この2ユニットのうち、スポーツバイク初心者に推したいのは高出力でバッテリー容量も大きいシマノSTEPSだ。バッテリー残量を気にせずとも都民の森ならHIGH(アシスト強)モードで走り切れてしまうし、「楽」を優先するならベストだろう。
しかしスポーツバイクを経験した方が2台目として購入するならば、走る楽しみがより強いSLユニットのCREOがいい。根本的な走りも現在国内で購入できるE-BIKEの中ではトップクラスだし、予算に余裕があるならカーボンモデルだが、アルミのE5 COMPだって悪くなんか決してない。55万円以上の広がりがある、良きスポーツE-BIKEだった。
スペシャライズド TURBO CREO SL E5 COMP
フレーム:pecialized E5 Premium Aluminum frame
フォーク:Future Shock 2.0 w/ Smooth Boot, Boost
モーター:スペシャライズド SL 1.1
バッテリー容量:320Wh
コンポーネント:シマノ GRX、他
タイヤ:スペシャライズド Turbo Pro, 700x28mm
サイズ:S、M、L
カラー:Flo Red / Black、GLOSS CAST BLUE / BLACK / HYPER
税抜価格:550,000円
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