2020/09/06(日) - 15:34
サーヴェロが放つオールニューバイク"Caledonia"(カレドニア)。これまでのどのバイクとも異なるコンセプトに基づいて設計された「モダンロード」として送り出されたシリーズのベースモデルをインプレッション。
サーヴェロ Caledonia (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ロードバイクが「ロードレーサー」と呼ばれていた時代から時は流れ、より多くのライドスタイルやコースに応じて細分化された現代。過去にはランドナーやスポルティフと呼ばれたであろうカテゴリーのバイクも取り込んだロードバイクというカテゴリーは、ますます先鋭化し、複雑さを増すばかりだ。
そんな中で、多くのバイクブランドは日々生み出されるカテゴリーに適合するニューバイクを開発し、世に送り出してきた。だが、今回紹介するサーヴェロのCaledoniaは、そんなロードバイク情勢に一石を投ずべく生み出された一台だ。
つまり、一台で「ロードバイク」的なるライドエクスペリエンスを網羅できるオールラウンドなバイクだということ。舗装路も、ちょっとした未舗装路も。登りも平坦も下りも妥協せず、長距離も難なくこなせ、ライバルとのアタック合戦もお手の物。現代のロードバイクに求められる能力の最大公約数を具現化したそのバイクを、サーヴェロは「モダンロード」と呼んだ。
流行のドロップドシートステーを採用するリアトライアングル
最大35mmのタイヤクリアランスを確保しているフロントフォーク
フォークブレードはエアロ形状とされている
Caledoniaをモダンロードたらしめるのは、最新のトレンドを網羅したスペックによるもの。ピュアロードよりも幅広い最大35mmのタイヤクリアランス。クラシックレースすら走り切れるジオメトリー。フェンダー/アクセサリマウントによるグラベルロード並みの拡張性。
異なるカテゴリのエッセンスを抽出し、一台のバイクの中に破綻無くブレンドすることで、ダイバーシティ溢れる現代のロードバイカーたちの要望を余すところ無く受け止めるバーサタイルバイクとして完成したのがCaledoniaだ。
その性格はCaledoniaの生い立ちからも読み解ける。揺籃の地となったのは、トロントに本社を置くサーヴェロのスタッフたちが毎週開催する「サーズディ ナイトライド」。ハイスピードな展開でありながら、多種多様な路面が現れるこのライドを走るため、サーヴェロのスタッフが欲したのは、よりワイドなタイヤを履いたR5、もしくはより機敏なAsperoだった。それがCaledoniaの原点だ。
リアバックも幅広タイヤに対応するクリアランスが与えられている
サイクルコンピューターをスマートにマウントできる専用ステム
タイヤを覆うようなデザインのシートステー集合部
トップチューブにはボルトオンのバッグマウントが用意される
バイクの性格に大きく影響するジオメトリから見てみよう。昨年パリ~ルーベを走ったR3に対して、Caledoniaは大きなBBドロップ、長めのリアセンター、増加したトレイル量を与えられ、より安定志向の設計となっている。3つの異なるオフセット量を持つフォークを用意することで、全サイズとも60mmというトレイル値を一貫させているのは、ハンドリングを重視していることの証左だろう。
舗装路はもちろん、クラシックレースに登場するパヴェやグラベルにおいても速さを発揮するためには、耐久性と軽量性、エアロダイナミクスを高レベルでバランスさせたフレームワークが求められる。
その難問に対し、サーヴェロはSシリーズのエアロチュービングとRシリーズの振動吸収性を融合させることで解答した。ライバルブランドが採用しているようなサスペンションやエラストマーといったギミックを使用していないため、重量もロードバイクとして標準的な数値に収まっている。
いったん上方へとオフセットされるリアエンド
ボリューミーなBBはサーヴェロ独自のBBright規格を採用する
ロードバイクとして欠かせない機敏な運動性能に直結するのが、フレームの剛性レベルだ。サーヴェロはグラベル用レースバイクのAsperoと同レベルの剛性をCaledoniaに与えている。現行R3の剛性感がパヴェにおいては過剰だというフィードバックをもとに、調整した結果なのだという。コンペティティブな走り方を主目的としない人にとっても、持て余さない剛性感に調整されているはずだ。
もう一つ、Caledoniaの大きな特徴となるのが高い拡張性だろう。シンプルで美しいフォルムを崩さないステルスフェンダーマウントは、雨天をものともせず走るアグレッシブなライダーにとって大きな魅力となるはずだ。
シートポストは汎用的な丸断面を採用
ダウンチューブのボトルケージ台座は上下に設置位置を移動可能 バイクパッキングにも対応する
エアロも意識したカムテールデザインのダウンチューブ
フェンダーマウント以外にも、ステムのフェースプレートに挟み込むタイプのハンドルバーマウントや、シートポストヤグラと一体化したアクセサリーマウントなどが用意されている。GoPro規格を採用するため、豊富なオプションパーツに対応している。
あらゆるニーズに応える汎用性を有したニュースタンダードロードとして、サーヴェロが満を持して送り出すCaledonia。新シリーズの中でもボリュームゾーンとなる、ミドルモデルのアルテグラ完成車が今回のテストバイクだ。それではインプレッションに移ろう。
― インプレッション
「速く遠くへと走りに行きたいという、サイクリストの欲求にしっかり応えてくれる一台」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
走りに関してまったく妥協の無いエンデュランスバイクですね。いわゆるレーシングバイク的な加速やヒルクライム性能といった領域は、オールラウンドレーサーのRシリーズには一歩譲りますが、一定ペースでクルージングしている時の気持ち良さはCaledoniaに軍配が上がります。
「速く遠くへと走りに行きたいという、サイクリストの欲求にしっかり応えてくれる一台」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
一旦加速してしまえば、スピードを維持しやすいんですよ。加速にしても、スプリントやアタックのように、大トルク/大出力を短時間で掛けると若干の鈍さは感じるのですが、ペダリング自体はスムーズに繋いでいきやすい。それはしっかりと路面を掴んでいるからだと思います。
見るからにシートステーが細いRシリーズと比べると、かなり太めのチュービングなので乗り心地も硬そうに見えますよね。でも実際に乗ってみると正反対で、予想が良い意味で裏切られましたね。快適性が際立っていて、悪路を走ってみても全く不快感が無い。これには驚かされました。
ハンドル周りからの振動も、シート周りからの振動も等しくいなされているように感じます。30Cタイヤのポテンシャルもあるのでしょうが、フォークやドロップデザインのリアバックがしっかりと衝撃を吸収してくれていると思います。
「快適性が際立っていて、悪路を走ってみても全く不快感が無い」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
ハンドリングに関しても、直進安定性に優れた味付けですね。スパスパと切り返していくようなコーナーリングではなく、コーナー全体を使って曲がっていくように心がけると良いでしょう。走っていても気ぜわしさがまったくないので、ロングライドでも疲労が溜まりづらいでしょうね。
ポジションもエンデュランスバイクにありがちな極端にアップライトなものでは無く、しっかりと上半身も使ったポジションを取れるようになっているのは好印象ですよね。巡航性能の高さとそれを支えるトラクション性能、疲労の溜まりづらいハンドリングと振動吸収性が高いレベルでバランスしています。ロングライドやブルベといった過酷なライドのパートナーとして理想的な性格で、速く遠くへと走りに行きたいという、サイクリストの欲求にしっかり応えてくれる一台ですね。
「走りも良く、身体に優しく、荒れた道でも安心できるオールロード」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
結構、このバイクのコンセプトってわかりづらいと思うんですよね。最近はどのブランドもわかりやすいキャラクターをつけるじゃないですか。エアロ、ヒルクライム、グラベルetc……。でも、このバイクはそのどこにも当てはまらない。グラベルバイクよりも走りは軽いし、ピュアレーサーよりも圧倒的に懐が深い。エンデュランスバイクというのが一番近いのですが、よりオールラウンドな味付けなんですよね。
「走りも良く、身体に優しく、荒れた道でも安心できるオールロード」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ) 実際に乗ってみて、シンプルな感想としては「良いバイク」という一言になっちゃう(笑)。その良さというのが、本当に色々な要素が絡み合った結果生み出されたものなんですよね。このバイクを一番良く表している部分を挙げるならタイヤになるでしょうか。正直、30Cのタイヤというのはどうなんだろう、と乗る前には思っていたんですが、これが良いんですよね。
今回のテストコースでは結構交通量が多いところがあって、路肩に寄って走る必要があるのですが、30Cだと安心感が段違い。路肩って、荒れていたり砂利が浮いていたりすることが多いですが、気にせず走っていけます。それでいて、走り自体は意外に軽い。登りでも普通のロードと遜色無い走りが味わえます。
最近のグラベルバイクだとタイヤもどんどん太くなっていって、オフロードに大きく比重を置いているモデルが多いじゃないですか。このCaledoniaは、オンロードを重視したオールロードというのが一番しっくりくるかもしれませんね。
ピュアなレーシングバイクと比べると、加速への反応性や軽快感が薄めなのは否めません。硬質で打てば響く、というフィーリングでは無いのですが、イーブンペースを守って走っているのであれば平地でも登りでも良く走ってくれるんですよね。少なくとも、グラベルバイクにありがちな重さとか鈍さはなくて、しっかりとロードバイクらしい走りを楽しませてくれます。
一方で、乗り心地が非常に良いのもこのバイクの特徴です。フレーム自体もがっしりとした造りだし、ギミック的な振動吸収機構も無いにも関わらず、リアバックを中心にしっかりと突き上げを吸収してくれます。ちょっとグラベルっぽいところも走ってみたのですが、衝撃の角を丸めてくれて体へのダメージを抑えてくれるのが好印象です。ハンドリングも安定志向で、全体的に疲労が溜まりづらい乗り味に仕上がっています。
「衝撃の角を丸めてくれて体へのダメージを抑えてくれるのが好印象」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
今回のテストバイクではタイヤやホイールもエントリーグレードのものが付いてきていたので、そのあたりをアップグレードすると、また一段と洗練された走りが楽しめそうですね。あと、ワイヤリングが気になるのであれば、e-Tapに乗せ換えるというのも手ですね。
走りも良いし、身体にも優しくて、荒れた道でも安心感があるので、マイナーな峠を繋ぐようなロングライドを楽しむようなシーンにはうってつけのバイクですね。関東で言えば、奥武蔵なんかは荒れた峠も多いのでぴったりのフィールドだと思います。競技には興味がないけど、色んなところへ走りに行きたいという人にはぜひおススメしたい一台です。
サーヴェロ Caledonia (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
サーヴェロ Caledonia
カラー:Maroon/Red、Black/White、Indigo/Walnut
コンポーネント:ULTEGRA(Maroon/Red)、105(Black/White、Indigo/Walnut)
ホイール:DT Swiss E1850 23 Spline(Maroon/Red)、Alexrims Boondocks-5D(Black/White、Indigo/Walnut)
価格:
シマノULTEGRA完成車 435,000円(税抜)
シマノ105完成車 345,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ) 鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
CWレコメンドショップページ
成毛千尋(アルディナサイクラリー) 成毛千尋(アルディナサイクラリー)
東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
ウェア協力:アソス
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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ロードバイクが「ロードレーサー」と呼ばれていた時代から時は流れ、より多くのライドスタイルやコースに応じて細分化された現代。過去にはランドナーやスポルティフと呼ばれたであろうカテゴリーのバイクも取り込んだロードバイクというカテゴリーは、ますます先鋭化し、複雑さを増すばかりだ。
そんな中で、多くのバイクブランドは日々生み出されるカテゴリーに適合するニューバイクを開発し、世に送り出してきた。だが、今回紹介するサーヴェロのCaledoniaは、そんなロードバイク情勢に一石を投ずべく生み出された一台だ。
つまり、一台で「ロードバイク」的なるライドエクスペリエンスを網羅できるオールラウンドなバイクだということ。舗装路も、ちょっとした未舗装路も。登りも平坦も下りも妥協せず、長距離も難なくこなせ、ライバルとのアタック合戦もお手の物。現代のロードバイクに求められる能力の最大公約数を具現化したそのバイクを、サーヴェロは「モダンロード」と呼んだ。
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Caledoniaをモダンロードたらしめるのは、最新のトレンドを網羅したスペックによるもの。ピュアロードよりも幅広い最大35mmのタイヤクリアランス。クラシックレースすら走り切れるジオメトリー。フェンダー/アクセサリマウントによるグラベルロード並みの拡張性。
異なるカテゴリのエッセンスを抽出し、一台のバイクの中に破綻無くブレンドすることで、ダイバーシティ溢れる現代のロードバイカーたちの要望を余すところ無く受け止めるバーサタイルバイクとして完成したのがCaledoniaだ。
その性格はCaledoniaの生い立ちからも読み解ける。揺籃の地となったのは、トロントに本社を置くサーヴェロのスタッフたちが毎週開催する「サーズディ ナイトライド」。ハイスピードな展開でありながら、多種多様な路面が現れるこのライドを走るため、サーヴェロのスタッフが欲したのは、よりワイドなタイヤを履いたR5、もしくはより機敏なAsperoだった。それがCaledoniaの原点だ。
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バイクの性格に大きく影響するジオメトリから見てみよう。昨年パリ~ルーベを走ったR3に対して、Caledoniaは大きなBBドロップ、長めのリアセンター、増加したトレイル量を与えられ、より安定志向の設計となっている。3つの異なるオフセット量を持つフォークを用意することで、全サイズとも60mmというトレイル値を一貫させているのは、ハンドリングを重視していることの証左だろう。
舗装路はもちろん、クラシックレースに登場するパヴェやグラベルにおいても速さを発揮するためには、耐久性と軽量性、エアロダイナミクスを高レベルでバランスさせたフレームワークが求められる。
その難問に対し、サーヴェロはSシリーズのエアロチュービングとRシリーズの振動吸収性を融合させることで解答した。ライバルブランドが採用しているようなサスペンションやエラストマーといったギミックを使用していないため、重量もロードバイクとして標準的な数値に収まっている。
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ロードバイクとして欠かせない機敏な運動性能に直結するのが、フレームの剛性レベルだ。サーヴェロはグラベル用レースバイクのAsperoと同レベルの剛性をCaledoniaに与えている。現行R3の剛性感がパヴェにおいては過剰だというフィードバックをもとに、調整した結果なのだという。コンペティティブな走り方を主目的としない人にとっても、持て余さない剛性感に調整されているはずだ。
もう一つ、Caledoniaの大きな特徴となるのが高い拡張性だろう。シンプルで美しいフォルムを崩さないステルスフェンダーマウントは、雨天をものともせず走るアグレッシブなライダーにとって大きな魅力となるはずだ。
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フェンダーマウント以外にも、ステムのフェースプレートに挟み込むタイプのハンドルバーマウントや、シートポストヤグラと一体化したアクセサリーマウントなどが用意されている。GoPro規格を採用するため、豊富なオプションパーツに対応している。
あらゆるニーズに応える汎用性を有したニュースタンダードロードとして、サーヴェロが満を持して送り出すCaledonia。新シリーズの中でもボリュームゾーンとなる、ミドルモデルのアルテグラ完成車が今回のテストバイクだ。それではインプレッションに移ろう。
― インプレッション
「速く遠くへと走りに行きたいという、サイクリストの欲求にしっかり応えてくれる一台」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
走りに関してまったく妥協の無いエンデュランスバイクですね。いわゆるレーシングバイク的な加速やヒルクライム性能といった領域は、オールラウンドレーサーのRシリーズには一歩譲りますが、一定ペースでクルージングしている時の気持ち良さはCaledoniaに軍配が上がります。
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一旦加速してしまえば、スピードを維持しやすいんですよ。加速にしても、スプリントやアタックのように、大トルク/大出力を短時間で掛けると若干の鈍さは感じるのですが、ペダリング自体はスムーズに繋いでいきやすい。それはしっかりと路面を掴んでいるからだと思います。
見るからにシートステーが細いRシリーズと比べると、かなり太めのチュービングなので乗り心地も硬そうに見えますよね。でも実際に乗ってみると正反対で、予想が良い意味で裏切られましたね。快適性が際立っていて、悪路を走ってみても全く不快感が無い。これには驚かされました。
ハンドル周りからの振動も、シート周りからの振動も等しくいなされているように感じます。30Cタイヤのポテンシャルもあるのでしょうが、フォークやドロップデザインのリアバックがしっかりと衝撃を吸収してくれていると思います。
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ハンドリングに関しても、直進安定性に優れた味付けですね。スパスパと切り返していくようなコーナーリングではなく、コーナー全体を使って曲がっていくように心がけると良いでしょう。走っていても気ぜわしさがまったくないので、ロングライドでも疲労が溜まりづらいでしょうね。
ポジションもエンデュランスバイクにありがちな極端にアップライトなものでは無く、しっかりと上半身も使ったポジションを取れるようになっているのは好印象ですよね。巡航性能の高さとそれを支えるトラクション性能、疲労の溜まりづらいハンドリングと振動吸収性が高いレベルでバランスしています。ロングライドやブルベといった過酷なライドのパートナーとして理想的な性格で、速く遠くへと走りに行きたいという、サイクリストの欲求にしっかり応えてくれる一台ですね。
「走りも良く、身体に優しく、荒れた道でも安心できるオールロード」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
結構、このバイクのコンセプトってわかりづらいと思うんですよね。最近はどのブランドもわかりやすいキャラクターをつけるじゃないですか。エアロ、ヒルクライム、グラベルetc……。でも、このバイクはそのどこにも当てはまらない。グラベルバイクよりも走りは軽いし、ピュアレーサーよりも圧倒的に懐が深い。エンデュランスバイクというのが一番近いのですが、よりオールラウンドな味付けなんですよね。
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今回のテストコースでは結構交通量が多いところがあって、路肩に寄って走る必要があるのですが、30Cだと安心感が段違い。路肩って、荒れていたり砂利が浮いていたりすることが多いですが、気にせず走っていけます。それでいて、走り自体は意外に軽い。登りでも普通のロードと遜色無い走りが味わえます。
最近のグラベルバイクだとタイヤもどんどん太くなっていって、オフロードに大きく比重を置いているモデルが多いじゃないですか。このCaledoniaは、オンロードを重視したオールロードというのが一番しっくりくるかもしれませんね。
ピュアなレーシングバイクと比べると、加速への反応性や軽快感が薄めなのは否めません。硬質で打てば響く、というフィーリングでは無いのですが、イーブンペースを守って走っているのであれば平地でも登りでも良く走ってくれるんですよね。少なくとも、グラベルバイクにありがちな重さとか鈍さはなくて、しっかりとロードバイクらしい走りを楽しませてくれます。
一方で、乗り心地が非常に良いのもこのバイクの特徴です。フレーム自体もがっしりとした造りだし、ギミック的な振動吸収機構も無いにも関わらず、リアバックを中心にしっかりと突き上げを吸収してくれます。ちょっとグラベルっぽいところも走ってみたのですが、衝撃の角を丸めてくれて体へのダメージを抑えてくれるのが好印象です。ハンドリングも安定志向で、全体的に疲労が溜まりづらい乗り味に仕上がっています。
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今回のテストバイクではタイヤやホイールもエントリーグレードのものが付いてきていたので、そのあたりをアップグレードすると、また一段と洗練された走りが楽しめそうですね。あと、ワイヤリングが気になるのであれば、e-Tapに乗せ換えるというのも手ですね。
走りも良いし、身体にも優しくて、荒れた道でも安心感があるので、マイナーな峠を繋ぐようなロングライドを楽しむようなシーンにはうってつけのバイクですね。関東で言えば、奥武蔵なんかは荒れた峠も多いのでぴったりのフィールドだと思います。競技には興味がないけど、色んなところへ走りに行きたいという人にはぜひおススメしたい一台です。
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サーヴェロ Caledonia
カラー:Maroon/Red、Black/White、Indigo/Walnut
コンポーネント:ULTEGRA(Maroon/Red)、105(Black/White、Indigo/Walnut)
ホイール:DT Swiss E1850 23 Spline(Maroon/Red)、Alexrims Boondocks-5D(Black/White、Indigo/Walnut)
価格:
シマノULTEGRA完成車 435,000円(税抜)
シマノ105完成車 345,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
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埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
CWレコメンドショップページ
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東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
ウェア協力:アソス
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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