2020/01/27(月) - 13:06
世界選手権を1週間後に控えたUCIシクロクロスワールドカップ第9戦で、オランダのマチュー・ファンデルポール(アルペシン・フェニックス)とルシンダ・ブラント(テレネット・バロワーズ)が男子エリートレースで勝利。女子レースに出場した赤松綾(日本ナショナルチーム)は81位、男子U23織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は2分58秒差の32位でフルラップ完走している。
1週間後に迫った世界選手権に向けて緊張感を高める欧州シクロクロスサーキット。オランダ、ホーヘルハイデで開催されたUCIシクロクロスワールドカップ第9戦、通称「GPアドリファンデルポール」には、日本ナショナルチームをはじめ、最終調整に臨むスター選手たちがこぞって集結。大一番に向けての感触を確かめた。
60名弱がスタートボックスに入った男子エリートレース。ホーヘルハイデ名物の長い登坂ストレートでホールショットを奪ったのは、アルカンシエル防衛に期待が掛かるマチュー・ファンデルポール(オランダ、アルペシン・フェニックス)だった。
前日開催の「カスティールクロス(UCI.2)」でも圧勝したファンデルポールは続けざまに猛烈なペースを刻み、並み居るライバル勢を引き離していく。絶対王者に唯一食らいついたのはW杯ランキングリーダーのトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)で、ファンデルポールは1周回を完了した時点で一度ペースダウン。これによって後方から次々と選手たちが合流し、先頭集団はワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)を含む13名に膨れ上がった。
平均スピードが27km/hを超える超ハイスピードレースで、ロードレースのような大集団のままレースは展開した。時折エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)やアールツが様子見のペースアップを掛けるものの、マークの対象であるファンデルポールは動かず、集団が分裂することはなかった。
5周目に入ると「序盤、マチューについていけたのは自分だけ。先週よりも確実にコンディションは上がっているし良いサインだと感じた」と言うアールツが本格的なペースアップに打って出る。これによって集団が縦に引き伸ばされ、6周目に入るとアールツに代わって新ベルギー王者ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)がアタックを続行した。
しかし、そのスウィークやアールツを置き去りにしたのがファンデルポールだった。中盤まで隊列後方で静観していた世界王者は、ライバル勢のアタックを苦もなくフォローし、たった1発のアタックでリードを築き上げる。後方からはランキングポイントを争うアールツとイゼルビッドが2番手グループを作ったが、ファンデルポールとの差は1秒、また1秒と開いていった。
オランダファンの声援に後押しされながら、来週を見据えてハイペースを保ち続けたファンデルポール。王者の風格を漂わせながら4周半に渡る独走を終え、父親の名が冠されたワールドカップ最終戦で優勝を飾った。
「今日は知り合いがたくさん来てくれて、それが"エクストラ・ブースト"に繋がった」と言うファンデルポール。「素晴らしい週末になった。ここ数日は加速力を磨くトレーニングを重ねてきたし、今日は自分が世界選手権を狙う正しいレベルにあるということを確認できた」と付け加えている。
2位争いを制したのは40cmの2連シケインを毎周回バニーホップで飛び越え、最終周回にそこでアドバンテージを築き上げたアールツで、この結果でワールドカップランキング総合優勝を決定づけた。「今年はワールドカップで勝つことなく優勝する結果にはなったものの、コンスタントに成績を出せたので満足している」と語るアールツ。来週の世界選手権に関しては「まだほとんどの選手がコースを見ていないのでどんなレースになるかは分からない。それでも好調であることには変わりないし、天気予報では雨になりそうだ。苦手な雪や氷ではなさそうなので楽しみにしているよ」とコメントを残した。
群雄割拠の女子エリートレースに参加したのは83名。U23世界王者のインゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、CCC・リブ)がホールショットを取り、アンマリー・ワースト(オランダ、777)や、ワールドカップランキング首位のセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)、ルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ)といった強豪オランダ勢がその後ろに続く。世界選手権を見据える赤松綾(日本ナショナルチーム)は混戦の隊列後方からスタートを切った。
決まり手に欠くコースレイアウトゆえ、男子と同じくレース先頭は大集団のまま進んだ。オランダ勢に割って入ったのはベテランのケイティ・コンプトン(アメリカ、トレック・ナイトコンポジット)とイヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシングCX)で、世界選手権4連覇が危ぶまれるサンヌ・カント(ベルギー、IKO・コレンドン)がその後ろ。全6周回中の3周目には欧州王者ヤラ・カステリン(オランダ、777)が、続いてリチャーズがペースアップしたことで先頭集団は6,7名に絞られた。
激しい展開の中、高低差のあるキャンバーでブラントが前転するアクシデントがあったものの、問題なく先頭集団復帰に成功。ワースト、アルバラード、ブラント、カステリン、リチャーズ、そしてカントという6名が一塊のまま5周目を完了すると、最終周回突入と同時にブラントが目覚ましいアタックを繰り出した。
最もスプリント力に秀でるブラントに追従したのはワーストとアルバラード。長い階段区間を終え、テクニカルなキャンバーに向かうタイミングでブラントが加速に手間取り、好機と捉えたアルバラードがすかさず先頭に立ってキャンバー区間へ。しかしアルバラードは轍の凹凸に前輪を取られ前転滑落してしまう。まさかのアクシデントで勝機を失ったアルバラードは後方に続いた選手たちに抜かれ、ワールドカップランキングリーダーの座をも取りこぼしてしまう結果となった。
先頭に立ったブラントはワーストの追従を許さずフィニッシュラインへ。今シーズンの勝率でライバルを上回っているブラントが母国オランダファンの前でドラマチックな勝利を飾り、2位にはワースト。初の海外レースに挑んだ赤松は81位に終わった。
また、ワールドカップランキングでは6位に終わったアルバラードに代わり、ワールドカップ出場7戦中3勝を飾ったワーストが総合優勝。失意のアルバラードが2位、アメリカでの開幕2連戦でポイントを稼いだカテリーナ・ナッシュ(チェコ、クリフプロチーム)が3位に入った。
また、U23オランダナショナルチャンピオンのライアン・カンプ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が勝利した男子U23レースでは、1周目のピットを過ぎてから集団前方で起きた集団落車に巻き込まれながらも、「一人にならないようにパックで走り、前の選手に追いつくことを意識した」と言う織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が先頭から2分58秒差の32位でフルラップ完走。「ロードレース活動が役立っていると感じています。今回のレースは自分的には良かったと思います」と好感触を掴んでいると言う。
1週間後に迫った世界選手権に向けて緊張感を高める欧州シクロクロスサーキット。オランダ、ホーヘルハイデで開催されたUCIシクロクロスワールドカップ第9戦、通称「GPアドリファンデルポール」には、日本ナショナルチームをはじめ、最終調整に臨むスター選手たちがこぞって集結。大一番に向けての感触を確かめた。
60名弱がスタートボックスに入った男子エリートレース。ホーヘルハイデ名物の長い登坂ストレートでホールショットを奪ったのは、アルカンシエル防衛に期待が掛かるマチュー・ファンデルポール(オランダ、アルペシン・フェニックス)だった。
前日開催の「カスティールクロス(UCI.2)」でも圧勝したファンデルポールは続けざまに猛烈なペースを刻み、並み居るライバル勢を引き離していく。絶対王者に唯一食らいついたのはW杯ランキングリーダーのトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)で、ファンデルポールは1周回を完了した時点で一度ペースダウン。これによって後方から次々と選手たちが合流し、先頭集団はワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)を含む13名に膨れ上がった。
平均スピードが27km/hを超える超ハイスピードレースで、ロードレースのような大集団のままレースは展開した。時折エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)やアールツが様子見のペースアップを掛けるものの、マークの対象であるファンデルポールは動かず、集団が分裂することはなかった。
5周目に入ると「序盤、マチューについていけたのは自分だけ。先週よりも確実にコンディションは上がっているし良いサインだと感じた」と言うアールツが本格的なペースアップに打って出る。これによって集団が縦に引き伸ばされ、6周目に入るとアールツに代わって新ベルギー王者ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)がアタックを続行した。
しかし、そのスウィークやアールツを置き去りにしたのがファンデルポールだった。中盤まで隊列後方で静観していた世界王者は、ライバル勢のアタックを苦もなくフォローし、たった1発のアタックでリードを築き上げる。後方からはランキングポイントを争うアールツとイゼルビッドが2番手グループを作ったが、ファンデルポールとの差は1秒、また1秒と開いていった。
オランダファンの声援に後押しされながら、来週を見据えてハイペースを保ち続けたファンデルポール。王者の風格を漂わせながら4周半に渡る独走を終え、父親の名が冠されたワールドカップ最終戦で優勝を飾った。
「今日は知り合いがたくさん来てくれて、それが"エクストラ・ブースト"に繋がった」と言うファンデルポール。「素晴らしい週末になった。ここ数日は加速力を磨くトレーニングを重ねてきたし、今日は自分が世界選手権を狙う正しいレベルにあるということを確認できた」と付け加えている。
2位争いを制したのは40cmの2連シケインを毎周回バニーホップで飛び越え、最終周回にそこでアドバンテージを築き上げたアールツで、この結果でワールドカップランキング総合優勝を決定づけた。「今年はワールドカップで勝つことなく優勝する結果にはなったものの、コンスタントに成績を出せたので満足している」と語るアールツ。来週の世界選手権に関しては「まだほとんどの選手がコースを見ていないのでどんなレースになるかは分からない。それでも好調であることには変わりないし、天気予報では雨になりそうだ。苦手な雪や氷ではなさそうなので楽しみにしているよ」とコメントを残した。
群雄割拠の女子エリートレースに参加したのは83名。U23世界王者のインゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、CCC・リブ)がホールショットを取り、アンマリー・ワースト(オランダ、777)や、ワールドカップランキング首位のセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)、ルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ)といった強豪オランダ勢がその後ろに続く。世界選手権を見据える赤松綾(日本ナショナルチーム)は混戦の隊列後方からスタートを切った。
決まり手に欠くコースレイアウトゆえ、男子と同じくレース先頭は大集団のまま進んだ。オランダ勢に割って入ったのはベテランのケイティ・コンプトン(アメリカ、トレック・ナイトコンポジット)とイヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシングCX)で、世界選手権4連覇が危ぶまれるサンヌ・カント(ベルギー、IKO・コレンドン)がその後ろ。全6周回中の3周目には欧州王者ヤラ・カステリン(オランダ、777)が、続いてリチャーズがペースアップしたことで先頭集団は6,7名に絞られた。
激しい展開の中、高低差のあるキャンバーでブラントが前転するアクシデントがあったものの、問題なく先頭集団復帰に成功。ワースト、アルバラード、ブラント、カステリン、リチャーズ、そしてカントという6名が一塊のまま5周目を完了すると、最終周回突入と同時にブラントが目覚ましいアタックを繰り出した。
最もスプリント力に秀でるブラントに追従したのはワーストとアルバラード。長い階段区間を終え、テクニカルなキャンバーに向かうタイミングでブラントが加速に手間取り、好機と捉えたアルバラードがすかさず先頭に立ってキャンバー区間へ。しかしアルバラードは轍の凹凸に前輪を取られ前転滑落してしまう。まさかのアクシデントで勝機を失ったアルバラードは後方に続いた選手たちに抜かれ、ワールドカップランキングリーダーの座をも取りこぼしてしまう結果となった。
先頭に立ったブラントはワーストの追従を許さずフィニッシュラインへ。今シーズンの勝率でライバルを上回っているブラントが母国オランダファンの前でドラマチックな勝利を飾り、2位にはワースト。初の海外レースに挑んだ赤松は81位に終わった。
また、ワールドカップランキングでは6位に終わったアルバラードに代わり、ワールドカップ出場7戦中3勝を飾ったワーストが総合優勝。失意のアルバラードが2位、アメリカでの開幕2連戦でポイントを稼いだカテリーナ・ナッシュ(チェコ、クリフプロチーム)が3位に入った。
また、U23オランダナショナルチャンピオンのライアン・カンプ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が勝利した男子U23レースでは、1周目のピットを過ぎてから集団前方で起きた集団落車に巻き込まれながらも、「一人にならないようにパックで走り、前の選手に追いつくことを意識した」と言う織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が先頭から2分58秒差の32位でフルラップ完走。「ロードレース活動が役立っていると感じています。今回のレースは自分的には良かったと思います」と好感触を掴んでいると言う。
男子エリート結果
1位 | マチュー・ファンデルポール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 1:04:39 |
2位 | トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ) | 0:38 |
3位 | エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 0:40 |
4位 | マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 0:49 |
5位 | ティム・メルリエ(ベルギー、クレアフィン・フリスタッズ) | 0:50 |
6位 | ラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・バロワーズ) | |
7位 | トーマス・ピッドコック(イギリス、トリニティレーシング) | 0:52 |
8位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | 0:53 |
9位 | ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 0:59 |
10位 | コルヌ・ファンケッセル(オランダ、トルマンス・シクロクロスチーム) | 1:05 |
女子レース結果
1位 | ルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ) | 45:11 |
2位 | アンマリー・ワースト(オランダ、777) | 0:03 |
3位 | サンヌ・カント(ベルギー、IKO・コレンドン) | 0:04 |
4位 | ヤラ・カステリン(オランダ、777) | 0:05 |
5位 | イヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシングCX) | 0:10 |
6位 | セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス) | 0:17 |
7位 | シリン・ファンアンローイ(オランダ) | 0:26 |
8位 | マーガリー・ロシェット(カナダ、スペシャライズド・フィードバック) | 0:29 |
9位 | インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、CCC・リブ) | 0:44 |
10位 | ラウラ・フェルドンショット(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | |
81位 | 赤松綾(日本ナショナルチーム) | LAP |
男子U23
1位 | ライアン・カンプ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 47:15 |
2位 | アントワン・ブノワ(フランス、アルペシン・フェニックス) | 0:08 |
3位 | ニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | 0:11 |
32位 | 織田聖(日本ナショナルチーム) | 2:58 |
text:So.Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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