2019/12/13(金) - 12:10
世界最大のバイシクルレーシングタイヤメーカー、ヴィットリアがリリースするMTBクロスカントリータイヤ2種をインプレッション。今春コンパウンドをグラフェン2.0にアップデートし、性能を引き上げたトレイル&XCレースタイヤだ。
バイシクルタイヤのリーディングブランド、イタリアのヴィットリア。ロードレースでスタンダードとなっているCORSAシリーズはもとより、自社製品以外のスポーツバイシクル用タイヤブランドの製品もOEM生産するなど、その技術力と規模で世界最大のバイシクルレーシングタイヤメーカーとなっている。
同社がグラフェンを含有するコンパウンドによってレーシングタイヤのラインアップを大幅刷新したのが2015年。それから3年余を経て今春「グラフェン2.0」と銘打った進化版の第2世代のコンパウンドを発表。ロードタイヤ、MTBタイヤのハイエンドラインナップを再びアップデートした。
MTB用タイヤとしては2014年8月まで「GEAX」のブランド名で展開していたため新興のイメージを受けてしまうが、MTBタイヤ部門でも長く定評あるスポーツライド用タイヤを生産してきた実績がある。
今回紹介するヴィットリアのBARZOとMEZCALは、おそらく日本のクロスカントリーレースやトレイルライドに適した代表的なマウンテンバイク用タイヤだ。新モデルとなって日本のXCレーサーにも急速にシェアを伸ばしており、今注目のタイヤだと言えるだろう。
ヴィットリアが第2世代の「グラフェン2.0」と銘打つコンパウンドの進化は、ロードレース用タイヤの世界でさらにヴィットリアの地位を確実なものにした。G2.0によりスピード、ウェット時のグリップ、耐久性、耐パンク性など、特に狙ったパフォーマンスごとに性能を向上させることが可能になり、よりキャラクターの明快な製品づくりが可能になったという。
オフロードを走るMTBタイヤにおいては、転がり抵抗やグリップは路面や地形の影響を大きく受けるため数値化しにくい性能となるが、G2.0採用タイヤでは従来製品との比較でとくにウェット時のグリップや耐カット性、空気保持性を向上させているという。
また、4つのコンパウンドから構成される「4Cテクノロジー」も技術的な核となる。トレッドのセンター、サイド、ショルダー部あるいは表層部、ベース部、MTBタイヤならノブの芯や表層部において、適材適所で異なるコンパウンドをレイヤリング(重ね合わせ)し、性能を追求する。ヴィットリアは世界で唯一、4種類のコンパウンドをひとつのタイヤトレッドにミックスして用いるメーカーだ。
今回インプレッションするMEZCALとBARZOは、クロスカントリーレースおよびトレイルライドに適した代表的モデル。ノブが低く連続的なパターンで走行抵抗が少なく、ハイスピードな走行に向くMEZCAL。そしてノブが立ち、ウェットとドライ路面をバランス良くこなすBARZO。しなやかな120TPIナイロンケーシングで、TLR=チューブレスレディ構造だ。
そのそれぞれに、軽さを追求したレース用である XC-RACE TLRモデルと、サイドウォールに保護のレイヤーを追加してサイドカットに強いトレイルライド用の XC-TRAIL TNTモデルから選べる。両モデルを長期インプレッションした
BARZO
BARZO G2.0 29 2.25 TLR
660g 7,300円(税別)
29インチのXC用フルサスモデル(スコットSPARK RC、ホイールはDT X1700)にセットしてテスト。チューブレスレディのためヴィットリアのPIT STOPシーラントを使用した。その組み合わせでセルフディスカバリーチャレンジ王滝にも出場し、完走することができた。太さ2.25のTLRモデルということで、サイドプロテクションレイヤー無しの軽量クロスカントリーレースモデルの位置づけだ。ノブが適度に張り出しており、コーナリンググリップが高い。王滝のような土と土砂のザレ、大きめの石や岩でガレた林道にも対応できるオールラウンドなレーシングタイヤだ。
ケーシングがしなやかなことが大きな特徴で、サスペンションのストロークが小さなモデル(100mm)などでもサスペンション代わりとなるようなショック吸収性の良さがあるのがヴィットリアのXCタイヤの魅力だ。サイドがしなることで路面に食いつくため、とくにハードパック路面では効果を発揮してくれる印象。
小さめのブロックが配置されるトレッドで、センターにはエッジが効いたハイスピード・トレイルタイヤだ。逆V字型の溝によって土や泥がスムーズに除去されるため少しウェット&マッドな路面にも対応できる、日本の土質にあったタイヤだ。
重量は29インチ・2.25で660gと軽量。もし岩などによるサイドカットが心配なら保護プロテクションレイヤーがサイドに内蔵されたTNTモデルを使用するのが使用するのが良いだろう。その場合は同じ太さなら+20gの680gとなる(カラーはAnthraciteとなる)。
MEZCAL
MEZCAL G2.0 27.5x2.25 TNT
670g 7,300円(税別)
MEZCAL は、かつてGEAXブランド時代の「Saguaro」というモデルからそのトレッドを踏襲しているモデルだ。 27.5x2.25 TNTをチョイスし、ハードテイルのXCモデル(アンカーXC-9、ホイールはXTR)にセットして使用。
日本で人気が高いMEZCALは、小さく低いノブが連続的に刻まれるレーシングタイヤだ。交互ながらも繋がって配置されたセンターリッジにより転がり抵抗が非常に低く、林道やジープロードなど直線的に走るシーンでは非常に速く走れるハイスピードモデルだ。しなやかなタイヤサイドでグリップする印象で、上りのトラクションも低いノブの割によく掛かる印象。しかしノブの高さが低いため、ソフトな土系のトレイルなどでサイドグリップを稼ぎたいときには、ノブが刺さらず、エッジを利かす走りには物足りない印象だ。
空気量が活かせるシーンではその全体のしなやかさのおかげで快適に走ることができる。また、ノブによるトレイルへのダメージが少ないため、トレイルにインパクトの少ない走り方を心がけている人には良い選択だろう。またこちらのモデルはタイヤサイドに保護レイヤーを内蔵したTNTモデルにしてみたが、ややサイドにコシが出て、低圧でもヨレない印象がある。カタログ重量ではTLRモデルに比べて+10gの重量差。ジープロードでのマラソン系の走り、つまりSDA王滝などには走行抵抗の少なさが大きな武器になるタイヤだ。
BARZOとMEZCALの使い分けでは、よりアグレッシブなBARZOに対し、走行抵抗が低く転り重視なのがMEZCALとすれば、XCレースで前輪にBARZO、後輪にMEZCALというのも組み合わせの一例だ。両モデルともTLR、TNTほかサイズも多くラインナップされるため自分に適したモデルを選んで欲しい。
数種のタイヤを路面コンディションにあわせて使いこなすXCレーサーになれば、より転がり抵抗の少ないハードパック向けの「PEYOTE」、「TERRENO」、反対にトレイル向けでウェットにも強い「GATO」という選択肢もある。
また、今年からヴィットリアは今期からCJシリーズなどレースの現場でタイヤサポートのブースを展開しているため、レース派の選手は会場で同サービスを受けることができ、いざというときにも安心できると好評だ。
photo&text:Makoto.AYANO
バイシクルタイヤのリーディングブランド、イタリアのヴィットリア。ロードレースでスタンダードとなっているCORSAシリーズはもとより、自社製品以外のスポーツバイシクル用タイヤブランドの製品もOEM生産するなど、その技術力と規模で世界最大のバイシクルレーシングタイヤメーカーとなっている。
同社がグラフェンを含有するコンパウンドによってレーシングタイヤのラインアップを大幅刷新したのが2015年。それから3年余を経て今春「グラフェン2.0」と銘打った進化版の第2世代のコンパウンドを発表。ロードタイヤ、MTBタイヤのハイエンドラインナップを再びアップデートした。
MTB用タイヤとしては2014年8月まで「GEAX」のブランド名で展開していたため新興のイメージを受けてしまうが、MTBタイヤ部門でも長く定評あるスポーツライド用タイヤを生産してきた実績がある。
今回紹介するヴィットリアのBARZOとMEZCALは、おそらく日本のクロスカントリーレースやトレイルライドに適した代表的なマウンテンバイク用タイヤだ。新モデルとなって日本のXCレーサーにも急速にシェアを伸ばしており、今注目のタイヤだと言えるだろう。
ヴィットリアが第2世代の「グラフェン2.0」と銘打つコンパウンドの進化は、ロードレース用タイヤの世界でさらにヴィットリアの地位を確実なものにした。G2.0によりスピード、ウェット時のグリップ、耐久性、耐パンク性など、特に狙ったパフォーマンスごとに性能を向上させることが可能になり、よりキャラクターの明快な製品づくりが可能になったという。
オフロードを走るMTBタイヤにおいては、転がり抵抗やグリップは路面や地形の影響を大きく受けるため数値化しにくい性能となるが、G2.0採用タイヤでは従来製品との比較でとくにウェット時のグリップや耐カット性、空気保持性を向上させているという。
また、4つのコンパウンドから構成される「4Cテクノロジー」も技術的な核となる。トレッドのセンター、サイド、ショルダー部あるいは表層部、ベース部、MTBタイヤならノブの芯や表層部において、適材適所で異なるコンパウンドをレイヤリング(重ね合わせ)し、性能を追求する。ヴィットリアは世界で唯一、4種類のコンパウンドをひとつのタイヤトレッドにミックスして用いるメーカーだ。
今回インプレッションするMEZCALとBARZOは、クロスカントリーレースおよびトレイルライドに適した代表的モデル。ノブが低く連続的なパターンで走行抵抗が少なく、ハイスピードな走行に向くMEZCAL。そしてノブが立ち、ウェットとドライ路面をバランス良くこなすBARZO。しなやかな120TPIナイロンケーシングで、TLR=チューブレスレディ構造だ。
そのそれぞれに、軽さを追求したレース用である XC-RACE TLRモデルと、サイドウォールに保護のレイヤーを追加してサイドカットに強いトレイルライド用の XC-TRAIL TNTモデルから選べる。両モデルを長期インプレッションした
BARZO
BARZO G2.0 29 2.25 TLR
660g 7,300円(税別)
29インチのXC用フルサスモデル(スコットSPARK RC、ホイールはDT X1700)にセットしてテスト。チューブレスレディのためヴィットリアのPIT STOPシーラントを使用した。その組み合わせでセルフディスカバリーチャレンジ王滝にも出場し、完走することができた。太さ2.25のTLRモデルということで、サイドプロテクションレイヤー無しの軽量クロスカントリーレースモデルの位置づけだ。ノブが適度に張り出しており、コーナリンググリップが高い。王滝のような土と土砂のザレ、大きめの石や岩でガレた林道にも対応できるオールラウンドなレーシングタイヤだ。
ケーシングがしなやかなことが大きな特徴で、サスペンションのストロークが小さなモデル(100mm)などでもサスペンション代わりとなるようなショック吸収性の良さがあるのがヴィットリアのXCタイヤの魅力だ。サイドがしなることで路面に食いつくため、とくにハードパック路面では効果を発揮してくれる印象。
小さめのブロックが配置されるトレッドで、センターにはエッジが効いたハイスピード・トレイルタイヤだ。逆V字型の溝によって土や泥がスムーズに除去されるため少しウェット&マッドな路面にも対応できる、日本の土質にあったタイヤだ。
重量は29インチ・2.25で660gと軽量。もし岩などによるサイドカットが心配なら保護プロテクションレイヤーがサイドに内蔵されたTNTモデルを使用するのが使用するのが良いだろう。その場合は同じ太さなら+20gの680gとなる(カラーはAnthraciteとなる)。
MEZCAL
MEZCAL G2.0 27.5x2.25 TNT
670g 7,300円(税別)
MEZCAL は、かつてGEAXブランド時代の「Saguaro」というモデルからそのトレッドを踏襲しているモデルだ。 27.5x2.25 TNTをチョイスし、ハードテイルのXCモデル(アンカーXC-9、ホイールはXTR)にセットして使用。
日本で人気が高いMEZCALは、小さく低いノブが連続的に刻まれるレーシングタイヤだ。交互ながらも繋がって配置されたセンターリッジにより転がり抵抗が非常に低く、林道やジープロードなど直線的に走るシーンでは非常に速く走れるハイスピードモデルだ。しなやかなタイヤサイドでグリップする印象で、上りのトラクションも低いノブの割によく掛かる印象。しかしノブの高さが低いため、ソフトな土系のトレイルなどでサイドグリップを稼ぎたいときには、ノブが刺さらず、エッジを利かす走りには物足りない印象だ。
空気量が活かせるシーンではその全体のしなやかさのおかげで快適に走ることができる。また、ノブによるトレイルへのダメージが少ないため、トレイルにインパクトの少ない走り方を心がけている人には良い選択だろう。またこちらのモデルはタイヤサイドに保護レイヤーを内蔵したTNTモデルにしてみたが、ややサイドにコシが出て、低圧でもヨレない印象がある。カタログ重量ではTLRモデルに比べて+10gの重量差。ジープロードでのマラソン系の走り、つまりSDA王滝などには走行抵抗の少なさが大きな武器になるタイヤだ。
BARZOとMEZCALの使い分けでは、よりアグレッシブなBARZOに対し、走行抵抗が低く転り重視なのがMEZCALとすれば、XCレースで前輪にBARZO、後輪にMEZCALというのも組み合わせの一例だ。両モデルともTLR、TNTほかサイズも多くラインナップされるため自分に適したモデルを選んで欲しい。
数種のタイヤを路面コンディションにあわせて使いこなすXCレーサーになれば、より転がり抵抗の少ないハードパック向けの「PEYOTE」、「TERRENO」、反対にトレイル向けでウェットにも強い「GATO」という選択肢もある。
また、今年からヴィットリアは今期からCJシリーズなどレースの現場でタイヤサポートのブースを展開しているため、レース派の選手は会場で同サービスを受けることができ、いざというときにも安心できると好評だ。
photo&text:Makoto.AYANO
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