5月9日、ジロ第2ステージはレース後半に落車が相次ぎ、マリアローザのウィギンズなど多くの選手が影響を受けた。スプリントを制したのはタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)。マリアローザはカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)の手に渡った。

オランダ風車を横目に見ながら走る集団オランダ風車を横目に見ながら走る集団 (c)CorVos

スタートして行く新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)スタートして行く新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Kei Tsujiジロ・デ・イタリア2010第2ステージは、首都アムステルダムを出発し、郊外のオランダ第4の都市ユトレヒトに至る210kmで争われた。

コースプロフィールはほぼ平坦で、中盤に2つの3級山岳が登場するが、いずれも標高が100mに満たない小さな丘。しかしこの2つに山岳ポイントが設定され、ここでポイントを獲得すればマリアヴェルデ(山岳賞ジャージ)を獲得することができるため、ステージ中盤まではマリアヴェルデ争いに注目が集まった。

山岳ポイントは、88.7km地点のカテゴリー3 「Kaapse Bossen」(標高49m)、100.5km地点のカテゴリー3「Amerongse Bos」(標高70m)だ。

オランダならではの曲がりくねったコースを進むオランダならではの曲がりくねったコースを進む photo:Kei Tsuji天候は第1ステージとほぼ同じような曇空で、時折小雨がぱらつく。コースは曲がりくねって設定され、オランダ特有雨の横風が吹けば難しいステージになることが予想された。しかしこの日の風は幸いにして弱め。

スタート早々にアタックが成功し、4人の逃げが形成された。
逃げたのはマウロ・ファッチ(イタリア、クイックステップ)、ポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)、ステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)、 リック・フレンス(オランダ、ラボバンク)の4人。集団に約5分の差をつけて逃げる。

3人は2つある山岳ポイントも逃げたまま通過。2つの山岳通過順位で、ひとつめはピラッツィ。ふたつめをヴォスが先頭通過し、フレンスを入れて3人の獲得ポイントが並んでしまった。

序盤から逃げグループを形成したステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)やリック・フレンス(オランダ、ラボバンク)序盤から逃げグループを形成したステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)やリック・フレンス(オランダ、ラボバンク) photo:Kei Tsujiこの日のコースの道幅は狭く、曲がりくねって森の中、住宅地を縫うように抜けて行く。まるでアルデンヌクラシックに似ていた。そして残り60kmを過ぎて、集団がナーバスになり始めた頃から落車が頻発するようになる。

運河沿いにつけられた道には中央分離帯、路肩の避難帯、車線を定めるレーンが至る所にあり、大集団で走る選手たちを困惑させたようだ。20人、30人規模の落車が頻発し、影響を受ける選手が続々と出る。

残り50km、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)が中央分離帯に乗り上げて転倒した。優勝候補のスプリンターの落車に、チームメイト4人がアシストして集団へと引き戻す。ロスは9kmだ。

残り50km地点で落車した タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)残り50km地点で落車した タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) (c)CorVosファラーが無事集団復帰を果たした直後、今度は20~30人が転倒する大規模落車が集団で発生。これにはマリアローザのブラドレー・ウィギンズ(イギリス)も含まれた。ウィギンズにもほぼ全員のチームメイトがアシストにつき、集団復帰を試みる。「リーダージャージが落車した際にはアタックしない」というプロトン内の暗黙のルールにより、ペースを落とす集団。

ウィギンズとチームスカイのメンバーは無事集団に戻た。しかし、落車はそれだけで終わらなかった。


頻発する落車で分断した集団。マリアローザが遅れる


チームスカイがウィギンズを守るために集団先頭に集結チームスカイがウィギンズを守るために集団先頭に集結 (c)CorVos前を逃げる4人からファッチが脱落し、3人に。この3人の協調もゴールまで残り32kmのところで崩れだす。苛立を隠さないリック・フレンス(オランダ、ラボバンク)に業を煮やしたポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)がアタックし、独走を図る。しかしフレンスが追いつき、今度は逆にアタック。協調が崩れ、もはや走りはバラバラに。逃げはユトレヒト市街に入って残り23kmで吸収される。

残り20kmからはウィギンズのマリアローザを護るためにチームスカイが集団の先頭を固めて走る。チームスカイはゴールスプリントも狙っている。


集団内で落車が頻発!集団内で落車が頻発! (c)CorVos残り7kmで再び30人規模の大落車が起こる。フィリッポ・ポッツァート(イタリア)が道端に横たわる。集団はこれで細かく分断され、バラバラに。そして影響を受けなかった選手による先頭集団も40人ほどと大きく人数を減じた。チームBMCレーシングの選手も多く、このなかには総合2位の ブレント・ブックウォルター(アメリカ,BMCレーシングチーム)も巻き込まれた。

ダミアーノ・クネゴ(イタリア)も落車の影響を受け、集団から大きく取り残される。そしてラスト5kmでまた数人の落車が発生。コース上で停り機材交換や救護をするチームカーで路上は混沌とした状況になる。


負傷した選手が続出。ドクターカーから治療を行う負傷した選手が続出。ドクターカーから治療を行う (c)CorVos分断した集団の、第2グループにマリアローザのウィギンズも取り残されてしまう。ゴールまでの残りの距離が短く、もはや先頭集団復帰が難しい。そして日本の 新城幸也(Bboxブイグテレコム)も、このグループに。

ラスト4,5kmも5つのカーブが連続し、道路幅が1車線ほどに狭くなる。そしてゴール前225mで大きく右にコーナーを曲がるというテクニカルなもの。

混沌としたゴールスプリント争いで強いチームワークを見せたのはガーミン・トランジションズだ。
先頭でゴールに向かうタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、ジュリアン・ディーン(ニュージーランド)が手を挙げる先頭でゴールに向かうタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、ジュリアン・ディーン(ニュージーランド)が手を挙げる photo:Kei Tsujiクリストファー・サットン(オーストラリア)が先行するが、デーヴィッド・ミラー、ジュリアン・ディーン、ムリロ・フィッシャーがタイラー・ファラーを牽引して引き上げ、解き放つ。対してテクニカルコーナーに封じられたのはグライペルやマキュアンら。

ファラーは力強いスプリントで伸びを見せ、自身初となるジロのステージ優勝を飾った。

個人総合1位のウィギンズと総合2位のブックウォルターが遅れる一方で、前方集団に残っていたのはカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)。結果、エヴァンスは2002年ジロ以来のマリアローザに袖を通すことになった。エヴァンスとファラーの総合タイム差はわずか1秒。


チームメイトと喜びを分かち合うタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)チームメイトと喜びを分かち合うタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) (c)CorVosエヴァンスがマリアローザを着たのはマペイに所属した2002年。当時エヴァンスはマウンテンバイクをバックグラウンドに持つロード歴2年のアシスト選手で、ジロ初出場だった。ステファノ・ガルゼッリのアシストとして当時もオランダ・フローニンゲンをスタートしたジロを走ったが、第16ステージで総合首位に立ちマリアローザを着た。
しかしドロミテ山岳でハンガーノックに見舞われ、17分のタイムロスを喫して一気に転落してしまった。それから8年越しに出場した2回目のジロで、再びピンクに身を包むことになった。

度重なる落車の影響を受けた新城幸也はウィギンズと同じ+37秒遅れの集団でフィニッシュ。ステージ98位、個人総合では1分17秒遅れの102位だ。


喜びの表情を浮かべてマリアローザのジッパーを上げるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)喜びの表情を浮かべてマリアローザのジッパーを上げるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsuji
ジロ・デ・イタリア2010第2ステージ結果

1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)  4h56'46"
2位 マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTCコロンビア)
3位 ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス・ドイモ)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTCコロンビア)
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)
6位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)
7位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
8位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、 ラボバンク)

マリアローザ 個人総合成績
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)    5h07'09"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)  +01"
3位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)    +03"
4位 リッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)       +03"
5位 デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・トランジションズ) +04"
6位 ヨス・ファンエムデン(オランダ、ラボバンク)         +07"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・ドイモ)  +08"
8位 トム・スタムスニデル(オランダ、ラボバンク)         +09"


ポイント賞 マリアロッサ
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)

山岳賞 マリアヴェルデ
ポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)

新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)

チーム総合成績
サクソバンク

敢闘賞
ポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)

フーガ(逃げ)賞
リック・フレンス(オランダ、ラボバンク)

text:Makoto.AYANO
photo:Kei.Tsuji,CorVos

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