2010/05/10(月) - 10:06
5月9日、ジロ第2ステージはレース後半に落車が相次ぎ、マリアローザのウィギンズなど多くの選手が影響を受けた。スプリントを制したのはタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)。マリアローザはカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)の手に渡った。
ジロ・デ・イタリア2010第2ステージは、首都アムステルダムを出発し、郊外のオランダ第4の都市ユトレヒトに至る210kmで争われた。
コースプロフィールはほぼ平坦で、中盤に2つの3級山岳が登場するが、いずれも標高が100mに満たない小さな丘。しかしこの2つに山岳ポイントが設定され、ここでポイントを獲得すればマリアヴェルデ(山岳賞ジャージ)を獲得することができるため、ステージ中盤まではマリアヴェルデ争いに注目が集まった。
山岳ポイントは、88.7km地点のカテゴリー3 「Kaapse Bossen」(標高49m)、100.5km地点のカテゴリー3「Amerongse Bos」(標高70m)だ。
天候は第1ステージとほぼ同じような曇空で、時折小雨がぱらつく。コースは曲がりくねって設定され、オランダ特有雨の横風が吹けば難しいステージになることが予想された。しかしこの日の風は幸いにして弱め。
スタート早々にアタックが成功し、4人の逃げが形成された。
逃げたのはマウロ・ファッチ(イタリア、クイックステップ)、ポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)、ステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)、 リック・フレンス(オランダ、ラボバンク)の4人。集団に約5分の差をつけて逃げる。
3人は2つある山岳ポイントも逃げたまま通過。2つの山岳通過順位で、ひとつめはピラッツィ。ふたつめをヴォスが先頭通過し、フレンスを入れて3人の獲得ポイントが並んでしまった。
この日のコースの道幅は狭く、曲がりくねって森の中、住宅地を縫うように抜けて行く。まるでアルデンヌクラシックに似ていた。そして残り60kmを過ぎて、集団がナーバスになり始めた頃から落車が頻発するようになる。
運河沿いにつけられた道には中央分離帯、路肩の避難帯、車線を定めるレーンが至る所にあり、大集団で走る選手たちを困惑させたようだ。20人、30人規模の落車が頻発し、影響を受ける選手が続々と出る。
残り50km、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)が中央分離帯に乗り上げて転倒した。優勝候補のスプリンターの落車に、チームメイト4人がアシストして集団へと引き戻す。ロスは9kmだ。
ファラーが無事集団復帰を果たした直後、今度は20~30人が転倒する大規模落車が集団で発生。これにはマリアローザのブラドレー・ウィギンズ(イギリス)も含まれた。ウィギンズにもほぼ全員のチームメイトがアシストにつき、集団復帰を試みる。「リーダージャージが落車した際にはアタックしない」というプロトン内の暗黙のルールにより、ペースを落とす集団。
ウィギンズとチームスカイのメンバーは無事集団に戻た。しかし、落車はそれだけで終わらなかった。
頻発する落車で分断した集団。マリアローザが遅れる
前を逃げる4人からファッチが脱落し、3人に。この3人の協調もゴールまで残り32kmのところで崩れだす。苛立を隠さないリック・フレンス(オランダ、ラボバンク)に業を煮やしたポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)がアタックし、独走を図る。しかしフレンスが追いつき、今度は逆にアタック。協調が崩れ、もはや走りはバラバラに。逃げはユトレヒト市街に入って残り23kmで吸収される。
残り20kmからはウィギンズのマリアローザを護るためにチームスカイが集団の先頭を固めて走る。チームスカイはゴールスプリントも狙っている。
残り7kmで再び30人規模の大落車が起こる。フィリッポ・ポッツァート(イタリア)が道端に横たわる。集団はこれで細かく分断され、バラバラに。そして影響を受けなかった選手による先頭集団も40人ほどと大きく人数を減じた。チームBMCレーシングの選手も多く、このなかには総合2位の ブレント・ブックウォルター(アメリカ,BMCレーシングチーム)も巻き込まれた。
ダミアーノ・クネゴ(イタリア)も落車の影響を受け、集団から大きく取り残される。そしてラスト5kmでまた数人の落車が発生。コース上で停り機材交換や救護をするチームカーで路上は混沌とした状況になる。
分断した集団の、第2グループにマリアローザのウィギンズも取り残されてしまう。ゴールまでの残りの距離が短く、もはや先頭集団復帰が難しい。そして日本の 新城幸也(Bboxブイグテレコム)も、このグループに。
ラスト4,5kmも5つのカーブが連続し、道路幅が1車線ほどに狭くなる。そしてゴール前225mで大きく右にコーナーを曲がるというテクニカルなもの。
混沌としたゴールスプリント争いで強いチームワークを見せたのはガーミン・トランジションズだ。
クリストファー・サットン(オーストラリア)が先行するが、デーヴィッド・ミラー、ジュリアン・ディーン、ムリロ・フィッシャーがタイラー・ファラーを牽引して引き上げ、解き放つ。対してテクニカルコーナーに封じられたのはグライペルやマキュアンら。
ファラーは力強いスプリントで伸びを見せ、自身初となるジロのステージ優勝を飾った。
個人総合1位のウィギンズと総合2位のブックウォルターが遅れる一方で、前方集団に残っていたのはカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)。結果、エヴァンスは2002年ジロ以来のマリアローザに袖を通すことになった。エヴァンスとファラーの総合タイム差はわずか1秒。
エヴァンスがマリアローザを着たのはマペイに所属した2002年。当時エヴァンスはマウンテンバイクをバックグラウンドに持つロード歴2年のアシスト選手で、ジロ初出場だった。ステファノ・ガルゼッリのアシストとして当時もオランダ・フローニンゲンをスタートしたジロを走ったが、第16ステージで総合首位に立ちマリアローザを着た。
しかしドロミテ山岳でハンガーノックに見舞われ、17分のタイムロスを喫して一気に転落してしまった。それから8年越しに出場した2回目のジロで、再びピンクに身を包むことになった。
度重なる落車の影響を受けた新城幸也はウィギンズと同じ+37秒遅れの集団でフィニッシュ。ステージ98位、個人総合では1分17秒遅れの102位だ。
ジロ・デ・イタリア2010第2ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) 4h56'46"
2位 マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTCコロンビア)
3位 ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス・ドイモ)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTCコロンビア)
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)
6位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)
7位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
8位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、 ラボバンク)
マリアローザ 個人総合成績
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) 5h07'09"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) +01"
3位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +03"
4位 リッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク) +03"
5位 デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・トランジションズ) +04"
6位 ヨス・ファンエムデン(オランダ、ラボバンク) +07"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・ドイモ) +08"
8位 トム・スタムスニデル(オランダ、ラボバンク) +09"
ポイント賞 マリアロッサ
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
山岳賞 マリアヴェルデ
ポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)
新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)
チーム総合成績
サクソバンク
敢闘賞
ポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)
フーガ(逃げ)賞
リック・フレンス(オランダ、ラボバンク)
text:Makoto.AYANO
photo:Kei.Tsuji,CorVos
ジロ・デ・イタリア2010第2ステージは、首都アムステルダムを出発し、郊外のオランダ第4の都市ユトレヒトに至る210kmで争われた。
コースプロフィールはほぼ平坦で、中盤に2つの3級山岳が登場するが、いずれも標高が100mに満たない小さな丘。しかしこの2つに山岳ポイントが設定され、ここでポイントを獲得すればマリアヴェルデ(山岳賞ジャージ)を獲得することができるため、ステージ中盤まではマリアヴェルデ争いに注目が集まった。
山岳ポイントは、88.7km地点のカテゴリー3 「Kaapse Bossen」(標高49m)、100.5km地点のカテゴリー3「Amerongse Bos」(標高70m)だ。
天候は第1ステージとほぼ同じような曇空で、時折小雨がぱらつく。コースは曲がりくねって設定され、オランダ特有雨の横風が吹けば難しいステージになることが予想された。しかしこの日の風は幸いにして弱め。
スタート早々にアタックが成功し、4人の逃げが形成された。
逃げたのはマウロ・ファッチ(イタリア、クイックステップ)、ポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)、ステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)、 リック・フレンス(オランダ、ラボバンク)の4人。集団に約5分の差をつけて逃げる。
3人は2つある山岳ポイントも逃げたまま通過。2つの山岳通過順位で、ひとつめはピラッツィ。ふたつめをヴォスが先頭通過し、フレンスを入れて3人の獲得ポイントが並んでしまった。
この日のコースの道幅は狭く、曲がりくねって森の中、住宅地を縫うように抜けて行く。まるでアルデンヌクラシックに似ていた。そして残り60kmを過ぎて、集団がナーバスになり始めた頃から落車が頻発するようになる。
運河沿いにつけられた道には中央分離帯、路肩の避難帯、車線を定めるレーンが至る所にあり、大集団で走る選手たちを困惑させたようだ。20人、30人規模の落車が頻発し、影響を受ける選手が続々と出る。
残り50km、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)が中央分離帯に乗り上げて転倒した。優勝候補のスプリンターの落車に、チームメイト4人がアシストして集団へと引き戻す。ロスは9kmだ。
ファラーが無事集団復帰を果たした直後、今度は20~30人が転倒する大規模落車が集団で発生。これにはマリアローザのブラドレー・ウィギンズ(イギリス)も含まれた。ウィギンズにもほぼ全員のチームメイトがアシストにつき、集団復帰を試みる。「リーダージャージが落車した際にはアタックしない」というプロトン内の暗黙のルールにより、ペースを落とす集団。
ウィギンズとチームスカイのメンバーは無事集団に戻た。しかし、落車はそれだけで終わらなかった。
頻発する落車で分断した集団。マリアローザが遅れる
前を逃げる4人からファッチが脱落し、3人に。この3人の協調もゴールまで残り32kmのところで崩れだす。苛立を隠さないリック・フレンス(オランダ、ラボバンク)に業を煮やしたポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)がアタックし、独走を図る。しかしフレンスが追いつき、今度は逆にアタック。協調が崩れ、もはや走りはバラバラに。逃げはユトレヒト市街に入って残り23kmで吸収される。
残り20kmからはウィギンズのマリアローザを護るためにチームスカイが集団の先頭を固めて走る。チームスカイはゴールスプリントも狙っている。
残り7kmで再び30人規模の大落車が起こる。フィリッポ・ポッツァート(イタリア)が道端に横たわる。集団はこれで細かく分断され、バラバラに。そして影響を受けなかった選手による先頭集団も40人ほどと大きく人数を減じた。チームBMCレーシングの選手も多く、このなかには総合2位の ブレント・ブックウォルター(アメリカ,BMCレーシングチーム)も巻き込まれた。
ダミアーノ・クネゴ(イタリア)も落車の影響を受け、集団から大きく取り残される。そしてラスト5kmでまた数人の落車が発生。コース上で停り機材交換や救護をするチームカーで路上は混沌とした状況になる。
分断した集団の、第2グループにマリアローザのウィギンズも取り残されてしまう。ゴールまでの残りの距離が短く、もはや先頭集団復帰が難しい。そして日本の 新城幸也(Bboxブイグテレコム)も、このグループに。
ラスト4,5kmも5つのカーブが連続し、道路幅が1車線ほどに狭くなる。そしてゴール前225mで大きく右にコーナーを曲がるというテクニカルなもの。
混沌としたゴールスプリント争いで強いチームワークを見せたのはガーミン・トランジションズだ。
クリストファー・サットン(オーストラリア)が先行するが、デーヴィッド・ミラー、ジュリアン・ディーン、ムリロ・フィッシャーがタイラー・ファラーを牽引して引き上げ、解き放つ。対してテクニカルコーナーに封じられたのはグライペルやマキュアンら。
ファラーは力強いスプリントで伸びを見せ、自身初となるジロのステージ優勝を飾った。
個人総合1位のウィギンズと総合2位のブックウォルターが遅れる一方で、前方集団に残っていたのはカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)。結果、エヴァンスは2002年ジロ以来のマリアローザに袖を通すことになった。エヴァンスとファラーの総合タイム差はわずか1秒。
エヴァンスがマリアローザを着たのはマペイに所属した2002年。当時エヴァンスはマウンテンバイクをバックグラウンドに持つロード歴2年のアシスト選手で、ジロ初出場だった。ステファノ・ガルゼッリのアシストとして当時もオランダ・フローニンゲンをスタートしたジロを走ったが、第16ステージで総合首位に立ちマリアローザを着た。
しかしドロミテ山岳でハンガーノックに見舞われ、17分のタイムロスを喫して一気に転落してしまった。それから8年越しに出場した2回目のジロで、再びピンクに身を包むことになった。
度重なる落車の影響を受けた新城幸也はウィギンズと同じ+37秒遅れの集団でフィニッシュ。ステージ98位、個人総合では1分17秒遅れの102位だ。
ジロ・デ・イタリア2010第2ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) 4h56'46"
2位 マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTCコロンビア)
3位 ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス・ドイモ)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTCコロンビア)
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)
6位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)
7位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
8位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、 ラボバンク)
マリアローザ 個人総合成績
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) 5h07'09"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) +01"
3位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +03"
4位 リッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク) +03"
5位 デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・トランジションズ) +04"
6位 ヨス・ファンエムデン(オランダ、ラボバンク) +07"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・ドイモ) +08"
8位 トム・スタムスニデル(オランダ、ラボバンク) +09"
ポイント賞 マリアロッサ
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
山岳賞 マリアヴェルデ
ポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)
新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)
チーム総合成績
サクソバンク
敢闘賞
ポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)
フーガ(逃げ)賞
リック・フレンス(オランダ、ラボバンク)
text:Makoto.AYANO
photo:Kei.Tsuji,CorVos
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