2019/10/19(土) - 22:08
2度の優勝経験がある別府史之に発射され、迫り来るコルブレッリを振り切ったエドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)が優勝。大落車によって大会史上初となるレース中断も発生したジャパンカップクリテリウムの模様をお届けします。
2010年に初開催されたジャパンカップクリテリウムが記念すべき10年目を迎えた。過去2年間と同様に、宇都宮大通り西側のUターンを本町交差点から池上町交差点の手前まで約350m延長した1周2.25kmの周回コースを舞台に、日曜日のジャパンカップ本戦を控えた選手たちにクリテリウムスペシャルライダーズたちを加えた118名が挑んだ。
周回数は15周でコースの全長は33.75km。4周、8周、12周目のフィニッシュ地点にスプリントポイントが設定されているため、中だるみなくアタックがかかり続けるのが特徴。宇都宮市役所からパレード走行を開始した選手たちは、走りながらのグッズ配りや観客たちとのハイタッチを楽しみながら周回コースをぐるっと2周。15時45分にスタートが切られるやいなや、日本のUCIコンチネンタルチームを中心にしたアタック合戦が始まった。
中島康晴(キナンサイクリング)らのファーストアタックは決まらず、逆にEFエデュケーションファーストとユンボ・ヴィズマをはじめとする「スプリンターのいないUCIワールドチーム」の選手たちが集団先頭でアタックを繰り出す。そこから全米選手権ロード3位&同TT2位のニールソン・ポーレス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)が単独で抜け出すことに成功した。
独走力を生かしてポーレスは4周目のスプリントポイントを獲得。この動きをバーレーン・メリダとトレック・セガフレードという「スプリンターを擁するUCIワールドチーム」が追いかける展開に。ポーレスが捕まると、間髪入れずにジェームス・フーシェ(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット)が飛び出すなど落ち着かない。再び飛び出したポーレスにサイモン・カー(イギリス、デルコ・マルセイユプロヴァンス)が追いついたが、この動きも結果的には引き戻された。
続いてツール・ド・フランス総合3位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)が飛び出すと、ここにフランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックス・パワータグ)が反応する。メイン集団から大きなタイム差を奪うことはできなかったものの、マンセボは8周目のスプリントポイントを獲得。いよいよ最終的な集団スプリントに向けてペースが上がり、ポジション争いが加熱する中、9周目にメイン集団を二分する大落車が発生した。
落車負傷した選手のケアに時間を要したためレースは一旦ストップする。10年目のクリテリウムで初のレース中断。遅れていた選手たちの復帰後、レースはフィニッシュまで5周回を残した状態で再スタートが切られた。この落車の混乱に伴い、12周目のスプリントポイントはキャンセルされている。
5周回を残して、フィニッシュまで11km強を残して再スタートしたレースは高速化する。別府史之(トレック・セガフレード)らが集団先頭に立ってペースを上げ、飛び出しを図るマンセボらをバーレーン・メリダやデルコ・マルセイユプロヴァンスとともに封じ込めて最終周回へ。下り基調のバックストレートで新城幸也(バーレーン・メリダ)が先頭に立ってコルブレッリを引き上げた。
バーレーン・メリダ先頭で最終コーナーを抜けると、別府がトゥーンスを引き連れる形で先頭に上がる。別府はリードアウト中にインナーリングに落ちたチェーンをアウターに戻して踏み続け、残り150mでトゥーンスを発射する。ほぼ同時にトゥーンスのスリップストリームからコルブレッリも発進した。
「このクリテリウムで勝ち方を知っているフミ(別府)に教えてもらっていた最短ライン」を突き進んだトゥーンス。緩い左コーナーのイン側を突き進んだトゥーンスが、登り基調のフィニッシュラインで並びかけるコルブレッリとともにハンドルを投げる。写真判定に持ち込まれる僅差でありながら、トゥーンスが片手を上げた。
「フミがとても良いリードアウトをしてくれた!3番手で最終コーナーを曲がると、フミが後ろから『エディ、カモン!レッツゴー!』と上がってきてくれて先頭に立った。彼がチェーンを落としてヒヤッとしたけど、チェーンを戻してスーパーグッドなリードアウトをしてくれたんだ。スプリント開始のタイミングや、どのラインを走るべきかをフミに教えてもらって、その通りに踏んだ。横にソンニ(コルブレッリ)が並んでくるのが見えたけど先着できてよかった」。僅差のスプリントを制したトゥーンスは表彰式のバックステージで笑顔を見せた。
トレック・セガフレードは2018年のジョン・デゲンコルプ(ドイツ)に続くクリテリウム連覇を達成。なお、2017年はマルコ・カノラ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)にクリテリウムのタイトルを奪われたものの、さらに遡れば2015年と2016年は別府が優勝。過去5年間でクリテリウム4勝という強さを見せた。自らチームに懇願してジャパンカップに初出場したというトゥーンスは今季9月のプリムスクラシックで1勝。ブエルタ・ア・エスパーニャでは2度トップ10フィニッシュしたが、ステージ優勝には届いていなかった。
「フィニッシュラインを越えた時は『勝った!』と思ったけど、あとでスクリーンで映像を見て『あれ・・・』と思った。でも結果的に優勝できたしチームの雰囲気はとても良い。シーズン終盤にかけてトレック・セガフレードは世界選手権とロンバルディアを制して勢いに乗っているんだ。日曜日のコースは自分には厳しすぎるけど、モレマやチッコーネが良いレースをしてくれるはず」と、トゥーンスはチームメイトにタスキを託した。
「ユキ(新城)に引き上げられて、良いポジションで最終コーナーを抜けた」と語るのは、僅差で勝利を逃したコルブレッリ。「最初から警戒していた彼ら(トゥーンスら)の番手に入ってスプリント開始のタイミングを伺った。最初から最後まで最後のスプリントのために働いてくれたチームメイトたちの走りに勝利で報いたかった。全力を尽くしたよ。でも、わずかに届かなかった」と今シーズン3勝のイタリアンスプリンターは語っている。
アジア人最高位はポン・ユエンタン(台湾、リュブリャナ・グスト・サンティック)の4位。孫崎大樹(ブリヂストンサイクリング)が続いて日本人最高位となる5位に入っている。8位に入った沢田桂太郎(ブリヂストンサイクリング)のSTRAVAログによると、最終周回の平均スピードは51.2km/h前後。熾烈なポジション争いが繰り広げられたバックストレートの最高スピードは60km/hオーバー。スプリント中の最高スピードは64.8km/hに達している。
2010年に初開催されたジャパンカップクリテリウムが記念すべき10年目を迎えた。過去2年間と同様に、宇都宮大通り西側のUターンを本町交差点から池上町交差点の手前まで約350m延長した1周2.25kmの周回コースを舞台に、日曜日のジャパンカップ本戦を控えた選手たちにクリテリウムスペシャルライダーズたちを加えた118名が挑んだ。
周回数は15周でコースの全長は33.75km。4周、8周、12周目のフィニッシュ地点にスプリントポイントが設定されているため、中だるみなくアタックがかかり続けるのが特徴。宇都宮市役所からパレード走行を開始した選手たちは、走りながらのグッズ配りや観客たちとのハイタッチを楽しみながら周回コースをぐるっと2周。15時45分にスタートが切られるやいなや、日本のUCIコンチネンタルチームを中心にしたアタック合戦が始まった。
中島康晴(キナンサイクリング)らのファーストアタックは決まらず、逆にEFエデュケーションファーストとユンボ・ヴィズマをはじめとする「スプリンターのいないUCIワールドチーム」の選手たちが集団先頭でアタックを繰り出す。そこから全米選手権ロード3位&同TT2位のニールソン・ポーレス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)が単独で抜け出すことに成功した。
独走力を生かしてポーレスは4周目のスプリントポイントを獲得。この動きをバーレーン・メリダとトレック・セガフレードという「スプリンターを擁するUCIワールドチーム」が追いかける展開に。ポーレスが捕まると、間髪入れずにジェームス・フーシェ(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット)が飛び出すなど落ち着かない。再び飛び出したポーレスにサイモン・カー(イギリス、デルコ・マルセイユプロヴァンス)が追いついたが、この動きも結果的には引き戻された。
続いてツール・ド・フランス総合3位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)が飛び出すと、ここにフランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックス・パワータグ)が反応する。メイン集団から大きなタイム差を奪うことはできなかったものの、マンセボは8周目のスプリントポイントを獲得。いよいよ最終的な集団スプリントに向けてペースが上がり、ポジション争いが加熱する中、9周目にメイン集団を二分する大落車が発生した。
落車負傷した選手のケアに時間を要したためレースは一旦ストップする。10年目のクリテリウムで初のレース中断。遅れていた選手たちの復帰後、レースはフィニッシュまで5周回を残した状態で再スタートが切られた。この落車の混乱に伴い、12周目のスプリントポイントはキャンセルされている。
5周回を残して、フィニッシュまで11km強を残して再スタートしたレースは高速化する。別府史之(トレック・セガフレード)らが集団先頭に立ってペースを上げ、飛び出しを図るマンセボらをバーレーン・メリダやデルコ・マルセイユプロヴァンスとともに封じ込めて最終周回へ。下り基調のバックストレートで新城幸也(バーレーン・メリダ)が先頭に立ってコルブレッリを引き上げた。
バーレーン・メリダ先頭で最終コーナーを抜けると、別府がトゥーンスを引き連れる形で先頭に上がる。別府はリードアウト中にインナーリングに落ちたチェーンをアウターに戻して踏み続け、残り150mでトゥーンスを発射する。ほぼ同時にトゥーンスのスリップストリームからコルブレッリも発進した。
「このクリテリウムで勝ち方を知っているフミ(別府)に教えてもらっていた最短ライン」を突き進んだトゥーンス。緩い左コーナーのイン側を突き進んだトゥーンスが、登り基調のフィニッシュラインで並びかけるコルブレッリとともにハンドルを投げる。写真判定に持ち込まれる僅差でありながら、トゥーンスが片手を上げた。
「フミがとても良いリードアウトをしてくれた!3番手で最終コーナーを曲がると、フミが後ろから『エディ、カモン!レッツゴー!』と上がってきてくれて先頭に立った。彼がチェーンを落としてヒヤッとしたけど、チェーンを戻してスーパーグッドなリードアウトをしてくれたんだ。スプリント開始のタイミングや、どのラインを走るべきかをフミに教えてもらって、その通りに踏んだ。横にソンニ(コルブレッリ)が並んでくるのが見えたけど先着できてよかった」。僅差のスプリントを制したトゥーンスは表彰式のバックステージで笑顔を見せた。
トレック・セガフレードは2018年のジョン・デゲンコルプ(ドイツ)に続くクリテリウム連覇を達成。なお、2017年はマルコ・カノラ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)にクリテリウムのタイトルを奪われたものの、さらに遡れば2015年と2016年は別府が優勝。過去5年間でクリテリウム4勝という強さを見せた。自らチームに懇願してジャパンカップに初出場したというトゥーンスは今季9月のプリムスクラシックで1勝。ブエルタ・ア・エスパーニャでは2度トップ10フィニッシュしたが、ステージ優勝には届いていなかった。
「フィニッシュラインを越えた時は『勝った!』と思ったけど、あとでスクリーンで映像を見て『あれ・・・』と思った。でも結果的に優勝できたしチームの雰囲気はとても良い。シーズン終盤にかけてトレック・セガフレードは世界選手権とロンバルディアを制して勢いに乗っているんだ。日曜日のコースは自分には厳しすぎるけど、モレマやチッコーネが良いレースをしてくれるはず」と、トゥーンスはチームメイトにタスキを託した。
「ユキ(新城)に引き上げられて、良いポジションで最終コーナーを抜けた」と語るのは、僅差で勝利を逃したコルブレッリ。「最初から警戒していた彼ら(トゥーンスら)の番手に入ってスプリント開始のタイミングを伺った。最初から最後まで最後のスプリントのために働いてくれたチームメイトたちの走りに勝利で報いたかった。全力を尽くしたよ。でも、わずかに届かなかった」と今シーズン3勝のイタリアンスプリンターは語っている。
アジア人最高位はポン・ユエンタン(台湾、リュブリャナ・グスト・サンティック)の4位。孫崎大樹(ブリヂストンサイクリング)が続いて日本人最高位となる5位に入っている。8位に入った沢田桂太郎(ブリヂストンサイクリング)のSTRAVAログによると、最終周回の平均スピードは51.2km/h前後。熾烈なポジション争いが繰り広げられたバックストレートの最高スピードは60km/hオーバー。スプリント中の最高スピードは64.8km/hに達している。
ジャパンカップ2019クリテリウム結果
text&photo:Kei Tsuji
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