2019/10/16(水) - 19:19
超大型の台風19号が日本を襲った10月12日、日本初開催となるグラインデューロが長野県飯山市の斑尾高原で開催された。距離が短縮となりながらもイベントは無事完遂。フードにビールにバンド生演奏のご機嫌な雰囲気は本国同様。グラベル好きライダーが2日間のバイクフェストを楽しんだ。
開催のネックとなったのは台風19号「ハギビス」の襲来だった。ラグビーW杯など日本中のイベントが軒並み中止となるなか、日本初開催となるグラインデューロジャパンは開催に踏み切った。台風の進路とその影響を慎重に計算し、中止とせずに距離を短縮することで風雨の影響が少ないうちにレースを終了できると踏んでの開催だった。
「中止にしてしまうのは簡単なんです。こちらもぎりぎりのリスク判断をしました」と主催責任者は言う。結果から先に言えば、イベントは事故も無く無事終了することができた。
■GRINDUROは楽しむことがモットーのオフロードイベント
(写真では前日のコース試走の模様を紹介する)
アメリカ、カリフォルニア発祥の「GRINDURO(グラインデューロ)」とは、レースで速さを競うのと同じだけ、“楽しむこと”がモットーとされるイベント。マウンテンバイクライダー、シクロクロスレーサー、グラベル好きといった土の上を走ることが好きな人ならとことん楽しめる斬新なオフロードイベントだ。
2019年のグラインデューロシリーズは、アメリカ、カナダ、スコットランド、そしてここ日本の4ヶ国で開催。初開催の日本の舞台に選ばれたのは斑尾高原。長野県北部と新潟県にまたがる信越・斑尾エリアは、2つの国立公園、雄大な流れの千曲川や点在する湖沼に囲まれ、冬には世界有数の豪雪地となる。世界的に超人気のグラインデューロは、日本においてもネットにおける参加申込み開始後8分間で定員オーバーに達したほど。初開催、かつ3食付きとはいえ2万8,000円という高額な参加費のイベントとしては異例の過熱ぶりを見せていた。
その名前のとおり、レース形式はグラベルロードのレースとマウンテンバイクのエンデューロを織り交ぜたようなスタイルとなっている。1日で2回に分けて走るコースには舗装路、グラベル、ダートなど様々な路面状況が含まれ、ゴールタイムは4つのセグメントのタイム計測の合計に基づき決定される。参加クラスは賞金レースとなるプロ、年齢別のエイジグルーパー、シングルスピード、半分の距離のGrinduritoがある。
オールラウンドなライディングスキルが求められ、MTBやシクロクロス経験者が好成績を収めている傾向はある。しかしグラインデューロはリザルトを追うだけのレースではなく、楽しむことを重視し、フード、ビール、バンド生演奏、キャンプ、そして仲間づくりなど、楽しい雰囲気を伴ったバイクフェスト=自転車のお祭りなのだ。
レース当日の朝食、ランチ、ディナーは全てレースエントリーに含まれ、アワードパーティの参加までがセットとなっている。それどころか会場にいるだけで楽しめるよう、レース前日から前夜祭パーティ、レース後のフードケータリングさえ用意されているのだ。
そして自然の中を自転車で走って楽しむだけでなく、さらに満喫するなら会場にテントを張ってキャンプして自然に浸ろうと、参加者にはキャンプサイトが用意され、素敵なキャンプを楽しんでいる参加者を「ベストキャンパー」として表彰するという企画も(台風のため土曜夜のキャンプは禁止となったが)。
前日の段階でエントリー467人のうち半数近い参加者が現地入りし、土曜のレースを走る意思を見せてレジストレーションを済ませた。受け取る参加賞の豪華さ、お洒落さは他に比べるものがないほど。スキー場施設の会場にはスポンサーや協賛ブランドのブースが並び、おおいに賑わいを見せた。
そして前日、プレス向きには試走によるコースの事前取材の機会が用意され、最終決定の2段階前の34kmループを実際に走ることができた。その感想は、色々な路面がミックスされているも、太めのタイヤを履いたグラベルロードバイク向きのコースで、MTBよりも速く走れるコースという印象。筆者は40Cタイヤ装着のフロントWギア装備のグラベルロードで走ったが、それが最適。しかし雨でウェットになれば安定して走れる29erMTBに分があると思った。
当初は午前と午後、それぞれ40kmほどのループを合計で約80km走るコースが設定されていた。しかし台風の影響でコースは短縮に短縮を重ね、最終的には29.7km・獲得標高890mの1ループとなって開催が決行されることに。
■台風の影響が出る前に開催 参加者の50%超がスタート
台風の進路とその規模の巨大さに不安いっぱいに目覚めたレース当日・土曜日の朝、午前5時半の時点で雲海が望める曇り空・無風状態だった。スタート時間の7時が近づくにつれて雨が降り出してきたが、風雨が強まるのは昼過ぎの時間からという予報だった。
7時、レインギアに身を包んだ参加者たちが憧れのグラインデューロをスタートできる喜びに満ちて走り出す。ゆっくり和やかな走り出しでコースに出ていく約264人の参加者たち。斑尾スキー場の管理道路を登り、一般道に出るとしばしの舗装路ダウンヒル。その脇道からグラベルへと入っていく。
濡れた土道は滑りやすく、左右にキャンバー(傾斜)もあるためタイヤにノブが無いライダーはさっそく苦労することに。しかしその先の林間コースでは楽しいハイスピード走行を楽しめた。そしてSS区間を示す計測ポイントへ到達。
スタートからフィニッシュまでの総タイムを競うのではなく、コース上に4ヶ所(今回は短縮により3ヶ所)設けられた「SS」と呼ばれる計測区間があり、その計測区間のタイムの合計で競うエンデューロ形式。タイムが計られるSS以外はゆっくり・楽しんで走ればいいため、仲間たちとおしゃべりもできる。今回設定されたSS(スペシャルステージ)は、SS1が上り基調、SS2が下り基調、SS3がスラロームが多いテクニカル区間だった。SS区間は1人づつ10秒ほどの間隔を空けてスタートしていく。
SS1の登り区間の傾斜はなだらかだったが、砂利のいなし方が差を分ける。ところどころ深い砂利の箇所はあるが、浅めのハードパックグラベルはヒルクライム能力に長けた人に有利。SS計測地点を抜けるとエイドが用意してあり、そこで補給を摂りながら仲間たちと再合流。あるいは、見知らぬ参加者同士で会話が弾む。雨はまだ小降り。風も感じない。
車両はグラベルバイクまたはマウンテンバイクが推奨されている。E-Bikeは禁止だが、自転車であればなんでもOK。最適なのは40Cなど太めのタイヤを履いたグラベルロード。オフロードの激坂は無かったため、フロントシングルでも不利は無かっただろう。
ゲレンデの管理道路を選定したDEATH CLIMBは勾配20%超えの激坂。フロントの浮き上がりとリアタイヤがスリップするのを抑えつつ、自転車を降りたら負けとばかり、懸命にローギアを回して登る(計測には関係無し)。坂の途中には「Save your energy for party!!(パーティのために体力を残しておけ)」という看板が。
SS2はダウンヒルのタイムアタック。林間のシングルトラックが落ち葉と湿った土のためヌタヌタで滑りやすく、後半のスキー場のゲレンデの下りもテクニカルで難しかった。マッドタイヤ装着バイクに有利な状況になってゆく。
ゲレンデでスタート地点近くに降りてから、再び登り返してSS3へ。グラススキー場の脇を行くスラロームコースで、うねりと高低差のあるテクニカルなワインディングをこなしSS3ゴール。グラインデューロ最終ゴール終盤には笹藪のなかに突っ込んでいくワイルドなセクションも。バイクを操るのが難しく、楽しく、笑いの止まらないままでのゴールだった。
GRINDUROのバルーンアーチを抜けてフィニッシュ。ドロドロになったバイクを洗浄する前に、公式サービスとなっている簡易スタジオでの記念撮影が嬉しい。全身泥まみれの状態で仲間同士でポーズを決めたり、一人ぽっちでも変顔したり。とにかく笑いっぱなしのレースは終了。
バイクを洗浄したらすぐに会場でランチを。地野菜と肉いっぱいのカレーを楽しみつつ、「これ、アフタヌーンループがもし開催されていたら、きっと走れないかも...」と考えてしまうほど脚は疲労でいっぱい状態。コースが大幅に短縮になったとはいえ、満足感たっぷりの29.7kmだった。
そして最終フィニッシャーがゲートをくぐったら、ちょうどそのタイミングで雨が激しさを増しはじめた。台風はその後、勢いを増していく。
温泉への送迎バスサービスも有り、身支度を整えたら14時からはアワードセレモニーだ。各クラスの入賞者を讃えつつ、そのままパーティへと流れる。肉いっぱいのデラックスなディナー(ヴィーガンメニューも有り)とお酒を楽しみつつ、おしゃべりが尽きない。ただし台風で外の天候が荒れつつあったため、夜の部は縮小気味に。こうして、台風の襲うなか初開催のグラインデューロ・ジャパンの全イベントは事故やトラブル無く終了した。
運営担当者のひとりは言う。「台風予報は何度も何度もチェックして、進路や影響を計算しながらの開催の決断でした。当初80kmの予定が50kmに、34kmに、最終的には29.7kmになりました。最初から中止したほうがずっと簡単でした。出走267人。エントリー総数の過半数が走った計算です。リタイアはわずか2名。走ってくれたすべての人をリスペクトです」。
参加者の一人としては、もちろん大きなリスクを負って勇気ある決断をした主催者・関係者すべてに最大限の敬意を払いたい。何か事故が起これば批判を受けることを承知で開催に踏み切ったその覚悟は、まさに命がけの覚悟があってのものだったろう。
■MAXIN RELAXIN 楽観の精神と、慎重かつ大胆な運営で成功した第1回グラインデューロ
グラインデューロの発起人的主催者、ジロ社のマーケティングマネージャー、エリック・リクター氏は次のように語る。
「待望した日本での第1回! グラインデューロはジロのグラベルマーケティングの一環として生まれ、このジャパン大会のアイデアは5年前に生まれました。スローガンの”MAXIN RELAXIN”はバイクライドを楽しむための最良の方法なんだ。ペダルをこげばホームカントリーのカリフォルニアに呼び戻してくれる。タフなグラベルの上で一日を過ごし、仲間たちと一緒に乗る。ハイファイブを交わし、ビールを飲み、パーティ。この経験と時間をシェアすれば、もっと多くの人と友人になれるだろう。それがグラインデューロなんだ。
考えていたプランはもっとあるけど、日本の緑深い美しい土地を感じるエキサイティングな日を過ごせる。台風のおかげで、あるいは他の理由でここに来ることができなかった人たちが居るけれど、ここに来た仲間すべてにおめでとうと言いたい。台風を乗り越えてのこのグラインデューロは、今年もっともエピックなイベントであることに間違いないね。スポンサー、参加者、サポートしてくれたすべての人達に感謝したい。これ以上のバイクレースは無いね。グラインデューロはバイクライディングと人生を楽しむための最良の方法なんだ。もしも君が楽しめなかったと言うなら、何かが間違っているんだよ」。
ジロには「乗らなくてもグラインデューロ」という言葉があるという。つまり仲間たちが集い、時間を共有することもイベントの趣旨だという。結果的にその楽観的な思考と、主催者としての慎重で的確な判断によって台風の前にイベントを終了させることができた。
グラインデューロ・ジャパンは来年の開催も決まっており、今回のイベントの後、評価が良ければ再び斑尾で開催する方向で考えているという。日本で引くことが難しいフルコース約80kmに及ぶグラベルのロングルートは、トレイルランのイベントやトレッキングで使用される区間を多く含むため、使用許可が取りやすかった反面、今回のイベントで路面の痛み等が激しかった場合や問題が起こった場合には継続開催が難しくなる面があるという。また来年、良い天気のもとで80kmコースで開催されることを期待しよう。
photo&text:Makoto.AYANO
開催のネックとなったのは台風19号「ハギビス」の襲来だった。ラグビーW杯など日本中のイベントが軒並み中止となるなか、日本初開催となるグラインデューロジャパンは開催に踏み切った。台風の進路とその影響を慎重に計算し、中止とせずに距離を短縮することで風雨の影響が少ないうちにレースを終了できると踏んでの開催だった。
「中止にしてしまうのは簡単なんです。こちらもぎりぎりのリスク判断をしました」と主催責任者は言う。結果から先に言えば、イベントは事故も無く無事終了することができた。
■GRINDUROは楽しむことがモットーのオフロードイベント
(写真では前日のコース試走の模様を紹介する)
アメリカ、カリフォルニア発祥の「GRINDURO(グラインデューロ)」とは、レースで速さを競うのと同じだけ、“楽しむこと”がモットーとされるイベント。マウンテンバイクライダー、シクロクロスレーサー、グラベル好きといった土の上を走ることが好きな人ならとことん楽しめる斬新なオフロードイベントだ。
2019年のグラインデューロシリーズは、アメリカ、カナダ、スコットランド、そしてここ日本の4ヶ国で開催。初開催の日本の舞台に選ばれたのは斑尾高原。長野県北部と新潟県にまたがる信越・斑尾エリアは、2つの国立公園、雄大な流れの千曲川や点在する湖沼に囲まれ、冬には世界有数の豪雪地となる。世界的に超人気のグラインデューロは、日本においてもネットにおける参加申込み開始後8分間で定員オーバーに達したほど。初開催、かつ3食付きとはいえ2万8,000円という高額な参加費のイベントとしては異例の過熱ぶりを見せていた。
その名前のとおり、レース形式はグラベルロードのレースとマウンテンバイクのエンデューロを織り交ぜたようなスタイルとなっている。1日で2回に分けて走るコースには舗装路、グラベル、ダートなど様々な路面状況が含まれ、ゴールタイムは4つのセグメントのタイム計測の合計に基づき決定される。参加クラスは賞金レースとなるプロ、年齢別のエイジグルーパー、シングルスピード、半分の距離のGrinduritoがある。
オールラウンドなライディングスキルが求められ、MTBやシクロクロス経験者が好成績を収めている傾向はある。しかしグラインデューロはリザルトを追うだけのレースではなく、楽しむことを重視し、フード、ビール、バンド生演奏、キャンプ、そして仲間づくりなど、楽しい雰囲気を伴ったバイクフェスト=自転車のお祭りなのだ。
レース当日の朝食、ランチ、ディナーは全てレースエントリーに含まれ、アワードパーティの参加までがセットとなっている。それどころか会場にいるだけで楽しめるよう、レース前日から前夜祭パーティ、レース後のフードケータリングさえ用意されているのだ。
そして自然の中を自転車で走って楽しむだけでなく、さらに満喫するなら会場にテントを張ってキャンプして自然に浸ろうと、参加者にはキャンプサイトが用意され、素敵なキャンプを楽しんでいる参加者を「ベストキャンパー」として表彰するという企画も(台風のため土曜夜のキャンプは禁止となったが)。
前日の段階でエントリー467人のうち半数近い参加者が現地入りし、土曜のレースを走る意思を見せてレジストレーションを済ませた。受け取る参加賞の豪華さ、お洒落さは他に比べるものがないほど。スキー場施設の会場にはスポンサーや協賛ブランドのブースが並び、おおいに賑わいを見せた。
そして前日、プレス向きには試走によるコースの事前取材の機会が用意され、最終決定の2段階前の34kmループを実際に走ることができた。その感想は、色々な路面がミックスされているも、太めのタイヤを履いたグラベルロードバイク向きのコースで、MTBよりも速く走れるコースという印象。筆者は40Cタイヤ装着のフロントWギア装備のグラベルロードで走ったが、それが最適。しかし雨でウェットになれば安定して走れる29erMTBに分があると思った。
当初は午前と午後、それぞれ40kmほどのループを合計で約80km走るコースが設定されていた。しかし台風の影響でコースは短縮に短縮を重ね、最終的には29.7km・獲得標高890mの1ループとなって開催が決行されることに。
■台風の影響が出る前に開催 参加者の50%超がスタート
台風の進路とその規模の巨大さに不安いっぱいに目覚めたレース当日・土曜日の朝、午前5時半の時点で雲海が望める曇り空・無風状態だった。スタート時間の7時が近づくにつれて雨が降り出してきたが、風雨が強まるのは昼過ぎの時間からという予報だった。
7時、レインギアに身を包んだ参加者たちが憧れのグラインデューロをスタートできる喜びに満ちて走り出す。ゆっくり和やかな走り出しでコースに出ていく約264人の参加者たち。斑尾スキー場の管理道路を登り、一般道に出るとしばしの舗装路ダウンヒル。その脇道からグラベルへと入っていく。
濡れた土道は滑りやすく、左右にキャンバー(傾斜)もあるためタイヤにノブが無いライダーはさっそく苦労することに。しかしその先の林間コースでは楽しいハイスピード走行を楽しめた。そしてSS区間を示す計測ポイントへ到達。
スタートからフィニッシュまでの総タイムを競うのではなく、コース上に4ヶ所(今回は短縮により3ヶ所)設けられた「SS」と呼ばれる計測区間があり、その計測区間のタイムの合計で競うエンデューロ形式。タイムが計られるSS以外はゆっくり・楽しんで走ればいいため、仲間たちとおしゃべりもできる。今回設定されたSS(スペシャルステージ)は、SS1が上り基調、SS2が下り基調、SS3がスラロームが多いテクニカル区間だった。SS区間は1人づつ10秒ほどの間隔を空けてスタートしていく。
SS1の登り区間の傾斜はなだらかだったが、砂利のいなし方が差を分ける。ところどころ深い砂利の箇所はあるが、浅めのハードパックグラベルはヒルクライム能力に長けた人に有利。SS計測地点を抜けるとエイドが用意してあり、そこで補給を摂りながら仲間たちと再合流。あるいは、見知らぬ参加者同士で会話が弾む。雨はまだ小降り。風も感じない。
車両はグラベルバイクまたはマウンテンバイクが推奨されている。E-Bikeは禁止だが、自転車であればなんでもOK。最適なのは40Cなど太めのタイヤを履いたグラベルロード。オフロードの激坂は無かったため、フロントシングルでも不利は無かっただろう。
ゲレンデの管理道路を選定したDEATH CLIMBは勾配20%超えの激坂。フロントの浮き上がりとリアタイヤがスリップするのを抑えつつ、自転車を降りたら負けとばかり、懸命にローギアを回して登る(計測には関係無し)。坂の途中には「Save your energy for party!!(パーティのために体力を残しておけ)」という看板が。
SS2はダウンヒルのタイムアタック。林間のシングルトラックが落ち葉と湿った土のためヌタヌタで滑りやすく、後半のスキー場のゲレンデの下りもテクニカルで難しかった。マッドタイヤ装着バイクに有利な状況になってゆく。
ゲレンデでスタート地点近くに降りてから、再び登り返してSS3へ。グラススキー場の脇を行くスラロームコースで、うねりと高低差のあるテクニカルなワインディングをこなしSS3ゴール。グラインデューロ最終ゴール終盤には笹藪のなかに突っ込んでいくワイルドなセクションも。バイクを操るのが難しく、楽しく、笑いの止まらないままでのゴールだった。
GRINDUROのバルーンアーチを抜けてフィニッシュ。ドロドロになったバイクを洗浄する前に、公式サービスとなっている簡易スタジオでの記念撮影が嬉しい。全身泥まみれの状態で仲間同士でポーズを決めたり、一人ぽっちでも変顔したり。とにかく笑いっぱなしのレースは終了。
バイクを洗浄したらすぐに会場でランチを。地野菜と肉いっぱいのカレーを楽しみつつ、「これ、アフタヌーンループがもし開催されていたら、きっと走れないかも...」と考えてしまうほど脚は疲労でいっぱい状態。コースが大幅に短縮になったとはいえ、満足感たっぷりの29.7kmだった。
そして最終フィニッシャーがゲートをくぐったら、ちょうどそのタイミングで雨が激しさを増しはじめた。台風はその後、勢いを増していく。
温泉への送迎バスサービスも有り、身支度を整えたら14時からはアワードセレモニーだ。各クラスの入賞者を讃えつつ、そのままパーティへと流れる。肉いっぱいのデラックスなディナー(ヴィーガンメニューも有り)とお酒を楽しみつつ、おしゃべりが尽きない。ただし台風で外の天候が荒れつつあったため、夜の部は縮小気味に。こうして、台風の襲うなか初開催のグラインデューロ・ジャパンの全イベントは事故やトラブル無く終了した。
運営担当者のひとりは言う。「台風予報は何度も何度もチェックして、進路や影響を計算しながらの開催の決断でした。当初80kmの予定が50kmに、34kmに、最終的には29.7kmになりました。最初から中止したほうがずっと簡単でした。出走267人。エントリー総数の過半数が走った計算です。リタイアはわずか2名。走ってくれたすべての人をリスペクトです」。
参加者の一人としては、もちろん大きなリスクを負って勇気ある決断をした主催者・関係者すべてに最大限の敬意を払いたい。何か事故が起これば批判を受けることを承知で開催に踏み切ったその覚悟は、まさに命がけの覚悟があってのものだったろう。
■MAXIN RELAXIN 楽観の精神と、慎重かつ大胆な運営で成功した第1回グラインデューロ
グラインデューロの発起人的主催者、ジロ社のマーケティングマネージャー、エリック・リクター氏は次のように語る。
「待望した日本での第1回! グラインデューロはジロのグラベルマーケティングの一環として生まれ、このジャパン大会のアイデアは5年前に生まれました。スローガンの”MAXIN RELAXIN”はバイクライドを楽しむための最良の方法なんだ。ペダルをこげばホームカントリーのカリフォルニアに呼び戻してくれる。タフなグラベルの上で一日を過ごし、仲間たちと一緒に乗る。ハイファイブを交わし、ビールを飲み、パーティ。この経験と時間をシェアすれば、もっと多くの人と友人になれるだろう。それがグラインデューロなんだ。
考えていたプランはもっとあるけど、日本の緑深い美しい土地を感じるエキサイティングな日を過ごせる。台風のおかげで、あるいは他の理由でここに来ることができなかった人たちが居るけれど、ここに来た仲間すべてにおめでとうと言いたい。台風を乗り越えてのこのグラインデューロは、今年もっともエピックなイベントであることに間違いないね。スポンサー、参加者、サポートしてくれたすべての人達に感謝したい。これ以上のバイクレースは無いね。グラインデューロはバイクライディングと人生を楽しむための最良の方法なんだ。もしも君が楽しめなかったと言うなら、何かが間違っているんだよ」。
ジロには「乗らなくてもグラインデューロ」という言葉があるという。つまり仲間たちが集い、時間を共有することもイベントの趣旨だという。結果的にその楽観的な思考と、主催者としての慎重で的確な判断によって台風の前にイベントを終了させることができた。
グラインデューロ・ジャパンは来年の開催も決まっており、今回のイベントの後、評価が良ければ再び斑尾で開催する方向で考えているという。日本で引くことが難しいフルコース約80kmに及ぶグラベルのロングルートは、トレイルランのイベントやトレッキングで使用される区間を多く含むため、使用許可が取りやすかった反面、今回のイベントで路面の痛み等が激しかった場合や問題が起こった場合には継続開催が難しくなる面があるという。また来年、良い天気のもとで80kmコースで開催されることを期待しよう。
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