2019/08/02(金) - 15:09
いつかは現地で観戦したいツール・ド・フランス。目黒誠子さんが第2休息日のニームから最終ステージのシャンゼリゼまで帯同、現地での観戦のコツを連載形式でレポートします。まずは選手にもっとも近づける休息日のチームホテル訪問での体験からお届けしましょう。
ボンジュール!目黒誠子です。ツール・ド・フランスの取材も今年で5年目となります。今年はすべての日程は帯同せず、2回目の休息日を過ごすニームとポンデュガール近辺を中心に取材しました。いつかはツール観戦に!という方のヒントになれたらとレポートします。
昨年はパリから電車で日帰り観戦にも挑戦しましたが、今年はエクスアンプロヴァンスの知人宅に滞在し、クルマでニームまで! ご一緒させていただいたのはフランス在住の川田さんと青木さん。自転車があるとより観戦の仕方が変わってきます。
今回は川田さんの自転車をお借りし、クルマに積んでいきました。日本から自転車を持ち込んで観戦する方は年々増えているようですし、行動範囲が広がって何倍も楽しめます。ただし何があるかはわからないので、絶対に自転車から目を離さないという自信があれば(たとえロックをつけたとしても)高価なものでもよいですが、盗まれても壊れてもよいくらいのものの方が安心です。現地でレンタサイクルするのもおすすめです。
ニームに到着し、まず向かったのは選手が泊まるホテル。ニーム市街にはチェーン系のホテルが集合して建つ地域があって、ほとんどのチームがそのエリアに泊まっていたので、今回は巡るのが楽でした(時には車で1時間近く走らないといけない時も)。
まず向かったのはチームイネオス。ホテルにはチームバスやチームカーが停まっているのですぐにわかります。真っ黒なイネオスのバスは、底部に「選手一人につき一台」と言われている洗濯機が備え付けてあり、がんがん回っています。今大会マイヨジョーヌが確定したエガン・ベルナルとゲラント・トーマス、デイヴィット・ブレイルスフォード監督の記者会見にはメディアが溢れんばかりに詰めかけていました。記者会見はメディア関係者しか入れませんが、外からその様子を観ることができることも多いのです。
次に向かったのはボーラ・ハンスグローエ。もちろん目当てはペテル・サガン。そこでお会いしたのが横浜から観戦にいらしていた島岡さんご夫婦。
島岡夫妻はなんとこの日の朝に到着してそのままチームホテルに直行。サガンの写真が貼られた手作りのうちわを手にサガンを出待ち。まったく疲れを感じさせず、ボーラのバスを前にしてワクワクが伝わってきます!
そしてまず現れたのがチームメイトのダニエル・オス。オスは親日家でもあるしとてもフレンドリーで、快くサインをしてくれた模様。さらにしばらく待っていると、今度は洗車中のメカニックが手招き…「洗っていいよ〜」とスポンジを手渡され、なんとサガンの自転車を洗車させてくれたんです!これには島岡さんも大感激。
「まさかテレビで観ていたサガンの自転車を自分が洗うなんて…」「見てください!サガンの自転車。Why So Serious?(なぜそんなにマジなの)ですって。かっこいい」。
そんなサガンがBORA自慢のIHコイルを持ってほほ笑むキッチンカーの方に回ると、ちょうど選手が食事中だったようで、まわりにはファンがいっぱい。エアコンがないのか窓は開けられています。ちらりとサガンも見えた!
サガンファンクラブのジャージを着た人も。食事を終えたサガンが姿を見せると「サガンー!」と大歓声。バスを降りるとすぐにファンサービス。子供から大人まで、たくさんの人から写真を撮られたりサインをねだられたり。サガンは終始にこやかに対応していました。さすがスーパースターは違います。こんなファンサービスを見ていると、ますますファンになっちゃいますね。
次に向かったのはこの時点でマイヨジョーヌを着用していたジュリアン・アラフィリップのドゥクーニンク・クイックステップ。さすがにフランス人ファンでいっぱい! バスの前にはライオンがずらり。アラフィリップの自転車はマイヨジョーヌカラーとライオンとひまわりでデコレート。この雰囲気にスタッフは少し落ち着かなくて慣れない感じもしましたが、これまでのクイックステップには見られなかったお祝いムードがたっぷり。
そんなドゥクーニンク・クイックステップのバスで出会ったのが地元ニーム在住でお休みを3日間取って観戦に来たというフランス人ファミリー。聞くと「フランス人がここまで活躍してくれるのは本当にうれしい!アラフィリップがこのままマイヨジョーヌをキープしてくれるとよいけど、アラフィリップは僕がだめでもピノーが行ってくれる…そんな風に言っていた。ジェラシーを全く感じずお互いを讃えあうのがすばらしい!」と。
マイヨジョーヌは34年ぶりにフランス人の手に…という夢は叶わなかったけど、フランス人の喜びぶりはやはり大変なものでした。一方、ティボ・ピノーがいるグルパマFDJのホテルの前にもファンが詰めかけていましたが、扉は閉まったままでした。警備が厳しく、中で記者会見が行われていた模様です。フランスの期待を集めすぎるピノーだけに、そうせざるを得なかったのだろうと思いました。
その後トレック・セガフレードのホテルではリッチー・ポート、ミッチェルトン・スコットのバスの前ではマッテオ・トレンティン、モビスターのナイロ・キンタナの練習帰りにも遭遇。観戦するなら休息日も交えた方がよい理由はこれ! 選手たちと直に会えるんです。緊張感がないから、近づきやすいし。
愛知県からいらした松久さんご夫婦も「テレビで観ていて、いつかは!と思っていました。」と大満足のようでした。
さて私もチームホテルを後にして宿に一旦チェックイン。自転車を組み立ててニームの街に駆り出しましょう。向かったのは昨年より休息日に設けられるようになったツールの「ファンパーク」。
ファンパークとは、ステージ毎のスタート地に設けられ関係者やVIP等のみ入ることができる「ヴィラージュ」のようなイベント会場で、誰もが無料で入ることができます。
そして、事前にインターネットで見つけて予約していた「Ebikeでツアーライド」に参加してみました。Ebikeに乗ってガイドさんがニームの街を案内してくれるという30分のツアー。自転車も無料レンタルできます。休息地ではこのようにアクティビティが催されることが多いので要チェックです。
ツアーの予約時間は18時半。残念ながらEbikeの充電が間に合わず普通のバイクをお借りすることになりましたが、オーディオガイドをつけ、ガイドさんに連れられて街に出ます。人数は10名ほど。ガイドは録音されたものではなく、ライブで仏英二か国語。
ニームは「フランスのローマ」と言われ、紀元前の古代ローマ時代から存在する歴史的都市。ローマ時代の名残が色濃く残っており、旧市街に入ると時を忘れてしまうような錯覚を覚えます。デニムの生まれ故郷でもあり、中世の頃から織物繊維産業で栄えたニーム。ガイドツアーでは巨大な円形闘技場「アレン」や、紀元5年にアウグストゥス帝の子孫に捧げられた神殿「メゾン・カレ」など回り、歩いてはなかなか行けない場所まで回れ、ニームの街を堪能することができました。ニーム市が主催した期間限定のライドツアーで、各回満席でした。
ファンパークはスポンサーや自治体がブースを出し、フードゾーン、アクティビティゾーン、ダンスパフォーマンスゾーン、自治体のサービスや団体が運営するゾーンなどにざっくり分けられています。
今年も子供たちのための自転車パークが設けられ、昨年よりパワーアップ。角度がついた「カント」のようなものができています。自転車はもちろん、ヘルメットやグローブを無料で貸し出ししていて、係のお兄さんに助けてもらいながらスタート→フィニッシュ。フィニッシュしたあとは終了証ももらえます。
何万人もの来場者が訪れるファンパーク。休息日の観戦に加えてみるのもおすすめです。
筆者プロフィール:目黒 誠子(めぐろせいこ)
宮城県丸森町生まれ。2006年ジャパンカップサイクルロードレースに業務で携わってからロードレースの世界に魅了される。2014年より3年間、ツアー・オブ・ジャパンでは海外チームの招待・連絡を担当していた。ロードバイクでのサイクリングを楽しむ。航空会社の広報系の仕事にも携わり、折り紙飛行機の指導員という変わりダネ資格を持つ。現在は宮城県丸森町に拠点を置きつつ、海外の自転車事情やライフスタイルを取材しながら、ライター、プロデューサー、コーディネーターとして活動。自転車とまちづくり・クリーン工房アドバイザー、「自転車と旅の日〜MARUVÉLO(マルベロ)」代表。(https://www.facebook.com/maruvelo/)
photo&text:Seiko.Meguro
ボンジュール!目黒誠子です。ツール・ド・フランスの取材も今年で5年目となります。今年はすべての日程は帯同せず、2回目の休息日を過ごすニームとポンデュガール近辺を中心に取材しました。いつかはツール観戦に!という方のヒントになれたらとレポートします。
昨年はパリから電車で日帰り観戦にも挑戦しましたが、今年はエクスアンプロヴァンスの知人宅に滞在し、クルマでニームまで! ご一緒させていただいたのはフランス在住の川田さんと青木さん。自転車があるとより観戦の仕方が変わってきます。
今回は川田さんの自転車をお借りし、クルマに積んでいきました。日本から自転車を持ち込んで観戦する方は年々増えているようですし、行動範囲が広がって何倍も楽しめます。ただし何があるかはわからないので、絶対に自転車から目を離さないという自信があれば(たとえロックをつけたとしても)高価なものでもよいですが、盗まれても壊れてもよいくらいのものの方が安心です。現地でレンタサイクルするのもおすすめです。
ニームに到着し、まず向かったのは選手が泊まるホテル。ニーム市街にはチェーン系のホテルが集合して建つ地域があって、ほとんどのチームがそのエリアに泊まっていたので、今回は巡るのが楽でした(時には車で1時間近く走らないといけない時も)。
まず向かったのはチームイネオス。ホテルにはチームバスやチームカーが停まっているのですぐにわかります。真っ黒なイネオスのバスは、底部に「選手一人につき一台」と言われている洗濯機が備え付けてあり、がんがん回っています。今大会マイヨジョーヌが確定したエガン・ベルナルとゲラント・トーマス、デイヴィット・ブレイルスフォード監督の記者会見にはメディアが溢れんばかりに詰めかけていました。記者会見はメディア関係者しか入れませんが、外からその様子を観ることができることも多いのです。
次に向かったのはボーラ・ハンスグローエ。もちろん目当てはペテル・サガン。そこでお会いしたのが横浜から観戦にいらしていた島岡さんご夫婦。
島岡夫妻はなんとこの日の朝に到着してそのままチームホテルに直行。サガンの写真が貼られた手作りのうちわを手にサガンを出待ち。まったく疲れを感じさせず、ボーラのバスを前にしてワクワクが伝わってきます!
そしてまず現れたのがチームメイトのダニエル・オス。オスは親日家でもあるしとてもフレンドリーで、快くサインをしてくれた模様。さらにしばらく待っていると、今度は洗車中のメカニックが手招き…「洗っていいよ〜」とスポンジを手渡され、なんとサガンの自転車を洗車させてくれたんです!これには島岡さんも大感激。
「まさかテレビで観ていたサガンの自転車を自分が洗うなんて…」「見てください!サガンの自転車。Why So Serious?(なぜそんなにマジなの)ですって。かっこいい」。
そんなサガンがBORA自慢のIHコイルを持ってほほ笑むキッチンカーの方に回ると、ちょうど選手が食事中だったようで、まわりにはファンがいっぱい。エアコンがないのか窓は開けられています。ちらりとサガンも見えた!
サガンファンクラブのジャージを着た人も。食事を終えたサガンが姿を見せると「サガンー!」と大歓声。バスを降りるとすぐにファンサービス。子供から大人まで、たくさんの人から写真を撮られたりサインをねだられたり。サガンは終始にこやかに対応していました。さすがスーパースターは違います。こんなファンサービスを見ていると、ますますファンになっちゃいますね。
次に向かったのはこの時点でマイヨジョーヌを着用していたジュリアン・アラフィリップのドゥクーニンク・クイックステップ。さすがにフランス人ファンでいっぱい! バスの前にはライオンがずらり。アラフィリップの自転車はマイヨジョーヌカラーとライオンとひまわりでデコレート。この雰囲気にスタッフは少し落ち着かなくて慣れない感じもしましたが、これまでのクイックステップには見られなかったお祝いムードがたっぷり。
そんなドゥクーニンク・クイックステップのバスで出会ったのが地元ニーム在住でお休みを3日間取って観戦に来たというフランス人ファミリー。聞くと「フランス人がここまで活躍してくれるのは本当にうれしい!アラフィリップがこのままマイヨジョーヌをキープしてくれるとよいけど、アラフィリップは僕がだめでもピノーが行ってくれる…そんな風に言っていた。ジェラシーを全く感じずお互いを讃えあうのがすばらしい!」と。
マイヨジョーヌは34年ぶりにフランス人の手に…という夢は叶わなかったけど、フランス人の喜びぶりはやはり大変なものでした。一方、ティボ・ピノーがいるグルパマFDJのホテルの前にもファンが詰めかけていましたが、扉は閉まったままでした。警備が厳しく、中で記者会見が行われていた模様です。フランスの期待を集めすぎるピノーだけに、そうせざるを得なかったのだろうと思いました。
その後トレック・セガフレードのホテルではリッチー・ポート、ミッチェルトン・スコットのバスの前ではマッテオ・トレンティン、モビスターのナイロ・キンタナの練習帰りにも遭遇。観戦するなら休息日も交えた方がよい理由はこれ! 選手たちと直に会えるんです。緊張感がないから、近づきやすいし。
愛知県からいらした松久さんご夫婦も「テレビで観ていて、いつかは!と思っていました。」と大満足のようでした。
さて私もチームホテルを後にして宿に一旦チェックイン。自転車を組み立ててニームの街に駆り出しましょう。向かったのは昨年より休息日に設けられるようになったツールの「ファンパーク」。
ファンパークとは、ステージ毎のスタート地に設けられ関係者やVIP等のみ入ることができる「ヴィラージュ」のようなイベント会場で、誰もが無料で入ることができます。
そして、事前にインターネットで見つけて予約していた「Ebikeでツアーライド」に参加してみました。Ebikeに乗ってガイドさんがニームの街を案内してくれるという30分のツアー。自転車も無料レンタルできます。休息地ではこのようにアクティビティが催されることが多いので要チェックです。
ツアーの予約時間は18時半。残念ながらEbikeの充電が間に合わず普通のバイクをお借りすることになりましたが、オーディオガイドをつけ、ガイドさんに連れられて街に出ます。人数は10名ほど。ガイドは録音されたものではなく、ライブで仏英二か国語。
ニームは「フランスのローマ」と言われ、紀元前の古代ローマ時代から存在する歴史的都市。ローマ時代の名残が色濃く残っており、旧市街に入ると時を忘れてしまうような錯覚を覚えます。デニムの生まれ故郷でもあり、中世の頃から織物繊維産業で栄えたニーム。ガイドツアーでは巨大な円形闘技場「アレン」や、紀元5年にアウグストゥス帝の子孫に捧げられた神殿「メゾン・カレ」など回り、歩いてはなかなか行けない場所まで回れ、ニームの街を堪能することができました。ニーム市が主催した期間限定のライドツアーで、各回満席でした。
ファンパークはスポンサーや自治体がブースを出し、フードゾーン、アクティビティゾーン、ダンスパフォーマンスゾーン、自治体のサービスや団体が運営するゾーンなどにざっくり分けられています。
今年も子供たちのための自転車パークが設けられ、昨年よりパワーアップ。角度がついた「カント」のようなものができています。自転車はもちろん、ヘルメットやグローブを無料で貸し出ししていて、係のお兄さんに助けてもらいながらスタート→フィニッシュ。フィニッシュしたあとは終了証ももらえます。
何万人もの来場者が訪れるファンパーク。休息日の観戦に加えてみるのもおすすめです。
筆者プロフィール:目黒 誠子(めぐろせいこ)
宮城県丸森町生まれ。2006年ジャパンカップサイクルロードレースに業務で携わってからロードレースの世界に魅了される。2014年より3年間、ツアー・オブ・ジャパンでは海外チームの招待・連絡を担当していた。ロードバイクでのサイクリングを楽しむ。航空会社の広報系の仕事にも携わり、折り紙飛行機の指導員という変わりダネ資格を持つ。現在は宮城県丸森町に拠点を置きつつ、海外の自転車事情やライフスタイルを取材しながら、ライター、プロデューサー、コーディネーターとして活動。自転車とまちづくり・クリーン工房アドバイザー、「自転車と旅の日〜MARUVÉLO(マルベロ)」代表。(https://www.facebook.com/maruvelo/)
photo&text:Seiko.Meguro
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