2019/07/13(土) - 02:44
今大会最長230kmのロングコースを締めくくるツール・ド・フランス第7ステージの大集団スプリント。ヴィヴィアーニの後ろから飛び出し、ユアンとのスプリント一騎打ちを制したディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)が今大会ステージ1勝目、3年連続となるステージ優勝を飾った。
7月12日(金)第7ステージ
ベルフォール〜シャロン・シュル・ソーヌ
距離:230km
獲得標高差:2,500m
天候:曇りのち晴
気温:20度〜29度
山岳ステージを繋ぐ230kmの大会最長ステージ
大会最初の山岳決戦を終えて、ツールはヴォージュ山脈から中央山塊へと移行する。今大会最長230kmステージ(ニュートラル走行を含めると237km)は、ジュラ山脈をかすめるように走る前半に3つのカテゴリー山岳が設定されているものの、後半の90kmはほぼ真っ平らなレイアウト。32年ぶり5回目の登場となるフィニッシュ地点シャロン・シュル・ソーヌでの、ピュアスプリンターたちによる大会4回目の集団スプリントバトルに注目が集まった。
ドイツ国境やスイス国境に近い要塞都市ベルフォールをスタートするとヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)とステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)の2人が早速逃げを開始。すでに総合で49分以上遅れているこの2人をメイン集団はすんなりと見送った。
逃げグループを形成した2名
ヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)
ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)
2017年大会第2ステージと2018年大会第1ステージで敢闘賞を獲得しているオフルドと、2019年大会第1ステージで敢闘賞を獲得しているロセットの逃げ。普段から友人関係にある2人は、今シーズン怪我により一時的に戦線を離脱しているところも共通している。オフルドは3月のGPドゥナンで落車して1ヶ月戦線を離脱。ロセットもまた3月のトレーニング中に猫を避けて落車し、臀部を骨折している。
少人数の逃げと、進行方向から吹く緩い向かい風によりレースは平均35km/h前後という比較的スローペースで進んだ。最大5分35秒まで広がったタイム差を縮めにかかったのはドゥクーニンク・クイックステップやユンボ・ヴィズマ、ロット・スーダルといったスプリンターチーム。それぞれカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)、トニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)らを集団先頭のローテーションに送り込んだ。
落車や集団分裂を起こしながらも勝負は集団スプリントへ
地元を走るティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)の「平穏なステージに見えても、罠には常に注意を払わなければならない」という言葉通り、8km地点でティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションファースト)やマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)が落車。再スタートに時間がかかったヴァンガーデレンは、顔から血を流し、破れたジャージのままフィニッシュを目指すことに。
フィニッシュまで90kmを切り、ソーヌ川が作り出した広大な平野に入るとタイム差は2分前後で推移する。メイン集団がにわかに活性化したのはスプリントポイント(残り33.5km地点)。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を下したソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)を先頭にスプリントポイントを通過したメイン集団がその後の横風区間での中切れにより分裂した。
メイン集団がハイペースを維持したため、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)が後方に取り残される事態に。しかしモビスター勢の追走によって脱落者はメイン集団に復帰してレースは落ち着きを取り戻す。最後まで粘った先頭オフルドも残り13km地点で捉えられ、スプリンターチームを先頭にシャロン・シュル・ソーヌに突進した。
ヴィヴィアーニの後ろからユアンとフルーネウェーヘンがスプリント
ドゥクーニンク・クイックステップやユンボ・ヴィズマ、サンウェブ、ボーラ・ハンスグローエが隊列を組んで集団前方に上がり、危険回避のためにチームイネオスも加わって残り5km。町の外周道路をぐるっと回り、残り1.6km地点の最終コーナーを抜けるとそこからはソーヌ川に沿った平坦路。先頭でフラムルージュ(残り1kmアーチ)を通過したダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)の後ろから、フィニッシュラインまで700mを残してドゥクーニンク・クイックステップのトレインが発進した。
イヴ・ランパールト(ベルギー)、ミケル・モルコフ(デンマーク)、マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)という完璧な並びでスプリントに持ち込んだドゥクーニンク・クイックステップ。ランパールトが残り500mで離れ、モルコフが残り300mで離れ、最終発射台リケーゼが残り200mを切ったところでヴィヴィアーニを解き放つ。
しかしヴィヴィアーニのスプリントは伸びなかった。フロントタイヤが半分パンクした状態でスプリントに挑んでいたヴィヴィアーニは、番手につけていたマイヨヴェールのサガンに追い抜かれ、さらにカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)やディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)との加速力勝負に敗れてしまう。残り75mから始まる登り勾配で爆発的に加速したユアンと、リケーゼのリードアウト中に5番手からロングスプリントを仕掛けたフルーネウェーヘンが先頭へ。ユアンとともにハンドルを投げたフルーネウェーヘンが、約20cmという僅差ながら自信をもって片手を上げた。
3年連続、ステージ通算4勝目を飾ったフルーネウェーヘン
第1ステージの集団スプリント直前に落車し、その落車で負った負傷が原因でこれまでのスプリントで本来のスピードを発揮できずにいたフルーネウェーヘンが今大会ステージ1勝目。ステージ2位ユアンの最高速が70.0km/h、ステージ3位のサガンの最高速が69.4km/hだったのに対し、後方からスピードを乗せたフルーネウェーヘンの最高速は74.1km/hに達している。
「とても素晴らしいスプリンターであるカレブ(ユアン)との接戦。彼とのスプリントをいつも楽しんでいる。今回は僕が勝つ番だった。難しい開幕を迎えてしまったものの、昨日のステージで調子の良さを取り戻すことができたんだ。チームは全力でサポートしてくれたよ。残り350mからのロングスプリントだったけど、なんとかユアンを追い抜くことができた。大会初日に困難に見舞われながらも、ここまで辛抱して走り続けてきた甲斐があった。ずっと変わらず信頼してくれたチームに感謝したい」と、2017年と2018年に続く3年連続ステージ優勝を飾ったフルーネウェーヘンは表彰台で表情を緩めた。
ポイント賞2位に浮上したコルブレッリに56ポイント差をつけてサガンがマイヨヴェールをキープ。この日は84名がトップと同タイムでフィニッシュしており、ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)がマイヨジョーヌを守っている。翌日の第8ステージは中央山塊のカテゴリー山岳が7つ組み込まれた獲得標高差4,000mの難関ステージ。注目は再び総合争いに集まる。
7月12日(金)第7ステージ
ベルフォール〜シャロン・シュル・ソーヌ
距離:230km
獲得標高差:2,500m
天候:曇りのち晴
気温:20度〜29度
山岳ステージを繋ぐ230kmの大会最長ステージ
大会最初の山岳決戦を終えて、ツールはヴォージュ山脈から中央山塊へと移行する。今大会最長230kmステージ(ニュートラル走行を含めると237km)は、ジュラ山脈をかすめるように走る前半に3つのカテゴリー山岳が設定されているものの、後半の90kmはほぼ真っ平らなレイアウト。32年ぶり5回目の登場となるフィニッシュ地点シャロン・シュル・ソーヌでの、ピュアスプリンターたちによる大会4回目の集団スプリントバトルに注目が集まった。
ドイツ国境やスイス国境に近い要塞都市ベルフォールをスタートするとヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)とステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)の2人が早速逃げを開始。すでに総合で49分以上遅れているこの2人をメイン集団はすんなりと見送った。
逃げグループを形成した2名
ヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)
ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)
2017年大会第2ステージと2018年大会第1ステージで敢闘賞を獲得しているオフルドと、2019年大会第1ステージで敢闘賞を獲得しているロセットの逃げ。普段から友人関係にある2人は、今シーズン怪我により一時的に戦線を離脱しているところも共通している。オフルドは3月のGPドゥナンで落車して1ヶ月戦線を離脱。ロセットもまた3月のトレーニング中に猫を避けて落車し、臀部を骨折している。
少人数の逃げと、進行方向から吹く緩い向かい風によりレースは平均35km/h前後という比較的スローペースで進んだ。最大5分35秒まで広がったタイム差を縮めにかかったのはドゥクーニンク・クイックステップやユンボ・ヴィズマ、ロット・スーダルといったスプリンターチーム。それぞれカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)、トニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)らを集団先頭のローテーションに送り込んだ。
落車や集団分裂を起こしながらも勝負は集団スプリントへ
地元を走るティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)の「平穏なステージに見えても、罠には常に注意を払わなければならない」という言葉通り、8km地点でティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションファースト)やマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)が落車。再スタートに時間がかかったヴァンガーデレンは、顔から血を流し、破れたジャージのままフィニッシュを目指すことに。
フィニッシュまで90kmを切り、ソーヌ川が作り出した広大な平野に入るとタイム差は2分前後で推移する。メイン集団がにわかに活性化したのはスプリントポイント(残り33.5km地点)。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を下したソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)を先頭にスプリントポイントを通過したメイン集団がその後の横風区間での中切れにより分裂した。
メイン集団がハイペースを維持したため、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)が後方に取り残される事態に。しかしモビスター勢の追走によって脱落者はメイン集団に復帰してレースは落ち着きを取り戻す。最後まで粘った先頭オフルドも残り13km地点で捉えられ、スプリンターチームを先頭にシャロン・シュル・ソーヌに突進した。
ヴィヴィアーニの後ろからユアンとフルーネウェーヘンがスプリント
ドゥクーニンク・クイックステップやユンボ・ヴィズマ、サンウェブ、ボーラ・ハンスグローエが隊列を組んで集団前方に上がり、危険回避のためにチームイネオスも加わって残り5km。町の外周道路をぐるっと回り、残り1.6km地点の最終コーナーを抜けるとそこからはソーヌ川に沿った平坦路。先頭でフラムルージュ(残り1kmアーチ)を通過したダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)の後ろから、フィニッシュラインまで700mを残してドゥクーニンク・クイックステップのトレインが発進した。
イヴ・ランパールト(ベルギー)、ミケル・モルコフ(デンマーク)、マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)という完璧な並びでスプリントに持ち込んだドゥクーニンク・クイックステップ。ランパールトが残り500mで離れ、モルコフが残り300mで離れ、最終発射台リケーゼが残り200mを切ったところでヴィヴィアーニを解き放つ。
しかしヴィヴィアーニのスプリントは伸びなかった。フロントタイヤが半分パンクした状態でスプリントに挑んでいたヴィヴィアーニは、番手につけていたマイヨヴェールのサガンに追い抜かれ、さらにカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)やディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)との加速力勝負に敗れてしまう。残り75mから始まる登り勾配で爆発的に加速したユアンと、リケーゼのリードアウト中に5番手からロングスプリントを仕掛けたフルーネウェーヘンが先頭へ。ユアンとともにハンドルを投げたフルーネウェーヘンが、約20cmという僅差ながら自信をもって片手を上げた。
3年連続、ステージ通算4勝目を飾ったフルーネウェーヘン
第1ステージの集団スプリント直前に落車し、その落車で負った負傷が原因でこれまでのスプリントで本来のスピードを発揮できずにいたフルーネウェーヘンが今大会ステージ1勝目。ステージ2位ユアンの最高速が70.0km/h、ステージ3位のサガンの最高速が69.4km/hだったのに対し、後方からスピードを乗せたフルーネウェーヘンの最高速は74.1km/hに達している。
「とても素晴らしいスプリンターであるカレブ(ユアン)との接戦。彼とのスプリントをいつも楽しんでいる。今回は僕が勝つ番だった。難しい開幕を迎えてしまったものの、昨日のステージで調子の良さを取り戻すことができたんだ。チームは全力でサポートしてくれたよ。残り350mからのロングスプリントだったけど、なんとかユアンを追い抜くことができた。大会初日に困難に見舞われながらも、ここまで辛抱して走り続けてきた甲斐があった。ずっと変わらず信頼してくれたチームに感謝したい」と、2017年と2018年に続く3年連続ステージ優勝を飾ったフルーネウェーヘンは表彰台で表情を緩めた。
ポイント賞2位に浮上したコルブレッリに56ポイント差をつけてサガンがマイヨヴェールをキープ。この日は84名がトップと同タイムでフィニッシュしており、ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)がマイヨジョーヌを守っている。翌日の第8ステージは中央山塊のカテゴリー山岳が7つ組み込まれた獲得標高差4,000mの難関ステージ。注目は再び総合争いに集まる。
ツール・ド・フランス2019第7ステージ結果
1位 | ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 6:02:44 |
2位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | |
3位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
4位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | |
5位 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) | |
6位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
7位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、ディメンションデータ) | |
8位 | ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
9位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | |
10位 | アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 29:17:39 |
2位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:06 |
3位 | ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) | 0:00:32 |
4位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ) | 0:00:47 |
5位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) | 0:00:49 |
6位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 0:00:53 |
7位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:00:58 |
8位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 0:01:04 |
9位 | マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト) | 0:01:13 |
10位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) | 0:01:15 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 177pts |
2位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 121pts |
3位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 117pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 43pts |
2位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 30pts |
3位 | クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール) | 27pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 29:17:39 |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 0:00:53 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:01:23 |
チーム総合成績
1位 | トレック・セガフレード | 88:27:39 |
2位 | モビスター | 0:01:39 |
3位 | グルパマFDJ | 0:02:04 |
text&photo:Kei Tsuji in Chalon-sur-Saône, France
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