2019/07/12(金) - 03:19
最大勾配24%の激坂区間と未舗装路が登場した1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユにフィニッシュするツール・ド・フランス第6ステージでディラン・トゥーンス(バーレーン・メリダ)が逃げ切り勝利。ジロ山岳王のジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)がマイヨジョーヌを手にした。
7月11日(木)第6ステージ
ミュールーズ〜ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ
距離:160.5km
獲得標高差:3,800m
天候:雨のち曇り
気温:16〜20度
ヴォージュ山脈の7つのカテゴリー山岳が詰め込まれた160.5kmコース
「TTの距離が短く、とにかく山岳が厳しい」という前評判のツール第106回大会。ヴォージュ山脈を駆け巡る第6ステージはピレネーやアルプスステージに匹敵する難易度を誇っており、実に7つのカテゴリー山岳が160.5kmに詰め込まれた。スタート後すぐに、ヴォージュ山脈最高峰1,424mのグランバロン山のすぐ脇を通る峠に向かって長い登りが始まる。
折り返し地点を通過してから始まる1級山岳バロン・ダルザス(距離11km/平均5.8%)は、1905年にツール史上初めて導入された峠。今から50年前の1969年にエディ・メルクスがステージ初優勝を飾った峠でもある。そこからさらに「ボーナスポイント」が設定された急勾配の2級山岳シュヴレール峠(距離3.5km/平均9.5%)を越え、最後に姿を現すのがツール史上4回目の登場となる1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ。これまでラ・プランシュは距離5.9km/平均8.5%/最大20%の難所として登場してきたが、2019年はそこからさらに標高1,140mの山頂まで続く林道を走る。路面はしっかりと固められているものの、残り800mから残り300mまでは未舗装。この1.1kmの延長によりラ・プランシュは距離7km/平均8.7%/最大24%と、さらなる破壊力を身につけている。
曇り空のミュールーズをスタートしたのは175名。第4ステージの落車で肋骨を2ヶ所骨折したパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、CCCチーム)が今大会最初のリタイア者に。この日はニコラ・エデ(フランス、コフィディス)がステージ前半にバイクを降りている。
クリスティアン・プリュドム氏が正式スタートを告げる旗を振るとすぐ、ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス)がファーストアタックを仕掛けた。最終的に先頭で逃げグループを形成したのは14名。トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が強力に牽引するこの逃げグループにはマイヨアポワを着るティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)も乗る。タイム差がすぐさま5分を超えたため、ジロ・デ・イタリアで山岳賞を獲得した総合42位/1分43秒遅れのジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)がバーチャルマイヨジョーヌの座に就いた。
逃げグループを形成した14名
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)
ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)
ファビアン・グルリエ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)
アンドレア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)
ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)
ブノワ・コズネフロワ(フランス、アージェードゥーゼール)
ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)
セルジュ・パウェルス(ベルギー、CCCチーム)
アンドレ・グライペル(ドイツ、アルケア・サムシック)
ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス)
ウェレンスが山岳ポイントを量産し、モビスターが集団のペースを上げる
第3ステージで落車負傷しながらもレースを続けているカスパー・アスグリーン(デンマーク)やマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)、イヴ・ランパールト(ベルギー)らドゥクーニンク・クイックステップ勢が長時間牽引。しかし、2018年のイル・ロンバルディア終了後にイタリアからベルギーまで1,000kmの自転車旅行を共にし、ツール期間中にホテルの部屋をシェアしているデヘントとウェレンスを含む逃げが順調にそのリードを広げていく。合計7つのカテゴリー山岳のうち3つの山岳をこなしたステージ中盤でタイム差は8分を超えた。
カテゴリー山岳で最大44ポイントを量産できるこの第6ステージで、デヘントの手厚いサポートを受けたウェレンスは1級山岳ル・マルクシュタインと1級山岳バロン・ダルザスを先頭通過。ウェレンスがマイヨアポワキープに向けて順調にポイントを積み重ねていく。
一貫してドゥクーニンク・クイックステップのコントロール下に置かれたメイン集団は、残り55km地点の1級山岳バロン・ダルザスでモビスターの牽引に切り替わる。下り区間でミッチェルトン・スコットやボーラ・ハンスグローエもペースアップに加わるとタイム差は5分台に。徐々に逃げ切りが濃厚となった先頭グループからは3級山岳クロワ峠でデヘントが独走を開始した。
トレック・セガフレードが率いる追走グループはチッコーネ、トゥーンス、ウェレンス、ムーリッセに絞られ、続く2級山岳シュヴレール峠で先頭デヘントを追い抜いていく。「ボーナスポイント」に指定された2級山岳シュヴレール峠を先頭通過したチッコーネは8秒のボーナスタイムを獲得。結果的にこの8秒がマイヨジョーヌの行方に響くことになる。先頭4名はメイン集団から3分30秒のリードを持って、最後の1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユに突入した。
激坂で繰り広げられたトゥーンスとチッコーネステージ優勝争い
前半からコンスタントに勾配が10%を超える1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユでたまらず先頭からウェレンスとムーリッセが遅れ、ステージ優勝の行方はチッコーネとトゥーンスの2人に絞られる。チッコーネが何度かの加速を見せたがトゥーンスは離れない。20%の激坂区間を越えて旧フィニッシュ地点を通過し、未舗装区間に入っても2人のタンデム走行は崩れなかった。
残り300mで再び舗装路に切り替わると、容赦無く勾配は最大24%まで上昇していく。残り100mの激坂区間に差し掛かるとチッコーネがこらえきれずに失速。フィニッシュラインまでもがき切ったトゥーンスが達成感溢れる表情を浮かべながら大きく両手を広げた。
ディフェンディングチャンピオンのトーマスが総合ライバルを突き放す
先頭から3分30秒遅れで1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユの登坂を開始したメイン集団では、モビスターからチームイネオスにコントロール役が切り替わった。ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームイネオス)がハイペースを作る集団から残り4kmを切ったところで最初に動いたのはワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)。続いて集団を抜け出したミケル・ランダ(スペイン、モビスター)が勢いよくフランスチャンピオンを追い抜いていく。
故郷がフィニッシュ地点から30kmほどしか離れていないティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)のために、約25名に絞られたメイン集団をダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)が率いて残り1.5km地点の急勾配区間をクリアする。残り1kmアーチを切って未舗装区間が始まると、マイヨジョーヌのアラフィリップが加速した。
未舗装区間でロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)らが集団から脱落する中、アラフィリップは先行していたランダを追い抜いてさらに先を急いだ。マイヨジョーヌを守るために緩斜面の未舗装路を駆け抜けたアラフィリップ。しかし残り300mから再び勾配が増すと、単独追走したゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)が一気に距離を詰める。
最終コーナーを抜けたところでアラフィリップを抜き去ったトーマスが、トゥーンスのフィニッシュから1分44秒遅れて、メイン集団の先頭となるステージ4位でフィニッシュした。アラフィリップはピノとともに1分46秒遅れで1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユの頂上に到達。ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)らがタイムロスを最小限に抑えた一方で、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)はトーマスから56秒、バルデは1分09秒ものタイムを失った。
ツール初出場のトゥーンスとチッコーネが掴んだ栄光と栄誉
「信じられない。ドーフィネの時点で調子の良さを感じていたとは言え、ツールでのステージ優勝は本当に信じられない。今日も、逃げ切りの可能性があったのは確かだけど、まさか勝てるとは思わなかった。絶好のチャンスを掴んだんだ」と初出場のツールでステージ初勝利を飾ったトゥーンス。
「最後から2つ目の登りで逃げグループが4人に絞られ、その中でチッコーネが最も警戒すべき選手だと思っていた。そして最後の登りの麓で、両親とガールフレンドが沿道にいるのが見えたんだ。彼らの存在に感情が高ぶったよ」。トゥーンスは前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネの第2ステージで逃げ切り勝利を飾り、マイヨジョーヌを2日間着用するとともに総合6位で完走。この日の逃げ切り勝利により総合でも3位まで順位を上げることに成功している。
アラフィリップはマイヨジョーヌ着用者として果敢な走りを見せたものの、この日1分46秒差をつけて逃げ切り、さらにボーナスタイムを合計14秒獲得したチッコーネに6秒差で総合首位の座を明け渡している。2級山岳シュヴレール峠に設定された「ボーナスポイント」でのボーナスタイム8秒が明暗を分けた。
「マイヨジョーヌは子供の頃からの夢だった。その夢を今日叶えたんだ。本当に美しい達成感に包まれている。今日のチームの目標はステージ優勝だった。その目標を達成できずに苛立っていたところに、マイヨジョーヌ獲得というニュースが飛び込んできたんだ。すぐに怒りはどこかに飛んで行った」と、感極まった表情でマイヨジョーヌを受け取ったチッコーネ。
ジロ・デ・イタリアでステージ優勝&山岳賞を獲得したチッコーネがマイヨジョーヌとマイヨブランを獲得。さらに山岳賞ランキングでも2位に浮上したチッコーネは「シーズン最大の目標であるジロを好調な状態で終えてから、ツールにも出場することが決まった。24歳という若さもあって、まずは経験を積むために出場が決まったんだ。その結果、想像を上回る結果を手にすることができた。平坦ステージもしっかりとハードなツールでマイヨジョーヌを守る準備がチームにはできている」と語っている。
ツール初出場の2人が逃げ切り勝利とマイヨジョーヌ獲得。大会最初の山頂フィニッシュを終えたツールは、次なる決戦の場である中央山塊やピレネー山脈に向けて西進を開始する。
7月11日(木)第6ステージ
ミュールーズ〜ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ
距離:160.5km
獲得標高差:3,800m
天候:雨のち曇り
気温:16〜20度
ヴォージュ山脈の7つのカテゴリー山岳が詰め込まれた160.5kmコース
「TTの距離が短く、とにかく山岳が厳しい」という前評判のツール第106回大会。ヴォージュ山脈を駆け巡る第6ステージはピレネーやアルプスステージに匹敵する難易度を誇っており、実に7つのカテゴリー山岳が160.5kmに詰め込まれた。スタート後すぐに、ヴォージュ山脈最高峰1,424mのグランバロン山のすぐ脇を通る峠に向かって長い登りが始まる。
折り返し地点を通過してから始まる1級山岳バロン・ダルザス(距離11km/平均5.8%)は、1905年にツール史上初めて導入された峠。今から50年前の1969年にエディ・メルクスがステージ初優勝を飾った峠でもある。そこからさらに「ボーナスポイント」が設定された急勾配の2級山岳シュヴレール峠(距離3.5km/平均9.5%)を越え、最後に姿を現すのがツール史上4回目の登場となる1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ。これまでラ・プランシュは距離5.9km/平均8.5%/最大20%の難所として登場してきたが、2019年はそこからさらに標高1,140mの山頂まで続く林道を走る。路面はしっかりと固められているものの、残り800mから残り300mまでは未舗装。この1.1kmの延長によりラ・プランシュは距離7km/平均8.7%/最大24%と、さらなる破壊力を身につけている。
曇り空のミュールーズをスタートしたのは175名。第4ステージの落車で肋骨を2ヶ所骨折したパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、CCCチーム)が今大会最初のリタイア者に。この日はニコラ・エデ(フランス、コフィディス)がステージ前半にバイクを降りている。
クリスティアン・プリュドム氏が正式スタートを告げる旗を振るとすぐ、ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス)がファーストアタックを仕掛けた。最終的に先頭で逃げグループを形成したのは14名。トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が強力に牽引するこの逃げグループにはマイヨアポワを着るティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)も乗る。タイム差がすぐさま5分を超えたため、ジロ・デ・イタリアで山岳賞を獲得した総合42位/1分43秒遅れのジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)がバーチャルマイヨジョーヌの座に就いた。
逃げグループを形成した14名
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)
ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)
ファビアン・グルリエ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)
アンドレア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)
ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)
ブノワ・コズネフロワ(フランス、アージェードゥーゼール)
ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)
セルジュ・パウェルス(ベルギー、CCCチーム)
アンドレ・グライペル(ドイツ、アルケア・サムシック)
ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス)
ウェレンスが山岳ポイントを量産し、モビスターが集団のペースを上げる
第3ステージで落車負傷しながらもレースを続けているカスパー・アスグリーン(デンマーク)やマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)、イヴ・ランパールト(ベルギー)らドゥクーニンク・クイックステップ勢が長時間牽引。しかし、2018年のイル・ロンバルディア終了後にイタリアからベルギーまで1,000kmの自転車旅行を共にし、ツール期間中にホテルの部屋をシェアしているデヘントとウェレンスを含む逃げが順調にそのリードを広げていく。合計7つのカテゴリー山岳のうち3つの山岳をこなしたステージ中盤でタイム差は8分を超えた。
カテゴリー山岳で最大44ポイントを量産できるこの第6ステージで、デヘントの手厚いサポートを受けたウェレンスは1級山岳ル・マルクシュタインと1級山岳バロン・ダルザスを先頭通過。ウェレンスがマイヨアポワキープに向けて順調にポイントを積み重ねていく。
一貫してドゥクーニンク・クイックステップのコントロール下に置かれたメイン集団は、残り55km地点の1級山岳バロン・ダルザスでモビスターの牽引に切り替わる。下り区間でミッチェルトン・スコットやボーラ・ハンスグローエもペースアップに加わるとタイム差は5分台に。徐々に逃げ切りが濃厚となった先頭グループからは3級山岳クロワ峠でデヘントが独走を開始した。
トレック・セガフレードが率いる追走グループはチッコーネ、トゥーンス、ウェレンス、ムーリッセに絞られ、続く2級山岳シュヴレール峠で先頭デヘントを追い抜いていく。「ボーナスポイント」に指定された2級山岳シュヴレール峠を先頭通過したチッコーネは8秒のボーナスタイムを獲得。結果的にこの8秒がマイヨジョーヌの行方に響くことになる。先頭4名はメイン集団から3分30秒のリードを持って、最後の1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユに突入した。
激坂で繰り広げられたトゥーンスとチッコーネステージ優勝争い
前半からコンスタントに勾配が10%を超える1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユでたまらず先頭からウェレンスとムーリッセが遅れ、ステージ優勝の行方はチッコーネとトゥーンスの2人に絞られる。チッコーネが何度かの加速を見せたがトゥーンスは離れない。20%の激坂区間を越えて旧フィニッシュ地点を通過し、未舗装区間に入っても2人のタンデム走行は崩れなかった。
残り300mで再び舗装路に切り替わると、容赦無く勾配は最大24%まで上昇していく。残り100mの激坂区間に差し掛かるとチッコーネがこらえきれずに失速。フィニッシュラインまでもがき切ったトゥーンスが達成感溢れる表情を浮かべながら大きく両手を広げた。
ディフェンディングチャンピオンのトーマスが総合ライバルを突き放す
先頭から3分30秒遅れで1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユの登坂を開始したメイン集団では、モビスターからチームイネオスにコントロール役が切り替わった。ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームイネオス)がハイペースを作る集団から残り4kmを切ったところで最初に動いたのはワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)。続いて集団を抜け出したミケル・ランダ(スペイン、モビスター)が勢いよくフランスチャンピオンを追い抜いていく。
故郷がフィニッシュ地点から30kmほどしか離れていないティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)のために、約25名に絞られたメイン集団をダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)が率いて残り1.5km地点の急勾配区間をクリアする。残り1kmアーチを切って未舗装区間が始まると、マイヨジョーヌのアラフィリップが加速した。
未舗装区間でロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)らが集団から脱落する中、アラフィリップは先行していたランダを追い抜いてさらに先を急いだ。マイヨジョーヌを守るために緩斜面の未舗装路を駆け抜けたアラフィリップ。しかし残り300mから再び勾配が増すと、単独追走したゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)が一気に距離を詰める。
最終コーナーを抜けたところでアラフィリップを抜き去ったトーマスが、トゥーンスのフィニッシュから1分44秒遅れて、メイン集団の先頭となるステージ4位でフィニッシュした。アラフィリップはピノとともに1分46秒遅れで1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユの頂上に到達。ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)らがタイムロスを最小限に抑えた一方で、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)はトーマスから56秒、バルデは1分09秒ものタイムを失った。
ツール初出場のトゥーンスとチッコーネが掴んだ栄光と栄誉
「信じられない。ドーフィネの時点で調子の良さを感じていたとは言え、ツールでのステージ優勝は本当に信じられない。今日も、逃げ切りの可能性があったのは確かだけど、まさか勝てるとは思わなかった。絶好のチャンスを掴んだんだ」と初出場のツールでステージ初勝利を飾ったトゥーンス。
「最後から2つ目の登りで逃げグループが4人に絞られ、その中でチッコーネが最も警戒すべき選手だと思っていた。そして最後の登りの麓で、両親とガールフレンドが沿道にいるのが見えたんだ。彼らの存在に感情が高ぶったよ」。トゥーンスは前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネの第2ステージで逃げ切り勝利を飾り、マイヨジョーヌを2日間着用するとともに総合6位で完走。この日の逃げ切り勝利により総合でも3位まで順位を上げることに成功している。
アラフィリップはマイヨジョーヌ着用者として果敢な走りを見せたものの、この日1分46秒差をつけて逃げ切り、さらにボーナスタイムを合計14秒獲得したチッコーネに6秒差で総合首位の座を明け渡している。2級山岳シュヴレール峠に設定された「ボーナスポイント」でのボーナスタイム8秒が明暗を分けた。
「マイヨジョーヌは子供の頃からの夢だった。その夢を今日叶えたんだ。本当に美しい達成感に包まれている。今日のチームの目標はステージ優勝だった。その目標を達成できずに苛立っていたところに、マイヨジョーヌ獲得というニュースが飛び込んできたんだ。すぐに怒りはどこかに飛んで行った」と、感極まった表情でマイヨジョーヌを受け取ったチッコーネ。
ジロ・デ・イタリアでステージ優勝&山岳賞を獲得したチッコーネがマイヨジョーヌとマイヨブランを獲得。さらに山岳賞ランキングでも2位に浮上したチッコーネは「シーズン最大の目標であるジロを好調な状態で終えてから、ツールにも出場することが決まった。24歳という若さもあって、まずは経験を積むために出場が決まったんだ。その結果、想像を上回る結果を手にすることができた。平坦ステージもしっかりとハードなツールでマイヨジョーヌを守る準備がチームにはできている」と語っている。
ツール初出場の2人が逃げ切り勝利とマイヨジョーヌ獲得。大会最初の山頂フィニッシュを終えたツールは、次なる決戦の場である中央山塊やピレネー山脈に向けて西進を開始する。
ツール・ド・フランス2019第6ステージ結果
1位 | ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) | 4:29:03 |
2位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 0:00:11 |
3位 | クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール) | 0:01:05 |
4位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) | 0:01:44 |
5位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:01:46 |
6位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
7位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:01:51 |
8位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
9位 | ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) | 0:01:53 |
10位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | |
11位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | |
12位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | |
13位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:01:58 |
14位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ) | |
15位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) | 0:02:02 |
16位 | マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト) | |
17位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ) | |
18位 | エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:02:17 |
19位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | 0:02:19 |
20位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | |
21位 | ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック) | 0:02:27 |
22位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:02:35 |
27位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:02:53 |
DNF | ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) | |
DNS | パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、CCCチーム) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 23:14:55 |
2位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:06 |
3位 | ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) | 0:00:32 |
4位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ) | 0:00:47 |
5位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) | 0:00:49 |
6位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 0:00:53 |
7位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:00:58 |
8位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 0:01:04 |
9位 | マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト) | 0:01:13 |
10位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) | 0:01:15 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 144pts |
2位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | 98pts |
3位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 92pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 43pts |
2位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 30pts |
3位 | クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール) | 27pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 23:14:55 |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 0:00:53 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:01:23 |
チーム総合成績
1位 | トレック・セガフレード | 70:19:27 |
2位 | モビスター | 0:01:39 |
3位 | グルパマFDJ | 0:02:04 |
text&photo:Kei Tsuji in La Planche des Belles Filles, France
Amazon.co.jp