2019/02/19(火) - 17:30
マヴィックのロードUSTチューブレス用タイヤ「YKSION PRO UST」をインプレッション。ハッチンソンと共同開発され、ロードチューブレスとしての運用のしやすさだけでなく、レーシングタイヤとしても高い性能を獲得した製品に仕上がる。
マヴィック YKSION PRO UST photo:Yuto.Murata
独自のロードUSTシステムによってチューブレスホイールの火付け役ともなったマヴィック。チューブレスならではの快適な乗り心地と軽快な転がり、携帯ポンプでもビードを上げることのできる使い勝手の良さなど、多くのメリットを生み出したシステムで広く支持されているが、それらを実現可能としたのが専用設計の「YKSION PRO UST(イクシオンプロUST)」タイヤだ。
アルミからカーボンまで、エントリーからトップモデルまで各種USTチューブレスホイールをラインアップしているマヴィックだが、そのいずれにもYKSION PRO USTが標準装備される。従来のYKSIONタイヤはグリップリンク、パワーリンクと前後で異なるトレッドパターンを採用していたが、今作ではその区別はなく1種類のみの展開だ。
タイヤ表面に”tubeless(チューブレス)”の文字が刻まれる
25Cで最大7気圧までと圧倒的に低い設定だ
タイヤとして注目すべきはハッチンソンが誇る高性能コンパウンド「11STORM(イレブンストーム)」を採用した点だろう。自社でタイヤ製造の工場を持たないマヴィックは、チューブレスタイヤに一日の長があるハッチンソンとともにロードUST用タイヤを開発。従来型のコンパウンドから飛躍的に性能を向上させたイレブンストームによって転がり性能、グリップ力、耐久性などを高いレベルで実現している。
その上でビードやケーシング等タイヤの構造はYKSION PRO UST専用に設計。マヴィックホイールと合わせた時に最高のマッチングを見せる高い精度に調整されている。綿密に計算されたビード径が優れた嵌合精度をもたらし、ホイールに装着しやすくビードも上がりやすい、かつエア漏れも防ぐ安全でトラブルレスな作りを実現している。
左右から斜めに溝を切ったトレッドパターンを採用
フロント/リアのローテーション向きがあるため装着時に注意して欲しい
内幅17mmのワイドリム装着時は、25Cで実測幅26.1mmに
タイヤ自体はチューブレスレディタイプとし、30~40mlのシーラントを入れて使用することで気密性を高め、より低い空気圧での運用を可能とする。チューブが無いことでリム打ちパンクのリスクもなく、万が一パンクしてもシーラントが塞いでくれるため走行不可になる心配もない。
チューブとタイヤとの摩擦がないことで、パワーロスなく優れた転がり性能を発揮する点はチューブレス全般に言える大きなアドバンテージだ。タイヤ自体はチューブレス構造としたことで重量260g(25C)とやや重さはあるものの、シーラント分の30gを足しても290gに収まり、一般的なタイヤ+チューブの重量よりも20~50gほど軽量に仕上がっている。
チューブレスレディのため気密性を高めるインナーシール構造にはなっていない
実測重量260g(25C)
ミニマルグラフィックとされたマヴィックホイールに合わせて、2019年モデルではよりシンプルなデザインに。タイヤサイズは25Cと28Cで展開される。価格は7,500円(税抜)だ。
今回は他メーカーホイールとの嵌合の相性や作業性も確認するため、CW編集部で用意のあるイーストンのロードチューブレスホイール「EA90 SLX」にてテストした。以下、編集部員・村田によるインプレッションをお届けしよう。
― 編集部インプレッション
マヴィックのロードUSTホイールとセットで語られることが大半のYKSION PRO USTタイヤだが、純粋にチューブレスタイヤ単体として見た時の使い勝手や性能はどうなの?と興味を持つ人もいたことだろう。USTホイールに他社のチューブレスタイヤを組み合わせて使っている人は度々見受けられるが、その逆と言うのはあまり見かけない。
イーストンのEA90 SLXホイールと相性もバッチリ。インストールの作業性は非常に高い
まず、YKSION PRO USTはマヴィックホイールに最適化されたタイヤではあるが、今回テストしたイーストンホイールとの相性もこれまたバッチリ。タイヤレバーを使うこともなく難なく装着でき、かつフロアポンプで容易にビードも上がった。”バチン”というビードが上がる音はなかったものの、空気を抜いてもビードが落ちることはなく、手で強く押し込まないと外れないほどしっかりとリムの溝に嵌ってくれた。
過去にいくつかチューブレスタイヤを使用してきたが、嵌合のマッチングはYKSION PRO USTが一番良いと思わされるほど。ビードが外れにくいというのは安全性の面から見ても好印象だ。ロードUSTシステムの完成度の高さが現れている部分だろう。
「My Mavic」と検索してアプリをダウンロード
My Mavicアプリを起動して空気圧計算画面へ
自身の乗り方に合った項目を選択していこう
リム幅やタイヤ幅によっても空気圧は大きく変わってくる
最後に体重と自転車重量を入力すれば完了だ
各々の条件にマッチした空気圧を提案してくれる
空気圧はマヴィックがリリースしている「My Mavic」アプリに従って設定してみる。乗り方や体重、バイク重量などを入力すると自動で推奨値を導いてくれるのだ。筆者の場合は5.2気圧を基準に、乗り方によって5.0~5.4気圧の範囲で調整するよう提示された。クリンチャータイヤで7~8気圧に設定している人からすれば驚くような低気圧だが、これが全く問題なく、転がりが重いとかコーナーが不安とかそういったネガティブ要素は皆無である。
走り出すと非常にソフトな乗り心地で、路面からの振動も角が取れたように伝わってくるため、ストレスの少ない快適性を顕著に感じられた。チューブレスという点もそうだが、トレッド自体にやや厚みがあり、その部分で微振動をカットしてくれているような感覚もある。優しい乗り心地のため、ロングライドでも疲労軽減に一役買ってくれるだろう。
快適性の高いソフトな乗り心地と、優れた路面追従性・グリップ性が好印象
イレブンストームを採用したコンパウンドは全方向にバランスの良い走りを見せてくれた。何かに特化した性能は感じづらかったが、加速、巡航、グリップどれを取ってもレース用途で十分に威力を発揮してくれるレベルに仕上がっている。
その上で最も好印象だったのが路面追従性の高さだ。体重の軽い筆者は、荒れた路面でバイクが弾かれたりグリップが抜けかけたりということが往々にしてあったが、低い空気圧に設定できることで、まさに路面を掴むような走行感が得られた。
それでいて変にタイヤが潰れているような感触はなく、コーナーでもコシのある剛性感を見せてくれる。高い安心感とともに、下りの切り返しやロードレース、クリテリウムのコーナリングも今までより攻めていける印象だ。弾かれないということはパワーロスも少なく、効率的にスピード維持ができることにも繋がる。登りでの一発の軽さを除けば、このタイヤは明らかに”速い”。
マヴィック YKSION PRO UST&タイヤシーラント
乗り心地の良さ、グリップの高さはチューブレスのメリットとして一般的に言われる部分だが、それらを高水準でまとめ、かつ作業性の良さを併せ持った点がYKSION PRO USTの特長と言えるだろう。オールラウンドに使いやすいチューブレスタイヤとして、マヴィック以外のホイールを使用している人もぜひ選択肢に入れて欲しい一品だ。(CW編集部:村田悠人)
マヴィック YKSION PRO UST
タイヤタイプ:チューブレスレディ
コンパウンド:11ストーム、シングルコンパウンド
ケーシング:127TPI
サイズ:700x25C、700x28C
実測重量:260g(25C)
価格:7,500円(税抜)
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独自のロードUSTシステムによってチューブレスホイールの火付け役ともなったマヴィック。チューブレスならではの快適な乗り心地と軽快な転がり、携帯ポンプでもビードを上げることのできる使い勝手の良さなど、多くのメリットを生み出したシステムで広く支持されているが、それらを実現可能としたのが専用設計の「YKSION PRO UST(イクシオンプロUST)」タイヤだ。
アルミからカーボンまで、エントリーからトップモデルまで各種USTチューブレスホイールをラインアップしているマヴィックだが、そのいずれにもYKSION PRO USTが標準装備される。従来のYKSIONタイヤはグリップリンク、パワーリンクと前後で異なるトレッドパターンを採用していたが、今作ではその区別はなく1種類のみの展開だ。
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タイヤとして注目すべきはハッチンソンが誇る高性能コンパウンド「11STORM(イレブンストーム)」を採用した点だろう。自社でタイヤ製造の工場を持たないマヴィックは、チューブレスタイヤに一日の長があるハッチンソンとともにロードUST用タイヤを開発。従来型のコンパウンドから飛躍的に性能を向上させたイレブンストームによって転がり性能、グリップ力、耐久性などを高いレベルで実現している。
その上でビードやケーシング等タイヤの構造はYKSION PRO UST専用に設計。マヴィックホイールと合わせた時に最高のマッチングを見せる高い精度に調整されている。綿密に計算されたビード径が優れた嵌合精度をもたらし、ホイールに装着しやすくビードも上がりやすい、かつエア漏れも防ぐ安全でトラブルレスな作りを実現している。
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チューブとタイヤとの摩擦がないことで、パワーロスなく優れた転がり性能を発揮する点はチューブレス全般に言える大きなアドバンテージだ。タイヤ自体はチューブレス構造としたことで重量260g(25C)とやや重さはあるものの、シーラント分の30gを足しても290gに収まり、一般的なタイヤ+チューブの重量よりも20~50gほど軽量に仕上がっている。
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ミニマルグラフィックとされたマヴィックホイールに合わせて、2019年モデルではよりシンプルなデザインに。タイヤサイズは25Cと28Cで展開される。価格は7,500円(税抜)だ。
今回は他メーカーホイールとの嵌合の相性や作業性も確認するため、CW編集部で用意のあるイーストンのロードチューブレスホイール「EA90 SLX」にてテストした。以下、編集部員・村田によるインプレッションをお届けしよう。
― 編集部インプレッション
マヴィックのロードUSTホイールとセットで語られることが大半のYKSION PRO USTタイヤだが、純粋にチューブレスタイヤ単体として見た時の使い勝手や性能はどうなの?と興味を持つ人もいたことだろう。USTホイールに他社のチューブレスタイヤを組み合わせて使っている人は度々見受けられるが、その逆と言うのはあまり見かけない。
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過去にいくつかチューブレスタイヤを使用してきたが、嵌合のマッチングはYKSION PRO USTが一番良いと思わされるほど。ビードが外れにくいというのは安全性の面から見ても好印象だ。ロードUSTシステムの完成度の高さが現れている部分だろう。
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空気圧はマヴィックがリリースしている「My Mavic」アプリに従って設定してみる。乗り方や体重、バイク重量などを入力すると自動で推奨値を導いてくれるのだ。筆者の場合は5.2気圧を基準に、乗り方によって5.0~5.4気圧の範囲で調整するよう提示された。クリンチャータイヤで7~8気圧に設定している人からすれば驚くような低気圧だが、これが全く問題なく、転がりが重いとかコーナーが不安とかそういったネガティブ要素は皆無である。
走り出すと非常にソフトな乗り心地で、路面からの振動も角が取れたように伝わってくるため、ストレスの少ない快適性を顕著に感じられた。チューブレスという点もそうだが、トレッド自体にやや厚みがあり、その部分で微振動をカットしてくれているような感覚もある。優しい乗り心地のため、ロングライドでも疲労軽減に一役買ってくれるだろう。
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イレブンストームを採用したコンパウンドは全方向にバランスの良い走りを見せてくれた。何かに特化した性能は感じづらかったが、加速、巡航、グリップどれを取ってもレース用途で十分に威力を発揮してくれるレベルに仕上がっている。
その上で最も好印象だったのが路面追従性の高さだ。体重の軽い筆者は、荒れた路面でバイクが弾かれたりグリップが抜けかけたりということが往々にしてあったが、低い空気圧に設定できることで、まさに路面を掴むような走行感が得られた。
それでいて変にタイヤが潰れているような感触はなく、コーナーでもコシのある剛性感を見せてくれる。高い安心感とともに、下りの切り返しやロードレース、クリテリウムのコーナリングも今までより攻めていける印象だ。弾かれないということはパワーロスも少なく、効率的にスピード維持ができることにも繋がる。登りでの一発の軽さを除けば、このタイヤは明らかに”速い”。
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乗り心地の良さ、グリップの高さはチューブレスのメリットとして一般的に言われる部分だが、それらを高水準でまとめ、かつ作業性の良さを併せ持った点がYKSION PRO USTの特長と言えるだろう。オールラウンドに使いやすいチューブレスタイヤとして、マヴィック以外のホイールを使用している人もぜひ選択肢に入れて欲しい一品だ。(CW編集部:村田悠人)
マヴィック YKSION PRO UST
タイヤタイプ:チューブレスレディ
コンパウンド:11ストーム、シングルコンパウンド
ケーシング:127TPI
サイズ:700x25C、700x28C
実測重量:260g(25C)
価格:7,500円(税抜)
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