ニュージーランドの新興バイクブランド、CHAPTER2の第3作目となるクライミングモデル「HURU(フル)」。オーソドックスなラウンドシェイプの高品位カーボンチューブを用いた軽量モデルを、伊豆半島ライドで実走テストしたインプレッションをお届けする。



CHAPTER2 HURU  伊豆・松崎町のときわ大橋にてCHAPTER2 HURU 伊豆・松崎町のときわ大橋にて photo:Makoto.AYANO
ブランド3作目となるHURUとマイク・プライド氏ブランド3作目となるHURUとマイク・プライド氏 かつてニールプライドのバイク部門を指揮したマイク・プライド氏が、自転車人生の”第2章”という意味を込めて立ち上げた「CHAPTER2(チャプター2)」。マイク氏の出身地であるニュージーランドはオークランドに拠点を構える新ブランドだ。

2017年夏にブランドの処女作となるオールラウンドモデル「TERE(テレ)」を発表すると、そこから1年も経たない内に今年の春には2作目のエアロロード「RERE(レレ)」を追加。そしてブランド3作目となるのが、昨年11月のサイクルモードで発表されたHURU(フル)だ。

現在も自ら世界各国で開催されるロードレースやグランフォンド系イベントに出場を続けるマイク氏。「私が作るバイクは、私が本当に乗りたいと思うバイクだけ。そのため性能には妥協はしない」と公言するとおり、自らの欲求のままにバイク開発に情熱を傾ける。

ニュージーランド北島で最高峰の活火山、ルアペフ山の地形図が等高線により描かれるニュージーランド北島で最高峰の活火山、ルアペフ山の地形図が等高線により描かれる photo:Makoto.AYANO
その新型バイク、HURUはオーソドックスなルックスに仕上がる軽量クライミングモデル。自分好みのバイクをリリースするマイク・プライド氏だが、実はサイクリスト自身としてはヒルクライムは苦手なジャンルだという。その自分の弱点を補うべく、登坂での速さを重視した軽さや乗り味に仕上げたのがHURUだという。CHAPTER2立ち上げ以前からプロジェクトはスタートし、18ヶ月の開発期間を経て完成したHURUは、登りだけでなく、高速のダウンヒルも楽しめる操作性や剛性も両立させているオールラウンドバイクだという。

ヘッドチューブはラウンド形状をベースにデザインされているヘッドチューブはラウンド形状をベースにデザインされている シートステイはシートチューブ両脇から伸びる。ディスクモデルはブリッヂもないシートステイはシートチューブ両脇から伸びる。ディスクモデルはブリッヂもない


”HURU”とはマオリ語で「羽と上昇」という意味。トップチューブとシートチューブにはニュージーランド北島で最高峰の活火山、ルアペフ山の地形図が等高線によりシンボリックに描かれる。

丸チューブを多用したオーソドックスな形状のフレームは、リムブレーキモデルで重量790g、ディスクブレーキモデルで820gという軽さを達成しつつ、東レのT1000とT800を適材適所に使用したカーボンレイアップによって優れた剛性もバランスする。特に応力のかかりやすいヘッドチューブとボトムブラケット部分には、ディレクショナル3Kカーボンを用いることで剛性を強化し、パワー伝達性やハンドリング性能を最適化している。

フォークはストレートシェイプながら先端が後方にオフセットするフォークはストレートシェイプながら先端が後方にオフセットする
ストレートかつ先端がオフセットした独特の形状のフロントフォークは横剛性を高めたレイアップ設計を施すとともに、ドロップアウト部分のベンドにより振動の分散やねじれ剛性の向上を図った。

フレームとセットとなるフルカーボンシートポスト「TUMU」も同時に開発。軽量性を追求し、27.2mm径の汎用規格かつシンプルなヤグラ構造とすることで重量増を抑え、シートクランプパーツも軽量のバンドタイプが装備される。

カーボン丸パイプのフォークは他ブランドに見られない形状だカーボン丸パイプのフォークは他ブランドに見られない形状だ シートパイプ部にはニュージーランドでデザインされたことを示すメッセージシートパイプ部にはニュージーランドでデザインされたことを示すメッセージ フレームとセットとなるフルカーボンシートポスト「TUMU」も同時に開発フレームとセットとなるフルカーボンシートポスト「TUMU」も同時に開発


前2モデルのTEREとREREはジオメトリーの共通化が図られたが、HURUは高速走行に重きを置いたREREのジオメトリーをベースに微調整が加えられた。シート角はREREより0.5度起きた73.5度、かつゼロセットバックのシートポストTUMUを合わせることで前よりの重心位置に。それにより平坦に比べ前輪が起き上がった状態になるヒルクライムでも効率的にトルクをかけられるよう工夫されている。

一体型エアロハンドルのMANA(マナ)との相性も良好だった一体型エアロハンドルのMANA(マナ)との相性も良好だった photo:Makoto.AYANOリアのディスクブレーキマウント周辺。もちろんフラットマウントだリアのディスクブレーキマウント周辺。もちろんフラットマウントだ


またアグレッシブなポジションを実現できるようスタックがREREより5mmほど短くなった他、フロントセンターを短めにすることで機敏な反応を、BBドロップを下げることで安定性を強化している。タイヤクリアランスは昨今に標準的なマックス28mm。ショートチェーンステーに設計するため、シートチューブには後輪に沿って潰しを入れることでクリアランスを確保している。

リムブレーキモデルまたはディスクブレーキモデルの2種を揃え、フレームセットにて販売。Fフォーク、シートポスト、ヘッドセットが付属する。公式WEBサイトからの直販と、全国の取り扱いショップより購入が可能だ。通常カラーのMATT & GLOSS BLACKと世界500台限定のBLACK & ORANGE(写真のモデル)がラインアップ。機材サポートするUCI女子チーム「ビグラ」スペシャルカラーをはじめとしたスペシャルエディションも定期的に登場することになる。

今回は1月のCHAPTER2オーナーライドで伊豆半島をほぼ一周した際にHURUを駆ったCW編集部・綾野による実走インプレッションをお届けする。



CHAPTER2 HURUを伊豆半島で乗り込んだインプレッション

2日間で約400km、獲得標高2,000m以上のライドをこなしたCHAPTER2オーナーライド。その1日目、熱海から松崎までの行程で試乗車のHURUに1日じゅう乗ることができた。

山伏峠を登る。ヒルクライム性能の高さがペダリングを後押ししてくれるようだ山伏峠を登る。ヒルクライム性能の高さがペダリングを後押ししてくれるようだ photo:Hideo.Takada
今までに初作TERE、2作目のREREの実走インプレを続けてきたので、CHAPTER2担当であることは間違いない。今回のライドではご一緒できなかったものの、マイク・プライドは友人として通じているので、彼のバイクづくりのヴィジョンは誰よりも知っているつもり。

どちらかといえば平坦系ライダーのマイクとはタイのツアー・オブ・フレンドシップで一緒に走り、体格も走りのタイプも自分と似ているので、HURUへの期待もおのずと高まる。

東レのT1000とT800を素材としたフレームということだが、通常、素材の出処を「東レだ」と公表できるバイクメーカーは世に数少なく、そのことからもニールプライド時代よりヨットのマスト製造から培ってきたカーボン技術が東レにも認められ、良好な関係が続いていることを伺わせる。

フロントフォークに体重を載せてダンシングする際のバランスの良さを感じたフロントフォークに体重を載せてダンシングする際のバランスの良さを感じた photo:Hideo.Takada伊豆でのライドはいきなり山伏峠を登り、天城越えのアップダウンをこなし、婆娑羅峠を越えて松崎へと下る高難易度の一日だったため、バイクテストとしてはこれ以上無いものだった。なおツーリング中の撮影のためにカメラを胸に着けている点はお見逃しいただきたい。

前2モデルよりシートが起きたジオメトリーが採用されているとおり、軽快感や加速性に優れ、登りでのペダリングに最適化されたバランスであることを感じる。ペダリングトルクが無駄なくクランクに入力でき、重心のバランスも上り勾配でバイクの中心に乗っているような落ち着きを感じる。シッティングではバイクの軽さとペダリングの軽さを感じ、ダンシングではフォークに体重を乗せていけるため左右に振りやすく、かつがっしりした剛性感を感じる。

見た目は丸パイプで華奢な印象のため、しなやかな乗り心地を想像していたが、乗ってみるとがっしりした芯の強さを感じる。加速しても軽量で反応の良い反発をみせるあたり、やはり最高品質のカーボンを使用している最上級グレードのバイクであることが感じとれる。

今回はディスクブレーキモデルに乗ったが、重心が低くなり、ダンシングの際の振りも低重心ゆえの安定感をみせるため、ヒルクライムバイクながらディスクというのも「アリだ」と思えた。

ディスクモデルは重心の低さが手伝ってダンシング時の振りも軽やかだディスクモデルは重心の低さが手伝ってダンシング時の振りも軽やかだ photo:Hideo.Takada登りだけかと思いきや、ダウンヒルも得意だ。アップダウンやダウンヒルコーナリングでもむしろ機敏で安定したハンドリングをみせるため、一日乗って「むしろオールラウンドバイクだ」と思えた。丸パイプの素直な性格は、荒れた路面でも角のある嫌な振動が発生せず、例えば石畳のようなラフな路面も快適さをもって走れると思う。

今回は同社の一体型エアロハンドル「MANA」がセットされていたが、剛性が高く、マッチングも良かった。コスパに優れ、デザインの統一感もあるので形状がしっくりくるならセットで使うのもいいだろう。小柄な人にも合う形状のサイズがあり、あえてケーブルを内蔵しないため使い勝手も良好だ。

エアロな形状を取り入れたTEREとREREと比べると、HURUのハンドリングは直進安定性よりも反応性や操舵性に振った味付けだ。エアロホイールよりハイトが低めな高剛性のホイールがマッチする印象だ。巡航性よりも、登りの多いルートのアップダウンをこなすグランフォンド的な乗り方で真価を発揮するだろう。



オーナーボイス TEREとREREのキャラクターとは

今回はせっかくオーナーライドを走ったこともあり、HURU以外のTEREとREREのオーナーにも愛車としてのキャラクターを語ってもらった。

REREのオーナー 多田一樹さんREREのオーナー 多田一樹さん REREのオーナー 多田一樹さん

ブルベやロングライドをメインにしています。REREはエアロ効果がありつつも乗り易さがもっとも気に入っているポイントです。反応性が良いのに硬くないフレームなので、長距離を走っても疲れにくく、距離を伸ばせるんです。平坦系のブルベではマヴィック・コスミックカーボンを履けば巡航性は非常によく、距離を伸ばせます。しかしエアロバイクにありがちな過剛性感が無く、脚に来ないため疲れ知らずです。登りの多いライドではキシリウムに換装しています。軽快に登るので、オールラウンドに使えるエアロバイクです。

TEREのオーナー 廣神 駿さんTEREのオーナー 廣神 駿さん TEREのオーナー 廣神 駿さん

TEREはオールラウンド系のフレームでは軽い方であるため、今はヒルクライムをメインに使っています。「コンパクトエアロ」のコンセプトどおりエアロ効果があるけれど、上り下りも得意でオールラウンドに走れる性能があると感じます。じつはHURUを注文済みで、現在入荷待ちです。届いたら2台体制となるのでHURUを軽めに組んでヒルクライムのレースバイクに、TEREを普段のデイリーライドバイクにしたいですね。富士ヒルでシルバーを取ることが目標です。


CHAPTER2 HURU  伊豆・松崎町のときわ大橋にてCHAPTER2 HURU 伊豆・松崎町のときわ大橋にて photo:Makoto.AYANO
CHAPTER2 HURU フレームセット
カーボン:Toray T1000, T800 & 3K Directional Carbon
フレームサイズ:XS、S、M、L、XL
フレーム重量:リム789g、ディスク819g(Mサイズ)
フォーク重量:リム379g、ディスク389g
シートポスト重量:219g
BB:プレスフィットBB86.5
タイヤクリアランス:28mm
価格:リム393,597円(送料、税込)、ディスク412,087円(送料、税込)

※別売りスルーアクスル12,600円(税込)

photo&text:Makoto.AYANO

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