2018/10/21(日) - 18:00
ラスト4周で動き出したジャパンカップロードレース。積極的に展開したロットNLユンボを最後に突き崩したロブ・パワー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)が第27代ジャパンカップ覇者となった。
ジャパンカップ最終日は、今年27回目の開催を迎えた宇都宮森林公園でのロードレース。UCIのルール改正によって昨年から大幅に増えた(14チーム69名→21チーム126名)選手を迎えたのは、昨年と打って変わって雲ひとつない青空。体感気温25度ほどの絶好の中世界トップクラスの選手たちが勝負を繰り広げた。
レースコースは毎年おなじみの宇都宮市森林公園周回コース。走行距離144.2kmという短距離レースだが、急勾配のつづら折れが続く古賀志林道の登りが含まれているため総獲得標高は2,590mに登る。急峻な登りとテクニカルな下り、平坦区間、そして終盤にアップダウンが続く難易度の高いコースに向けて、スタート直後からアタックの打ち合いが始まった。
最初の古賀志林道では、スタート前に入念なウォーミングアップを重ねていたマルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)と、現役最終レースのオスカル・プジョル(スペイン、チーム右京)が先行し、遅れて「チームとしてできるだけ攻める姿勢を貫くつもりだった」というクーン・ボウマン(オランダ、ロットNLユンボ)も合流。1周目から次々とコンチネンタルチーム勢が遅れていくスピーディーな展開の中、強力な3名がおよそ1分半のリードを築き上げる。
メイン集団の前方には赤いジャージが集結した。「集団の人数が増えたことで位置取りが激しくなるはずなので、集団に埋もれるのではなく先頭でコントロールする作戦を取りました。勝負が掛かる10周目までは牽引して雨澤毅明と鈴木龍を温存しようという作戦でした」と鈴木譲が振り返るように、宇都宮ブリッツェンがフルメンバーでコントロールを開始する。赤い特別ジャージを纏うブリッツェントレインは、タイム差を最大2分半以内に押さえ込んだまま終盤まで牽引を続けた。
快調にローテーションを続ける先頭3名は3、6、9、12周回目の古賀志林道頂上に懸けられた山岳賞でそれぞれ競り合い、最初はマルコスが、2回目と3回目は日の丸と富士山をあしらったスペシャルペイントのバイクを駆るボウマンが獲得。3回目の山岳賞獲得をきっかけにボウマンは単独となり、TTモードで巡行しながら後からやってくる自チームのエースを待ち続ける。宇都宮ブリッツェンのコントロールが生んだ落ち着いた展開は、同じく前待ちを目論んだマルコスにとってはプラスに働かなかった。
均衡が破れたのは11周目(残り4周回)の古賀志林道。屈強なメンバーを揃えたロットNLユンボのロバート・ヘーシンク(オランダ)のペースアップによって集団が一気に破壊され、KOM通過直後にボウマンをキャッチ。下りを経て先頭グループは16名に絞り込まれた。
この16名の中に複数名を入れたのはロットNLユンボ(ボウマン、オリヴィエ、ヘーシンク、トールク)、NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ(中根、ティッツァ、サンタロミータ)とミッチェルトン・スコット(パワー、ヘイグ)、トレック・セガフレード(デコルト、フェッリーネ)で、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング)とマッティ・ブレシェル(デンマーク、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、タデイ・ポガチャル(スロベニア、リュブリャナ・グスト・ザウラム)、トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)はそれぞれ単独に。ここから攻撃を仕掛けたのは唯一4名を残し数的有利に立つロットNLユンボだった。
最後の山岳賞が懸けられた12周目の古賀志林道でアントワン・トールク(オランダ、ロットNLユンボ)が仕掛けたが下りと平坦で吸収。石上優大(日本ナショナルチーム)やマルコ・カノラ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ)らも後方から追いつく中、再びトールクがアタックし、ここにロブ・パワー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)が合流。更に追走が掛かったことで6名の先頭集団が生まれる。
先頭グループを形成したのはトールク、パワー、ロッシュ、ヘーシンク、サンタロミータ、ブレシェル。トールクを勝たせたいヘーシンクがコントロールを担い、15秒後方の追走集団はアタックとマークを繰り返すことでペースを上げられない。しびれを切らせた前回覇者カノラが単独追走を試みたものの、その時すでに先頭集団は手の届かない位置にあった。
いよいよ最後の古賀志林道に差し掛かると、先手を打ったのは2016年大会3位のパワーだった。川沿いの平坦区間でリードを生み、勾配区間をダンシングで進んだパワーには唯一トールクだけが追いつき、苦しい表情を浮かべながら観客の集うつづら折れ区間を越えていく。ロッシュとカノラ、そしてブレシェルは15秒のビハインドを許してしまった。
2016年大会3位のパワーと2017年4位のトールクは、牽制することなく平坦区間を飛ばし逃げ切りに青信号を灯らせる。スプリントで分が悪いトールクは終盤のアップダウン区間で何度も仕掛けたが、登坂が短すぎるためパワーはがっちりと食らいついて離れない。トラックレースさながらのアタックと牽制を続けながらトールク先頭で最終ストレートに現れた。
トールク先頭でマッチスプリントに入ったが、左側のラインを選んだパワーはスプリント力の差を見せつけるようにパスし、先着。来年サンウェブへの移籍を決めている23歳が2度目のジャパンカップで雪辱を晴らす優勝を遂げた。
「1ヶ月前にジャパンカップ出場が決まり、たまにはヨーロッパ以外の土地でレースを走るのも悪くないと思っていた」と言うパワー。オーストラリアの名門育成チームとして知られるジャイコAISからオリカ・グリーンエッジ(当時)入りするエリート街道を歩む23歳であり、今年はストラーデ・ビアンケ(UCIワールドツアー)で6位という結果を残していた。
後続ではブレシェルがロッシュとの一騎打ちで3位に滑り込み、サンタロミータが5位。単独で追走を続けていたカノラは最後まで追いつかず6位に終わっている。なおU23は8位のロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、アジア最優秀選手賞は中根英登(日本、 NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ)だった。
各選手のコメントは後ほど紹介します。
ジャパンカップ最終日は、今年27回目の開催を迎えた宇都宮森林公園でのロードレース。UCIのルール改正によって昨年から大幅に増えた(14チーム69名→21チーム126名)選手を迎えたのは、昨年と打って変わって雲ひとつない青空。体感気温25度ほどの絶好の中世界トップクラスの選手たちが勝負を繰り広げた。
レースコースは毎年おなじみの宇都宮市森林公園周回コース。走行距離144.2kmという短距離レースだが、急勾配のつづら折れが続く古賀志林道の登りが含まれているため総獲得標高は2,590mに登る。急峻な登りとテクニカルな下り、平坦区間、そして終盤にアップダウンが続く難易度の高いコースに向けて、スタート直後からアタックの打ち合いが始まった。
最初の古賀志林道では、スタート前に入念なウォーミングアップを重ねていたマルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)と、現役最終レースのオスカル・プジョル(スペイン、チーム右京)が先行し、遅れて「チームとしてできるだけ攻める姿勢を貫くつもりだった」というクーン・ボウマン(オランダ、ロットNLユンボ)も合流。1周目から次々とコンチネンタルチーム勢が遅れていくスピーディーな展開の中、強力な3名がおよそ1分半のリードを築き上げる。
メイン集団の前方には赤いジャージが集結した。「集団の人数が増えたことで位置取りが激しくなるはずなので、集団に埋もれるのではなく先頭でコントロールする作戦を取りました。勝負が掛かる10周目までは牽引して雨澤毅明と鈴木龍を温存しようという作戦でした」と鈴木譲が振り返るように、宇都宮ブリッツェンがフルメンバーでコントロールを開始する。赤い特別ジャージを纏うブリッツェントレインは、タイム差を最大2分半以内に押さえ込んだまま終盤まで牽引を続けた。
快調にローテーションを続ける先頭3名は3、6、9、12周回目の古賀志林道頂上に懸けられた山岳賞でそれぞれ競り合い、最初はマルコスが、2回目と3回目は日の丸と富士山をあしらったスペシャルペイントのバイクを駆るボウマンが獲得。3回目の山岳賞獲得をきっかけにボウマンは単独となり、TTモードで巡行しながら後からやってくる自チームのエースを待ち続ける。宇都宮ブリッツェンのコントロールが生んだ落ち着いた展開は、同じく前待ちを目論んだマルコスにとってはプラスに働かなかった。
均衡が破れたのは11周目(残り4周回)の古賀志林道。屈強なメンバーを揃えたロットNLユンボのロバート・ヘーシンク(オランダ)のペースアップによって集団が一気に破壊され、KOM通過直後にボウマンをキャッチ。下りを経て先頭グループは16名に絞り込まれた。
この16名の中に複数名を入れたのはロットNLユンボ(ボウマン、オリヴィエ、ヘーシンク、トールク)、NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ(中根、ティッツァ、サンタロミータ)とミッチェルトン・スコット(パワー、ヘイグ)、トレック・セガフレード(デコルト、フェッリーネ)で、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング)とマッティ・ブレシェル(デンマーク、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、タデイ・ポガチャル(スロベニア、リュブリャナ・グスト・ザウラム)、トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)はそれぞれ単独に。ここから攻撃を仕掛けたのは唯一4名を残し数的有利に立つロットNLユンボだった。
最後の山岳賞が懸けられた12周目の古賀志林道でアントワン・トールク(オランダ、ロットNLユンボ)が仕掛けたが下りと平坦で吸収。石上優大(日本ナショナルチーム)やマルコ・カノラ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ)らも後方から追いつく中、再びトールクがアタックし、ここにロブ・パワー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)が合流。更に追走が掛かったことで6名の先頭集団が生まれる。
先頭グループを形成したのはトールク、パワー、ロッシュ、ヘーシンク、サンタロミータ、ブレシェル。トールクを勝たせたいヘーシンクがコントロールを担い、15秒後方の追走集団はアタックとマークを繰り返すことでペースを上げられない。しびれを切らせた前回覇者カノラが単独追走を試みたものの、その時すでに先頭集団は手の届かない位置にあった。
いよいよ最後の古賀志林道に差し掛かると、先手を打ったのは2016年大会3位のパワーだった。川沿いの平坦区間でリードを生み、勾配区間をダンシングで進んだパワーには唯一トールクだけが追いつき、苦しい表情を浮かべながら観客の集うつづら折れ区間を越えていく。ロッシュとカノラ、そしてブレシェルは15秒のビハインドを許してしまった。
2016年大会3位のパワーと2017年4位のトールクは、牽制することなく平坦区間を飛ばし逃げ切りに青信号を灯らせる。スプリントで分が悪いトールクは終盤のアップダウン区間で何度も仕掛けたが、登坂が短すぎるためパワーはがっちりと食らいついて離れない。トラックレースさながらのアタックと牽制を続けながらトールク先頭で最終ストレートに現れた。
トールク先頭でマッチスプリントに入ったが、左側のラインを選んだパワーはスプリント力の差を見せつけるようにパスし、先着。来年サンウェブへの移籍を決めている23歳が2度目のジャパンカップで雪辱を晴らす優勝を遂げた。
「1ヶ月前にジャパンカップ出場が決まり、たまにはヨーロッパ以外の土地でレースを走るのも悪くないと思っていた」と言うパワー。オーストラリアの名門育成チームとして知られるジャイコAISからオリカ・グリーンエッジ(当時)入りするエリート街道を歩む23歳であり、今年はストラーデ・ビアンケ(UCIワールドツアー)で6位という結果を残していた。
後続ではブレシェルがロッシュとの一騎打ちで3位に滑り込み、サンタロミータが5位。単独で追走を続けていたカノラは最後まで追いつかず6位に終わっている。なおU23は8位のロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、アジア最優秀選手賞は中根英登(日本、 NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ)だった。
各選手のコメントは後ほど紹介します。
2018ジャパンカップサイクルロードレース 結果
1位 | ロブ・パワー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) | 3時間44分00秒 |
2位 | アントワン・トールク(オランダ、ロットNLユンボ) | |
3位 | マッティ・ブレシェル(デンマーク、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | +40秒 |
4位 | ニコラス・ロッシュ(BMCレーシングチーム) | |
5位 | イヴァン・サンタロミータ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ) | +42秒 |
6位 | マルコ・カノラ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ) | +2分02秒 |
7位 | ロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ) | +2分07秒 |
8位 | ロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) | +2分26秒 |
9位 | クーン・デコルト(オランダ、トレック・セガフレード) | |
10位 | ロビー・ハッカー(オーストラリア、チーム右京) | |
11位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、リュブリャナ・グスト・ザウラム) | |
12位 | 中根英登(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ) | |
13位 | ファビオ・フェッリーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | |
14位 | ベンジャミ・プラデス・レヴェルテル(スペイン、チーム右京) | |
15位 | フレディ・オヴェット(オーストラリア、 BMCレーシングチーム) | |
16位 | 雨澤毅明(日本、宇都宮ブリッツェン) | |
17位 | 石上優大(日本、ジャパン・ナショナル・チーム) | |
18位 | トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) | |
19位 | サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム) | |
20位 | ダーン・オリヴィエ(オランダ、ロットNLユンボ) |
山岳賞
3周目 | マルコス・ガルシア・フェルナンデス(スペイン、キナンサイクリングチーム) |
6周目 | クーン・ボウマン(オランダ、ロットNLユンボ) |
9周目 | クーン・ボウマン(オランダ、ロットNLユンボ) |
12周目 | アントワン・トールク(オランダ、ロットNLユンボ) |
アジア最優秀選手賞
12位 | 中根英登(日本、 NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ) |
U23最優秀選手賞
8位 | ロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) |
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