2018/10/13(土) - 13:29
モニュメントと呼ばれる五大レースの一つ、イル・ロンバルディアが土曜に開催される。連覇に挑むヴィンチェンツォ・ニーバリに対抗するのは世界チャンピオンのバルベルデ、表彰台メンバーのバルデ、ウッズ、そしてモスコンら。欧州最終戦は世界選のリベンジレースの様相だ。
美しいコモ湖の周辺、イタリア北部ロンバルディア州の山岳地帯を走る「イル・ロンバルディア」 photo:Tim de Waele
イタリア北部のロンバルディア州で開催される第112回イル・ロンバルディア。「落ち葉のクラシック」の名前の通り、秋の深まりつつある美しい湖水と山岳美の景観織りなすコモ湖一帯を巡るレースだ。例年10月第1土曜に行われてきたが、今年は1週遅れの開催となり、さらに深まる秋を感じさせるレースとなるだろう。
昨年、2度目のロンバルディア制覇を果たしたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:Tim de Waele / TDWsport
コモ湖沿いの平坦路を走るプロトン photo:Tim de Waele / TDWsport
かつての呼称は「ジロ・ディ・ロンバルディア」。1906年に初開催され、今年で112回目となるイル・ロンバルディアの主催はジロ・デ・イタリアと同じRCSスポルト。ミラノ〜サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュと同格の「モニュメント」のひとつであり、最高のステイタスを誇るクラシックレースだ。
モニュメントのなかでも唯一のピュアクライマー向けのクラシックであり、同時にダウンヒル能力もカギとなる難コースが闘いの舞台となる。コース全長はベルガモからコモへの241km。昨年の247kmから6km短くなったが、獲得標高は約4,000mにのぼる。キーとなる登りはおもに以下の5つ。
54.7km地点 コッレ・ガッロ 登坂距離7.43km、平均勾配6%、最大勾配10%
180.2km地点 マドンナ・デル・ギザッロ 登坂距離8.58km、平均勾配6.2%、最大勾配14%
193.6km(残り47km)地点 ムーロ・ディ・ソルマーノ 登坂距離1.92km、平均勾配15.8%、最大勾配27%
227.4km(残り13.6km)地点 チヴィリオ 登坂距離4.2km、平均勾配9.7km、最大勾配14%
238km(残り3km)モンテ・オリンピノ(新登場) 登り区間1.7km 平均勾配5% ラスト4km地点が最大勾配9%
最大勾配27%という激坂「ソルマーノの壁」(ムーロ・ディ・ソルマーノ) photo:Press Ciclismo RCS
独走に持ち込んだヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:Tim de Waele / TDWsportなかでもレース終盤に迎えるマドンナ・デル・ギザッロ、最大勾配27%の激坂コルマ・ディ・ソルマーノ、チヴィリオの3つがポイントになるが、今年は最終盤ラスト8〜5km地点にあったサンフェルモ・デッラ・バッターリアが地すべりのためカットされ、距離も241kmに。6km短くなった代わりに新たに加わった「モンテ・オリンピノ」がフィニッシュ直前3kmで頂上を迎える。この新たな丘は勾配、標高ともに難易度は低いが、登り区間1.7km、平均勾配5% 、そしてラスト4km地点が最大勾配9%となるため、パンチャーが勝負をかけることができるスパイスとなる。
昨年はレース後半のマドンナ・デル・ギザッロ、ソルマーノの壁で優勝候補たちは動かず、チヴィリオでの勝負となった。ヴィンチェンツォ・ニバリ(バーレーン・メリダ)が頂上手前の急勾配区間と下りでアタックを成功させ、逃げ切った。ニバリはアスタナ時代の2015年も同様にダウンヒルでレースを決めている。
■世界選ポディウムメンバー+が総参戦 欧州最終レースで火花を散らす
ジュリアン・アラフィリップとモスコンとともに表彰台に登るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:Tim de Waele / TDWsport昨年は逃げ切りで快勝したディフェンディングチャンピオンのニバリはゼッケン1をつけ、母国のレースで連覇を狙う。今年のニバリは7月のツール・ド・フランスのラルプデュエズステージで観客と接触して転倒する事故により胸椎の椎体を骨折する怪我を負う。その後全快し、ブエルタ・ア・エスパーニャや世界選手権にも出場した。怪我の影響により背中の痛みが残ることもあり、勝利は得ていない。しかし前哨戦の10月6日開催のジロ・デル・エミーリア(1.HC)ではトップから15秒差の8位と、準備は整っているようだ。
ニバリは言う「火曜(9日)のトレヴァッリ・ヴァレジーネでも調子は良かった(13秒遅れの20位)。最近レース終盤を下見して予行演習した。昨年にもましてコンディションは向上している。まだ足りないものはある。レースがどうなるかをみていくが、フィナーレでは勝利に向けて全力をつくすことだけは例年と変わりない」。
ニバリをアシストするバーレーン・メリダのラインナップは、弟のアントニオ・ニバリ、ヨン&ゴルカ・イサギレ、フランコ・ペリツォッティ、ドメニコ・ポッツォヴィーボ、マテイ・モホリッチと非常に強力だ。
ミラノ〜トリノ スペルガの登りでペースを上げるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVos
ミラノ〜トリノの表彰台 2位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、1位ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)、3位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:RCS Sport
ロンバルディアでは未勝利ながら、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は強力な優勝候補だ。プロキャリア17年、38歳の世界チャンピオンは登坂力・独走力・スプリント・ダウンヒル能力の4要素を兼ね揃えたオールラウンダー。2014年に2位(ダン・マーティン優勝)、2013年2位(リゴベルト・ウラン優勝)と、表彰台のもう一段を登り損ねてきた。コースも申し分なくフィットし、波に乗る今年はいよいよタイトルをものにするチャンスだ。10月10日のミラノ〜トリノ(1.HC)では3位(ティボー・ピノ優勝)と、調子も上々だ。モビスターは8月のクラシカ・サン・セバスティアンで落車負傷したミケル・ランダが復帰し、マルク・ソレル、リチャル・カラパスらがアシストする。
バルベルデの対抗馬となるだろうと思われた昨年2位のジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)は出場せず。過去最高の年間通算70勝目を狙うクイックステップフロアーズはボブ・ユンゲルス、エンリク・マスらがキーとなる。
昨年のロンバルディアで終盤アタックしてニバリと逃げたティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)はリベンジのレースだ。水曜のミラノ〜トリノではミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)とバルベルデを下し優勝。すでに体調のピークを迎えていることを証明している。
世界選手権ロード スプリントで先行するアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)2位のロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、3位のマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)も参戦する photo:CorVos
世界選手権2位のロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、3位のマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、そして5位のジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)も参戦。いずれも直前のレースで好調を証明しており、世界選手権のリベンジマッチの様相も呈している。
パンチャーからオールラウンダーへ変貌しているジャンニ・モスコン(イタリア)も有力候補だ (c)CorVos
驚きの成長を遂げるマイケル・ウッズ(カナダ)。秀でたクライミング能力でモニュメント制覇を狙う photo:Kei Tsuji
好調を見せるアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)。高いクライミング能力に期待だ photo:Luca Bettini
ニバリに匹敵するダウンヒル能力を持つプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) photo:Luca Bettini
優勝の狙える他の有力候補としては、アスタナのヤコブ・フルサング、BMCレーシングのディラン・トゥーンス、ボーラ・ハンスグローエのラファル・マイカ、ミッチェルトンスコットのアダム・イェーツ、EFエデュケーションファースト・ドラパックはウッズとともにリゴベルト・ウランのダブルエース。そしてロットNLユンボはプリモシュ・ログリッチとサム・ベネット、チームスカイはジャンニ・モスコンとエガン・ベルナル、サンウェブはウィルコ・ケルデルマンとマイケル・マシューズ、トレック・セガフレードは先週日曜のGPブルーノ・ベゲッリで勝利したバウケ・モレマと10月9日のトレヴァッリ・ヴァレジーネの勝者トムス・スクウィンシュ、UAEチームエミレーツはルイ・コスタとダン・マーティン。数えきれないほどの優勝を狙える脚質の選手がラインナップする。
出場するプロコンチネンタルチームとそれぞれの有力候補は以下の通り。
アンドローニジョカトーリ・シデルメック(ソーサ、フラッポルティ)
バルディアーニCSF(チッコーネ、センニ)
イスラエルサイクリングアデミー(ヘルマンス、ネイランズ)
NIPPOヴィーニファンティーニ(ロバト、ポンツィ)
フォルトゥネオ・サムシック(バルギル、フェイユ)
ウィリエールトリエスティナ・セッレイタリア(ブサート、ザルディーニ)
レースは日本時間の土曜夜。国内ではDAZNが21:20から日本語コメンタリーつきでライブ配信する。
text:Makoto.AYANO
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イタリア北部のロンバルディア州で開催される第112回イル・ロンバルディア。「落ち葉のクラシック」の名前の通り、秋の深まりつつある美しい湖水と山岳美の景観織りなすコモ湖一帯を巡るレースだ。例年10月第1土曜に行われてきたが、今年は1週遅れの開催となり、さらに深まる秋を感じさせるレースとなるだろう。
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かつての呼称は「ジロ・ディ・ロンバルディア」。1906年に初開催され、今年で112回目となるイル・ロンバルディアの主催はジロ・デ・イタリアと同じRCSスポルト。ミラノ〜サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュと同格の「モニュメント」のひとつであり、最高のステイタスを誇るクラシックレースだ。
モニュメントのなかでも唯一のピュアクライマー向けのクラシックであり、同時にダウンヒル能力もカギとなる難コースが闘いの舞台となる。コース全長はベルガモからコモへの241km。昨年の247kmから6km短くなったが、獲得標高は約4,000mにのぼる。キーとなる登りはおもに以下の5つ。
54.7km地点 コッレ・ガッロ 登坂距離7.43km、平均勾配6%、最大勾配10%
180.2km地点 マドンナ・デル・ギザッロ 登坂距離8.58km、平均勾配6.2%、最大勾配14%
193.6km(残り47km)地点 ムーロ・ディ・ソルマーノ 登坂距離1.92km、平均勾配15.8%、最大勾配27%
227.4km(残り13.6km)地点 チヴィリオ 登坂距離4.2km、平均勾配9.7km、最大勾配14%
238km(残り3km)モンテ・オリンピノ(新登場) 登り区間1.7km 平均勾配5% ラスト4km地点が最大勾配9%
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ニバリをアシストするバーレーン・メリダのラインナップは、弟のアントニオ・ニバリ、ヨン&ゴルカ・イサギレ、フランコ・ペリツォッティ、ドメニコ・ポッツォヴィーボ、マテイ・モホリッチと非常に強力だ。
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バルベルデの対抗馬となるだろうと思われた昨年2位のジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)は出場せず。過去最高の年間通算70勝目を狙うクイックステップフロアーズはボブ・ユンゲルス、エンリク・マスらがキーとなる。
昨年のロンバルディアで終盤アタックしてニバリと逃げたティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)はリベンジのレースだ。水曜のミラノ〜トリノではミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)とバルベルデを下し優勝。すでに体調のピークを迎えていることを証明している。
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出場するプロコンチネンタルチームとそれぞれの有力候補は以下の通り。
アンドローニジョカトーリ・シデルメック(ソーサ、フラッポルティ)
バルディアーニCSF(チッコーネ、センニ)
イスラエルサイクリングアデミー(ヘルマンス、ネイランズ)
NIPPOヴィーニファンティーニ(ロバト、ポンツィ)
フォルトゥネオ・サムシック(バルギル、フェイユ)
ウィリエールトリエスティナ・セッレイタリア(ブサート、ザルディーニ)
レースは日本時間の土曜夜。国内ではDAZNが21:20から日本語コメンタリーつきでライブ配信する。
text:Makoto.AYANO
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