2018/09/04(火) - 14:41
今年30回目の開催となる「ツール・ド・おきなわ」。それを記念して、大会実行委員長の森兵次氏と、ツアー・オブ・ジャパン大会ディレクターの栗村修氏が対談。さらに、今年の市民レースに出場予定の有力5選手が集まっての対談が東京都内で行われた。
UCIレースからサイクリングイベントまで、毎年多くの参加者が集まる「ツール・ド・おきなわ」。30回目の開催を記念し、今年はUCIレースに加えて市民210kmの模様がライブ中継される。それを機に、第1回大会から育ててきた「ツール・ド・おきなわの父」とも言うべき大会実行委員長の森兵次氏と、日本最大のステージレース・ツアー・オブ・ジャパンの大会ディレクターである栗村修氏が対談した。
(この対談の模様は「FRESH LIVE」のサイクリングチャンネルで配信される。詳細はこの記事の最後で。)
対談終了後の自転車関係メディアとの懇親会で、森氏はツール・ド・おきなわのこれまでとこれからについて語った。
ツール・ド・おきなわのポスターをバックに、森兵次氏(写真左)と栗村修氏 photo:Satoru Kato
沖縄国体をきっかけに始まったツール・ド・おきなわ
1987年に沖縄で国体が開催されることになったのをきっかけに、沖縄県内で各競技の芽が出ました。その時体協(体育協会)の会長から、自転車競技をやれと言われ、1980年に沖縄県の自転車競技連盟を作りました。
ツール・ド・おきなわ大会実行委員長の森兵次氏 photo:Satoru Kato当時は自転車のことは何もわからなかったけれど、国体開催までの7年間の準備期間の中で、ツール・ド・おきなわの機運が高まっていきました。他の競技は体育館などの立派な競技施設が出来たけれど、自転車ロードレースは何も残らないから、形として残そうと。それと、過疎化がひどかった沖縄北部の活性化、地域振興が狙いでした。
沖縄の地域振興に結びつけたスポーツイベントは、宮古島トライアスロンや那覇マラソンの方が先に始まっていて、私はその両方の立ち上げに関わりました。その経験があったので、サイクルスポーツも地域振興と結びつけられると考えていました。
沿道では住民の方たちによる暖かな応援が繰り広げられる photo:Makoto.AYANO
今帰仁では沿道で獅子舞が応援してくれた photo:Makoto.AYANO
一番力になったのは警察でした。国体まで7年間の準備期間中にしょっちゅう顔を合わせていたので、ツール・ド・おきなわを作る時にもプラスになり、後の沖縄での自転車競技にもプラスになりました。長距離のコースなので、立哨など協力頂いていることは本当に感謝しています。
完走率が低くても過酷さが評価されるようになった市民レース
市民210kmに出る選手が皆で恒例の「チバリヨー!」 photo:Makoto.AYANO
シダ植物のヒカゲヘゴ繁る与那の坂を登る市民210kmのメイン集団 photo:Makoto.AYANOコースは国体に使用した147kmを元に、与那の登りを2回通すことで200kmとしました。それを当時の日本自転車競技連盟の方や鳴島さんに見てもらって、良いコースだと言ってもらい自信がつきました。
最初は市民レーサーの部はサイクルマラソンとして始めました。でも「マラソン」という名前をつけてしまったためか、90%が足切りになってしまいました。当時は「ここまで走れればいいや」と、完走を目指さない参加者が多かったというのもあるのですが。その後も毎年完走率は低かったのですが、一番過酷なレースとして評価されるようになりました。今は「市民レーサーの甲子園」と呼ばれるようになり、ツール・ド・おきなわを代表するようなレースになりました。
ツール・ド・おきなわは「自転車のチャンプルー文化」
羽地ダムへの登りは最後の苦しみどころであり、応援ポイントでもある photo:Makoto.AYANO
レース後のこれを楽しみに参加してる人も多いのでは? photo:Makoto.AYANO
日本のレースはアラカルト的でひとつの種目しかやらないところが多いですが、ツール・ド・おきなわは市民レースだけでも210km、140km、100km、50km、年齢別と10以上あります。さらにUCIレースやサイクリングもやってるから、沖縄の言葉で言う「チャンプルー(ごちゃまぜ)」なんです。どの切り口からも参加できるのが大きな特徴だと思っています。
もっと言ってしまえば、・・・これは予算無視の構想ですが、1週間くらいの期間で開催して、「ツール・ド・おきなわ祭り」と言うか、「自転車節」のようなのを作るのも良いかなと思ってます。女子のUCIレース化とか、台湾ナイト、上海ナイト、ソウルナイト、とか・・・1週間あれば色々なことが出来るようになる。簡単には実現しないでしょうけどね。
市民レースの国際化を視野に
本部大橋を渡るメイン集団約400人が長く伸び、なかなか途切れない photo:Makoto.AYANO
今年は全体で5000名くらい集まるだろうと予想しています。その中で海外からの参加比率が14〜15%くらいになるかなと。沖縄という地理的条件、海外からの飛行機の乗り入れも多いので、それを活かして市民レースの国際化を進めていくのも良いかなと考えています。
グランフォンド世界選手権への出場権が得られるニセコクラシック photo:Satoru Kato今、北海道でUCIグランフォンド(ニセコクラシック)をやってますが、羨ましいですね。トライアスロンはエイジランキングで世界選手権に選手を送り出すというのをやっていて、200人くらいが行ってます。ホビーレースも同じように世界と結びつけることで良い目標になるのではと思っています。
市民レースの運営面も色々検討しています。チャンピオンレース(UCIレース)が、駆け引きに終始すると他のレースに影響を与えてしまうので、そうならない方法を考えています。例えば、今は全て名護にゴールしていますが、全て名護からスタートしてゴールを別にするのもアリかなと。
逆にチャンピオンレースは開始当初からあまり変わってないので、相対的な魅力は下がっていると思います。でもこれ以上難易度を高くして日本人が勝てなくなるのもどうかと考えています。
市民レース210km有力5選手が対談
市民レース210kmの優勝候補を集めた選手対談には、今年4連覇がかかる高岡亮寛(ROPPONGI EXPRESS)
、昨年2位の松木健治(VC Fukuoka)、今年のニセコクラシックで優勝した岡泰誠(イナーメ信濃山形)、小畑郁(なるしまフレンドレーシングチーム)、河合宏樹(オッティモ)の5名が集まった。大いに盛り上がったこの模様もFRESH LIVEで配信されるが、ここではコメントのダイジェストのみお伝えしよう。
ツール・ド・おきなわ市民レースの有力選手と森兵次・大会実行委員長 photo:Satoru Kato
「全てはおきなわで勝つため」と言い切る高岡亮寛(ROPPONGI EXPRESS) photo:Satoru Kato
「ツール・ド・おきなわは1年の集大成のレース」と話す松木健治(VC Fukuoka) photo:Satoru Kato
高岡亮寛(ROPPONGI EXPRESS)
「おきなわで終わって次のおきなわに向けて始める。全てはおきなわで勝つためと言っても過言ではないです。レースを記録してくれるカメラが入ってくれればと以前から思っていたが、今年実現するのは嬉しいですね。走っているときは意識せず、いつも通り走るだけ。レース後に見るのが楽しみです」
松木健治(VC Fukuoka)
「おきなわは一年の集大成のレースで特別な意気込みをもって臨んでいて、おきなわの前3ヶ月はおきなわに絞った調整をしています。210kmと普通は走らない距離なのと、暑さにも耐えなければならないのですが、それは楽しみでもあります」
実は市民210kmは今年初めて走るという岡泰誠(イナーメ信濃山形) photo:Satoru Kato
「高岡さんを疲れさせるレースを」と話す小畑郁(なるしまフレンド) photo:Satoru Kato
岡泰誠(イナーメ信濃山形)
「ツール・ド・おきなわはホビーとしてレースをしている人達には一番影響力のあるレース。トレーニングを教える仕事をしているので、ここで目立って自分の名前を知ってもらえば、営業にもつながるかなと考えてます。ニセコクラシックでも自分から動いたが、おきなわでも出来るだけきついレースにして最後に人数を絞れるようなレースをしたいです」
小畑郁(なるしまフレンド)
「レース距離も内容も他のレースと大きく違うので、おきなわに向けてうまく合わせられるかという課題があります。上位に入っている選手はJプロツアートップチームと同じくらいの準備をしている。高岡さんを疲れさせるような、周りもそういうゲームをしてくれると面白くなると思う」
「高岡さんを目標に練習している」と言う河合宏樹(オッティモ) photo:Satoru Kato
ツール・ド・おきなわ市民210kmに出場予定の5人による対談 photo:Satoru Kato
河合宏樹(オッティモ)
「高岡さんを目標に、いつも今頃(8月)からおきなわに向けた練習を始めるのですが、高岡さんの話を聞いて自分は甘かったなと(笑)。自転車を始めるきっかけのひとつが、おきなわの市民レースのDVDを見たことです。そこで高岡さんや小畑さんが出ていて、市民なのにプロみたいでカッコよかった。今回のライブストリーミングには最後まで映るようにしたいです」
両対談の模様は10月に「FRESH LIVE」のサイクリングチャンネルで配信される予定だ。日程、配信時間など詳細は追って発表される。
番組概要
タイトル:第30回記念「ツール・ド・おきなわ 2018」スペシャルインタビュー これまでの挑戦とこれからの挑戦
放送日:2018年10下旬頃
配信:FRESH LIVE(サイバーエージェントが運営する映像配信ポータルサイト)
サイクリングチャンネル https://freshlive.tv/cycling
UCIレースからサイクリングイベントまで、毎年多くの参加者が集まる「ツール・ド・おきなわ」。30回目の開催を記念し、今年はUCIレースに加えて市民210kmの模様がライブ中継される。それを機に、第1回大会から育ててきた「ツール・ド・おきなわの父」とも言うべき大会実行委員長の森兵次氏と、日本最大のステージレース・ツアー・オブ・ジャパンの大会ディレクターである栗村修氏が対談した。
(この対談の模様は「FRESH LIVE」のサイクリングチャンネルで配信される。詳細はこの記事の最後で。)
対談終了後の自転車関係メディアとの懇親会で、森氏はツール・ド・おきなわのこれまでとこれからについて語った。
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沖縄国体をきっかけに始まったツール・ド・おきなわ
1987年に沖縄で国体が開催されることになったのをきっかけに、沖縄県内で各競技の芽が出ました。その時体協(体育協会)の会長から、自転車競技をやれと言われ、1980年に沖縄県の自転車競技連盟を作りました。
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沖縄の地域振興に結びつけたスポーツイベントは、宮古島トライアスロンや那覇マラソンの方が先に始まっていて、私はその両方の立ち上げに関わりました。その経験があったので、サイクルスポーツも地域振興と結びつけられると考えていました。
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一番力になったのは警察でした。国体まで7年間の準備期間中にしょっちゅう顔を合わせていたので、ツール・ド・おきなわを作る時にもプラスになり、後の沖縄での自転車競技にもプラスになりました。長距離のコースなので、立哨など協力頂いていることは本当に感謝しています。
完走率が低くても過酷さが評価されるようになった市民レース
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ツール・ド・おきなわは「自転車のチャンプルー文化」
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日本のレースはアラカルト的でひとつの種目しかやらないところが多いですが、ツール・ド・おきなわは市民レースだけでも210km、140km、100km、50km、年齢別と10以上あります。さらにUCIレースやサイクリングもやってるから、沖縄の言葉で言う「チャンプルー(ごちゃまぜ)」なんです。どの切り口からも参加できるのが大きな特徴だと思っています。
もっと言ってしまえば、・・・これは予算無視の構想ですが、1週間くらいの期間で開催して、「ツール・ド・おきなわ祭り」と言うか、「自転車節」のようなのを作るのも良いかなと思ってます。女子のUCIレース化とか、台湾ナイト、上海ナイト、ソウルナイト、とか・・・1週間あれば色々なことが出来るようになる。簡単には実現しないでしょうけどね。
市民レースの国際化を視野に
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逆にチャンピオンレースは開始当初からあまり変わってないので、相対的な魅力は下がっていると思います。でもこれ以上難易度を高くして日本人が勝てなくなるのもどうかと考えています。
市民レース210km有力5選手が対談
市民レース210kmの優勝候補を集めた選手対談には、今年4連覇がかかる高岡亮寛(ROPPONGI EXPRESS)
、昨年2位の松木健治(VC Fukuoka)、今年のニセコクラシックで優勝した岡泰誠(イナーメ信濃山形)、小畑郁(なるしまフレンドレーシングチーム)、河合宏樹(オッティモ)の5名が集まった。大いに盛り上がったこの模様もFRESH LIVEで配信されるが、ここではコメントのダイジェストのみお伝えしよう。
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高岡亮寛(ROPPONGI EXPRESS)
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松木健治(VC Fukuoka)
「おきなわは一年の集大成のレースで特別な意気込みをもって臨んでいて、おきなわの前3ヶ月はおきなわに絞った調整をしています。210kmと普通は走らない距離なのと、暑さにも耐えなければならないのですが、それは楽しみでもあります」
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岡泰誠(イナーメ信濃山形)
「ツール・ド・おきなわはホビーとしてレースをしている人達には一番影響力のあるレース。トレーニングを教える仕事をしているので、ここで目立って自分の名前を知ってもらえば、営業にもつながるかなと考えてます。ニセコクラシックでも自分から動いたが、おきなわでも出来るだけきついレースにして最後に人数を絞れるようなレースをしたいです」
小畑郁(なるしまフレンド)
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河合宏樹(オッティモ)
「高岡さんを目標に、いつも今頃(8月)からおきなわに向けた練習を始めるのですが、高岡さんの話を聞いて自分は甘かったなと(笑)。自転車を始めるきっかけのひとつが、おきなわの市民レースのDVDを見たことです。そこで高岡さんや小畑さんが出ていて、市民なのにプロみたいでカッコよかった。今回のライブストリーミングには最後まで映るようにしたいです」
両対談の模様は10月に「FRESH LIVE」のサイクリングチャンネルで配信される予定だ。日程、配信時間など詳細は追って発表される。
番組概要
タイトル:第30回記念「ツール・ド・おきなわ 2018」スペシャルインタビュー これまでの挑戦とこれからの挑戦
放送日:2018年10下旬頃
配信:FRESH LIVE(サイバーエージェントが運営する映像配信ポータルサイト)
サイクリングチャンネル https://freshlive.tv/cycling
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