12カ所のカテゴリー山岳を越えて、精鋭グループの中から下りロングスパートを成功させたゲオルク・プライドラー(オーストリア、グルパマFDJ)が勝利。ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)がツール・ド・ポローニュ初制覇に王手をかけた。


断続的に登場する山岳を越えていく断続的に登場する山岳を越えていく photo:Tour de Pologne
ツール・ド・ポローニュ2018第6ステージツール・ド・ポローニュ2018第6ステージ photo:Tour de Pologneツール・ド・ポローニュ2018第6ステージツール・ド・ポローニュ2018第6ステージ photo:Tour de Pologne

佳境を迎えるツール・ド・ポローニュの総合争い。最終日前日の第6ステージはザコパネからブコビナリゾートまでの129km。ポーランドとスロバキアの国境に位置する山岳地帯を走るコースの獲得標高差は2,800mに達する。

ステージ中盤にかけてカテゴリー1級、3級、2級の山岳が設定された24.2km周回コースを4周(つまり山岳が12カ所登場)。最後は標高941mの高原保養地ブコビナリゾートに向かって全長4km/平均5%の登りをこなし、残り1kmアーチからグッと下ってフィニッシュを迎える。山頂フィニッシュではないが、総合成績に変動をもたらすには十分な難易度だ。

レース序盤、アタックの末に先頭で形成されたのはパトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)やルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)、ラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)、カルロス・ベローナ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)という強者揃いの9名グループ。チームスカイ率いるメイン集団から2分のリードを築いた状態で9名は24.2km周回コースに入った。

カテゴリー山岳でコンラッドらと競り合いながらポイントを量産したのはルーカス・オウシアン(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)。UCIワールドチームの選手たちに挑み、8つのカテゴリー山岳を先頭通過したオウシアンが合計57ポイントを荒稼ぎした。オウシアンはチームメイトから山岳賞ジャージを引き継ぐことに成功している。

フィニッシュまで30kmを切ると総合逆転&大会連覇を狙うBMCレーシングがメイン集団のペースアップを開始。前日にバーレーン・メリダへの来季移籍を発表したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)が先頭に立ってペースを上げると、それまで逃げていた選手たちは吸収される。長時間にわたるデニスの牽引が終わるとチームスカイのアシスト陣が集団前方に復帰。最後のカテゴリー山岳である2級山岳を駆け上がった。

ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、バーレーン・メリダ)やカルロス・ベローナ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)を含む逃げグループヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、バーレーン・メリダ)やカルロス・ベローナ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)を含む逃げグループ photo:Tour de Pologne
チームスカイが長時間にわたってメイン集団を牽引したチームスカイが長時間にわたってメイン集団を牽引した photo:Tour de Pologne
逃げグループを率いるルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)逃げグループを率いるルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) photo:Tour de Pologne
ポーランド南部の山岳地帯を走るポーランド南部の山岳地帯を走る photo:Tour de Pologne
フィニッシュまで12kmを残して、平均勾配10%の2級山岳でドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)とサム・オーメン(オランダ、サンウェブ)がアタックすると、総合に関係しない動き(ライバルたちのボーナスタイム獲得を阻止する動き)だとしてチームスカイはこれを容認。デヴェナインスとオーメンのリードは25秒まで広がった。

フィニッシュ地点ブコビナリゾートに向かう全長4km/平均5%の登りが始まるとメイン集団の先頭にはロットNLユンボが上がり、そこから総合3位ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)がアタック。ベネットの加速によってペースが上がったメイン集団は残り3km地点で逃げていたデヴェナインスとオーメンを飲み込んで行く。

執拗にチェックに入るセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)を3度目のアタックで振り切ったベネットだったが、独走は長くは続かなかった。集団からカウンターアタックした総合2位ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング)がベネットの独走を阻止。ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)も動きを見せ、集団が9名に絞られた状態で登りの頂上を越えた。

残り1kmアーチ通過後の下りを利用してスルリと抜け出したのはゲオルク・プライドラー(オーストリア、グルパマFDJ)だった。ピノが上手くライバルたちの追走を遅らせたことでプライドラーが独走を開始。遅れて反応したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)の追走は届かず、下りを高速で駆け抜けたプライドラーが勝利した。プライドラーが10秒、同タイムでステージ2位のエマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が6秒、ステージ3位のクウィアトコウスキーが4秒のボーナスタイムを獲得している。

集団先頭で登りをこなすイエロージャージのミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)集団先頭で登りをこなすイエロージャージのミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:Tour de Pologne
残り12km地点でアタックしたドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)とサム・オーメン(オランダ、サンウェブ)残り12km地点でアタックしたドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)とサム・オーメン(オランダ、サンウェブ) photo:Tour de Pologne
ロングスパートを成功させたゲオルク・プライドラー(オーストリア、グルパマFDJ)が先行逃げ切りロングスパートを成功させたゲオルク・プライドラー(オーストリア、グルパマFDJ)が先行逃げ切り photo:Tour de Pologne
「ずっと集団内に息を潜めていて、終盤の正しいタイミングでアタックした。スプリント勝負では勝てると思っていたし、自信を持って先行したんだ。何度も惜しいところで勝利を逃していたので、このUCIワールドツアーレース初勝利を嬉しく思う」。オーストリアのTTチャンピオンに3度輝いている28歳のオールラウンダーはそう喜ぶ。この日の勝利でティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)と1秒差の総合7位に浮上したプライドラーは「明日のミーティングでチームがどう戦略的に戦うべきかを決めたい」とコメントしている。

ライバルたちのアタックを封じ込め、ボーナスタイムで再び総合リードを広げたクウィアトコウスキーは「今日は序盤から総合に関わるアタックが続発したけど、チームが上手くレースを運んでくれた。おかげで最後の登りまでずっと快適な強度で走ることができたし、その結果4秒のボーナスタイムを得ることができた。現状16秒の総合リードを得ているものの、まだまだパンクやトラブル一つでひっくり返るタイム差。明日も全力でイエロージャージを守るたい目に走りたい」とコメント。1級山岳が詰め込まれた翌日の最終ステージでは、イエロージャージ争いだけでなく、秒差の総合表彰台争いにも注目だ。

ステージ優勝を飾ったゲオルク・プライドラー(オーストリア、グルパマFDJ)ステージ優勝を飾ったゲオルク・プライドラー(オーストリア、グルパマFDJ) photo:Tour de Pologne
ツール・ド・ポローニュ2018第6ステージ結果
1位 ゲオルク・プライドラー(オーストリア、グルパマFDJ) 3:16:01
2位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
3位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)
4位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)
5位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング)
6位 セルゲイ・チェルネトスキー(ロシア、アスタナ)
7位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)
8位 ローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
9位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
10位 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) 0:00:04
88位 別府史之(日本、トレック・セガフレード) 0:12:10
個人総合成績
1位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 20:46:23
2位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング) 0:00:16
3位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 0:00:24
4位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:25
5位 セルゲイ・チェルネトスキー(ロシア、アスタナ) 0:00:28
6位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
7位 ゲオルク・プライドラー(オーストリア、グルパマFDJ) 0:00:29
8位 ローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ) 0:00:31
9位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:00:39
10位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) 0:00:42
ポイント賞
1位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 66pts
2位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード) 63pts
3位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 58pts
山岳賞
1位 ルーカス・オウシアン(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコウィチェ) 57pts
2位 ヤン・トラトニク(スロベニア、CCCスプランディ・ポルコウィチェ) 50pts
3位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 27pts
チーム総合成績
1位 アスタナ 62:22:12
2位 アージェードゥーゼール 0:00:36
3位 クイックステップフロアーズ 0:00:42
text:Kei Tsuji
photo:Tour de Pologne

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