2018/07/08(日) - 17:57
ツール・ド・フランスのプロトンに帯同走行するオートバイのひとつ「ジャーナリストモト」に女性スポーツライターの池野茜が乗車して体験取材。ツールのプロトンが走る様子を伝えます。
みなさん、はじめまして! スポーツライターの池野茜(いけのあかね)と申します。サイクルロードレースはもちろん、他の競技の取材もしているスポーツライターです。今年の春からご縁があって、シクロワイアードに時々記事を寄稿させていただいています。
今回は第1休息日までと短期間の帯同ですが、世界三大スポーツであるツール・ド・フランスの現場には学ぶべきことだらけです。少しでも多くのことを吸収して今後の活動に還元するとともに、現地の情報をシクロワイアードをご覧のみなさんにお届けできればと思います。
7月7日、ついに第105回ツール・ド・フランスが開幕しました。私にとって記念すべきツール初取材で、幸運にもジャーナリストバイクに乗ることができたので、その体験記をお届けいたします。
最初にジャーナリストバイクについてご紹介します。通常のプレス、フォトグラファーの取材方法は、“選手が走るコースとは異なる「抜け道」を回って撮影ポイントに先回りして写真を撮る”というものです。選手と同じコースをバイクで走って報道できるのは、限られたフォトグラファーや国際放送のスタッフなど、世界中から集まるツールの取材陣でもほんの一握り。本来はごく少数の人しかできない取材をライターやテレビ関係者も体験できるのが、ジャーナリストバイクです。
わたしがジャーナリストバイクの話を綾野編集長から聞いたのが、開幕2日前のチームプレゼンテーションがあった7月5日。先着順らしく、ダメ元で大会側の担当者にメールしてみたところ、「じゃあ、土曜の第1ステージはどう?」と返信が。「いいの?グランデパールなんて大事な日がまだ空いてたの?」と驚きながらも、すぐに承諾のメールを返し、晴れてジャーナリストバイクに乗れることになりました。
当日の開幕セレモニーが始まるころ、スタートラインに並んだ、指定された23番のバイクの前でモトパイロットのクリストフと合流。軽く自己紹介をしたあと、ヘルメットとジャケットを借り、セレモニーはそっちのけでアクチュアル・スタートの0km地点まで一気に走りました。じつは今回が人生初のバイクでしたが、安定感は抜群。最初こそクリストフの肩につかまっていましたが、途中から両手でカメラを構えられるように。乗るモトはもちろん「Kawasaki」です。
私はフォトグラファーではないものの一眼レフを持っているので、カメラを持参して撮影しました。4時間以上バイクに乗っていても選手のすぐそばにいたのはトータル5分もないと思うので、選手を撮るというよりは沿道の観客や装飾をメインに撮影していましたが、とにかく難しかったです。規則ではスマホ撮影は禁止、動画撮影は放映権があるメディアのみに許されます。
「これは写真映えしそう!」と思う観客を見つけてもあっという間に通り過ぎてしまったり、撮影したはいいけどよく見たらピンボケだったり…。写真を専門にしている方のすごさを感じずにはいられませんでした。
話をジャーナリストバイクに戻しましょう。ドライバーから支給されるヘルメットをかぶると、ときどきレース状況の報告が届きます。たまに英語ですが、基本はフランス語でした。わたしはフランス語は「ボンジュール」「メルシー」レベルの語彙力なので、何を言っているかはまったくわかりません。チーム名や選手名を拾ってなんとなく想像するしかありませんでした。
ジャーナリストバイクも4時間走りっぱなしではなく、昼食やお手洗いでは路肩にバイクを停めます。軽食はパンやサンドウィッチ、ドリンクはヴィッテルのミネラルウォーター以外でも、コーラや缶ジュースなど、種類は思いのほか豊富。「もぐもぐタイム」の間にメイン集団の選手が通り過ぎてしまったことも…。
ジャーナリストバイクに乗っていて思ったのは、とにかく沿道に人が多いということ。今回のノワールムーティエ島はアクセスが良くないグランデパールだったことからこのステージは比較的観客少なかったようです。とはいえ、途中の沿道に見渡す限り人がいる光景は感動せずにいられません。
さまざまな国旗が沿道を彩りましたが、圧倒的にフランスとベルギーの旗が多かったと思います。ほかにも第1ステージ優勝のフェルナンド・ガビリア(クイックステップフロアーズ)などが出場しているコロンビアは目立って多かった印象です。
選手が多いわりに国旗をあまり見かけなかったのがイタリアとスペイン。逆に選手が少ないわりに国旗を多く見たのはアイルランドでした。出場選手ゼロの国ではチリの国旗が。第1ステージには、日の丸を掲げた日本人客はおらず(見落としていたらごめんなさい)。
ジャーナリストバイクに乗ると、やはりなかなか見られない光景がたくさん見れます。選手が補給をもらうことところはもちろん、チームカーとのやり取りをしているところなど、真後ろからの撮影はチームカーやバイクによって普通は困難です。
サイクルロードレースに欠かせないもののひとつである道路上のペイントも至るところに。すでに薄くなって文字を判読できないものもあり、何日も前から待ちきれずに書かれたんだろうな、と思いを馳せました。
あとは、なんといってもヴァンデ県が地元のディレクトエネルジーへの声援の多さ。さまざまな選手への応援バナーが用意されていましたが、おそらく一番多かったのはシルヴァン・シャヴァネル(フランス)へのものでしょう。
また、選手と同じかそれ以上のスピードで沿道のメッセージを読み取ろうとしましたが、選手の目線だとやはり太くて大きい文字でないとなかなか識別できないと思います。そのため、これからツールや他の試合で選手に読んでほしいメッセージがあるときは、猛スピードの中で瞬時に判別することを念頭に入れるといいかもしれません。
沿道の観客は、選手でもなんでもないモトに乗った私達にも声援をたくさん飛ばしてくれて、とてもいい気分でツール初取材を終えることができました。選手のすぐそばを走っていたら、もっと沿道の人がぐっと道路中央に押し掛ける様子が撮影できたはず。そう思うと、さっき降りたはずなのにまたジャーナリストバイクに乗りたくなってしまいます。
いままで映像でしかツールを見たことがありませんでしたが、生で観るツールは別格でした。ジャーナリストバイクから観ることができたのは、本当に貴重な体験だったと思います。
text:Akane.Ikeno
photo:Akane.Ikeno Makoto.Ayano
みなさん、はじめまして! スポーツライターの池野茜(いけのあかね)と申します。サイクルロードレースはもちろん、他の競技の取材もしているスポーツライターです。今年の春からご縁があって、シクロワイアードに時々記事を寄稿させていただいています。
今回は第1休息日までと短期間の帯同ですが、世界三大スポーツであるツール・ド・フランスの現場には学ぶべきことだらけです。少しでも多くのことを吸収して今後の活動に還元するとともに、現地の情報をシクロワイアードをご覧のみなさんにお届けできればと思います。
7月7日、ついに第105回ツール・ド・フランスが開幕しました。私にとって記念すべきツール初取材で、幸運にもジャーナリストバイクに乗ることができたので、その体験記をお届けいたします。
最初にジャーナリストバイクについてご紹介します。通常のプレス、フォトグラファーの取材方法は、“選手が走るコースとは異なる「抜け道」を回って撮影ポイントに先回りして写真を撮る”というものです。選手と同じコースをバイクで走って報道できるのは、限られたフォトグラファーや国際放送のスタッフなど、世界中から集まるツールの取材陣でもほんの一握り。本来はごく少数の人しかできない取材をライターやテレビ関係者も体験できるのが、ジャーナリストバイクです。
わたしがジャーナリストバイクの話を綾野編集長から聞いたのが、開幕2日前のチームプレゼンテーションがあった7月5日。先着順らしく、ダメ元で大会側の担当者にメールしてみたところ、「じゃあ、土曜の第1ステージはどう?」と返信が。「いいの?グランデパールなんて大事な日がまだ空いてたの?」と驚きながらも、すぐに承諾のメールを返し、晴れてジャーナリストバイクに乗れることになりました。
当日の開幕セレモニーが始まるころ、スタートラインに並んだ、指定された23番のバイクの前でモトパイロットのクリストフと合流。軽く自己紹介をしたあと、ヘルメットとジャケットを借り、セレモニーはそっちのけでアクチュアル・スタートの0km地点まで一気に走りました。じつは今回が人生初のバイクでしたが、安定感は抜群。最初こそクリストフの肩につかまっていましたが、途中から両手でカメラを構えられるように。乗るモトはもちろん「Kawasaki」です。
私はフォトグラファーではないものの一眼レフを持っているので、カメラを持参して撮影しました。4時間以上バイクに乗っていても選手のすぐそばにいたのはトータル5分もないと思うので、選手を撮るというよりは沿道の観客や装飾をメインに撮影していましたが、とにかく難しかったです。規則ではスマホ撮影は禁止、動画撮影は放映権があるメディアのみに許されます。
「これは写真映えしそう!」と思う観客を見つけてもあっという間に通り過ぎてしまったり、撮影したはいいけどよく見たらピンボケだったり…。写真を専門にしている方のすごさを感じずにはいられませんでした。
話をジャーナリストバイクに戻しましょう。ドライバーから支給されるヘルメットをかぶると、ときどきレース状況の報告が届きます。たまに英語ですが、基本はフランス語でした。わたしはフランス語は「ボンジュール」「メルシー」レベルの語彙力なので、何を言っているかはまったくわかりません。チーム名や選手名を拾ってなんとなく想像するしかありませんでした。
ジャーナリストバイクも4時間走りっぱなしではなく、昼食やお手洗いでは路肩にバイクを停めます。軽食はパンやサンドウィッチ、ドリンクはヴィッテルのミネラルウォーター以外でも、コーラや缶ジュースなど、種類は思いのほか豊富。「もぐもぐタイム」の間にメイン集団の選手が通り過ぎてしまったことも…。
ジャーナリストバイクに乗っていて思ったのは、とにかく沿道に人が多いということ。今回のノワールムーティエ島はアクセスが良くないグランデパールだったことからこのステージは比較的観客少なかったようです。とはいえ、途中の沿道に見渡す限り人がいる光景は感動せずにいられません。
さまざまな国旗が沿道を彩りましたが、圧倒的にフランスとベルギーの旗が多かったと思います。ほかにも第1ステージ優勝のフェルナンド・ガビリア(クイックステップフロアーズ)などが出場しているコロンビアは目立って多かった印象です。
選手が多いわりに国旗をあまり見かけなかったのがイタリアとスペイン。逆に選手が少ないわりに国旗を多く見たのはアイルランドでした。出場選手ゼロの国ではチリの国旗が。第1ステージには、日の丸を掲げた日本人客はおらず(見落としていたらごめんなさい)。
ジャーナリストバイクに乗ると、やはりなかなか見られない光景がたくさん見れます。選手が補給をもらうことところはもちろん、チームカーとのやり取りをしているところなど、真後ろからの撮影はチームカーやバイクによって普通は困難です。
サイクルロードレースに欠かせないもののひとつである道路上のペイントも至るところに。すでに薄くなって文字を判読できないものもあり、何日も前から待ちきれずに書かれたんだろうな、と思いを馳せました。
あとは、なんといってもヴァンデ県が地元のディレクトエネルジーへの声援の多さ。さまざまな選手への応援バナーが用意されていましたが、おそらく一番多かったのはシルヴァン・シャヴァネル(フランス)へのものでしょう。
また、選手と同じかそれ以上のスピードで沿道のメッセージを読み取ろうとしましたが、選手の目線だとやはり太くて大きい文字でないとなかなか識別できないと思います。そのため、これからツールや他の試合で選手に読んでほしいメッセージがあるときは、猛スピードの中で瞬時に判別することを念頭に入れるといいかもしれません。
沿道の観客は、選手でもなんでもないモトに乗った私達にも声援をたくさん飛ばしてくれて、とてもいい気分でツール初取材を終えることができました。選手のすぐそばを走っていたら、もっと沿道の人がぐっと道路中央に押し掛ける様子が撮影できたはず。そう思うと、さっき降りたはずなのにまたジャーナリストバイクに乗りたくなってしまいます。
いままで映像でしかツールを見たことがありませんでしたが、生で観るツールは別格でした。ジャーナリストバイクから観ることができたのは、本当に貴重な体験だったと思います。
text:Akane.Ikeno
photo:Akane.Ikeno Makoto.Ayano
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