2018/05/10(木) - 05:45
最大勾配12%の登りを高速で駆け上がり、43名に縮小したメイン集団。ジロ・デ・イタリア第5ステージを締めくくる精鋭集団によるスプリントでエンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)が勝利を飾った。
ギリシア時代の神殿が残るアグリジェントをスタート photo:LaPresse
いくつものシチリアの田舎町を通過 photo:LaPresse
5月9日(水)第5ステージ アグリジェント〜サンタニンファ 153km ☆☆☆ photo:RCS Sport
5月9日(水)第5ステージ アグリジェント〜サンタニンファ 153km ☆☆☆ photo:RCS Sport
ジロ第5ステージはユネスコ世界遺産に登録された「神殿の谷」で有名なアグリジェントをスタート。前日に引き続きシチリアのアップダウンコースが設定されており、ステージ後半は3つの4級山岳を含むアップダウンが連続する。残り2kmから平均勾配8%(最大勾配12%)の1km登坂スタート。残り1kmは平坦基調だが、スプリンターには厳しいコースレイアウトだ。
丘の上の街アグリジェントをスタートしてすぐ、正式スタートの旗が振られると同時にアタックが始まる。「事前の打ち合わせをしていたわけじゃないけど、右側から自分が行って、左側からローランが行った」と語るライアン・ミューレン(アイルランド、トレック・セガフレード)が、チームメイトのローラン・ディディエ(ルクセンブルク)とエルゲルト・ズパ(アルバニア、ウィリエール・トリエスティーナ)、アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)と一緒に4名で逃げを開始した。
海岸線に沿った幹線道路に強い向かい風が吹きつけたため、強力な4名逃げにもかかわらず、序盤からスローな平均スピードを刻んだ。タイム差が5分30秒まで広がったところでBMCレーシングがコントロールを開始。レース中盤にはステージ2連勝を狙うロット・フィックスオールやUAEチームエミレーツ、サンウェブも集団牽引に合流した。
出身地メンフィの近くを通過する際にはサルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、チームスカイ)が集団先頭に出るシーンも。向かい風の中で集団から脱落したガイ・ニーブ(イスラエル、イスラエルサイクリングアカデミー)は体調不良により今大会3人目のリタイア者になっている。
レース前半は海岸線に沿ったアップダウンが続く photo:LaPresse
ロット・フィックスオールが積極的にメイン集団を牽引 photo:LaPresse
ロット・フィックスオールを先頭に進むメイン集団 photo:Kei Tsuji
逃げるライアン・ミューレン(アイルランド、トレック・セガフレード)ら4名 photo:Kei Tsuji
フィニッシュまで70kmを切ってコースが内陸に向かうとタイム差は2分台に。2つの4級山岳を先頭通過したアイルランドチャンピオンのミューレンは山岳賞ランキング3位に浮上する。やがてフィニッシュまで24kmを切ると逃げグループ内に不協和音が漂い、ディディエに続いて仕掛けたヴェンドラーメが独走に持ち込んだ。
リスク回避のためにチームスカイが集団先頭に出るシーンも見られたが、主にタイム差を詰める役割を担ったのはロット・フィックスオール。残り15km地点で先頭ヴェンドラーメのリードを1分を割り込む。
淡々とハイペースを刻むメイン集団は徐々に緊張感を増し、残り14km地点で発生した落車によってドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)やマリアビアンカのマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)が足止め。ポッツォヴィーヴォはチームメイトの力を借りて、そしてシャフマンは自力で集団復帰を果たしている。
フィニッシュ地点サンタニンファへの登り口に向けてミッチェルトン・スコットやチームスカイ、バーレーン・メリダが隊列を組む中、残り5kmでミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)がコーナーをオーバーランして落車。大怪我は免れたが、その後のアスタナの全力追走は届かず、ロペスはこの日だけで43秒ものタイムを失っている。
シチリア島南部の街を通過していく photo:LaPresse
ステージ後半にかけて内陸部のアップダウンが続く photo:LaPresse
逃げ続けるアンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)ら photo:Kei Tsuji
ロット・フィックスオールがリードする形で残り2kmを切り、最大勾配12%の登りが始まるとポッツォヴィーヴォが集団先頭でペースアップ。ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)やティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)、ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)を引き連れながらポッツォヴィーヴォがハイペースを刻むと、メイン集団の人数は50名以下に絞られた。
続くディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)のアタックは決まらず、登りを終えて残り1kmアーチを通過するところで集団は40名強。ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)を先頭に残り500mコーナーを抜けると、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)がロングスパートを開始した。
先頭に立ったヴィスコンティの後ろに潜み、残り200mを切ってから加速したバッタリーン。徐々に失速するヴィスコンティを追い抜いて先頭に立ったバッタリーンが、何度も後ろを確認しながらスプリントを続ける。オールラウンダーも入り混じるスプリントで、バッタリーンが勝利した。残り2kmの平均出力を比較すると、ステージ1位のバッタリーンは439W、ステージ2位のヴィスコンティは491W、ステージ5位のウェレンスは504Wだった。
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)の後ろからエンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)が飛び出す photo:Kei Tsuji
後方を確認するエンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji
精鋭集団でのスプリントを制したエンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji
2013年と2014年にステージ優勝を飾っているバッタリーンがステージ通算3勝目。久々に表彰台でスプマンテを開けたバッタリーンは「2014年の最後の勝利以降、ずっと勝利から見放されていた。落車もあり、安定感を欠いていた。自分の最高のレベルまで復調することができて嬉しく思う。昨日はスプリント開始が早すぎてチャンスを失ったけど、好調の手応えを感じていたので自信を持って勝負した」とコメントする。今後、同じような短い登りフィニッシュが設定された第11ステージで勝利を狙うととこに、山岳ステージでは逃げに乗ると宣言している。
マリアローザのローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)やトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)、クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ら、マリアローザ候補は(ロペスを除いて)集団内でフィニッシュ。マリアローザを着てエトナ火山の山頂フィニッシュに挑むデニスは「グランツールレーサーを目指す4年計画の中で大きな戦いになる。トレーニングの変更が吉と出るか凶と出るかが明日判明するんだ。なんとか食らいついて、マリアローザを守りたい」と語る。総合2位デュムランとは1秒差のままだ。
ステージ3位に入ってボーナスタイムを稼いだジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)が総合8位に浮上したことを除いて総合トップ10の成績に変動は無し。マリアローザ、マリアチクラミーノ、マリアアッズーラ、マリアビアンカともに持ち主を変えることなく第5ステージを終えている。
集団内で安全にフィニッシュするローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji
この日はタイムを失わずにフィニッシュしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
ステージ優勝を飾ったエンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji
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ジロ第5ステージはユネスコ世界遺産に登録された「神殿の谷」で有名なアグリジェントをスタート。前日に引き続きシチリアのアップダウンコースが設定されており、ステージ後半は3つの4級山岳を含むアップダウンが連続する。残り2kmから平均勾配8%(最大勾配12%)の1km登坂スタート。残り1kmは平坦基調だが、スプリンターには厳しいコースレイアウトだ。
丘の上の街アグリジェントをスタートしてすぐ、正式スタートの旗が振られると同時にアタックが始まる。「事前の打ち合わせをしていたわけじゃないけど、右側から自分が行って、左側からローランが行った」と語るライアン・ミューレン(アイルランド、トレック・セガフレード)が、チームメイトのローラン・ディディエ(ルクセンブルク)とエルゲルト・ズパ(アルバニア、ウィリエール・トリエスティーナ)、アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)と一緒に4名で逃げを開始した。
海岸線に沿った幹線道路に強い向かい風が吹きつけたため、強力な4名逃げにもかかわらず、序盤からスローな平均スピードを刻んだ。タイム差が5分30秒まで広がったところでBMCレーシングがコントロールを開始。レース中盤にはステージ2連勝を狙うロット・フィックスオールやUAEチームエミレーツ、サンウェブも集団牽引に合流した。
出身地メンフィの近くを通過する際にはサルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、チームスカイ)が集団先頭に出るシーンも。向かい風の中で集団から脱落したガイ・ニーブ(イスラエル、イスラエルサイクリングアカデミー)は体調不良により今大会3人目のリタイア者になっている。
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フィニッシュまで70kmを切ってコースが内陸に向かうとタイム差は2分台に。2つの4級山岳を先頭通過したアイルランドチャンピオンのミューレンは山岳賞ランキング3位に浮上する。やがてフィニッシュまで24kmを切ると逃げグループ内に不協和音が漂い、ディディエに続いて仕掛けたヴェンドラーメが独走に持ち込んだ。
リスク回避のためにチームスカイが集団先頭に出るシーンも見られたが、主にタイム差を詰める役割を担ったのはロット・フィックスオール。残り15km地点で先頭ヴェンドラーメのリードを1分を割り込む。
淡々とハイペースを刻むメイン集団は徐々に緊張感を増し、残り14km地点で発生した落車によってドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)やマリアビアンカのマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)が足止め。ポッツォヴィーヴォはチームメイトの力を借りて、そしてシャフマンは自力で集団復帰を果たしている。
フィニッシュ地点サンタニンファへの登り口に向けてミッチェルトン・スコットやチームスカイ、バーレーン・メリダが隊列を組む中、残り5kmでミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)がコーナーをオーバーランして落車。大怪我は免れたが、その後のアスタナの全力追走は届かず、ロペスはこの日だけで43秒ものタイムを失っている。
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続くディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)のアタックは決まらず、登りを終えて残り1kmアーチを通過するところで集団は40名強。ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)を先頭に残り500mコーナーを抜けると、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)がロングスパートを開始した。
先頭に立ったヴィスコンティの後ろに潜み、残り200mを切ってから加速したバッタリーン。徐々に失速するヴィスコンティを追い抜いて先頭に立ったバッタリーンが、何度も後ろを確認しながらスプリントを続ける。オールラウンダーも入り混じるスプリントで、バッタリーンが勝利した。残り2kmの平均出力を比較すると、ステージ1位のバッタリーンは439W、ステージ2位のヴィスコンティは491W、ステージ5位のウェレンスは504Wだった。
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2013年と2014年にステージ優勝を飾っているバッタリーンがステージ通算3勝目。久々に表彰台でスプマンテを開けたバッタリーンは「2014年の最後の勝利以降、ずっと勝利から見放されていた。落車もあり、安定感を欠いていた。自分の最高のレベルまで復調することができて嬉しく思う。昨日はスプリント開始が早すぎてチャンスを失ったけど、好調の手応えを感じていたので自信を持って勝負した」とコメントする。今後、同じような短い登りフィニッシュが設定された第11ステージで勝利を狙うととこに、山岳ステージでは逃げに乗ると宣言している。
マリアローザのローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)やトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)、クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ら、マリアローザ候補は(ロペスを除いて)集団内でフィニッシュ。マリアローザを着てエトナ火山の山頂フィニッシュに挑むデニスは「グランツールレーサーを目指す4年計画の中で大きな戦いになる。トレーニングの変更が吉と出るか凶と出るかが明日判明するんだ。なんとか食らいついて、マリアローザを守りたい」と語る。総合2位デュムランとは1秒差のままだ。
ステージ3位に入ってボーナスタイムを稼いだジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)が総合8位に浮上したことを除いて総合トップ10の成績に変動は無し。マリアローザ、マリアチクラミーノ、マリアアッズーラ、マリアビアンカともに持ち主を変えることなく第5ステージを終えている。
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ジロ・デ・イタリア2018第5ステージ結果
1位 | エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ) | 4:06:33 |
2位 | ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ) | |
3位 | ジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン) | |
4位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ) | |
5位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | |
6位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・フィックスオール) | |
7位 | フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) | |
8位 | マウリス・ラメルティンク(オランダ、カチューシャ・アルペシン) | |
9位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) | |
10位 | パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
53位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:00:43 |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) | 18:29:41 |
2位 | トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) | 0:00:01 |
3位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:00:17 |
4位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・フィックスオール) | 0:00:19 |
5位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ) | 0:00:25 |
6位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ) | 0:00:28 |
7位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) | |
8位 | ジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン) | 0:00:32 |
9位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:00:34 |
10位 | パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:35 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) | 131pts |
2位 | サーシャ・モードロ(イタリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | 55pts |
3位 | ヤコブ・マレツコ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ) | 53pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | エンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF) | 11pts |
2位 | マルコ・フラッポルティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) | 7pts |
3位 | ライアン・ミューレン(アイルランド、トレック・セガフレード) | 6pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ) | 18:30:09 |
2位 | ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:25 |
3位 | サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) | 0:00:32 |
チーム総合成績
1位 | ミッチェルトン・スコット | 55:31:03 |
2位 | ボーラ・ハンスグローエ | 0:00:16 |
3位 | モビスター | 0:00:18 |
text&photo:Kei Tsuji in Santa Ninfa, Italy
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