風が収まり、比較的平穏なレース展開を見せたツアー・オブ・カタール第3ステージ。過去に3回総合優勝に輝いているトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)が、スプリントでハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ・テストチーム)らを下し、ステージ通算16勝目を飾った。

第3ステージも砂漠を貫く平坦コース第3ステージも砂漠を貫く平坦コース photo: A.S.O.第3ステージは、カタール半島の西岸にあるドハンから首都ドーハに近いメイサッドまで東進する136km。前日まで吹き続けていた強風は収まり、比較的平穏なコンディションの中でレースは行なわれた。

スタート後、2km地点で飛び出したのはアレックス・ダウセット(イギリス、トレック・リブストロングU23)、クラース・ロデウィック(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)、セバスティアン・イノー(フランス、アージェードゥーゼル)の3名。

逃げたロデウィック(トップスポート・フラーンデレン)、ダウセット(トレック・リブストロングU23)、イノー(アージェードゥーゼル)の3名逃げたロデウィック(トップスポート・フラーンデレン)、ダウセット(トレック・リブストロングU23)、イノー(アージェードゥーゼル)の3名 photo: A.S.O.しかし追い風に乗ったメイン集団はスピードが落ちず、最大55秒のリードを築いた先頭3名を23km地点で一旦吸収。すると、60km地点で今度はガティス・スムクリス(ラトビア、アージェードゥーゼル)とステフェン・ファンヴーレン(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)が飛び出した。

スムクリスとファンヴーレンは、リーダージャージ擁するヴァカンソレイユがコントロールするメイン集団から最大2分30秒のリードを稼ぎ出す。しかしメイン集団でサーヴェロ・テストチームやガーミン・トランジションズによるペースアップが始まると、タイム差はぐんぐん縮小。結局先頭2名はラスト30kmで吸収された。

メイン集団をコントロールするヴァカンソレイユメイン集団をコントロールするヴァカンソレイユ photo: A.S.O.ここからゴールまではスプリンターチームによるハイスピードな闘いだ。サーヴェロやガーミン、チームHTC・コロンビア、サクソバンク、クイックステップが束になって集団のスピードを上げ続ける。

スイスチャンピオンジャージのファビアン・カンチェラーラ(サクソバンク)も集団牽引に加わり、3車線の広いコースをハイスピードで駆け抜ける大集団。連続するロータリーを抜け、メイサッドのゴール地点にやってきた。

砂漠を貫く平坦路とラクダ注意の標識砂漠を貫く平坦路とラクダ注意の標識 photo:Cor Vos最終ストレートでスプリンターたちがライバルたちの動きを監視する中、集団前方に位置していたヴァカンソレイユの選手が落車。この落車にはゲラルド・チオレック(ドイツ、チームミルラム)が巻き込まれ、回避したハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ・テストチーム)やバーデン・クック(オーストラリア、サクソバンク)らが先頭でスプリント態勢へ。

しかしひと際目立つベルギーチャンピオンジャージを着るボーネンが、上半身を大きく揺らしながらハウッスラーやクックを抜き去っていく。ライバルたちを力で押さえ込んだボーネンが、そのままゴールラインを駆け抜けた。

遠目に石油工場を見ながら砂漠を進む遠目に石油工場を見ながら砂漠を進む photo:Cor Vos今シーズン初勝利のボーネンは、カタールでステージ通算16勝目。もちろん歴代最高記録更新だ。

ボーネンはチーム公式サイトの中で「また勝てて嬉しいよ。レース終盤におけるチームメイトの動きは文句無しだった。最後は非常に速いスプリント勝負で、サイクルコンピューターによると最高時速は72km/hも出ていたんだ。とにかくチームの最初の目標であるステージ優勝は達成。すでに総合上位2名が飛び出しているので総合優勝は難しいけど、明日からのステージでまた風が吹けば、集団を粉々に出来るかも知れない。この勝利は先日亡くなったフランコ・バッレリーニに捧げたい。彼はいつでも模範的な人物だった」と語っている。

ハウッスラーらとスプリントで競り合うトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)ハウッスラーらとスプリントで競り合うトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ) photo:Cor Vosボーナスタイムにより、ボーネンは総合3位にジャンプアップ。リーダージャージはワウテル・モル(オランダ、ヴァカンソレイユ)が守っている。

また、ゴール前の落車に巻き込まれたチオレックは鎖骨を骨折し、レースを離脱。チームミルラムはエーススプリンターを早くも失った。このツアー・オブ・カタールでは落車が多発しており、前日にはクルトアスル・アルヴェセン(ノルウェー、チームスカイ)とスティーヴン・コッザ(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)が鎖骨骨折でリタイアしている。

レース展開はレース公式サイト、選手コメントはチーム公式サイトより。


ツアー・オブ・カタール2010第3ステージ結果
1位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)           3h01'39"
2位 ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ・テストチーム)
3位 バーデン・クック(オーストラリア、サクソバンク)
4位 ケニー・デハース(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
5位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
6位 ぺーター・ヴロリヒ(オーストリー、チームミルラム)
7位 タイラー・フィニー(アメリカ、トレック・リブストロングU23)
8位 ボビー・トラクセル(オランダ、ヴァカンソレイユ)
9位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
10位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)

個人総合成績
1位 ワウテル・モル(オランダ、ヴァカンソレイユ)           6h42'30"
2位 ヘールト・ステウルス(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)    +09"
3位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)            +1'55"
4位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、チームミルラム)             +1'59"
5位 マークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシングチーム)       +2'05"
6位 ダニーロ・ナポリターノ(イタリア、カチューシャ)          +2'15"
7位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)     +2'17"
8位 スチュアート・オグレディ(オーストラリア、サクソバンク)      +2'40"
9位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)     +2'41"
10位 ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ・テストチーム)   +2'43"

ポイント賞
ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ・テストチーム)

新人賞
ロジェ・クルーゲ(ドイツ、チームミルラム)

チーム総合成績
トップスポート・フラーンデレン

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, A.S.O.